今回のお話は時系列で前話の翌日、めぐみんの一人称となっております。
蛇足かもしれませんが書きたくなったので書いてしまいました。
どうぞお付き合いください。
「んっ……ふぁ〜、っと」
カーテンの隙間から日光が差しこんでます。朝の到来です。
窓を開けると眩しくて、心地よく風がそよいできます。
今日もいいお天気です。絶好の爆裂日和です。
まずはカズマを誘って、ご飯を食べて支度を済ませるのです。今日は湖を爆裂させて、水しぶきに架かる虹と併せて堪能しましょうか。
1日の予定を考えながら階段を降りているとアクアと鉢合わせました。
「あ、めぐみんおはよー」
「おはようございます。リビングにカズマいますか?」
「カズマ?ちょっと待ってね、カズマー!?いるー!?……返事がないわね、たぶんいないわ」
「そんな適当な……」
「まあまだ寝てるわよきっと……あっ」
「?どうかしましたか?」
「そういえばカズマったら今日は朝早くから遊びに行くって昨日話してたわね、お昼ご飯の当番には間に合わせるよう戻って来るとかって」
「そうでしたか。ではアクアにお願いできますか?午前中にドカンと1発かましてやりたくて」
「爆裂魔法に付き合ってほしいの?まあ、いいわよ。どーせ家にいてもダクネスもいないし」
………。
「……ダクネスは、カズマと一緒に出かけたのですか?」
「え?んーと、たしか一緒じゃなかったわよ。ダクネスはアクセルの巡視だとかでご飯も食べないで出てったから。貴族のご令嬢も割りかし大変なのね」
この街の治安はなかなかのものだと思いますが、時々ダクネスにその手の話が回ってきます。
クルセイダーでこの街でも有名、加えての家柄もあってダクネスが見回りをすると警備が引き締まるのだそうです。
……それにしても……。
「?どしたのめぐみん?そんな浮かない顔しちゃって」
「……いえ、なんでもありません」
今の話を聞いてほっとするわたしがいます。
……このもやっとするやつ、なんとかならないものでしょうかね?
「ま、なにはともあれ朝ごはんよ!適当に作っておいたからさっさと食べちゃいましょ!」
☆☆☆
「遅い!遅いわよあのヒキニート!」
それは日課をこなしてお腹も空きだした頃合い、いつもならお昼を済ませているあたりの時間帯。
一向に帰ってくる気配を見せないカズマにしびれを切らしてアクアが騒ぎだしてしまいました。
「こうなったらめぐみん!カズマにツケてお高いランチと洒落込んじゃいましょうっ!」
勢い込むアクアのお腹はさきほどから悲鳴を上げています。あ、また鳴った。
「わぁ〜〜〜〜ん!!ほらさっさと行くわよ!胃が破裂するくらいたらふく食べてあのバカの懐に大打撃与えてやるんだからっ!!」
でもそうですね、確かにちょっと遅すぎますし、今日は外で食べちゃいましょうか。
……あっ、そうだ。いいこと思いつきました。せっかくの機会です。
「……あの、アクア、お昼でしたらわたしが作りましょうか?食材は残ってますしちゃちゃっとできるものを」
癇癪を止めてわたしに真顔を向けるアクア。
「なに、めぐみんってばどうしたの?あ、家事の手伝いでお駄賃を狙ってるの?」
「アクアにとって家事手伝ってお小遣いねだるほど子供に見えるのですかわたしは!?」
アクアからたまに飛んでくる一撃はカズマのそれと違って本心から言ってそうで結構グサッとくるんですが!!
