二人の魔弾   作:神話好き

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二話

ローレライ教団公認の自治区、ケセドニア。ルークたちとアッシュの動きを監視する目的で、僕はこの町に来ていた。

「トリスタン。お前に頼みたい仕事ができた」

話しかけてきたのは、先ほどまでルークたちと行動を共にしていたヴァンだ。気絶したアリエッタを抱えている。

「大体わかってるけど、一応内容を聞かせてもらおうかな」

この町を仕切る商業ギルドのトップであるアスター邸にいるルークたちの会話を、読唇しながら話を聞く。

「アッシュの独断により、ある情報がルークの手に渡ってしまった。それの破棄を頼みたい。死霊使いジェイドならばあるいは、計画にまでたどり着くやもしれぬ。それだけは何があっても防がなくてはならない」

「それにはまったくもって同感だ。それで、なにか作戦はあるのか?」

「いや、なにぶん予定外の出来事なのでな、そちらに一任させてもらう。幸いこの町には、シンクとディストも来ている。協力してことにあたってくれ」

「……あいあいさー」

伝えることを話し終わると、ヴァンは去って行った。

「要するに丸投げって事か」

とりあえず合流しようと思い、二人の捜索を始めると、すでにやる気満々のシンクを発見した。カースロットの発動準備をして待ち伏せしている。

「ということはターゲットはガルディオスの彼、確かガイと言ったっけか……。この分だと僕が出るのは、シンクが失敗した時かな」

この距離だと狙撃に気付かれる可能性もあるし、なによりシンクから邪魔すんなオーラが超出ている。という訳で様子見を決め込んだ僕は、その次に備えて準備を始める事にした。手始めにポケットから白い手袋を取り出し、それを装着する。僕の近接用武器『イゾルデ』だ。隠すほどの物でもないが、使う機会が少ないため切り札と言う位置付けになっている。

「さて、そろそろか」

アスター邸から出てきたルークたちが、キムラスカ兵の報告を聞いている隙を狙って、シンクが飛び出した。危険を察知したティアが声を上げると、ガイは素早く反応し、かすめる程度の傷にとどめた。しかし、その拍子に音譜盤とその解析資料が飛び散る。ガイは咄嗟に解析資料を手元に引き寄せるが、音譜盤はシンクの手の内に収まった。その後、ジェイドの指示が飛び、一目散に船への逃走が始まった。

「これは、シンクの奴ギリギリ間に合わないな」

屋根の上を走って、停船上へと向かう。数分と掛からずにたどり着くと、丁度船が出港したところだった。

「……くっ、逃したか」

後数秒の差で獲物を逃したシンクが悔しそうに呟くと、その上空から、品のない笑い声が響いた。

「ハーッハッハッハッ!ドジを踏みましたね、シンク?」

「あんたか?」

ふわふわと浮遊する椅子に座っているのは、シンクと同じ六神将の一人、死神ディストだ。

「後はこの私に任せなさい。超ウルトラスーパーハイグレードな私の譜業で、あの陰湿なロン毛メガネをぎったぎたの……」

「いるんだろトリスタン。いい加減出てきなよ」

ディストの言葉を完全に無視して僕を呼ぶシンク。参ったな、気づかれてたのか。

「穏身には自身があったんだけどな……」

屋根の上から飛び降りると、頭を掻きながら二人の方へと近寄っていく。

「あんまりボクを舐めないでほしいね。アンタとは何度も組手をやってるんだ、それくらい嫌でも分かるさ。それで、その手袋つけてるってことはアンタが直々に乗り込むって事でいいのかな?」

「ああ、ディストだけだと不安でな。なにせあいつら、曲者揃いだし。よくあんな集団が出来上がったもんだよ。六神将並に濃いよな」

「あなたも十分濃いと思いますが……」

「まったくだね。その言葉、アンタにだけは言われたくない」

心底嫌そうな顔をする二人。この二人の意見が合うところ、初めて見た気がする。

「まあ、ともかく。そういう事なら早く追いましょう。私はともかく、トリスタンは長距離になると厳しいでしょうから」

「そうだな」

僕は、短く言葉を切ると『イゾルデ』の機能を発動させる。右手につけている方が淡く発光し、僕の周りを回る青い球体が現れる。それを確認すると、僕は大海原へと飛び出した。

