FGO Concerto   作:草之敬

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藤丸立香が以下の条件をクリアしました!
■セカイリンクしてゲームをクリアする
■___が「アース」に帰還しない
■ゲームのエンディングを一種類しか経験しない

☆5キャスター:とうだいもりのキャスターが解放されました!
☆5?????:?????が英霊の座に登録されました!


☆5キャスター:とうだいもりのキャスターを召喚しますか?
○:はい  ×:いいえ





Ⅰ:吼え立てよ、我が憤怒
Interlude Ⅰ


 

 

「やあ、ロマニ。遅くまでご苦労なことだね」

「ああ、君か。うん、ちょっとね……」

「ふむ? ……ああ、キャスターちゃんのことか」

「そうなんだ」

 休憩時間に入ったロマニを追いかけてきた甲斐があったな、と内心呆れながら、レオナルドは手近な椅子を引っ張ってロマニの横に腰かけた。

 隣に座る優男の態度が気に食わなそうに、レオナルドは組んだ足の先でロマニの足を小突く。それに非難の視線をやってから、ロマニは椅子に深く背を預けた。

「彼女の服装や外見、使う魔術からすれば、順当に考えて歌や踊りを奉納する巫女……極東の神楽のような背景を持った英霊だと思うんだ」

「同意だね」

「奉納といっても世界に視点を広げれば多種多様な文化がある。畜産、農産、酒類、金銭、宝物、そして人柱……とまあ、捧げるものには物質的なイメージが一般には強いんだけど、奉納の本質っていうのは神楽、謡曲、踊りに武芸、あとは偶像、それに所縁ある場所への巡業なんだよ」

「彼女が何を捧げて、何を祀った存在であるか、か。確かに彼女の真名を紐解く手掛かりになるものだろうとも。しかし、君が休憩時間を返上してまで探るようなことかい? そりゃもちろん彼女からは真名を探ることを禁止されたわけじゃないが」

 長々と解説してくれたところ申し訳ないがレオナルドが言いたいのは、つまりそういうことだった。まだ深く関わったわけじゃないが、彼にとってキャスターは無害な小動物のような性格だ。ロマニのように警戒すらにじませてまで真名を暴こうとは思わない。

 とはいえ確かに人を惹きつける魅力があるのは認めるところだ。ただ、英雄と呼ばれるにしては庇護欲を強く刺激される人柄だとは思う。

 でなければあんなに早く一般職員に混じって会話をしたりしないだろう。職員の一部は真名を明かさなかったという一点で懐疑的になっている者もいるが、カルデアとしては表向き彼女を受け入れたと言っていい。

「気にならないかい? そうした宗教的背景が見える存在であるにもかかわらず、かなり近代的な電子工学知識を備えていることが。なによりレオナルド、君の工房ですでに幾つか作っているって報告もあるよ」

「ああ~、まあ、そうだね」

 ダ・ヴィンチちゃんと呼びたまえ、という常套句も言えないまま、レオナルドは視線を泳がせた。

 キャスターがそうした電子・機械工学に明るいと知るや、レオナルドは試しに「修理はいずれ必要だが今じゃなくていい」という比較的優先度が低く、修理の難度も低めの箇所を見せて直せるかを問うた。

 キャスターは「あくまで趣味ですけど」と断ったうえで故障箇所をしばらく観察し、これならなんとか、という答えを出した。レオナルドはそのまま彼女を自分の工房に連れていくと、必要な道具と各種物資を渡し、ではよろしく、と丸投げした。

 まさか本当に修理をさせるとは思っていなかったのか、キャスターはその場では驚いていたが不満はないらしく、やってみますの言葉で修理に取り掛かったのだ。

 それが今日この会話をするまでに数ヶ所……。レオナルドはロマニに誰がは伏せた状態で「修理した」という報告だけ上げていたのだが、この男はこの男で情報収集していたのかキャスターの仕業だということを知ったらしい。

