恋愛ものなんて私には無理でしたw
襲撃を撃退した後、私は士郎さんたちに連れられて高町家に移動しました。
ファリンさんが大破してしまったのと、大道寺君が倒れてしまったので安全を考えて、士郎さんが招いてくれました。
私は呆然としたままついていっただけなのですが、美由希さんがお姉ちゃんに連絡をしてくれたらしく、数日中にはこちらに戻ってくると教えてくれました。
そして意識を失った彼ですが、今は高町家の一室で寝かされています。
あの後、士郎さんが彼の傷を見たところ命に別状が無いとのことで、一旦高町家で様子見となりました。
私はこの時彼の看病をしていましたが、ヒーローの正体を知り頭がパニックなっていました。
小学校の頃嫌っていた男の子が私のヒーローだったのですから当たり前です。
でも頭の冷静な部分では肯定しています。
ただ、感情は納得がいかないのです。
小学校の一年生から四年生までの彼の行いはヒーローとは反対でしたし、今年再会してからは執事としての顔しか見ていません。
それに、彼は戦闘なんかできる人種ではないはずです。
でも実際は戦闘をプロのレベルでこなし、私を襲撃者から命がけで守ってくれました。
しばらく考え込んでいると、士郎さんが部屋へ入ってきました。
「すずかちゃん、そろそろ休んだほうがよいよ。
彼のことなら大丈夫だ。
このくらいのことで死ぬようなことは無い。」
「士郎さん、士郎さんは彼のこと知っているのですか?」
「んっ?まあ、戦友だしそれなりのことは知ってるつもりだよ。」
「それを教えていただけませんか!?」
「今日はもう遅い、恭也と忍さんがこちらについて話そうじゃないか。
おそらく話が長くなるだろうし、混乱している頭では話についてこれないだろう。
恭也達は明日の夕方にはこちらに着くとさっき連絡があった。」
「わかりました。お休みなさい、士郎さん。」
「あぁ、ゆっくり眠ったほうがよい。お休み。」
私はあてがわれた部屋へ行き眠りに落ちました。
翌日になっても彼は眠ったままでした。
夕方になりお姉ちゃん達が高町家につき、私はお姉ちゃんと士郎さんに彼のことについて聞きました。
「お姉ちゃん、士郎さん。聞きたい事があります。」
「なに?すずか。」
「彼の事だね。う~ん、こう言っては何だが、本人不在の場で聞く事ではないよ?」
「それをわかった上で聞くのでしょう?」
「はい。彼に聞いた所ではぐらかされて終わりそうなので、彼のことを戦友と言った士郎さんと雇用主であるお姉ちゃんに聞きます。」
「ふむ。今回の当事者でもあるし、僕の知っている範囲でなら答えよう。」
「わかったわ。私も教えてあげる。」
「彼に一年生から四年生までの間、つきまとわれていたの知ってるよね?
何で私のところに来させたの?」
「ノエルの
「面接って内容はどういう物なの?」
「確か、護衛能力を見るとかで各種状況でのテストだったかしら。因みに襲撃者は恭也とノエルよ。」
「でも恭也さんノエルさんじゃ簡単すぎなんじゃ・・・」
「分かって無いわね。御神流の剣士を敵に回して対象を守り切る事がどんなに困難なことか。
士郎さん、美由希さん、恭也は間違いなく世界のトップレベルの戦闘者よ。
もちろん
そのレベルの戦闘者からの護衛任務は難易度は、どこぞの大統領の護衛をはるかに上回る難易度よ。
彼はその条件のテストを見事クリアしたわ。」
私は絶句しました。
お姉ちゃんの言葉が正しいのであれば、彼は世界の頂点に近い実力があると言うことになります。
「じゃあ、彼のことをどうして信頼できるのよ!!」
「それについては僕が答えよう。」
私は士郎さんのほうに顔を向け
「わかりました。お願いします。」
「じゃあ、順を追って話そうか。 すずかちゃんは彼のことをどこまで知ってる?
