「うーん・・・。そろそろ、限界・・・か・・・な・・・?」
からすさんにもらった、青い花たちを水切りしながら、呟いた。
「もう、それだけ日が経っちゃったんだ・・・」
寂しくなって、うきゅっと胸が痛む。
離れがたくて、涙の止まらない私をなだめすかして、でもやっぱりとても名残惜しそうに、からすさんが帰って行ったあの日から、花がくたっとなる位に日々は過ぎていた。
首をもたげ始めた花たちを、何とか活けてベッドサイドの枕元に置く。
気分転換も兼ねて、オトモ広場に行くことにした。
「そういえば、ここは黄色い花が多いわね・・・」
ふと、気づいて呟いていた。
オトモ広場に向かう道を、一人のんびり歩く。
今日は、ムァがスズナのところのマツリに誘われて、ニャンターとしてクエストに行っているので、一人なのだ。
ずぼっ!
「!!!」
手首に空色のリボンを結んだ、アイルーの手が現れた。
いつものように持っているカンバンは、からすさんからのメッセージだった。
『藍メソ!元気にしているかい?』
「・・・・・・!!」
一気に頬が熱くなる。
つい、ふにゃふにゃしながら、返事を書く。
「・・・『ん。今日は、ムァがニャンターに行ってる』・・・よろしくぅ~」
「はいニャ!」
ざかざかざか・・・すぽんっ!
嬉しい気持ちと、やっぱり照れくさくて仕方ない気持ちで、カンバンに書き込むためにしゃがんだ、そのままに顔を隠すように丸くなる。
「うふふ・・・」
ずぼっ!
「!!!」
びくっ!
咄嗟に肩が跳ねて、尻もちをついてしまった。
今度は、手首に黄緑のリボン。
らいんアイルーだ。
『今、そっちに向かっているから! 明日には着けるはずだよ』
・・・!!?!!?
「えっ!?・・・え!?ええ!?」
「・・・―――――――」
「えぇっ!うそっ!・・・えっ!やだ!?どうしよう・・・!?」
「落ち着いて、お返事をどうぞニャ」
「えぇ!?そんな・・・。そんなこと言われても・・・」
「早くしないと、お届けできなくなっちゃうかもしれないですよ?・・・ニャ」
「あ!そうか・・・」
乗り継ぎの合間に送ってくれているかもしれないもんね。
「・・・うーん」
らいんアイルーに促され、返事を・・・考える。
「えっと・・・、うんと・・・」
ペン型ナイフを何度も握り直しながら、悩む。
「うーん・・・。『!!! 〜〜〜♪♪♪ 気をつけてね!』・・・ちょっと、素っ気ないかなぁ・・・」
「・・・」
「うん。でも恥ずかしいから、これで!」
「了解ニャ!」
「お願いねー」
ざかざかざか・・・すぽんっ!
・・・・・・・そうか!一応準備しなきゃ!!
すぐに立ち上がり、踵を返して家に戻る。
サボり気味の片付けとお掃除を軽くした。
次は・・・、着るものを考える。
高地にあるベルナ村は、温泉地のユクモや入り江になった海の近いドンドルマよりも、大分涼しい。
今回もムーファの毛糸製のニットを何枚か選び出し、ベッドに広げて迷う。
濃いグリーンのひざ丈ニットワンピースにしようかな・・・。
うーん・・・。生成りのロングカーディガンを上に羽織れば丁度いい気がする。
海竜(つまりラギアクルス)の蒼玉のかけらで作ってもらったピアスを着けた。
こういう宝玉のかけらが装備の加工の際に出て、アクセサリーにできるのも、ハンターの特権かもしれない。
すらりとして、とても(私から見ると特に)背の高いからすさん。
背の低い私は、つい高めのヒールを選びたくなる。
青好きが高じて、明るめの紺に染めて作ってもらった、踝までのハイヒールショートブーツを履いてみる。
・・・。
どうなんだろう?これ・・・。
今日は、見てくれるスズナやシュナさんも、ムァもいないから、ヘンじゃないか、心配・・・。
・・・・・・サブオトモのフェルミを呼んでおけば良かった・・・。
オトモ広場まで、相談しに行こうかな・・・。
そう思い立ち、ついそのまま家を出ると、女性の大きな声が飛んできた。
「あらぁ!いつも以上にかわいいじゃない!」
しっかり者の村人が、走り寄って来てくれる。
「!!」
びっくりした上に、恥ずかしくなった・・・。
「もー!びっくりしたー!!恥ずかしいなぁ~」
つられて大きめの声が出た。
にっこにっこしながら女性は言う。
「この前の、背の高い素敵な彼氏が来るの?」
あああ・・・・・・・。
もう既に、村中に知られてしまっているのだった・・・。
恥ずかしい・・・。
つい、右手が口元を押さえるように勝手に動いてしまっていた。
照れくさいので、質問には答えずに聞く。
「この恰好おかしくない?私、そういうセンス全然なくて・・・」
言ってから気付く。
これじゃ、肯定しているようなものだと・・・。
ああぁ・・・。
「大丈夫よぉ!メソさんなら、何着てもかわいいから!」
「いや!!そうじゃなくて・・・。本気で心配なのよぉ!!」
「ふふ。そりゃ、そうよねぇ~。そういうことって気になるわよね、女って」
そう言って、女性は改めて上から下まで見てくれる。
「うん。大丈夫!似合ってるわよ」
ほぉっ・・・。
「ありがとう!」
結局、彼女と話しながら雑貨屋さんに買い物に行って、雑貨屋さんと女3人、ついつい話に花が咲き、祝福という名の冷やかしのような励ましを散々受けて帰って来た。
恥ずかしい・・・。
ありがたいけど、恥ずかしい・・・。
着るものも決まったし・・・と、お茶を飲みながらひと息ついて、嬉しさと恥ずかしさで改めてふにゃっとなる・・・。
どうしよ――――――!
冷静に考えれば、今更、どうしようも何もないのだけれど・・・。
堪らずベッドに突っ伏した。