捻くれ者と奢侈文弱な女子高生   作:ラバラペイン

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こっそり更新


さとり妖怪の好奇心

 

 とは言え普通だろうが異常だろうが、少なくとも先程の態度で話の通じる相手であることは分かった。俺喋ってないけど。

 

 あの後客室に通された。館の扉がデカけりゃ中も広く、かつ高級感が漂っており俺の場違い感が凄まじかった。ドレスコードとか大丈夫? あと来る途中コードに繋がれた方の目が怪しく光ったんだが何だったんだろう。

 今はローテーブルを挟んだソファに向かい合うようにして座っている。

 さとりと名乗った少女の座る姿は妖怪と聞いてイメージする物と大分かけ離れており、妖怪にしては随分と可愛らしいが、先程心を実際に読み取られてしまった通り嘘ではないのだろう。謎の目玉もまだこっち見てるし。

 

「えぇ、貴方が信じるか信じないかはさて置いて私は嘘をつくつもりは無いと言っておきます。さて、まずは混乱しているでしょうし、質問があれば答えますよ。と言っても私に分かることも少ないですが」

 

 やだこの妖怪超親切。どこか気怠げな表情なので本当は嫌なんじゃないかと思ったが、そういう顔なだけか。

 というわけで、古明地さとりへの質問タイム、始まるよ。

 

 これを聞かなきゃ始まらない。

 ここはどこなんだ?

 

「どこから説明しましょうか……。まず伝えなければならないことは、ここが幻想郷と呼ばれる異世界だということです」

 

 げ、幻想郷? 近界じゃないの?

 

「ええ。そのねいばーふっどとやらが何かは知りませんがそれは後で(心に)聞くとして。

 ここは妖怪や妖精、神霊等、外の世界で幻想となった者が住む郷です。場所としては元々日本なのですが通常は結界によって出入出来ない様になっています。そして私達が今いるここは地霊殿。幻想郷の地下に広がる旧地獄にある建物です」

 

 結界とか神とか、既に突っ込み所が満載なんだが……えっ、何ここ地獄なの?

 

「話すと長くなるのでかなり大雑把に説明しますが、地獄をスリム化するときに使わなくなった部分に、地上を嫌った妖怪や、忌み嫌われた妖怪、封印された妖怪、あとは地霊や怨霊、動物なんかが住みついているんです。なので死んだ後に行く地獄とは別物ですよ。だから貴方は死んでませんので安心して下さい。

 ……碌な奴が居ない、人間はいないのか、ですか。えぇ、むしろ地底には基本人外しかいませんね。今は形骸化してますが地上と地底はお互いに不可侵であるべきという決まりも有りましたし。それを踏まえても地上を通さず、いきなり地底に現れたらしい貴方に興味が尽きないのですが……それは後で考えましょうか」

 

 お、おう。正直いきなりオカルトチックなことを言われても困惑してしまう。一番困るのは、荒唐無稽なことを言っている筈なのに嘘を付いている様には見えないことだが。

 で、その幻想郷とやらに俺は何でいるんだ?

 

「さあ、そこまでは。先ほども言った様に通常は地底はおろか幻想郷に入ること自体が不可能です。来ることがあるとすれば外の世界で忘れ去られたか、八雲紫に連れてこられたか。とはいえ貴方が地底にいる時点で後者はあり得ませんし、前者も貴方の記憶を覗く限り無さそうです」

 

 八雲なにがしが誰かは知らんが何故そいつの仕業でないと言い切れる?

 

「幻想郷を作った賢者の1人で、地底との相互不干渉を定めたのも彼女だからですよ。彼女が攫ったなら、少なくとも地上に呼ぶでしょう。いきなり地底になんて呼んだら普通はすぐ襲われて食われますから。地霊殿の前に出たのは相当に運が良いことですよ?」

 

 ……さっきも封印された妖怪とか何とか言ってたっけな。何、ここそんなに危険なの? いやまぁ旧とはいえ地獄だからそうなんだろうけど。

「わかりやすいのだと鬼が居ますね。……いえ比喩でなく」

 

 何それ超怖い。出来れば早く帰りたいんだけど。帰る方法は分かるか?

