前回は初めての投稿でしたが、それでも閲覧して頂けたり感想を書き込んで貰えた事は大きな励みになります。
こうなると自分も現金なもので、単発ネタの筈だった自らの作品に関する事を考えるようになります。
それで何となくですが話のタネになりそうな案が浮かんできたので、この波に乗るしかない!という経緯です。
(でも相変わらずプロットは無いので……)
その一環ですが『剣と魔法の世界』としていたシリーズ名を、『ABCD同意向』に変更します。
元々が仮の名称だったのですが、初投稿のタイトル「どう行こう?」と「同意+意向」の語呂合わせで決めました。
それでは、物語を始めましょう。
どうやらエイク一行、今は街に居るようです。
彼等が何をしているのか、その様子を覗いてみましょう。
「あぁ~終わった。猪退治に、ここまで手古摺るとは思わなかったぜ」
「依頼内容は『村の農作物を荒らす猪退治』でしたけど、あんなに事になるとは思いませんでした」
「そりゃ柵や罠じゃ、有効なのは1~2匹くらいだろ。どんだけ飢えてるんだ、猪どもは」
「でもバナルさんは、足跡を見てすぐに猪の数が組合の想定以上だと気付きましたよね?」
「そりゃ気付くさ、狩猟の事なら狩人や蛮族の得意分野だぞ」
宿の割り当てられた部屋で寛ぐエイク一行。
エイクはドーンを厩舎に連れて行っているので、まだ部屋に来ていない。
なので、この部屋に居るのはバナルとクレアの二人である。
彼等は
組合に依頼達成の報告を終えて報酬も受け取り、いわゆる一仕事終えた状態である。
農作物の被害も軽視できない村の状況から依頼の時点で額が良いとは言えないが、村人達の申し出で仕留めた猪肉が振舞われ、いつの間にか村人総出の宴になっていた。
その際にはクレアも村の女性達と一緒に料理し、普段は
村に着いた時には奇行が目立つエイクに蛮族のバナル、そして何故か凄く怖いドーンに気後れしていた村人達だが、村を発つ時には蟠りも無くなり別れを惜しんでくれていた。
率直に言って余り活躍の場が無かったドーンは不満そうだったが、肉料理を足らふく食えたバナルに言う程の不満は無い。
「そういえばアイツ遅いな。厩舎に連れて行くのに、そこまで時間かかるもんか?」
「恐らくエイク様は、念入りに世話をしているのだと思います。今回の行動、ドーンには不本意でしょうから……」
「仕方ねぇだろ。あの馬が居合わせていると猪が――」
「よっこいしょっと。クレあん、鎧を外すの手伝ってくださいな」
「あっ、ハイ! お手伝いしますエイク様。少々お待ちください」
漸くドーンの世話が終わったのか、エイクが部屋に入って来た。
エイクが纏っている板金鎧は一人で着脱できないので、いつもの如くクレアに鎧を脱ぐ手伝いを頼んでいる。
胸当てや籠手などを手慣れた仕草で外していき、その下の鎖帷子と更に下に着ている革製の胴着も脱いでいく。
これもいつもの如くだが、脱いだ後は用意してある別の胴着に着替えるので、宿泊時でも完全に無防備な姿を晒す事は無い。
そして脱いだ胴着は、クレアが他の洗濯物を洗う時に纏めて行うのだ。
エイク曰く旅は何が起こるか分からないので、備えあれば嬉しいとのこと。
その一言に対して、備えあれば患いなしですよとクレアが訂正を入れるのだが、エイクの耳に届いた試しは余り無い。
「おーっ……遅かったな。あの馬、まだ機嫌が悪いの直らないか?」
「まードンちゃんは豪傑ですからね。戦いの場に出られないのは無念なのでしょう」
「どうだかねぇ、あの時は現場にドーンが居るだけで猪が姿を見せねぇし。来なきゃ俺達も退治できないぞ」
「結局は逃げ出した猪をドンちゃんと追撃しましたが、僕達の人数では迎撃するしか無かったのも事実ですな」
「……戦いが強けりゃ良いってモノでもねぇんだな、依頼を熟すには」
