艦娘隔離病棟にて。   作:maruishi

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一部独自設定独自解釈。軍制その他に関しては自衛隊を参考。一部帝国海軍も入ってるけど伝統墨守唯我独尊だからね。仕方ないね。


第1話

「頭ーーー中!」

 

妖精の号令とともに整列した艦娘達がこちらに注目する。だがその顔には妙に生気がない。

身なりこそ各位それぞれの制服に身を包んでいるしその身には傷一つない。

だが今まで回ってきた鎮守府警備府とは明らかに様子が違っていた。

軍人とはこのような言葉に表現できないようなあいまいなものは本来無視するものだが

この雰囲気の原因を予め上から聞いていた私は思わずため息をつきかける。

つらつらの埒の無いことを考えてしまったが訓示を始めることにした。

 

「整列休めーーー!」

 

「本日、大本営よりこの鎮守府の司令官を拝命した望月である。

 今般、深海棲艦の脅威は未だ衰えず本土近海も安心して航行できない。

 諸君らは軍人でありかつての大東亜を戦い抜いた英霊でもある。

 今の軍人の不甲斐なさを英霊へと押し付けるような真似をして

 小官としては非常に忸怩たる思いもある。だが諸君らは英霊であると同時に軍人である。

 国家国民を守る為、軍人はその生命を賭さなければならない。

 日本国海軍は諸君らの精励奮起を期待する。」

 

「気をつけーー!」

 

 

式典も終わり執務室へと入り引継ぎ書類らしきものを順々に片づけていく。

そもそも何故こんなことになったのか。

深海棲艦と世界人類の戦いについては今更なので省かせてもらう。

結果として海上交通こそが全ての生命線である

我が国は壊滅的を通り越し亡国の瀬戸際まで追いやられた。

もちろん座して死すわけにはいかずあらゆる戦力を投入し事態を打開しようとした。

そう、あらゆる戦力だ。そこにはもちろん艦娘のみならず通常戦力も入る。

当然、正規の軍人は通常戦力を動かすために必要で

とても新戦力たる艦娘の指揮をとることはできなかった。

そこで考え出されたのが末期戦の常套手段、学徒動員である。

一定の軍事教練を積み非常時に呼集に応じることで学費を軍が肩代わりする制度に

平時でなおかつ周辺諸国との関係も一定の安定を見ていた時代

大学生は何も考えずに応募していた。

だが有事に本当に招集されるとは夢にも思っていなかったらしい。

娑婆のノリそのままのボンクラ大学生が指揮をとればどうなるか。

それがここの艦娘達の現状だ。

 

 

ある駆逐艦は小児性愛者の変態に監禁されていた。

ある軽巡洋艦は資源を得られると兵站について理解していないバカのせいで解体されかけた。

ある重巡洋艦は春を売ってると言われ襲われた。

ある戦艦はこれまたろくに主計も理解できないバカのせいで解体されかけた。

ある潜水艦は休養もなしに延々と出撃させられ続けた。

ある空母は上記のすべてをやられた。

 

 

本当にろくでもないバカが多すぎた。

いくら突然軍に招集されたからと言って酷すぎた。

戦況がいくらか好転しあらためて艦娘の置かれた惨状を見せつけられた国民は軍の無能をなじり

軍はその責任を幾人かの高官の予備役編入と犯罪者どもを死刑を含め断罪することでおさめた。

そして後に残ったのは英霊たる身でありながら祖国のため今一度戦いに出たにもかかわらず

その守るべき祖国に裏切られた艦娘達であった。

 

「それにして連中は書類一つまともに仕上げられなかったのか」

 

もういなくなった奴らのことを言っても詮無きことだが

愚痴の一つも思わず口から漏れ出してしまう。

先ほどの訓示ではああは言ったが実のところ深海棲艦との戦いも終局を迎えている。

5年ほど前に成功した欧州打通作戦。

東シナ海、インド洋、紅海、地中海、北海までを人類は完全に取り戻した。

太平洋戦線も南太平洋廻りで米国との連絡線の確保に成功。

今はユーラシア、北米両沿岸から締めあげている段階だ。

そしてこの間に分かった非常に重大な事実がある。艦娘と深海棲艦の関係だ。

深海棲艦とはかつての戦争で沈んだ艦の持つ記憶のうち

人間に対しての負の部分が凝縮されたものだ。

そして艦娘がそれを鎮めることに成功すると深海棲艦は艦娘となる。

ならば艦娘が人間に対して負の感情を抱き沈めばどうなるか。深海棲艦となる。

このことが分かった時、当時の上層部は悲鳴を上げた。

馬鹿に対してろくに手綱を握っていなかったことを心底後悔した。

そう、この鎮守府は一種の隔離病棟なのだ。

負の感情を蓄積させ続けた艦娘を集め再び深海棲艦としないこと。

 

 

 

 

私が拝命した真の命令はいかなる手段を用いても深海棲艦を再び生み出さないことなのである。

 

 

 

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