だいぶ本編へ近づきました。
本編の執筆はまだですががんばります。
ふと思えば、すでに6話で本体より更新してる事実・・・
彼との生活が始まり半年以上が過ぎました。
季節はすでに冬となり、もうすぐ年末というところでそれはおきました。
今日はクリスマス・イブです。
巷ではカップルがあふれるこの季節ですが、私には関係ありません。
社交パーティーが過密スケジュールで入っており、息のつく暇も無く挨拶回りでその日は過ぎ去るのです。
いつもなら。
私はその日、パーティーで遅くなるということもあり、彼に2日の暇を与えることにしました。
ただでさえ忙しい社交界のクリスマス、割り切ったとはいえ好きでもない異性を連れ回したくないと、彼に休暇を与えたのでした。
彼は特に気にした風も無く、
「かしこまりました、お嬢様。お慈悲に従い、暇をいただきます。」
と、一礼しただけでした。
そして彼は、私がパーティーに出る前に屋敷から姿を消しました。
この時、私は彼が女遊びにでも行っていると思っていました。
後の私から言わせれば、それは多いな間違いだと指摘したことでしょう。
毎年行われる社交クリスマスパーティーですが内容は挨拶回りや談笑、ダンスなどが内容になります。
当主となればこの機会に、いろいろ
ただ、今年はなぜか申し込みがありません。
こちらに近づこうとしてはいるのですが、なぜか数メートル前で顔を青くして引き返していきます。
私としてはありがたいのでそのままにしているのですが、原因が不明なのでちょっと怖いです。
宴もたけなわとなった頃、最も会いたくない人が現れました。
月村安二郎、私の叔父にして幼い頃から私達姉妹を付けねらう人。
幼い頃からお姉ちゃんが気をつけなさいと注意してきた人でした。
「久しぶりです、すずか嬢。今宵お目汚しする無礼をお許しください。」
「クッ何か用ですか叔父上。あなたは拘置所にいたはずですが?」
「ははは、お恥ずかしい。本当なればこの場には相応しくない身なれど、いささか老婆心を働かせましてね。
あなたのヒーローを本日は身近に置くことをお勧めします。
どうも、きな臭い連中が無粋な舞踏を催すようですからな。」
「それはどういうことでしょう。私にヒーローなんていませんよ。」
私は動揺を隠しながら言葉をつむぐ。
「ふむ、やはり警戒されてますね。
小学校2年生のあれは私の差し金でした。
その後、私は捕縛され後悔の念を友に改心したのですよ。
あなたのヒーローと貴方の義兄の手によってね。」
「それを信じろと?」
「それは問題ではありません。問題は私が確保していた資材が拘留中に行方不明となり、
今になって暴走したやからが使用しているということです。
私の不手際と罵られようと言い訳はできませんが、拘留中でしたので手が打てなかったのです。
ご当主にはかなり前に連絡しておりますので、おそらく手を打って頂いてると思いますが十分ご注意ください。
それでは私はこれで、遅くなりましたがメリークリスマス。聖夜の奇跡が起こらん事を。」
叔父はそういい残し会場を去っていきました。
私は呆然としながらそれを見送っています。
叔父が残したヒーローに再会できるかもしれない希望を思いながら・・・
パーティーが終わり、私は月村邸へ帰宅しました。
彼は暇を出したので本日はこの館にいるかどうかすらわかりません。
ですが襲撃される可能性があるので、戦闘の
一息入れてそろそろ就寝となった時、それは起こりました。
「お嬢様!自動迎撃システムが突破されました!!」
「えっ、そんな!」
「動態反応50がこちらに接近しています。迎撃の許可を!」
「わかりました。ファリンさんお願いします。」
本来ではありえないことです。
この月村邸はかなりの防犯、迎撃システムを備えています。
現在の最重要拠点は此処、私の部屋までのシステムは特に厳重となっています。
ファリンさんは私の言葉を聴くと走りさり、最終防衛ラインである中庭へと陣取り迎撃体制を整えた様でした。
(なぜいまになって!私には月村家を動かす価値なんて無いのに・・・)
遠くで響いていた戦闘音がどんどん近づいてきます。
そしてついにファリンさんが吹き飛ばされて私の前へ転がってきました。
彼女はメイド服をボロボロの状態で各種兵装を破壊されています。
右手と左足の損傷が甚大で動くのがやっとといった状態です。
そして、目の前に現れたのはファリンさんと年齢的には変わりなさそうな女性達でした。
ですがみな同じ顔をしており、それが彼女らが
「貴方がすずか嬢ですね?