 

・・・

海の上に張った氷の道を走る事小一時間。ようやく目視できる距離まで追いついた。

「ディスト。僕が船の動きを止めるから、その間に侵入してくれ」

「分かりました。それではお先に失礼します。あの陰険メガネをとっちめて待っていますよ。ハーッハッハッハッハッハッ!」

「僕の分も残しておけよ!」

船橋のある高さまで上昇していくディスト。僕は僕の仕事をしよう。

「『イゾルデ』」

浮遊する球体を『イゾルデ』をはめた拳で殴ると、数倍もの大きさに膨れ上がり、船底と接触している水を氷へと変えた。

「これでよし」

出力の上限いっぱいだが、どうにかなったようだ。僕は、ディストが残していった予備の椅子に乗ると、甲板へと上がる。

「ハハハッ!油断しましたねえジェイド!」

「差し上げますよ。その書類の内容は、すべて覚えましたから」

全身で喜びを表現してしたり顔なディストと、それを馬鹿にするジェイド。すでに役者はそろっていたらしい。

「少し遅れたか」

そうぼやいて、ディストとジェイドの間に降り立つ。

「トリスタン謡将!?」

目をに開いて驚くアニスとティア。特にアニスのは驚きを通り越して悲鳴に近い。

「ようアニス。わざわざこんなことろまで特別授業に来てやったぞ」

「はうあ!超ありがた迷惑ですぅ~!」

首を左右に振りながらルークの後ろへ移動し隠れる。あいつ、会って数日の人間を盾にしやがった。

「さて、じゃあ始めるか。頼まれてた仕事は、ディストがこなしてくれたみたいだしな」

「導師守護役の教官でもあるという話は聞いていましたが、やはり近接戦闘もこなすようですね」

「そりゃまた厄介な話だな」

油断なくこちらを見据えていたジェイドとガイが武器を構える。続いて、ティアとアニス、そしてルークも臨戦態勢に移行した。

「タルタロスの時のお返しだ。少しだけ僕のカードを見せてやろう。準備はいいかディスト!あの陰険メガネが書類を全部覚えたって言うなら、しこたま殴って記憶ごと消去すればいいさ」

「あなた天才ですか!」

「やれやれ、年配は敬うものだというのに」

戦いの場にふさわしくない軽口を期に、戦闘の幕は開いた。僕は、ディストが用意した巨大ロボ『カイザーディスト』と並び立つ。先陣を切って突っ込んできたルークのブロードソードの腹に強めに拳を入れ、軌道を逸らす。そのまま一歩前に踏み込み体を低くして足を払うと、前のめりに体制を崩したルークの丁度真下にくる。

「ふっ!」

がら空きになった顔を打ち抜こうとすると悪寒がはしる。バックステップでその場を離れた瞬間、足元が発光し岩の塊が出現した。ジェイドの譜術だ。厄介だな、と思う間もなく、追撃。回避した先にはすでに二つの人影があった。

「もらった!」

「こうなったら謡将の記憶、消させてもらいますね!」

先ほどのルークよりも洗練された剣技と、大型な人形『トクナガ』の爪が僕挟み込むようにを襲う。ガイの剣がこちらへと届く前に剣を握る手を狙って蹴りを入れる。顔を歪めて剣を取り落したが、素早く拾い、後方に下がる。アニスの攻撃に巻き込まれないようにするためだ。

「双旋牙!」

がら空きになった僕の背中へと爪が迫る。しかし、アニスの真横からカイザーディストが衝突し吹き飛ばし、その場で停止した。それを踏み台に、持ち直してこちらへと向かって来るルークを飛び越え後方支援に徹していたジェイドの元へと向かう。おそらくこれで、