猪は村人が寝静まった夜中に農作物を狙いに来るという話なので、当初の予定ではクレアが後方支援を行い、エイクとバナルとドーンが迎撃して猪を一気に仕留める作戦だった。
……のだが、肝心の猪が1匹も姿を見せる様子が無い。
夜が明けて村の周囲を調べた結果、真新しい猪の足跡が見つかった。足跡の痕跡から近くまで来たが引き返していると見通しを立てた。
この時にバナルは猪の数が、依頼を受ける時点で聞いた『3匹程度』という情報より多いと気付く。彼の見立てでは最低でも5匹。
依頼者が数え間違えたか、味を占めて猪の数が増えたのか定かではないが、それを知ったエイク一行は頭を悩ませる。
更に翌日の夜も猪は姿を見せず、猪が来ない原因が判明したのは翌々日の夜だった。
いつ猪が来るか不明な状況でエイク達全員が毎日徹夜して待つのは、後方支援を受け持つクレアへの負担が大きいので交代で見張ろうとバナルが提案したのだ。
それでクレアとドーンが休んでエイクとバナルが見張りに立った夜、猪が姿を現した……しかも7匹。
猪は武装していた二人を恐れず、猛然と突進してくる。
先頭の猪に狙われたエイクは咄嗟に楯を前に重心を落として構えたので転倒は免れたが、反撃する余裕が無い。
だが動きが止まった猪へ、怒号と共にバナルの斧が叩き込まれる。しかしその隙に、別の猪がバナルに突っ込んで来た。
渾身の一撃で減り込んだ斧が抜けなくなり、バナルは斧を手放して猪の突進を避ける。
エイクは斧の一撃で弱った猪を剣で突いてトドメを刺すと、予備のダガーを抜き取りバナルへ放り投げる。
バナルはダガーを拾うと、横っ腹を見せていた猪に駆け寄って蹴り飛ばし、転倒した猪の顔面をダガーで突き刺す。
「僕達の戦い方は、途中まで正反対でしたな。僕は正面から迎撃し、バナるんは側面から攻めるとゆー感じで」
「あのなぁ、硬化革製の鎧じゃ猪の突進を受け止められんよ。俺は楯も持ってないんだし」
「そーいえばバナるんの所持品は、革製や布製の物ばかりですね?」
「俺の部族は金属加工の技術がなぁ~。鉄鉱石が手に入る訳でもないし、金属製の武具は作れないぞ」
「じゃあバナるんの部族は、どうやって鉄製の武器や鎧を手に入れるのですか?」
「そりゃあ商人から買うか、倒した敵から奪うとか……そんな方法しか無いわ」
「あー……だから平和的に金属製品を手に入れるため、バナるん達は都市へ買いに来るのですな」
クレアは洗濯しに席を外したので、部屋に居るのはエイクとバナルの二人だけである。
この件でエイク一行は、バナルは良い武装を持つべきという結論に至ったので、彼は報酬の配分を多くして貰っている。
だが武器か防具が迷う以前に、今のバナルはそんな気分になれない。
猪の襲撃を受けた夜にエイクとバナルが7匹のうち3匹を仕留めた頃、厩舎で眠っていた筈のドーンが鞍も馬鎧も着けずに現場へ駆け付ける。
その途端、エイクやバナルを恐れなかった猪達が一斉に怯え始めた。
それでバナルも気付く。昨日と一昨日の夜に猪が姿を見せなかったのは、
獣は自分に勝ち目の無い存在と戦う事を避けようとする。つまり
それを理解した瞬間、バナルの思考は
ドーンを警戒して注意が逸れている猪に近寄りダガーを振り下ろす。
無言で繰り出された死の一撃で猪の反応が遅れている間に、バナルは猪の身体に減り込んで手放した斧を屍から造作も無く引き抜いた。
猪の注意が今度はバナルに移った事を悟ったドーンが突進して進路上に居た猪を撥ね飛ばし、その勢いでエイクの傍に寄り騎乗を促す。
エイクがドーンに跨るのを見て、生き残っていた猪は逃げ出し始めた。
ドーンに撥ね飛ばされた猪は動きが鈍っていたので、態勢を立て直す暇も無く真っ先に斧で脳天を潰された。
ドーンはエイクを乗せて疾走し、瞬く間に猪の真横に位置を取るとエイクが剣で斬り付ける。
傷の痛みで身悶えし走りが止まった猪に、後から蛮人の斧が迫って来る。程無く断末魔の悲鳴が付近に響き渡った。