わが主の命によりその命、頂きます。」
隊長格と思われる刺客が紡ぎます。
その言葉を聴いていた背後の
ファリンさんが何とかしようと左腕の内臓ハンドガンを撃ちますが、全て防がれて時間稼ぎにもなっていません。
(お姉ちゃん、ヒーローさん助けて!!)
刺客の刃が私目掛けて迫ってきて目を閉じた瞬間です。
ボグォッ!!
キンッ!キンッ!
刺さるはずの衝撃がこないため、目を開けるとそこには、あの時と変わらず赤い布で覆い隠された姿にピエロの仮面を被り、両手に握る小剣で攻撃を防いだ姿のヒーローがいました・・・・
「おいおい、俺のほうのプレゼントは多かったけど、一般人にはこのプレゼントは酷過ぎるだろ。
返品するからで直して来い!」
「何を言っているのです?彼の者は人間ではなく「やめて!!」吸血鬼ですよ?
化け物をかばう方がおかしいのです。」
私は絶望しました。
私が想っているヒーローはあくまで人です。
人の生き血をすする私なんかを守ってはくれないでしょう。
私は何より、ヒーローから敵扱いされるのを恐れていました。
おびえる私を他所に事態は進みます。
「ふむ、それは血液嗜好症と何か違いが有るのかね?
たとえば吸われればお仲間になるとか?」
私はあらん限りの声で答えます。
「私達、夜の一族は人から直接吸うことはありません!
もし吸ったとしても吸血鬼になることはありえません!」
「なら別に問題ないな。どう考えても『血液嗜好症』と変わらないじゃ無いか。
言葉が通じるんだし話し合いも意志の疎通も可能なら問題ないさ。」
「戯言を!かの夜の一族は人間よりはるかに優れた能力を有しているのだぞ!
そんなやつらがわれわれに牙をむいたらどうなるかわかっているのか!!」
「なにいってんだ、地球上でもっとも勢力を築いた種族は人間だし、俺らのほうがはるかに化け物だ。
いかに肉体的スペックが高くても、それだけでは今の世の中問題にならないさ、なにせ人は群れて狩る。
昔から自分より身体的に優れた相手を倒しして生きてきたんだ、いまさら少数を恐れる道理は無い。
もっとも、その肉体的スペックを上回る人間なんて世の中たくさんいるしな。」
私は暖かな気持ちになりました。
(彼は私を認めてくれる。しかも私を私として!)
そうして彼は彼女らと対峙しました。
そして戦闘が再開されました。
「そこの女を連れて下がれ!まぁ応援を呼んだし何とかなるだろ!」
そう彼は叫ぶと、両脇の敵を吹き飛ばし敵陣へ突っ込みました。
私は彼に言われた通り、ファリンさんを自分の近くまで引きずって後退しました。
彼もそれを確認し、こちらに刺客が来ないように牽制しつつ防御に徹しているようでしたが、徐々に押され始めています。
もともと数が多い上、連携してくる敵にこちらは足手まといが2人もついている状態です。
いかに彼が強かろうと一気に殲滅することができない以上、私達を守りながら戦うしかありません。
何とかしようとファリンさんを見ますが、動かしていい状態ではありませんし武装がほぼ破壊されています。
今は唯一残った左腕内蔵のハンドガンで、近寄ってくる敵を牽制するので手一杯です。
それも残弾数心もとなくなっています。
そして彼はじりじりと後退して来ており、相手の包囲が完成しつつあります。
「よく戦いましたね。でもそろそろ終わりにしましょうか。」
「何言ってんだ。まだまだこっちは余裕だぜ?」
「減らず口を・・・
まあ、良いでしょう。
化け物ともども死になさい!」
「残念だがタイムリミットだ!」
その時です。
敵の背後から斬撃音が響きました。
ザシュッ
「やぁ、こんばんわ。うちのかきいれ時に困ったことをしてくれるねぇ。
しかも、息子の義妹兼娘の友人にちょっかい出すとは、まったくもっていただけないな。」
「そうよねぇ。やっとケーキ捌き切ってこれからゆっくりタイムだったのに・・・
まぁ、これから食べるケーキのカロリー消費分になってもらうわ。」
そこに居たのは士郎さんと美由紀さんでした。
二人とも両手に小太刀を構え剣呑な雰囲気です。
「すいませんね。急にお呼び立てしてしまって。
想定していたよりちょっと数が多いのと、足止めまでされちゃいまして。」
「なに、娘の友達の一大事だ。
呼んでくれなければ後でSHI・GO・KIだったよ。
恭也と共ににね。」
「それはいいわね。
その時は私も交ぜて貰おうかしら?」
「すいません!勘弁してください!!