「ノクターナルライト!」

「いけません、ティア!罠です!」

「もう遅い」

急激に方向転換をし、迂闊にも近づいてきたティアへと接近。咄嗟のガードの上から強烈な拳を叩きこんだ。

「くう……っ!」

そのまま吹き飛び、壁に衝突する寸前でアニスの人形に受け止められる。しかし、片手は潰した。戦闘不能とはいかないが、少なくともこの戦闘中は使えないだろう。それを確認すると、一旦カイザーディストのところまで引く。今の一幕ではこちらの勝利だが、まだ一人の片腕を封じた程度だ。油断はしない。

「驚きましたね。これほどの格闘をこなすとは思ってもいませんでした」

「伊達に導師守護役の長を勤めてるわけじゃないさ。近づかれて何にもできないようじゃ、護衛は務まらない」

「なるほど。それで手のそれはいつ使うのでしょうか?」

手のそれというのはもちろん『イゾルデ』の事だ。なかなか攻めてこないと思ったら、様子見をしてたのか。

「安心していいよ。今日はこれ、使わないつもりだから」

僕のあからさまな挑発に乗ってきたのは、やはりルークだった。激高してこちらへと走ってくる。その少し後方にはガイが、そして挟み撃ちのためにアニスが大きく右回りに移動している。

「ディスト!」

「ええ!」

術士タイプの二人、というよりジェイドをディストに一任し、僕は近接三人を同時に相手どる。ルークが振りかぶった剣の間合いよりさらに近くまで接近し、足を踏みつける。

「いっ!?」

「ここまで近づくと、剣は満足に振れないんだ。覚えておくといい」

そのまま体を前方へと伸ばし、交差しながら肩でルークの顎を打つ。ふらついているうちに襟を取り、刹那に放たれようとしているガイの斬撃に対しての盾に使う。刃はどうにかルークにあたる寸前でピタリと止まった。僕はもう一度先ほどと同じ手を蹴ると、その反動で体を捻るように反転させる。やはり、このタイミングか。

「僕が仕込んだ奇襲の要領が、僕に通じる訳ないだろう!」

眼前に迫る『トクナガ』の拳に、僕は自らの拳で応じる。その結果、お互いの腕ははじかれ、上体が後方に反れる。流れるように『トクナガ』の顔にサマーソルトキックを入れようし、足を引っ込める。その直後、足の軌道上をナイフが横切る。そのまま蹴っていたら、健を切られていたかもしれない。

「二段構えか。今のはいい攻撃だった。六神将クラスじゃなきゃ仕留められてたろう」

「嘘っ!今のを避けるの!?」

「ちょっと謡将バケモノ過ぎですぅ~!」

ディストと交戦中のジェイド以外の全員が、距離を取ってこちらを見る。驚き半分、呆れ半分といった様子だ。

「今度は僕からいかせてもらうよ!」

力強く床を蹴り、一歩で間合いを詰める。狙うのはガイだ。

「ぐっ!」

剣を構え反撃を試みるも、勢いがない。アニスと共に行った奇襲の時に比べたら、止まって見える。これなら容易に躱すことが出来る。

「ガイ!?」

一番驚いたのは本人ではなくルークだ。他の二人よりも長くガイの剣を見てきたからこそ気づけたのだろう。誰よりも早くこちらへと向かって来る。だが間に合わない。

「これで二人目!」

三度、剣を握る手を蹴り穿つ。僕の蹴り同じ場所に三発、暫くはナイフも持てないはずだ。案の定、取り落した剣を拾い上げ、接近してきたルークの喉元に突き付ける。

「これでチェックメイトだ」

「ええ。ただし、あなたたちがですがね」

その言葉と共に、頭上に巨大な水の玉が現れる。

「これはっ!?」

僕が驚きで固まっている隙に、ガイが無事な方の手でルークを抱えて離れる。

「セイントバブル」

水が落下し床から泡が無数に発生すると、カイザーディストと僕に襲い掛かる。キッ、とジェイドの方を睨むと、若干ながら額に汗をかいている。

「大変でしたよ。封印術を掛けられているうえに、戦闘しながらですからね。発動までにかなりの時間を擁してしまいました。が、それだけの甲斐はあったようですね」

泡が完全に僕を包み込む瞬間、『イゾルデ』を発動させる。出したのは第五音素でできた赤い球体。セイントバブルに触れると、轟音を轟かせながら大爆発を起こし、すべての泡を蒸発させた。