最後に残った1匹も必死で駆けていたが、ドーンの跳躍からの踏み付けで身動きと命脈を止められた。
その際にドーンに乗っていたエイクだが、あの時は着地が凄く痛かったと語っている。
「あの状況で猪を討ち漏らさずに済んだのは僥倖だが、万事めでたしとは言い難いな」
「ドンちゃんは駆け付ける際に厩舎を壊してたし、騒動で目覚めた村人達はバナるんの怒号に怯えちゃったし?」
「あれは俺のせいじゃねぇわ! つーか暗殺者じゃあるまいし、無言で仕留める必要性ないだろ?」
「まー僕とドンちゃんが修理を手伝う事で厩舎の件は水に流してもらいましたが、あの村、どうなりますかねー?」
「さぁな。残った猪肉は干し肉にして保存するとして、傷み易い内臓は早々に皆で食うだろうよ」
「農作物を食べた猪が、今度は村人達に食べられる訳ですな。因果応報とは、これ如何に?」
エイクの言葉にバナルは敢えて答えず、猪は食べられる箇所が多いし、皮や牙も売るか加工する素材になるから無駄にはならないだろうと言った。
そこへ洗濯を終えたクレアが戻って来て、洗った物を窓際で干す作業に入った。
洗った物を部屋の中で干すのは色々と都合が悪いのだが、日当たりの良い所に干して誰かに持ち逃げされるより遥かにマシである。
明日になったらバナルの武具を探そう、良いモノが見つからなかったら別の街へ行こう……猪を退治したエイク一行は、もう次の冒険に向けて考えを巡らせていた。
そしてエイク一行が街を旅立って暫くした後に、ある村の噂が幾つか流れてきた。
街の人々から最も信憑性が高いと評されたのは……農作物を獣達に荒らされて困っている村人達の前に、颯爽と黒く逞しい馬が現れて獣達を懲らしめたという噂である。
噂の信憑性を高めた要因として、その村では黒い馬の像を作る事が流行っている事実がある。子供にとっては玩具として、大人にとっては災いを払う御利益があるとして。
他には……悪い事をすると斧を持った蛮族が大声を上げてやって来るという噂もあるが、街の人々は眉唾モノだと思っている。
なお、
今回の話は、ここで終わり。
語り部としても、次に彼等の話をする機会が来るのを待つ事にします。その時に、またお会いしましょう。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
当初の予定だと今回の話は、依頼の受諾から報告して終了までの流れか、冒険者のランク分けに関する説明にする筈でした。
要するに、この作品の世界で冒険者と依頼の関わり方を、何らかのカタチで書いてみようという試みだったのです。
エイク一行が依頼を完了した後から話が始まっているのも、その都合です。
自分で戦闘描写を書くと長文化して物語の展開が遅くなり、結果的に読み難くなると思って避けようと思ったのですが、思いに反して予定以上にシッカリと書く羽目になりました。
依頼での行動内容も当初は――
エイク一行が総出で猪を迎撃→
ドーンにビビって猪が逃げ出す→
ドーンが居ると村に猪が来ない→
だからドーンは厩舎で待機→
村人と協力して猪を誘い込んで倒す→
だが討ち漏らした猪に逃げられる→
厩舎を抜け出したドーンが逃げた猪を倒す
――という予定でした。
ですが書いているうちに、この行動内容だと回想としては長過ぎるし、逃げた猪が間を置かずに再び村へ来るのも不自然だし、何より書くのは大変なのに面白くないと感じたので現行の内容に変更しました。
処女作である第1話もそうでしたが、プロットを決めないで書くと予定より内容が大幅に変わります。
もっとも変わった度合いで言えば、今回の方が大きいですけど。
なお今回の話を書くうえで猪の習性などは一切調べてないので、実際の猪はこんな行動を取らないという点もあると思います。
また前回の話と今回の話で統一性があるようにするため、出だしや終わり等の文章を変更しました。
それでは、今回はこの辺で失礼いたします。