「隠すつもりじゃなかったんだけどね~」

「別に責めてるわけじゃないけど……、まあ、これからの報告は正確に頼むよ。それで、ええとなんだったかな」

「人理に英雄と刻まれたにしては、宗教的象徴であるはずの巫女が電子・機械工学に詳しすぎる、という考察だろう。君が言いたいことはつまり、彼女が学んだであろう電子・機械工学の発展した近・現代において宗教的象徴として人理に刻まれるほどの巫女は存在しないというところかな?」

「そう、そういうこと」

 キャスターとして召喚された少女は、存在そのものが矛盾の塊だ。

 相当特殊な魔術を用い、さらにその特徴から宗教的象徴であると考えられる少女。

 反面、近・現代に発展した電子・機械工学に精通しているということ。

 宗教は現代に近づくにつれ「英雄」の排出はなく、工学は過去に遡るほど未発達。

 再三確認するように、両方を高い次元で両立させているキャスターはどの時代にもそぐわない英霊であること。

 真名が、わからない。

「……それに、彼女の魔術の詠唱――歌唱と言った方が適切かな。カルデアが保管している文献では(・・・・・・・・・・・・・・・)地球の歴史上、確認されたことがない架空言語だ。解析班にも回してもらっているけれど、単純なようでいてかなり叙情的で、翻訳にいくつかの解釈が見えてしまって苦労してるみたいだよ」

「私もあれは見せてもらったよ。確かに感情的な言語だと思うね。文面だけでは語れない、言葉にした時にしか見えてこないニュアンスが含まれていて解析に苦労するだろうな~って思ったよ」

「いやあ、軽いねまったく。レオナルドが手伝えばあっという間だろうに」

「さて、どうかな。アドバイスは残してるから、もし、最後のマスターが最初の特異点から生きて帰ってくれば、解析の中途結果くらいは出るんじゃないか?」

「……言い方が冷たいよ、それは」

「残念ながら、私は君ほど彼らに期待していない。せざるを得ないとはわかっているけどね。現実的に見て、あのマスターが生き残れると思うのかい? 魔術のマの字も知らないで、マスターとしての実力も最底辺。特異点Fを生き残ったことが今でも信じられないよ。私はね、そういう人間なんだ。死んでるけどね」

 レオナルドを窺ったロマニは、乾いた笑顔だと、それを見て思った。

 無味無臭の視線が、モニターを貫いている。無表情というわけではない。モナ・リザの美しい微笑みは、それがどれほど乾いていようと存在の価値を貶めない。

 だが、だけど、ああ――。

 ロマニはその諦めにも似た独白へ、返す答えを持っていなかった。

 否定するにも違うような気がして、だけど決して肯定したいわけじゃなかったのに。

 先日、己の喉から出た音はつまり、あの少年に「死ね」と言うにも等しくて。

「……レオナルド。あのね、僕は、諦めたくないんだ。ここまで頑張ってきたってこともあるかもしれない。でも、これは大人の意地だよ。死んでこいって彼らを地獄へ叩き落すのに、僕が先に折れてられないじゃないか。これはもう意地の話だよ」

「根性論は美しくないよ。……でも、まあ、いじわるを言い過ぎたよ。悪かった」

「謝ってほしいわけじゃないんだ。聞いてくれ」

「ロマニ。なあ、ドクター・ロマン。私はね、美しいものに目がないんだ」

「は? あ、ああ、まあ、知ってるけど」

「さっきのは悪い私だ。天才だからね、そういう無機的な理性っていうのがどうしても横切るし、口にだって出しちゃうのさ。でもね、美しいものが好きという有機的な私だってもちろんいるんだ。私はね、私たちはね、ロマニ。今、もっとも輝かしい星を特等席で見ようとしてるんだ」

