オレンジ色の太陽が水平線に沈んでいく。
薄暗い海上には燃える太陽が三つ。
どす黒い煙を天に吐き出しながら、三つの巨大な影が燃えている。
赤城、蒼龍、飛龍。
そして、私は四つめの太陽だった。
船体は燃え続け、鉄はドロドロに溶け出し、海へ崩れ落ちていく。
海面には漏れ出した重油で黒い膜ができている。
燃え上がる船体から乗組員が落ちていく。海には投げ出された乗組員やバラバラになった資材が浮いている。救助する駆逐艦や小型ボートがそこかしこにいる。
助ける方も、助けられる方も焼けただれ、血を流していた。
地獄だった。
太平洋の美しいサンセットがシュールだった。 美しい風景写真に、火災現場の写真を雑に張り付けた合成画像のようだった。
その地獄の中で日本の機動部隊が、いや、日本そのものが燃えている。
こんなはずじゃなかった。
やがて蒼龍が爆発を起こし、巨大な火柱が立ち昇る。
蒼龍は巨大な渦を作りながら海中に没していく。
次は私だった。
ついに燃料庫に炎が到達し、大爆発を起こした。
船としての機能を失い、浮かぶことすらできなった私は沈んでいく。
体がだるく、力が入らない。
鉄の塊へ戻っていく。命が体から漏れ出していく冷たい感覚がする。
水底へ落ちいく間、後悔が募っていく。
油断さえしなければ。
まともに戦えれば。
そして機動部隊を失った日本を思い、絶望した。
もう二度と攻勢をかけることはできないだろう。
空母と艦載機を造り、再び機動部隊を再建させる頃には絶望的な戦力差がついているだろう。
私が沈んでいなければ。
だが、もうどうすることもできなかった。どれだけ悔やんでも、もう私の手は届かなくなってしまった。
今はただ、水底へと沈んでいくだけだった。
しばらくすると、暗く冷たい所へ到達する。
私の好きだった波はリズムはもう感じることはできない。
何も見えず、冷たい海底だった。
ここは揺れない。
目が覚めると、窓から光が差し込んでいた。
ここはミッドウェーの海底ではない。
固くて揺れない鎮守府のベッドだった。
鎮守府内は見た目には普段と変わりはなかった。
大半の艦娘にとってはいつもの鎮守府だった。
教室では時間割どおりに授業は進んでいた。ある艦娘は普段と同じく運動場で訓練していた。
ただ、彼女達を知っている者がいれば、いつもの艦娘が何人かいないことに気がついたかもしれない。
もし海に出たものがいれば、沖合の上空で何かが飛び交っているのが見えたかもしれない。
上空から絶え間なく赤組の艦載機が飛来する。
十分に艦戦を展開できていなかった上空は劣勢だった。
「対空しっかり!」
随伴艦の巻雲、谷風、霧島が重い音を響かせて対空砲を撃ち、空には黒い煙が次々と浮かぶ。
何機か落としたものの、上空を覆う艦載機は敵方が優勢だった。
対空砲と艦戦をくぐり抜けた敵方の艦爆が爆撃を始める。
爆撃が近くに落ち、巨大な水柱と衝撃を発生させる。
「くっ!」
よろけながらも急旋回をして回避する。
随伴艦達も爆撃を受ける。浜風、舞風は既に第一波の攻撃で大破判定を受けていた。
次々と水しぶきが高く上がり、視界が遮られていく。
まずは上空の安全を確保しなければ話にならない。
弓を引き、上空の艦爆に向かって矢を放つ。
矢は空中で四機の艦戦へと変化し、艦爆に襲いかかる。
熟練の艦戦はすぐに敵艦爆を落とし始め、そこに敵方の艦戦も入り乱れて乱戦となる。
さらに追加の艦戦を放つと、少しづつ上空の勢力を押し返し始めた。
互いの艦載機が撃ち落とされる空中戦が展開された後、爆撃を終えた攻撃隊が戻っていく。