取り合えずこいつら片付けてしまいしましょう。
急げばクリスマスパーティーに間に合うでしょう?」
「それもそうだね。
では、美由希、油断するなよ。
小太刀二刀御神真刀流 高町士郎、推して参る!!」
「わかってるよ、父さんは心配性だね。
同じく小太刀二刀御神真刀流 高町美由紀いざ参る!!」
そして戦場へ微笑みの悪鬼が二人参戦した。
そこからは一方的な破壊でした。
彼が私の前で敵の攻撃を全て防ぎ、士郎さんたちが敵を破壊していきます。
「ハッハッハッ、君はさらに腕を磨いた様だね。次の修行が楽しみだ!」
と、言いつつ敵を切り伏せています。
「まったくお父さんは~
でも、やっと本気で打ち合える位にはなったよね。
次の合宿にはぜひ参加してもらうよ?」
美由紀さんも朗らかに喋っていますが、敵を切り裂いています。
おかしいな、自動人形ってかなり強いはずなんだけど・・・
この人たちいとも容易く倒しているけど、
「そうだな。どうだい?君さえよければ美由希と結婚し「お父さん言っちゃだめ!」ヒッ!!」
ナニイッテルノカナ?
カレハワタシノヒーローダヨ?
カレヲワタシカラウバウヒトハO・HA・NA・SHIダヨ?
「いや、なんでもない。取り合えず片付けようか。」(すごい威圧だ、あのまま喋っていたら死んでた。)
「そうだね。」(まったく。うちの男連中はすぐに地雷を踏んじゃうんだから)
彼は黙々と敵の攻撃を防いでいます。
ただ、心なしか最初の頃より動きが鈍っています。
よく見ると仮面の間から汗が滴っているのが確認できました。
そして最後の一体になった時、それは起こりました。
「クッ、我々がこうも簡単に討ち取られようとは・・・
しかし、これで我らの勝利だ!」
「すずかは俺に任せて士郎さん、美由紀さん逃げて!」
「くっ!死ぬんじゃないぞ!」
そして彼女はその場で自爆しました。
ドガァァァァンッ!!!
私の目の前には彼が居ます。
壁際いた私を庇うべく、彼は両手を壁に突き立て私の前に立っていました。
「クッ!大丈夫だったか・・・
すずか。」パキィ
「えぇ、私は大丈夫だよ。でも貴方が!!」キシィ
「心配するな。俺はお前のヒーローなんだろう?
死にはせんさ・・・」
「そんな!ひどい傷よ手当て(パリン)しな・・い・・・と?」
カツーン
彼がつけていた仮面が爆発の衝撃で割れ落ち、その仮面の下あった顔は・・・
「そん・・な・・・、だい・ど・うじ・・・くん?」
「しまった、ばれ・・た・・・か・・・・グハァ」
そうして彼が血をにじませながら倒れこんでゆくのを私は呆然と見ていた。
彼は倒れこむ時、その手で私を突き放そうとしたのか手を伸ばし、顔に触れた手から血が滴って私の口に入った。
その味は紛れも無く、あのときに覚えた私のヒーローの味だった・・・
クリスマス・イブにプレゼントされたものは、
理不尽な襲撃、
恩人との再会、
そして、信じられない真実と懐かしい血の味でした。
昔の悪役ご登場です。
安二郎さん、やらなきゃよかったと後悔が友達になるほどO・SHI・O・KIされた模様です。
もともとそこまでの悪党ではなかったので、今では
ついに大道寺くんの正体割れです。
次回は大道寺君の裏の経歴がさらされ、すずかさんが覚醒する予定です。
誤字修正しました。