捻くれ者と奢侈文弱な女子高生   作:ラバラペイン

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その目に見えるのは

おかしい。絶対におかしい。

 確か俺は防衛任務の後、本部も寄らずに家に直帰した。

 

 いや、していたはずである。

 

 だがしかし。

 

 それならば何故。

 

 何故俺は非常に怪しげな雰囲気を醸し出すステンドグラスが印象的な館の前にいるのでしょうか?

 

 えぇ……、おかしくない?

 だって普通に住宅地歩いてたよね俺。

 好奇心に負けて鏡の様なゲートを通ったり、足元に現れた魔法陣に飲まれたりはしていない。

 

 もちろん千葉県三門市を防衛していてこんな大きな洋館は見たことがない。と言うよりも周囲に洋館以外の建築物が無くなっている。岩場である。

 

 更に言えば空を見上げても月や星は一切見えない。そのせいか異常に暗いのだ。そもそも雲による暗さではなく、巨大な天井で上空全てが覆われている様な閉塞感のある真っ黒な暗闇だ。洋館のステンドグラスから伸びる光の外に出てしまえば、足元すら見えない完全なる闇が待っている。

 

 ……何だここは。近界か?

 いつの間にかゲート潜っちゃった?

 そんな筈は無いが……。

 よく思い出すんだ俺。

 

 えー確か、深夜の防衛任務直後だったからかアホ程眠く、歩きながらもウトウトと船を漕ぐ様な有様だったと。

 んで眠気で一瞬意識が飛んで「…はっ、いかんいかん」と頭を振って前を見たのだ。

 

 そしたらここにいた、と。

 

 いやいやいや、訳わからん。

 眠気も吹き飛んだわ。

 

 しかしもし万が一近界なら急いで元の世界に帰らないとまずい。トリガーを持ったままだから勝手に隊務規定違反扱いにされてしまう。つまり早急に現状を打破、三門に帰還する必要がある。

 その為にまずは情報収集、なのだが。

 

 そこで話は洋館に戻る。情報収集には、目の前の巨大な洋館を訪ねることは避けて通れまい。他に手掛かりも無いし。

 が、ぶっちゃけ嫌だ。

 住んでいるのが人間か人型近界民かは知らないが、知らない人の家にいきなり押し掛けるなんてぼっちにはハードルが高すぎる。なんかインターホン無いし。

 しかも怪しい。見るからに不穏じゃん。隠居した魔王とか住んでそう。

 

 簡単に洋館と説明したが、目視できる限りでは城と見まごう程に大きく、全容から感じる威圧感が半端じゃない。やっぱり魔王住んでんじゃねーの?

 

 正直近づきたくない。ステンドグラスから明かりが漏れているから誰かは居るんだろうが、中に何があるかわかったもんじゃ無いし、トリオン兵とか居たらどうすんだよ。ある程度なら対応出来るけど近接苦手だから近寄られたら終わるし。

 

 と、そこまで考えて気付く。暑い。

 たった今頬を汗が伝ったせいで気付かされたが、かなり気温が高い。今は春のはずだが、湿度も高く、蒸し暑い。

 

 仕方ない、腹をくくるか。このままここに居ても蒸し焼きになりそうだ。

 万が一人が居れば話を聞けるはずだ(そもそもそれが目的です)。

 

 いや待てよそもそも話が通じるだろうか。中にいる人がいきなり襲いかかってくるかもしれない。トリオン体になっておこう。

 

「トリガーオン」

 

 上着のポケットに入っていた『戦闘用』トリガーに触れてそう宣言する。

 

 バチッと音を立てながら俺の体がトリオン体と入れ替わる。とりあえず換装出来てホッとする。これで少なくとも事故や暴力で死ぬことはなくなった。因みにデザインはデフォのままである。俺隊組んで無いし。

 

 さて、さんざ渋ったがいよいよ館に挑まなくてはならない。

 コミュ力がマイナスに限界突破している嫌われ者八幡くんとしては不安で仕方ないが、他に手立てが無いのだ。

 

 ……辺りを散策してからの方がいいだろうか。そうだ、暗くて見えないだけで他にも建物とか有るかもしれないし。そうだそうしよう(名案)、決して館訪問からの現実逃避とかじゃないぞ。本当だよ?

 ほらこの目を見て!(濁)

 

 ガチャッ。

 

「あの、用があるなら早く来てくれませんか? 家のすぐ側でブツブツ思われると正直うるさいのですが」

 

「え、あっ、すみませ、んん……?」

 

 などと現実逃避をしていたら入口の扉が開き、中の人が痺れ切らした様に出てきてしまった。現実逃避って言っちゃったよ。

 

 というか俺喋ってないっすよ……?

 

 

 中から出てきたのは中学入りたて位の背丈の少女だ。ピンク色のショートヘアで、水色の服に薄ピンクのセミロングスカートを履いている。

 色合い的に中々奇抜なファッションだが、素材が良いからか違和感無く似合っている。しかし、そんな感想が月までぶっ飛ぶ程異彩を放っているのが、赤いコードの様な何かに繋がれて少女の腰上辺りに浮いている『目』だ。何あれ。こっち見んな。

 

「まぁそう思わず。外の世界からのお客様なんて初めてですから、歓迎させて下さいよ。私は古明地さとり。しがないさとり妖怪をやってます。心を読む妖怪です。あぁそれと、年下と思われている様ですが私はあなたの100倍は生きているのであしからず。

 ……何を言ってんだこいつ厨二病かよ、ですか。何です厨二病って? なるほど、外の世界では不思議な力を持ったフリをする事をそう呼ぶのですか。面白いですね。実物を見てみたいです。やめた方が良い? そうですか。

 ところで貴方のお名前は? ……比企谷八幡さん、ですか。よろしくお願いしますね。あぁもう分かっているかと思いますが私の力は本物ですよ。はい。現在進行形であなたの心を読んでいます」

 

 ……ここまで俺は、一言も言葉を発していない。少女の言葉に対して何か思う度、発言しようとする前に返答されてしまった。あまりにナチュラルに心の声に返答するものだから『俺声に出して喋ってんじゃねぇの』と思った程だ。

 彼女は自分のことをさとり妖怪と言った。心を読む妖怪だという。

 何をバカなと一蹴したいところだが、現実に心は読まれている。一瞬サイドエフェクトかも知れないと思ったが違う。それはあくまで人間の知覚の延長線上にある。未来予知の迅さんでさえ、知らない人の未来は知ることが出来ない。なのに俺の名前を言い当てた。

 

 何より、俺のもう一つのサイドエフェクトが『こいつ』は普通じゃないと叫んでいる。

 

 あらゆる誤魔化しを見抜き、擬態を暴き、存在その物を見るサイドエフェクト、『超強化認識』が。

 




嫌悪誘発体質はまだ謎があります。
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