水平線の彼方、赤組の艦隊は見えないが、艦載機が飛来した方角からおおよその位置は分かる。
護衛の駆逐艦がやられ、対空が弱くなった状態での防戦は不利だった。
反撃に出なければ勝ち目はない。
別の矢をつがえると、敵方艦載機が戻っていく方向に放つ。
それは空中で魚雷を積んだ艦攻へと変化し、続けて護衛の艦戦も放つ。
「今度はこっちの番ね。行っておいで!」
「どうですか」
長門は隣の白い海軍服に身を包んだ男に声をかけた。
「うん・・・」
中年の男は双眼鏡を覗いたまま、曖昧な返事をする。
その双眼鏡の先は鎮守府の演習区域の沖合だった。
肉眼では沖合で何かが集まっている程度にしか見えないだろう。
その双眼鏡からは、白組の加賀、蒼龍が爆撃を受け、陣形が乱れながらも応戦している姿が見えた。
「ふむ・・・」
男は双眼鏡を一度外すと、執務室の別の窓まで歩いていき、そこで再び双眼鏡を覗き込む。
「どれ」
双眼鏡の狭い視野で赤組の部隊を探す。少し探すと赤城の部隊が見えた。
赤城を取り囲むようにして駆逐艦達が輪形陣を築いていた。
加賀達が居た場所から直線距離にして十数キロ離れているだろうか。
互いに状況が目視できない状態で空母が主体の演習だった。
さらに探すと、だいぶ離れた位置で飛龍の部隊を見つけた。こちらも整然とした輪形陣を保っている。
「うん・・・」
赤城の部隊に視線を戻すと、その上空には艦載機が飛び交っている。
時折、爆発で水柱が上がる。加賀の放った攻撃隊は強力だった。
練度十分の加賀の戦闘機は待ち構えていた赤城の艦戦に襲いかかり、次々と防御網を破っていく。その後に続く艦攻が雷撃を繰り出す。
対空に専念していた榛名、利根が被弾したのが見えた。
だが、赤城の対応は柔軟で粘り強かった。
赤城が指示を出すと被弾した艦をかばいながら回避行動をとり、再び陣形をまとめる。
遠く離れた飛龍に指示を出しているのか、援軍が加わり、数で加賀の攻撃隊を抑え始める。
しばらくは双方の艦載機が炎を上げて墜落していくのが見えていたが、徐々に落ち着いていく。
加賀の反撃を受けきった赤城と飛龍は、攻撃隊を放つのが見えた。
(どうしてこっちだけ、こんなに被害が大きいのよ!)
攻撃用に放った艦攻と艦戦は想像より多くが未帰還となった。
ここ数日の演習ではいつもそうだった。
通常の演習なら致命的な被害を与えて、ほとんどが無事に戻ってくるはずだった。
反撃してくる艦載機の多さが敵空母の健在を証明していた。
この空母中心の演習ではどうにも勝手が掴めなかった。
再びこちらが攻撃を受ける番だった。
「集まって!早く陣形を戻して!」
散り散りになった護衛艦を呼ぶが、個別に応戦していたため距離が離れていた。
蒼龍の部隊も応戦しているのが見える。
離れていたはずの蒼龍の部隊と私の部隊はいつのまにか近くに誘導させられていた。
そこに赤組の攻撃陣が迫ってくるのが見えた。
慌てて艦戦を上空に展開する。
(まだここで持ちこたえれば勝ち目はある)
十分に艦戦を展開していたつもりだが、駆逐艦が散っていたのが響き、対空砲の密度が薄かった。
赤城、飛龍の攻撃は容赦がなかった。艦戦の守備をくぐり抜けた爆撃と魚雷が投下され始め、立て直し途中だった私達の陣は再び引き裂かれる。陣形を維持しようにも、激しい攻撃で回避行動を取らざるを得ない。
そうして散った艦には攻撃機がまとわりつき、一隻づつ戦闘不能にされていく。
巻雲、谷風が爆撃にさらされ、蒼龍は回避しているが上空の攻撃機に張り付かれている。
(どうして?なんでいつもこうなるの?)
