東方妖精録 作:きりたんぽ
はい、という訳で三話目です。どうぞ……。
——午後六時ごろ。
俺たちは掃除を終え、魔理沙は自宅へと帰り、霊夢は夕食の支度をし、俺は能力に慣れる為に氷の造形魔法の修行を行っていた。
「
俺は両手を使って構え、空中に巨大なハンマーを造り出す。
「………やっぱりだ。昼間にやった時とは感覚が少し違う。威力も大きさも造形する速度も、昼間の時より衰えている。しかし魔法を使用する度に感覚が元に戻っていく………これらを踏まえて考えられるとしたら———」
「竜斗ー!夕飯出来たから戻って来なさーい!」
能力について考察をしていると霊夢の声が聞こえてきた。夕飯が出来たらしい。
俺は修行を中断し、神社の方へ向かった。
〜少年移動中〜
「あら、来たわね。」
居間に着くと、霊夢が座って俺のことを待ってくれていた。俺は食卓に並べられている料理に目を向けた。
「おぉ、意外としっかり出来てるな。」
「意外は余計よ。どんなのだと思ってたのよ?」
「いやさ、さっき賽銭箱の中を見たらあんまり入ってなかったし、もうちょいアレな感じだと………」
「生活できる位の分はあるわよ。——ホラ、早く食べましょ。」
「「いただきます。」」
挨拶をし、俺は料理を口に運ぶ。味の感想はというと………
「ん、結構美味いじゃん。上手く出来てるよ。」
「そ、ありがと。」
リアンクションが薄いぜ霊夢さん……。君も年頃の女の子なんだからもっと喜ぶべき場面じゃないか?まぁ別にいいけど………。
すると霊夢が俺に話しかけてきた。
「それで?能力について何か分かった?」
「あー………まぁ、まだ考察の段階だけど結構分かってきたよ。」
「へー、何が分かったのかしら?」
「まず一つは昼間に言った通り、滅系の魔法などの特殊な条件が必要な魔法は条件をクリアする事が必要になる。」
例えれば、滅竜魔法を使うには『竜の魔力』の入手が必要となる。星霊魔法を使うには『星霊の鍵』を入手しなければならない。——といった感じだ。
「確かにソレは昼間に聞いたわ。他には?」
「この能力には『初回サービスシステム』が存在するっぽい?」
「初回サービスシステム?何よそれ?しかも何で疑問形?」
「俺もまだよく理解出来てないんだよ。俺の頭脳は平均よりちょっと上ぐらいだからな。」
俺の学校での成績は学年の中の上辺りだ。であるからして俺の理解速度は遅くはなくとも速くもない。
つまり!能力の理解が出来ていないのは致し方なし!って訳だ。
「貴女の頭のデキなんてどうでもいいから早く説明しなさいよ。」
「わーったよ。——まず確認だけど、俺が昼間に魔法を見せた時はちゃんと魔法使えていたよな?」
「ええ、特に問題は無い様に見えたわよ。」
「ところがドッコイ、掃除を終えた後にもう一度使ってみると、昼間とは比べ物にならない程に性能が劣化していたんだ。で、その後に何回か魔法を繰り返していると性能がだんだんと良くなってきた。『コピー能力』って言うモンだから俺はてっきり直ぐに使える様になると思ってた。けどそれは間違いだった。ちゃんと一から修行しなければならなかったんだ。しっかり汗水を流してな。それであの時に魔法を完成状態で使えたのは———」
「その魔法を使用する時の感覚を体に覚えさせる為………?」
「ま、そんなとこだろうな。これが今考えられる事だ。」
現状で考えられる事はこれが限界だ。むしろこれだけの情報でここまで推察できた事に称賛を与えたいくらいだ。
これ以外にも何かあるかもしれないがそれは後に分かるだろう。
「あー、頭使ったらなんか疲れたわ〜………。」
「理解が遅いって言う割には結構分かってるじゃない。本当に中の上なの?」
「ん〜?俺の頭のデキなんかどうでも良かったんじゃないのか?それとも気になってきちゃったか?」
俺はおふざけ気分で少々挑発的な事を霊夢に言う。正直自分でもウザいと思ってしまった。
「………別に、どうだっていいわよ。貴女になんて微塵も興味が湧かないわ。」
それを聞いた霊夢は本気で拗ねてしまった様だ。ヤバい、凄い罪悪感が俺に襲い掛かってくる……。
「すまん霊夢。今のは自分でもウザいと思った。ちょっと調子に乗っちまった、悪い。」
「………謝るんだったら最初から言わないでよ。」
「いや、本当に悪かっ———ん?………そこに居るの、出て来い。」
俺がそう言うと、空中に奇妙な空間が開かれる。
その空間には『眼』が点々と浮かんでおり、その中から一人の女性が現れた。
その女性はフリルの付いた紫色のドレスを着ており、頭にはリボンが付いた帽子を被っている。髪は金髪のロングヘアで、毛先には幾つかリボンが付いている。
女性を口元に扇子を置き、俺の方を向き話し始める。
「私の気配に気付くなんて、中々やるわね君。」
「そりゃどうも。で、貴女はどちら様ですか?」
「あら、人に名を聞く時はまず自分から名乗るモノではなくて?」
出た、マンガとかでよくあるセリフだ。まさかリアルで聞くとは思ってなかった。
「………俺は神原竜斗。外界出身の人間です。」
「竜斗くんね。まぁ知ってたけど。貴女をここに連れてきたのは私だし………。」
………ん?今この人なんて言った?『ここに連れてきたのは私』って言ったのか?