 モニターの光だけじゃない。

 彼の瞳に、強い光が宿っていた。静謐に燃える、彼方の星々。その輝き。

 レオナルド・ダ・ヴィンチは藤丸立香に期待してはいない。

 今の彼はなるほど、レオナルドの言った通り、何も持ち合わせていない少年でしかない。

 そしてそれは、おそらく彼自身が一番わかっていることだろう。

「彼は今、ただの人間としてではなく、覚悟を抱いて一歩を踏み出そうとしている! 何も持たない自分のまま、それでも死刑囚ではなく、過酷な道を歩き出そうとしている! 破れかぶれでもなく、自暴自棄でもない、それがどれほど輝かしいことか、わかるかロマニ! いいや、わかるとも。君はわかる。わかるはずだ」

「……ああ」

 そうだったのか、という嘆息。

 ロマニは深く息を吐く。

 そういうことだったのか、と。

「知っているかい、ロマニ。破滅に向かう足音には二種類ある」

「……ああ、うん。知ってるよ。ふたつ、あるんだ」

 先ほどの興奮した口調から一転、レオナルドは穏やかな声で語りかける。

「諦念、絶望、恐怖、発狂……死神の足音」指を一つ立ち上げ、レオナルドは続けて二本目も立ち上げて見せた。「怖いもの知らずじゃないのさ。絶望だってしてるかもしれない。それでもなお、その先を望む者の歩み――人はそれを勇気と呼ぶんだ」

「君は、本当に……」

 人の心の機微、というにはあまりに乱暴な気がしないでもない。

 ロマニは少し赤くなった顔と、恥ずかし気に歪められた眉根で抗議を投げかける。

 この星を開拓した智の英雄は、誰にも期待しない。だからこそ、夢見るのだろう。

 輝かしい星を背負う者――勇気の歩みを続ける者を。

 万能の天才と呼ばれた彼が、たぶん、おそらく、唯一作り出せなかったもの。

 なれなかった者。

「ありがとう。元気が出たよ」

「そいつは重畳。さあ、今日はもう寝たまえよ」

「……レオナルド。いい夢を」

「ありがとう。おやすみ、ロマニ」

 キャスターの正体は見えないままだけど。

 それでも彼が前へ進むのなら、それでいい。

 それも含めてすべて、彼の進む道になるだろう。

 ドクター・ロマンは本日の営業を終了する。本当に久しぶりに、ベッドで横になって夢を見る。誰もが笑うことのできる明日を。燃やし尽くされる世界に、希望を。

 

 

 

     §

 

 

 

 心が二つに裂かれてしまったようだった。

 言葉を綴るたび、詩を紡ぐたび、その一つ一つに〝あなた〟がいる。

 もう〝あなた〟はいないのに。

 

 

 それでも皆は詩を望んだ。

 奇跡の詩だと皆が笑った。

 幸福の詩だと皆が笑った。

 あいの詩だと皆が笑った。

 きずなの詩だと皆が笑った。

 

 

 すべて――すべて、私と〝あなた〟のものなのに。

 

 

 謳いたくなかった。

 唄った。けど、謳いたくなかったのだ。

 でも唄う。もう、謳いたくないのに。

 また唄う。謳いたくない。

 

 

 皆が私の詩を聴くたびに、皆は本当にうれしそうに笑う。

 ああ、ああ……。

 やめて。

 

 

 私のこころから、奪わないで。

 私の思い出を、そんなうれしそうな笑顔で塗り潰さないで。

 私のこころも思い出も、私と〝あなた〟のものなのに。

 

 

〝あなた〟とのきずながあれば、みんながいれば、大丈夫だと思っていたけど。

 ああ、ああ、ああ……。

 

 

 ねえ、〝あなた〟。

 

 

 逢いたいよ。

 とんとん、とんとん。

 

 

 さびしいよ。

 とんとん、とんとん。

 

 

 

 とんとん、とんとん。

 

 

 

 

 とん。

 

 

 

 

 ああ、〝あなた〟。

 こころから、あいしています。

 

 

 

 




とーんとんっ♪(CV:加隈亜衣)
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