もう何度も繰り返された光景だった。この状況が理不尽に思えてきて、怒りといらだちが募る。
追加の艦戦を放ち、続けに反撃用の艦攻を繰り出す。
「まだ・・・これが当たれば」
制空も確保できていない、無理な反撃だったが、僅かな希望だった。
だが、直後にスピーカーから耳障りな音が鳴り、信号弾が上がる。演習終了の合図だった。
即ち、私の艦隊の敗北の判定が下された合図だった。
(私はまだ戦える・・・艦載機も残っているし発艦もできる)
心の中で負け惜しみをつぶやく。
だが、周りを見ると 私以外の白組の全員が大破か中破判定だった。一隻だけ残った私は、紅組の艦載機に囲まれていた。
「加賀、最近調子悪いわね」
演習が終わり、反省会のため会議室に向かう途中で赤城に話しかけられる。
「そう?そんなことは無いわ」
調子が悪いどころじゃなかった。
演習でここまで負け続けるなんて初めてだった。
普段の演習では私がついた艦隊は引き分けすら珍しい。負けるなんて数えるほどしかない。
「あなた最近顔色悪いもの」
「そんなことは・・・いえ、少し疲れてるのかも」
「今、激しい演習多いから。ちゃんと休まないと」
大規模作戦が近いため演習の量が増えているのは事実だ。その疲れは認める。
しかし、それ以上に演習の連敗が私のプライドを打ちのめしていた。
赤城と仲は良かったが、純粋に個の戦闘力という意味では私のほうが上だと認識していた。少なくとも五分以上だ。
それなのに、この演習が始まると艦隊としては全く勝てなかった。私と赤城は旗艦として分かれて演習をするので、常に赤城の指揮する機動部隊と闘うことになる。
いつも私の艦隊は動きを読まれ、先に被害を出して一方的な展開になった。
勝敗もそうだが、戻ってきた赤城の艦隊を見るとさらに落ち込んだ。彼女の艦隊は被害らしい被害は殆ど受けていないように見えた。私の指揮した艦隊の姿と比べると、その差は明らかだった。私の非力さを見せつけられているようだった。
もちろん、演習の目的は勝ち負けではないのはわかっているし、子供っぽいというのはわかっている。それでも私は悔しく、惨めな思いをした。勝利が欲しかった。
(赤城、あなたが負けてくれればいいのよ。そうすれば私は少し元気になれる)
隣を歩く赤城を見て思うが、もちろんそんなことを言えるはずもない。仮にわざと負けられても、満たされるはずもない。
そんな事を考えていたから、長門が立っていたことに気が付かなかった。
「加賀、提督が呼んでいる。反省会が終わったら来てくれ」
私の組の反省会は重い空気だった。
色々と敗因はあるが、結局、私の指揮に負う所が大きいように思える。
もちろん他のメンバーにも要因はある。それでも、私がカバーできればなんとかなったはずだ。
私の影響か、反省会ではみな沈黙することが多かった。
数日前、最初の演習が終わった後はもう少し話しやすい空気だったように思う。
だが、敗北が続き、少しづつ空気は重くなっていった。
同じ部屋の反対側、赤城の組での反省会は活発に議論する声が聞こえてくる。
その上、私は提督からの呼び出しが気になっていた。
次回の作戦での私の扱いについてだろうか。あるいは、旗艦を赤城にするという話だろうか。いや、それなら私だけ呼ぶというのも変な気がする。
上の空だった反省会が終わり、一度部屋で着替えた後、執務室へ向かった。
廊下の曲がり角で声が聞こえた。
「今やってる演習って次のMI作戦のためなんでしょ?」
「そうだよ」
声が少し若い。駆逐艦か軽巡の娘だろう。
「演習どう?きつい?」
「んー、そうだねえ、組分け次第かなあ」
私は足を止めた。
「組って?」
「演習は赤城さんと加賀さんの組で分けてやるんだけどさ、加賀さんの組に入るといっつも負けるし大変なんだよね」
心臓が大きく跳ねる。
グラグラと床が揺れているような気がした。
「え、そうなの?加賀さんの艦隊で負けるんだ?」
「うん。加賀さん自体は強いんだけど、ちょっと指揮するのは向いてないのかもね」
「そうなんだ、意外だね」
「じゃあ赤城さんはどうなの?」
「赤城さんは指揮が上手いし、守ってくれるから、一緒だと安心するよ」
若い声は次第にこちらに近づいてくる。顔が強張っていくのを感じる。
「じゃあMI作戦の旗艦は赤城さんがいいね」