「参った。本当に参った。まさか『イゾルデ』を使わされることになるとは……」

下を向き、頭を掻きながら言う。

「封印術食らった状態で上級譜術とか、あんたもよっぽど人外じゃないか」

「……平然と出てきておいてよく言いますね。ディストの様に吹き飛んで行ってくれればいいものを」

尋常ではない熱気を発するに対して、警戒を強める一同。

「そう構えなくてもいい。この場は僕の負けだ、大人しく引くよ」

「どういう心算ですか?」

「どういう心算も何も、僕の目的は資料の破棄だからね。君たちの大体の実力も知れたし、大満足だ」

赤い球体を消し去り、導師イオンの元へと近づいていく。

「導師守護役の長として、導師イオンと少し話がしたいんだけど、どこか部屋を貸してくれないか?」

敵意がないことを示すために、『イゾルデ』を外しポケットへしまう。

「ジェイド、すみませんが先ほどまでいた部屋をお借りします」

「分かりました。彼が本気で暴れたら、今の私たちでは抵抗できそうにありませんしね」

「恩に着ます。ではトリスタン、こちらへ」

普段しないような真剣な顔でジェイドを一瞥すると、イオンの後に続いて部屋まで歩く。部屋に入り、誰もいないことを確認してから話を切り出す。

「導師イオン。話と言うのは他でもない。あなたの体のことです」

その後キムラスカの首都、バチカルに着くまで話は続いた。

 

・・・

バチカルの港に着くと、早々に出迎えがあった。

「お初にお目にかかります。キムラスカ・ランバルディア王国軍第一師団師団長のゴールドバーグです。この度は無事のご帰国おめでとうございます」

「ごくろう」

「アルマンダイン伯爵より鳩が届きました。マルクトから和平の使者が同行しておられるとか」

その言葉にイオンが一歩前へと進み出る。その隣ではアニスが自慢げに胸を張っている。

「ローレライ教団導師イオンです。マルクト帝国皇帝、ピオニー九世陛下に請われ、親書をお持ちしました。国王インゴベルト六世陛下にお取次ぎ願えますか?」

「無論です。皆様の事はこのセシル将軍が責任を持って城にお連れします」

「セシル少将であります。宜しくお願いいたします」

ゴールドバーグの一歩後ろに控えていた、どこかリグレットに似た雰囲気の女性が口を開く。女性恐怖症のガイは、少し腰が引けている。

「お、いや私は…、ガイといいます。ルーク様の使用人です」

「ローレライ教団神託の盾騎士団情報部第一小隊所属、ティア・グランツ響長であります」

「ローレライ教団神託の盾騎士団導師守護役所属、アニス・タトリン奏長です」

「マルクト帝国軍第三師団師団長、ジェイド・カーティス大佐です。陛下の名代として参りました」

ガイに続き、ティア、アニス、ジェイドの順で身分を明らかにする。

「貴公があのジェイド・カーティス……!」

「ケセドニア北部の戦いでは、セシル将軍に痛い思いをさせられました」

「御冗談を。……あの方の援護がなければ、私の軍は壊滅していた」

「ほほう、一体どの方なんでしょうねえ?」

ジェイドがいやらしい笑みを浮かべながらこっちをちらちら見ている。嫌がらせをしないと死ぬ病気にでも罹ってるのかこいつは。

「一体何を……?いえ、それでそちらの方は?」

「ローレライ教団神託の盾騎士団導師守護役、トリスタン・ゴットフリート謡将であります。その節はどうも」

「なんとっ!?」

驚きを隠せないゴールドバーグとセシル。セシルに至っては声すら出せない様子だ。僕の顔を知ってるのは、教団の人間と両国のトップくらいなのだ。ジェイドはピオニー九世陛下を脅して聞き出したらしい。