 

「地上には外の世界に帰せる巫女がいますが、次にいつ会えるか分かりません」

 

 じゃあ今から俺がその巫女の所に向かうのというのは?

 

「空が飛べない時点でかなり不可能に近いでしょう」

 

 空飛べないと帰れないのかよ。ってここの住人空飛べるの?

 

「まぁある程度実力があれば普通に飛びますね。勿論私も飛べます」

 

 そう言ってソファから少し浮かび上がる古明地。そしてすぐに座り直す。

 その浮遊は明らかに物理法則を無視した動きだった。

 畜生ちょっと羨ましいじゃねぇか。

 

「練習してみますか? ただの人間では徒労に終わるでしょうが」

 

 い、いいし! 俺にはグラスホッパーがあるから!

 

「グラスホッパー……ですか。外の世界の技術はおかしな方向に進んでますね。イメージを読み取る限りでは飛ぶというより跳ねるでしょうか。正にバッタのようです。後で実際に見せて貰っても良いですか?」

 

 それは良いけど、話が脱線してるぞ。って俺のせいか、すまん。

 

 さて改めて考える。

 地上に行くのは飛べないから不可能。

 妖怪にボーダーのトリガーが通用するか分からないから外に出るのも危険。

 

 ふむ。

 

 ……あれ、もしかして割と絶望的?

 

「現時点で慌てても意味が無いと言う点では。

 ところで思ったのですが、帰る必要ありますかね? 会話の断片に見える記憶を見る限り、貴方も随分と嫌われ者みたいじゃないですか。記憶の中の貴方が何故ああまで嫌われているかは知りませんが、地底向きです。……そういう効果の能力がある? あらあら本当に地底向き……。いっそここに移り住んでみては? 大丈夫、鬼ですらこの地霊殿には殆ど寄り付きませんから危険はほぼ無いかと。歓迎しますよ?」

 

 ……いつの間にか質問タイムは終わっており、なんか定住を勧められた。歓迎とか初めてされたかもしれない。もしこのまま本当に帰れないならこれはもしや形は違えど専業主夫になるチャンスーー

 

「ーーペットとして」

 

 じゃなかった!! あっぶねぇこいつ間違いなく妖怪だ。価値観が違ぇ!

 

「何を今更。さとり『妖怪』ですと言ったじゃないですか。心を読める私に対して物怖じしない人間は貴重なんですよ? ……迷い込んだ外の世界の人間には基本的に何をしても良いですし。……で、どうでしょうか?」

 

 いやボソッと聞こえた台詞が超怖いんですけど。何をしてもいいって何だよ。だがそれに関してはスルーされてしまった。

 まぁ、本当に帰る術が無いならここに留まるのも吝かじゃないが(安全そうだし)、出来ればやっぱり帰りたいな。外はろくな事が無いが、小町居るし。

 

「小町、……あぁ、妹さんですか。成る程、今入院中……。随分と大切に想っているのですね。いえ、具体的に思い浮かべなくても貴方から伝わる妹さんへの愛情で十分です。……大丈夫です、詳しいエピソードとか思い出さなくても大丈夫ですから! いや謝らなくてもいいです。私も妹がいるので気持ちは分かりますし」

 

 妹がいるのか。まぁなんかお姉さんって感じはあるな。小さいけど。

 

「小さいは余計です。では仕方ないので帰る方法を模索する方向でいきましょうか」

 

 仕方ないって言うなよ。

 

「とは言え博麗の巫女はともかくとして、彼女の友人ならそれなりに来るので彼女に繋いでもらえば大丈夫でしょうし、焦ることもないでしょう」

 

 因みにそれなりって具体的には?