「うん。次は難しい作戦になるらしいし、私達も命がかかってるからね」
私は廊下に出た。
「あっ・・・!」
息を呑む音が聞こえた。
「あら、長良だったの」
廊下では長良と他に二人の駆逐艦の艦娘がいた。
長良はMI作戦参加予定の一隻だった。確かに彼女はこれまで演習に参加している。
私の顔を見て、目が泳いでいた。
(どうしてやろうかしら)
私はできるだけ穏やかな表情を作って彼女に近づく。
うまく笑顔ができているだろうか。頬とまぶたが少し震えている気がする。
長良の唇が少し震えている。他の艦娘は緊張して体が動かないようだった。
私は長良の肩に手を置いた。
「今日も演習お疲れ様」
「へ・・・あ、はい!」
一瞬だけ、拍子抜けしたような顔。そして安心したような返事。
「今日は赤城さんの艦隊だったわね。さぞかし快適な演習だったんでしょうね」
「え・・・」
彼女の顔が曇る。
肩に乗せている手に少し力を込める。
「そうだ。あなたにはもう少し対空を頑張って欲しいと思っていたの」
「い・・・痛いです」
彼女の肩に手が食い込んでいくのを感じる。
柔らかい、小さな肩だ。この肩では巨大な甲板も、大量の艦載機も背負うことはできないだろう。
「走って体を鍛えるのはいいけれど、装備ももう少し良いものにしたほうがいいわ」
「痛いっ、痛いです!すいませんでした!」
彼女の手が私の腕をつかむが何ほどでもない。軽巡の力など私からすればたかが知れている。
彼女の顔が苦痛に歪むのを見て、私は少し満足した。
「ろくな装備が無いと標的として認めてもらえないわよ。この前の演習じゃ、あなたを無視して艦載機が全部私のほうに飛んできてたじゃない」
指に彼女の骨格を感じた。もう少し力を込めれば簡単に潰れるだろう。
「ごめんなさい!ごめんなさい!痛い!痛い!」
「私だって命がかかってるのよ」
自分の力を実感できるのは気持ちが良かった。乾いていた心が少し満たされるような気がした。
「加賀さん、許して!」
「許してあげてください!」
二人の艦が私の腕を掴んで頭を下げているのが見え、はっとした。
慌てて手を放すと、長良はその場にへたり込んだ。
「うぅっ・・・うっ」
彼女は肩を抑えて呻くようにして泣いていた。
(なんてことをしてしまったの・・・)
さっきまで彼女の肩に食い込んでいた手を見る。
指が赤くなり、思った以上に力を入れてしまっていた。
「・・・痛かったら、医務室にでも行って見てもらいなさい」
それだけやっと言うと、足早にその場を去った。後ろから彼女たちが私を見ているような気がした。
体格も違えば馬力も桁が違う。仲間であり、自分より非力な艦に八つ当たりするなどあってはならなかった。
(なぜこんなことを・・・)
執務室へ向かう途中、胸が気持ち悪くなっていた。
執務室には提督の他、秘書艦の長門とその補佐の陸奥がいた。
部屋へ入ると、この中年提督はいつものように、気さくな調子で話しかけてきた。
「よう。調子はどうだ?」
短く刈り込んだ髪には所々に白いものが混じっている。
「調子、ですか?」
にこやかに話すこの男、海軍服を来ていなければ人の良さそうな中年としか見えないだろう。
だが、胸にぎっしりと並んでいる略綬が提督としての能力を物語っていた。
「ああ。最近はちゃんと寝れてるのか?」
ギクリとした。
正直、ここ数日はあまり寝れていない。それに、最近よく見る悪夢のせいか、眠っても疲れがとれない日が続いていた。
「・・・はい。問題ありません」
一瞬だけ考えた後、嘘をついた。体調不良を理由に作戦から外されたのではたまらない。多少寝れていない所で、私の能力に問題は無いはずだ。
「そうか、それならいいんだが。演習のほうはどうだ?ここ数日でだいぶやっただろ。コツは掴めてきたか?」
再び胸が重くなる。正直、答えたくない質問だ。
だが、提督は演習は全て見ているので、正直に言うよりなかった。
「そうですね・・・赤城の指揮が的確で、演習ではいつも苦戦しています。慣れるまでにもう少し時間がかかるかもしれません」
「そうか」
提督は表情は変えず数秒ほど黙っていた。それから口を開いた。
「ALに行く気はあるか?」
「は?」
意味が分からなかった。
(AL?AL作戦のこと?あの陽動の囮?なんで私が?)