「出来れば内密にお願いいたします。ここにいるのも、導師イオンにお話しがあったからでして」

「え、ええ。もちろんですとも。セシル将軍!」

「はっ!了解であります!」

以前の戦争で手を貸したと言っても、神託の盾騎士団である僕はキムラスカの味方という訳ではない。よって決して敵に回さぬよう、ものすごく気を使われているのだ。少しはルーク一行にも見習ってほしい。

「それでは、私は失礼いたします。ゴールドバーグ将軍、セシル将軍。せっかく面識も出来た事です、いずれまたお会いしましょう」

「はい、喜んで」

堅かった表情を僅かに崩す二人を見てから、僕は次の目的地に向かった。

 

・・・

「仕事の報告だ。隠れてないで出て来いよ、ヴァン」

ルークたちと別れた後、バチカルのとある廃工場に来ていた。

「聞こう」

僕の声に反応して、錆びついた機械の裏から出てくるヴァン。その表情は心なしか硬い気がする。

「死霊の破棄には成功、ただし内容はすでに死霊使いの頭の中に入っちまってる。お手上げだよ。こればっかりは外部からは消せないからな。まあ、命を取るなら話は別だけど」

「いや、その必要はない。それでは本末転倒だ。マルクト帝国そのものを敵に回しかねん」

「まあ、そうだよな」

ピオニー九世とは僕のことを聞き出せるほどの仲らしいので、彼を殺すということは、当然戦争の覚悟をしなくてはならない。あれと仲良くできる器のデカさが王の資質ってやつなのだろうか。

「あとはそうだな。引き続き死霊使いの話になるんだが、封印術を掛けてなお強いね。『イゾルデ』を使わされたよ」

「それはなんとも……。本人は油断したと言っていたが、ラルゴがやられたのも頷けるな」

指を顎に当て、少し考え込むヴァン。

「まあ、その件はいい。それよりもだ」

顔を上げ、こちらを真剣な顔で見つめてくる。何かあったのだろうか。

「トリスタン。お前、ティアに怪我を負わせたそうではないか」

「ああうん。そんな事だろうとは思ったよ」

一瞬でも真面目に聞こうとした僕が馬鹿だったようだ。目頭を押さえながら首を横に振る。早く次の仕事に行こう。僕は不満げなヴァンから逃げるようにその場を後にした。

 

・・・

「すでに導師一行は砂漠を越えたとの報告が入った。次は私が打って出る」

「分かってるさ。今回は僕も僕のやり方でいかせてもらう」

「それは頼もしいな」

小高い丘の上で、僕はリグレットと襲撃の打ち合わせとしていた。リグレットたっての希望で、ティアをこちら側に引き入れるためのものだ。

「すまないな。私の我が儘に付きあわせてしまって」

「言いっこ無しだ。あの日から僕たちは一蓮托生って決めただろ」

「そうだったな」

表情を変えていないように見えるが、よく見るとかすかに笑みを作っている。ここ一年一緒に過ごすうちに、ようやく見分けがつくようになったのだ。

「……全部終わって、それでもお互い無事だったらまたここに来ようか」

「ああ、それも悪くないかもな」

沈みゆく夕日に照らされて、ほんの少し、いつもよりも感傷的な気分だ。

「私の魔弾はお前がいて初めて完成する。……だからどうか、いなくならないでくれ。少なくとも、私が生きているうちは」

「約束するよ」

上手く言葉に出来ず、そっけなく答えてしまったが、ちゃんと分かってくれたようだ。僕は眼帯を取り外しリグレットに向かって微笑むと、狙撃場所へと向かって歩き始める。人間の意思と自由を勝ち取るために。

 

 


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