……カズマもたまに本心で言ってそうですが……。
「別に今日付き合ってくれたお礼ですよお礼!それにわたしは貧しい思いしてません!お金は問題ありません!」
「あ、なんだそういうこと。そうね、せっかくお礼って言ってくれるのならお言葉に甘えようかしら」
「リクエストとかありますか?」
「今私ってばとってもひもじいからすぐできるものならなんだっておいしく頂けるわよ」
じゃあよろしく、といい笑顔のアクア。
台所に着きました。カズマがくれたエプロンを着ます。
少しソワソワします。なんとなく、機会があればすぐに使ってみたかったのです。
しかし逸る気持ちは抑えましょう。手を滑らせでもしたら包丁は危険です。
心を落ち着かせながら、私は調理を開始しました。
☆☆☆
「今帰った」
「見ればわかるわよゴミニート」
「すまないアクア、めぐみん。ちょっとしたアクシデントでカズマの力を借りていたのだ。食事はもう済ませたのか?お詫びに昼は私が奢ろう」
ちょうど食事の準備ができたところで、2人は帰ってきました。2人で。
またダクネスはこっそりカズマを誑かしたのかとか、カズマもカズマでホイホイついていかないでほしいとか思いながら頭の中で文句を整理していたら、どうやらそれは冤罪だったみたいです。
なんでも小難しい事務仕事を、途中で鉢合わせたカズマに手伝ってもらったのだとか。そういうことなら、おとなしく溜飲を下げましょう。
もっとも、アクアのほうは散々待たされたことでひどくお冠のようす。
でもこんなところで立ち話はいけません。ご飯が冷めてしまいます。
「お昼はわたしが作っておきました、ちょうどできたところです。冷めないうちに頂きましょう。ほら、アクアも恨みつらみはいったんお腹にもの入れてからにしましょう?」
「……めぐみんに免じてお叱りは後回しにしてあげるわ」
「悪いなめぐみん、当番は俺だったのに。ところでなにを作ってくれたんだ?」
「手っ取り早く、余ってる食材で作れるものですよ」
それは以前に教わったカズマの国の、『チャーハン』と呼ばれているらしい料理です。
☆☆☆
幾度かチャーハンを口に運んでからカズマが一言呟きました。
「なるほど。めぐみんはチャーハンもちもち派かぁ。俺、パラパラ派だから次からはもうちょい長めに炒めてくれ」
この男っ!!当番遅れたくせにわたしの調理にケチつけてきましたよ!
「なに贅沢なことを言ってるのですか!せっかく人が当番でもない日に作ってあげたのに!」
「あ、卵は炒める前によくご飯と絡めておくんだぞ?そのほうがパラる」
「聞いちゃいないうえにダメ出しまでされましたよわたし!」
そもそも短く炒めたのはお腹を空かせたアクアのためであってですね!
言いたい放題のカズマになんだかはらわたが煮えくり返ってきました!この怒りを原動力に今日はもう1爆裂いけるんじゃないだろうか!
「変な動詞を作るんじゃないぞカズマ」
「そこは今気にするところじゃないと思うの」
「やかましいですよそこの2人!」
ダクネスは近ごろカズマに甘いところがありますからね。せめてアクア!アクアだけでもわたしの味方をしてください!
そういったニュアンスの目配せをしてみたらアクアがそれとなく話し始めました。
「カズマ、たぶんめぐみんはお腹を空かせた私を案じてちゃちゃっと仕上げたかったのよ。あまり文句言わないであげなさい」
……おお。アクアが珍しくまともな講釈をカズマに垂れてます。
……というか、そもそも目配せがうまくいったという事実に軽く衝撃を受けてるわたしがいます。いや、ほら……あのアクアですよ……?
「ちなみに私もパラパラ派だから、ね?めぐみん、次からはよろしくね?」
……ちょっ、とめないでくださいダクネス!わたし今からあの2人に目に物見せてやるんですから!
「ほら、そんなことでゴタついてないでさっさと食べちまおうぜ?冷めちまうぞ?」
なんでこの男こんなマイペースなんですかっ!?