私が意味を掴みかね、しばらく提督を見ていると、提督は続けた。
「あっちなら空母同士の戦闘は無い想定だ」
提督が言った言葉を数秒間考え、理解した。
(私が・・・航空戦では力不足とでも言うの)
口が震えるのを感じる。
頭と顔が熱くなっていく。顔は多分真っ赤になっているだろう。
「その顔だと・・・行く気は無いみたいだな」
提督は相変わらず面白がるように言った。
「・・・ええ。よくわかりましたね」
震えてうまく話せない。喉から声をしぼりだした。
顔に出るのは嫌なのでなんとかしたいが、この件については無理だった。
頭の中では、ここ数日の演習の結果や体調を考えればALへ行くのも悪くない、と冷静な囁きもある。だが、圧倒的な怒りと傲慢の声がそれをかき消す。
あの場所で行われる作戦で私が外される。そんなことはありえなかった。
(この男に何がわかるのか。あの時、生まれてもいなかったくせに)
私を力不足と言っているのも許せなかった。
「おいおい、あんまり睨むなよ。一つの案だ」
提督は少し困ったような顔をした。
「加賀、提督はお前のことを心配して仰っているんだ」
横から長門が話しかける。
いかにも心配してそうな、勘違いしてる顔だ。
(こいつも何も分かっていない)
あの場所は、意味が違うのだ。
「MIから外されてALに行くくらいなら・・・ここで留守番してほうがマシだわ」
「おい、作戦は遊びじゃないんだぞ。お前が勝手に決めることじゃない」
(遊びだって?)
あの時、何もせずに逃げ帰ったくせに。
「ふん・・・そうね。ご命令とあらばALでもなんでもいきますよ。三百海里も後から付いて来て、引き返すだけの艦よりはよっぽど役に立つでしょうから」
長門は一瞬ポカンとした表情になった。そして徐々に顔が赤くなっていく。
(すぐ顔に出る。私の義姉なだけあるわね)
顔は赤いくせに妙に目が座っている。
長門は私の方へ一歩近づいた。
「よしなさい」
陸奥が長門の肩に手をかけた。
長門は止められたまま無言で私を睨んでいた。
その目は大きく見開かれ、何かを言おうとして口が小さく動いていた。
そのまま数秒、互いに睨み合っていた。
「加賀、貴艦を来たるMI作戦の主力機動部隊に任命する」
突然、提督が声を発した。
提督を見るといつもの笑顔ではなく、真面目くさった顔だった。
反応するのが遅れたが、私が正式にMI作戦への参加が決定したのだと理解した。
「拝命します」
「作戦決行日は近日中である。それまでに万全の体調にしておくこと。それが貴艦が作戦参加する条件だ。だが、演習は直前まで引き続き行う。作戦をよく理解し、航空戦を有利に進めれるよう訓練しておくこと」
「了解しました」
「よし、以上だ。それと、赤城にここに来るように言ってくれ」
部屋から出る時、長門と陸奥は私の方を見ていた。