「そうですね。小学校の同級生で当時の私達に嫁宣言しながら近づいてくる人。
その後の経歴は小学校四年生で姿を見なくなってからは、香港へ事故のリハビリに行っていたとか。
なぜかそこから執事として貴族へ仕えて、中学校に途中から入学した。
そして、彼は小学校二年生のときに誘拐犯から私達を助けてくれた人といったところです。」
士郎さんは苦笑しながらこちらを見ています。
「ふむ。なんとまぁ、あながち間違っていない経歴になっているねぇ。」
「間違っていない、ですか?」
「ああ、間違ってはいないさ。ただ、肝心な情報をあえて言っていないといったところか。」
「それはどういうことですか?」
「そうだねぇ。
まあ僕が彼とあったのは翠屋へ彼が来店したのが初めてかな。
確かなのはが6歳ぐらいのときさ。
彼は来店してなのはを見つけると『よう、俺の嫁!』と言っていたんだ。」
「私の最初の時と変わりませんね。」
「そうだね。
案の定、恭也が暴走して道場に連れて行き修練となったわけだけど、彼は剣術をやっていたみたいなんだ。
あとで恭也に話を聞くと、初太刀を見事に避けた上、恭也へ反撃までしたそうだ。
でも、それだけですぐにボコボコにしたそうだけど。」
「ハァ、恭也さんは昔からそんな感じなのですか。」
「そうだね。忍さんに娘でもできたら、その娘はとても彼氏を作るのが大変そうだよ。
話を戻すけど、そこまでされたらお店にこなくなるのが普通なんだが、彼は違った。
週に1回ぐらいの頻度でお店に来ては、恭也に修練されて帰っていくんだ。
で、私は彼のことを不思議に思い観察していたんだが、どうも彼は普段の修行の成果を確かめるため、わざとなのはにちょっかいを出しているみたいだったね。」
「わざとですか。
しかしそんなことをしなくても普通にお願いすれば良いでしょうに・・・」
士郎さんは笑いながら、
「おそらくだけど、なのは達にちょっかい出すのも何らかの事情があったんじゃないかな?
彼はなのは達と高槻君だったかな?が見ていない場所では私達を含め普通に接していたよ。」
「そんな!」
「まぁ、それに気づいたのも君達が小学校二年生の頃だけどね。」
「まさか!
誘拐事件のときですか?!」
「えぇそうよ。
士郎さん誘拐事件のことに関しては私に話させてください。」
お姉ちゃんが士郎さんに言いました。
「そうだね。家の事情もあるでしょうし、ここはお願いします。」
「ありがとうございます。
小学校二年生のときの誘拐事件、あれには安次郎叔父さんが手を引いていたことは聞いているわね?」
「えぇ、クリスマスパーティーの時に聞きました。」
「その安次郎叔父さんのことを突き止めれたのは彼のおかげなのよ。
あの事件の翌日、彼から連絡が入ったの。
どうもあの後から黒幕へたどり着くためにいろいろ調べていたみたいでね。
叔父の居場所を特定したのはいいんだけど、当時の彼では戦力が違いすぎるみたいで、応援を頼まれたのよ。
そして私の恭也とバックアップを士郎さんにお願いして乗り込んだわけ。」
「不謹慎だが、あれはなかなか心躍る戦いだったな。」
「で、見事に叔父へO・HA・NA・SHIできたのはいいんだけど、彼の正体を士郎さんが見破っちゃったのよ。」
「うん、彼はまだ剣技で嘘がつけるほどの段階ではなかったしね。」
「そしてまぁ、すずか救出のお礼をしようと思ったんだけど、一つの約束でいいと言われ押し切られたのね。」
「その約束の内容は何だったの?」
「『俺が助けた事はすずか達に教えないこと』よ。
彼曰く、『今一番嫌ってる奴に助けられるより、白馬の王子様の方がいいだろう』と言っていたわ。
私も前日のすずかの様子を見ていたから彼の話に乗ったの。」
フウン、ワタシニハナイショダッタンダ。
スゴクシンパイダッタノニ。
コレハダメダヨネ。
シッテレバオトモダチニナレタカモシレナイノニ。
フフフフフフ、ジックリオハナシスルヒツヨウガアリマスネ。
「ちょっと、すずか!
何かもれてるから抑えなさい!」
「やぁ、これは大道寺君も大変だ。はっはっはっ。」
「まぁ聞こえてないかもしれないけど、すずか。
彼は間違いなく私達の恩人よ。
当時のことは何か事情があったのだろうし、O・HA・NA・SHIはほどほどにしておきなさいよ?」
「ウン、ワカッテルヨオネエチャン。」
「ほんとにわかってるのかしら・・・」
私は彼にどう問い詰めようか思案していたのですが話は続きます。
「これで小学校時代のことを不問にしているのかわかったと思うけど、続きを聞くかい?