「え?アンタが俺を幻想郷に?」
「そうよ、私は
「やっぱりアンタだったのね……。一体何のために竜斗を連れて来たのよ?」
霊夢は俺を連れて来た理由を紫さんに聞く。確かに気になるな……。
すると紫さんは予想外の返答をする。
「別に?食事用の人間を適当に捕まえたら彼だっただけよ。」
「………んん〜?食事用の人間?それってどゆこと?」
「竜斗、紫は人間に見えるけど実は人喰い妖怪なのよ。」
「………え、嘘?こんな美人さんが妖怪なのか?めっちゃ人間やん?」
とても信じられない。
妖怪ってもっと人間とはかけ離れた化け物みたいな容姿かと……。
「幻想郷の妖怪はこういうパターンが多いから気を付けなさい。人間だと思ったら妖怪だったみたいなパターンがあるから。」
「りょ、了解。」
「あ、ちなみに言っとくけど、紫って容姿は若いけど実は何百年も生きてるBBAなのy——」
「——ッ!?」
俺は急にとてつもない殺気を感じた。
発生源は紫さんだ。紫さんの方を見てみると、ドス黒いオーラを身に纏っていた。どうやら『BBA』という単語は紫さんの前では禁句の様だ。
「霊夢ー?いくら貴女でも容赦しないわよー?」
アカン!女性がこの殺気はいろいろとアカンですよ!冷や汗が止まんねぇってば!
「ゆ、紫さん……俺は年齢なんて気にしませんよ?紫さんってとても綺麗ですし、むしろ気にする方が難しいっすよ。ホラ、笑いましょ?紫さんは笑顔の方が似合いますよ。」
俺は冷静に紫さんを説得させる。咄嗟に喋ったが、別に嘘は言ってないしきっと大丈夫………と思いたい。
「………仕方ないわね。ここは竜斗くんに免じて許してあげるわ。」
良かった、なんとか冷静になってくれた様だ。これで一安心だ。
「ところで竜斗くん。私、貴女のことが気に入ったわ♪『竜くん』って呼んでもいいかしら?」
「あ、はい。好きな呼び方でどうぞ……。」
なんか気に入られてしまった……。まぁ別に嫌じゃないし全然構わないんだけどな。
「話を戻しますけど、さっき食用として俺を捕まえたって言いましたよね?なら何故俺は今こうして生きてるんですか?」
「別に大した理由じゃないのよ。ただ貴方を一目見て、何となく貴女は食べない方が良いと思ったの。それは、特に根拠も無いただの気紛れ………。」
——つまり、俺は適当な気分で死にかけ気紛れで生かされているのか……。なんか虚しいぜ。
「ところで竜くん。貴女はこれからどうするのかしら?外界に帰る?」
「いや、向こうに帰るっていう選択肢は絶対に無いですね。明後日くらいから万屋でもやろうかと……。」
「万屋ぁ?しかも明後日から一人で?」
「今んトコはそのつもりだけど。」
俺はまだ幻想郷に来て間もない。一緒に仕事をしようなんて言える者がいないのだ。
「けどまぁ魔法の修行とか地理の把握をしないといけないし、まだ先の話になるんすけどね。」
「それまではどこで生活するのよ?」
「博麗神社に置いてくれたら一番手っ取り早いんだけど………流石に迷惑だよな?」
「いや、明日だけでしょ?別に一日くらい構わないわよ。」
「そうか?じゃあお言葉に甘えさせて貰うよ。」
なんだかんだ言って霊夢は優しい。
こんな出会ったばかりの俺を二日間も家に置いてくれるなんて普通はしない。ましてや霊夢は女の子だ。正直、女子の家に滞在するなど俺も気が引けてくる。
「あ、そういえば紫さんにお願いがあるんですけど………」
「あら、何かしら?」
「向こうから俺の衣服とかお金とかの生活用品を持ってきてもらせませんかね?無いといろいろ不便なので……。」
さっきまでの話からすると、紫さんは俺が元いた世界——つまり外界と幻想郷を自由に行き来出来るっぽい。俺を幻想郷に連れて来たくらいだし……。
「あぁ、そういう事ね。いいわよ、明日の朝までには持って来といてあげる。」
「あ、でも向こうのお金ってこっちでも使えますかね?」
「問題無いわ。コッチとアッチの通貨は同じだからね。———それじゃあ私はそろそろお暇させて貰うわ。」
「あ、はい。改めてこれからよろしくお願いします。」
これから何回か関わることもあるだろう、という事で俺は紫さんに挨拶をする。
「えぇよろしく♪それじゃおやすみ、竜くん♪」
紫さんは再びスキマを開き、消えていった……。
能力の説明が難しくて何を言ってるのかイマイチ分からなくなってしまった……。
それではまた次回に……。