 

「ひと月に一回くらいでしょうか? 大抵は鬼とお酒を飲んで帰って行きますから、あまり此処には来ないんですよね」

 

 来る頻度少ねえな!? 次はいつになるんだよ……。

 ところで鬼ってすげー酒飲みの印象あるんだが。

 

「そのイメージは合っていますよ。ほとんどの場合飲み交わした相手が潰れます」

 

 マジか……。そんな鬼と飲み交わして生きて帰る巫女の友人って何者だよ……。

 

「本人曰く普通の魔法使いだそうですよ。人間ですが」

 

 普通じゃないし絶対人間じゃねー。

 

「まぁそんな訳で、暫くはゆっくりして行って下さい」

 

 一つ聞きたいんだが、なんで俺にここまでしてくれるんだ? 初対面で、人間で、あんたからしたら胡散臭い、俺にだ。あんたのことだ、俺の溢れる疑心も読み取れてるんだろ?

 

「そうですね……。私は現時点において貴方に対し好悪の感情はありません。あるのは一つ、好奇心です」

 

 好奇心?

 

「そうです。貴方の心は面白い。人としては欠陥品ですが、生い立ちを考えれば傑作です」

 

 欠陥品なのは分かるが、傑作ってのは納得出来ないな。というか生い立ちなんか話していないぞ。

 

「正確には生い立ちではなく人生のトラウマですね。出会った時に想起させて貰いました。……あぁ、想起というのは相手のトラウマを読み取り、相手に見せる技です。……えげつねぇ技だな、ですか。逆に言えばこれしか出来ないんですけどね。あぁ勿論今回は読み取るに留めましたよ、お客様ですし。……しかし随分と沢山のトラウマをお持ちですね」

 

 ふっ、まぁな。

 

「えぇ、誇って良いですよ。あれ程の扱いを受けていながら、人間を憎んでいないのが素晴らしい。素晴らしく壊れています」

 

 …………。

 

「普通は生きていられませんよ。まぁ妹さんの存在も大きいのでしょうけど。あぁ心の中でドヤらないで下さい非常に鬱陶しいです」

 

 いやほら小町は天使だし。なぁ?

 

「誰に言っているんですか……。とにかく、例え妹さんがいても耐えられないであろう経験をしているんですよ貴方は。ましてや当時の貴方は子供です。それを乗り越えるには、普通は全てを呪うか狂うか死ぬしかありません。実際そういう人間は沢山見てきました。そのまま妖怪になった者すらいます。だというのに人間を憎まず、呪わず、どころか普通に過ごしている」

 

 普通なら別に良いじゃねぇか。

 

「えぇ、ですから悪いとは言っていません。面白いのです。貴方の様な人間がどうすれば出来上がるのか、さとり妖怪として非常に興味あります。なので貴方の過ごしてきた人生を聞いてみたいのですよ。トラウマの関係ない記憶は思い出して貰わないと読めないので」

 

 自分語りとか最高に恥ずかしいからしたくないんだが。

 

「それは大丈夫です。私が質問して心に浮かんだものを読み取るだけですから」

 

 さ、流石さとり妖怪……。

 

「と、その前に。嫌われる能力があると言って(思って)いましたが私は別に平気です。これは何故か分かりますか?」

 

 それは俺が今トリオン体だからだな。実質的な生身じゃないからだ。どうやらこの能力は一度生身を見ないとダメらしいからな。

 

「ふむ、とりおん体。それはどういう物ですか? ……なるほど。ではそれを解除してもらっても? 嫌ですか。まぁそうですよね。残念です」

 

 当たり前だ、元の体に戻った瞬間襲われたらたまったもんじゃない。言っとくが生身の俺とかカブトムシより弱いぞ。

 

「それは流石に弱すぎでは……あぁ冗談ですか。ただ荒事が苦手なのは本当のようですね。……さて疑問も解消しましたし、貴方のこれまでを聞かせてもらいましょう」

 

 今度は俺への質問タイム(黙秘権無効)が始まるようだ。

 

 




キャラ崩壊(精神)
人間と妖怪の価値観はキッチリ分けて書くつもりです。

次は菫子視点。
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