此処から先は彼の武勇伝みたいになっちゃうけど・・・」
「お願いします。小学校のことがあったとしても、士郎さんがそこまで信頼するなんて何があったのか気になります。」
「わかった。掻い摘んで説明しようか。
時間は飛ぶけど小学校三年生の時からかな、彼が変わりだしたのは。
なのはが魔導師になった年なんだけど、彼もその事件に関わっていたみたいなんだ。
事件の詳細は知っていると思うから省くけど、その年の12月に彼は大怪我を負ったらしい。
そしてそれが原因で生死の境を3ヶ月ほど彷徨っていたんだ。」
「えっ、私、そんなの聞いてないよ・・・」
「まぁ、なのはも僕達に話してくれなかったからね。
それも仕方ないさ。
彼は嫌われていたから、わざわざ嫌なやつの話なんてしないだろうし。
それを知ったのも、彼が訪ねてきたことで初めて聞いたんだ。」
「どうして彼が士郎さんを訪ねてきたんですか?」
「彼は手合わせをしにたずねてきたんだ。
半年の入院生活で身体能力が落ちたのか剣技が鈍っていたから、その度合いを確かめたかったんだろう。
実際に鈍っていたのを彼が確認したところで、うちの道場で修練するか聞いたんだけど断られたんだ。
理由を聞くと『なのはさんに遭遇する可能性があるから勘弁』といっていたね。
おそらく、この時点で彼の事情が変わったんだろう。」
「でも事情が変わったからといっていきなり会わなくなるなんて信じられません。
それまであんなに言い寄ってきていたのに・・・」
「その辺はなんともわからないね。話を戻そうか。
その後、彼は私にお願いしてきたんだ。
香港に居る不破美沙斗さんを紹介してほしいと。」
「だれですか、不破美沙斗って?」
「僕の親戚なんだけど香港である組織を追っているんだ。
彼曰く、彼女なら修行相手として問題ないと言っていたんだけど・・・
危険だし学校があるからやめなさいと説得したんだけどね。
一ヵ月後に不破美沙斗から連絡があって、彼が転がり込んで来たそうだ。」
「フウン、ベツノオンナノトコロニイッテイタンダ」
「すずかちゃん、怖いから抑えてくれないかな?
彼はそこでリハビリという名の戦闘を行っていたんだよ。
僕達高町家とちょっと因縁のある組織だったから、僕達も参戦してね。
その時からの戦友なんだよ、彼は。」
「そうだったんですか・・・
ちなみに、その組織はどうなったのですか?」
「彼と不破美沙斗と僕達で完膚なきまでに潰したよ。フフフフフフフ、アレハタノシカッタァ。
おっと、ごめんごめん。
まぁそのときに彼にもいろいろコネができたらしく、なぜか貴族の執事見習いとして欧州に行ってしまったんだけどね。」
「なるほど、だから士郎さんは私の護衛に彼を推薦するべく会社を紹介したのですね?」
「そうだね。信頼できる実力者で日本に居たのは彼だけだったからね。」
「そういえば、彼のアルバイト先ってどこなんですか?」
「警備会社『アイギス』の特殊要人護衛課だよ。表向きには存在しない課なんだけどね。」
「そうよねぇ。私も士郎さんと恭也に聞いて初めて知ったぐらいだし。」
「へぇ~、そうなんだ。」
「僕が知っていることは以上、かな?
あとは本人にでも聞くとよいよ。
丁度、そこの扉で聞き耳立てているしね。」
ガタッ
「えっ!」
そういうと、扉の前にいきなり士郎さんが現れて扉を開きました。
(えぇ!いつの間に移動したの?!)
扉が開かれると大道寺君が倒れこんできました。
「ふむ、体は大丈夫そうだね。
まったく。いつもながらあきれるね、君の能力には。」
「いやぁ、士郎さんも大人気ないですよね、扉開けるためだけに『神速』使うとか。」
「じゃないと君が逃げるから仕方ないよ。
それに聞き耳立ててないで入ってくれば良いだろうに。」
「タイミング的にすごいプレッシャーがかかったので入れませんでした。」
「あの時か。まぁ、がんばりなさい。
僕はこれで席をはずので後はゆっくり話し合うといい。」
そう言って、士郎さんは部屋から出て行きました。
扉の前にはいつもと違い、執事ではない彼が立っていました。
彼がお姉ちゃんへ顔を向け
「忍さん、依頼された仕事は完了で良いですかね?
無事とはいえませんが敵を殲滅できましたし。」
「そうねぇ。ファリンが大破したのは問題だけど、最大目標である安次郎叔父さんの負の遺産は無くなったし完了で良いわ。」
「ご利用ありがとうございました。それでは・・・」
彼が立ち去ろうとした瞬間に私は声をかけました。
「ドコニイクノカシラ?」
そうすると彼は急に汗をかき出しました。
「いえ、ほら、契約も完了したし、家に帰ろうかなぁ、なんて?」
「アラアラ、ワタシノO・HA・NA・SHIハマダオワッテイナイノダケド?
