「俺が乗ろう。」
誰もが耳を疑った。
ただの旅人風情がACを動かす?
冗談じゃない。
そんなの乗ったこと無い俺にだって無茶だってのは分かる。
「悪いけど、巫山戯てる場合じゃ――」
「巫山戯てないさ。 大真面目だ。」
タリアが言い切る前に被せる。
一体何なんだ?
アイツの冷静さは・・・。
まるで、いつも通りだと言わんばかりの落ち着き様――。
「そもそもあなたはただの旅人、民間人でしょう!!」
「今は、な。」
「え・・・?」
今は?
もしかしてコイツ。
「あなた何者です? ――真面目に答えてください。」
「お前もかエイブラム、いや“林檎少年”?」
「ッ!? あなた、もしかして・・・!」
「そういうことだ。今は訳あって休業中だがな。 ――時間がない、機体は?」
「タリア、案内して。」
「副長!?」
「大丈夫、彼の腕は僕が保証するよ、早く!」
「ッ、了解。 ―こっちです。」
アイツを連れて行くタリア。
それにしたって……。
「知り合い、だったんですか?」
「そう、だね。 まぁ最も、顔を合わせるのは今日が初めてだけど。」
「コイツか。」
トレーラー後部の簡易ハンガーに積まれていたACを見上げる。
「そうです。元々レイヴン試験のための機体なんですけれど。」
「この際しかたない。先方にはアイツが何とかしてくれるさ。」
言いながらあの人は慣れたようにコックピットに滑りこむ。
「副長と、知り合いなんですか?」
「まぁ、そんな所だな。付け足すなら"顔の知らない"って感じか?」
「はぁ……?」
そんなよくわからないことを言いつつもこれまた慣れた手つきでシステムを起動させる。
やっぱりこの人も・・・。
「よし、システムオールグリーン。 出るぞ!」
全く驚いたな。
まさかアイツがこんなことやってるなんて。
いやはや、世界は狭いね。
地上に出たとしてもそれは変わらないか。
「これ、どうやって出るんだ?」
『すぐにわかりますよ。』
無線越しにアイツの声が聞こえる。
と同時にトレーラーの最後部が開く。
「おいおい、このままブースター吹かして出ろってんじゃ――」
『安心してください、実はそのハンガー簡易カタパルトも装備してるんですよ。』
「すげぇな・・・。」
我ながら驚いた。
確かにレールのようなのが走っている。
『ではこちらのカウントで出します。』
「了解。」
『5・4・3・2・1・射出!!』
―ガクンッ!―
軽い衝撃の後に加速G。
そのままトレーラーの外に踊り出る。
浮いた機体のブースターを吹かし着地。
―敵機確認―
「さて、久しぶりのACだ。気合入れますかね。」
「ACだと!!」
飛行型MT、フィーンドのパイロットが叫ぶ。
「畜生、話しが違う!」
「こうなりゃ仕方ねぇ、機動力で引っ掻き回せば!」
「ええいッ。」
トレーラーを攻撃していた2機は出てきたACに向かう。
MTの中でも屈指の機動力を誇る上級MTだ、なんとかなると考えたのだろう。
それに相手のACがレイヴン試験用だったことも関係している。
「ミサイルで牽制するぞ。ヘリ部隊も続け!」
『了解!』
編隊を組みながら一斉にミサイルが放つ。
―しかし今回ばかりは相手が悪かった―
ACは綺麗にミサイルを躱すと近くのフィーンドに急接近しブレードを振りぬく。
『がぁッ・・・。』
まさかアレだけの数のミサイルがすべて躱されるとは思わなかったのだろう。
反応が遅れ切り捨てられ、1機が爆散する。
そこからは最早戦闘と呼べるかも怪しかった・・・。