☆☆☆
「にしても、味はそこそこいい感じだったな」
「そうね、これなら私の高貴なお腹も十分満足してるわよ」
「また随分と上から目線なっ……はあ、もういいです。お粗末さまでしたっ」
もうこの2人のことでとやかくは言うまい。埒があかない。
くたびれた内心が顔に出ていたのか、ダクネスが気を遣ってか労いの言葉を掛けてきた。
「いやおいしかった。ありがとうめぐみん。これで午後からの業務も全力で取り組めるぞ」
ダ、ダクネスっ……!
しかしわたしがダクネスの言葉に感動しているなか、脇になぜかカズマのニヤついた顔が映った。
そして一言。
「それでどうだった?」
「……は?」
「エプロンどうだったかって聞いてるんだよ、あれすぐ使ってみたくって今日は昼飯作ったんだろ?」
「うっ……そ、そんなわけないじゃないですか!まったくわたしもナメられたものですね!そんな、人を『新しいおもちゃ買ってもらったときの子ども』みたいに……お、おい。みんなしてその温かい感じの目でわたしを見る理由を聞こうじゃないか」
☆☆☆
あのあと散々からかわれて、今はソファでぐったりしてます。今日は厄日です。
隣でカズマが、なにやらまたよくわからない工作をしてますが突っついてやる気力も湧きません。
………。………。……でもこれだけは。
「カズマ、エプロン……」
「ん?あれがどうかしたか?」
『あれ』と言ってカズマが向く方にわたしも顔を向けると、そこにはエプロンをいじくり倒すちょむすけの姿が。……って。
「ちょ、ちょ!ちょむすけ!?それは大事なものなので!」
慌ててちょむすけを引き剥がし、エプロンの無事を確認する。
「ここも、ここも……ふぅ、大丈夫そうですね」
「別にそんな慌てなくても。もし破けてたりしたらまた同じの作ってやるぞ?」
「……そういう問題じゃありませんよー」
まったくホントにこの男ときたら。
「にしても気に入ってもらえたみたいでなによりだ。俺も手間かけた甲斐があったってもんだ」
「そうですね、アップリケは可愛らしいですし。カズマはやはり手先が器用ですね」
おや?なぜかカズマが頭を抱え始めました。
「俺としては手先とか運とか、そういうのじゃなくてもっとこう……まあいいや」
あー、カズマにも冒険者として思うところがあるのでしょう。そういえば以前はちょくちょく耳にしたその手の愚痴を最近は聞かなくなりましたね。慣れ、でしょうか?
カズマがコホンとひとつ咳払いして続けます。
「話を戻そう。しかも、しかもだ!昨日も話したがこのエプロンにはな?耐火性のある素材が使われててな?調理時の飛沫はもちろん、『なにを間違ったか炸裂魔法が飛んできた!』なんてアホみたいなシチュでも安心の一品に仕上がっている!」
おひとつどうか?とふざけるカズマに思わず吹き出してしまいます。
「ぷふっ。……でもそうですか、安心ですか。そんな変に性能高いと確かにあのお店好みかもですね」
「店ってよか店主だな」
「お値段は?」
「このくらいでいかがか?」
「ふふっ」
「ははっ」
くだらない茶番にひとしきり笑い合う。こんなひと時も結構……。
「さて、と」
カズマが立ち上がりました。どうやら作業が終わったようです。
そういえばさっきは話しそびれていました。
「カズマカズマ」
「1回で十分だ。どした?」
「……このエプロン、着けるととても安心できますよ」
「そりゃ今話した通りだからな。じゃおやすみー」
「……ふふっ、おやすみなさい。カズマ」
たぶんわたしのこの感覚、お品の性能によるところではないと思うのですがね。
………ん?おやすみ?お日様、まだ………。
いや、あの男のグータラっぷりは今さらですかね。ふふっ。
この話は執筆時に少々期間が空いたこともあり、あまり一貫性のない文体に仕上がってしまっているかもしれません。要反省です。
しかし私個人としてはなかなか楽しく書けたので、この感覚を少しでも多くの方と共有できたら幸いです。
お読みくださいましてありがとうございました。