トリアエズコチラニキテクダサルカシラ?」
「待て!月村さん「スズカダヨ?」わかったから!すずかの言ったお話はニュアンスがなんか違う気がする!
なんかハイライトが消えた目でこちらを見ないで!!」
「大道寺君?私もちょっとお話があるから入ってきてくれるかしら?」
彼は汗をかきながらじりじりと後退していきます。
そして身を翻そうとした瞬間、彼は恭也さんに捕縛されていました。
「砕牙、諦めろ。
おとなしく言うこと聞いておかないと、後で男の尊厳とか矜持とかが粉々にされるぞ。」
「はなせ!見逃してくれ恭也さん!!
すずかのお話はO・HA・NA・SHIなんだ!!
素直に従ってもアッされるだけなんだから、見逃してくれ!!」
「馬鹿を言うな。此処で逃すと俺がアッされるじゃないか。
ここは俺のためにも捕まってくれ。」
そして恭也さんは彼を鋼糸で彼を捕縛し、部屋へと入ってきました。
「さて、もう逃げられないからおとなしくしておくんだぞ。」
そういって彼を私の目の前で正座させてから恭也さんは部屋から出て行きました。
「砕牙君、私に何か言うことは無いかしら?」
「すんませんした!今まで黙っていたのは良かれと思ってそうしたんです!!」
彼はそのままDO・GE・ZAに移行しています。
士郎さんの予測では、彼は事情があって小学校時代は奇行を行っていたようですが、一体何があったのでしょう?
「大道寺君。小学校の私達に言い寄ってきたのはなぜなのかな?」
「はっ!すずか様!!
あれは小学生特有の好きな子をいじめたいであります!」
「でも、いくら小学生だったとはいえハーレムはどうなのかな?
ワタシイガイニモテヲダスツモリナノカナ?
テヲダシチャッテタノカナ?」
「申し訳ありません!
当時は若気の至りということでどうかご容赦を!!
今はすずか様一筋ですのでって、えっ?!
ちょっ忍さん?!」
彼は急にアワアワしながら絶望したような顔をしています。
なぜかお姉ちゃんはいい良い笑顔でスケッチブックに何か書いています。
私はさらに彼へと質問することにしました。
「小学校二年生の時の誘拐事件で助けてくれたのは砕牙君だよね?
何で教えてくれなかったの?」
「いや、あの頃はさすがに嫌われてるのに気づき始めたから・・・
それに、白馬の王子様やれるほどすかれてなかったしな。」
「私、心配したんだよ?
私のせいで銃に撃たれたのに、そのまま居なくなっちゃうし・・・
お姉ちゃんに聞いても知らないっていわれるし、もう会えないかもって思っていたんだよ!
ワタシノヒーローノコトワタシダケガシラナカッタナンテ・・・
フフフフフドウシタラワカッテクレルカナ?」
やっと再会できた想い人だもの、此処で逃がすわけには行きません。
暗く深い思考を重ねていると、彼は何かを見て独り言を言っています。
「ちょっ忍さん!
それは、いや、ぜんぜん問題ないですけど・・・
わかりましたよ!
腹をくくれば良いんでしょ!」
彼が急に立ち上がりこちらを見ています。
「すずか!聞いてくれ!
小学校時代のことはすまなかった!!
すずかがあんまりにも可愛すぎたの暴走してしまったんだ。
それを反省して俺は、君に相応しくなるため世界を巡ってきたんだ。
だから、今回の襲撃でも君を守れた!
そして今こそ言おう、俺はすずかが好きだあああああああああああああぁぁ!」
彼は私に告白をしてくれました、なぜか涙を流しながらでしたけど。
私はついにヒーローをこの手にすることができたのです。
小さい頃から憧れ、その想いはいつしか初恋となりそして今、彼からの告白という最高の贈り物をもらったのでした。
私がもらった遅いクリスマスプレゼントは
彼の真実
私の初恋
そして、最高の恋人でした。
かなり強引な展開で申し訳ない。
文才うんぬんよりも設定が難しいですね。
大道寺君は別にすずかのことを嫌ってないですよ、むしろ大好きです。
最後は忍さんに嵌められて高町家の中心で叫ぶことになりましたが、その後はラブラブです。
いろいろと途中が抜けているように思えますが、それはあくまですずかさんが知らないか認識してないかですのでご想像にお任せします。
次回は本体でもあった銭湯回です。
誤字修正しました。