どこかの世界で織のハッピーエンド   作:トンマのマント

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遅くなりましたが3話目となります。
なかなかお話が進まず申し訳ありません。
こんなものでもお気に入りをしていただける方々がいてとてもうれしく思っております。
初めてお気に入りにしていただけたときは胸が熱くなりました。
これからも頑張って続けたいと思っておりますので、どうかお見守りをお願いします。


3話

適性検査から三日が経った。

今オレは両儀の屋敷で客人の来訪を待っている。

相手はIS学園の職員。

内容はオレのIS学園入学について、とのことだがはっきり言って面倒だ。

普通の高校ならばまだしも、国が営む学校など自由がないことは目に見えている。

たった二人しかいない貴重な男性操縦者、などと世間は謳っているがそんなことは知ったことではない。

自分の世界さえ確かでないのに、周り(世界)に押し付けられたものなんかに従うつもりはない。

そう考えていると時間になり客人がやってくる。

客人は二人。

一人は検査の会場で出会った女だった。

 

「はじめまして両儀織さん。私はIS学園で教師を務めている山田真耶と申します。こちらは同じくIS学園で教師としてお勤めの織斑千冬です。本日はよろしくお願いしますね」

 

眼鏡をかけた山田という女が笑いながら自己紹介をした。

挨拶をした山田には悪いが、オレは織斑に向かって言葉をかける。

 

「驚いたよ。アンタIS学園の教師だったんだな。あの場にいたからてっきりどこかの企業の職員かと思ったぜ」

「口の利き方には気を付けろ、と言いたいところですが今は置いておくことにしましょう。山田の言う通り私はIS学園の教師を務めています」

 

思っていたのとは違う反応が返ってきたことに、再度驚きを覚える。

 

「この前と違って随分と丁寧じゃないか。なにかあったのか?」

「それは簡単な話だ。貴方のことを調べた結果我々よりも年上だということがわかったので言葉遣いを正しているまでです。まあその見た目からは信じられないことだが。なにより今はこちらが要請をしようとしている立場。ならば言葉遣いが丁寧になるのは当然のことでしょう」

「堅苦しいのは嫌いなんだ。崩してくれたほうがこっちとしても助かる。それに年上と言っても長いこと眠っていただけで実感なんてない」

 

オレと織斑のやり取りを山田は隣で不安げに見つめている。

織斑は大きく一度息を吐くと、こちらに目を向け口を開いた。

 

「わかった。そこまで言うのなら以前と同じようにさせてもらう。そういうことなので山田先生も必要以上に固くならないようお願いします」

「はっ、ハイ!」

 

突然話を振られ驚いた様子の山田。

 

「それにしても驚いちゃいました。織斑先生に対してああも堂々と言ってのけるなんて。私にはできないことです」

 

山田がにこやかに語りかけてくる。

 

「ただ堅苦しいのが嫌いなだけだ。それで、要請っていうのは?さっさと話してくれよ」

 

そうですね、と呟くと一つ咳ばらいを入れ居住まいを正す山田。

 

「両儀さん、我々IS学園はあなたにIS学園に入学してもらいたいと考えています」

「断る。そんなものには興味がない」

 

オレの即答に身を固める二人。

 

「で、ですが、あなたは世界でたった二人しかいない男性操縦者です。あなた方のデータを取ることで他の男性もISに乗れるようになるかもしれません。これは日本だけでなく、世界中が望んでいることなんですよ?」

「他の男や日本とか世界なんてどうでもいい。それにデータを取るって、オレをモルモットかなにかと思っているんじゃないのかアンタたちは」

「そんなことはありません!我々はあなたがIS学園でISに触れる機会を通してそのデータを取らせてもらおうと考えているにすぎません!決して非人道的な行為でデータを採取しようなどとは考えていません!」

 

オレの言葉に山田が強く反応する。

 

その山田をなだめるように織斑がその手を肩に置く。

「両儀、お前が関心を持とうが持つまいが、お前が二人目の男性操縦者であるという事実は変わらず、また既にお前は世界中に知られてしまっている。たとえどれだけお前が無関心を決め込もうとも、お前は世界中の科学者にとって格好の研究対象として見られることになる。これは覆しようのない真実だ」

 

この三日間で嫌というほど電話が鳴り響き、そのどれもが科学者や研究者からだったためその事実は既にわかっている。

 

「はっきり言ってしまうがお前がIS学園以外に所属しようものなら、そういった連中はこぞってお前の確保に身を乗り出すだろう。だがIS学園には手を出すことができない。何せ世界のどの機関であっても不干渉であることが取り決められているのだからな」

「たとえアンタらのところに行きそういった連中からの干渉がなくなったとしても、オレのデータが取られることに変わりはないんだろ?」

「その通りだが決して非人道的なものではない。ただ学園生活の中で触れた時間のデータのみを採取すれば問題ないだろう。それ以上は人道に反するとでも言っておけばいい」

 

織斑は平然とトンデモないことを言い放つ。

 

「いいのかよ、国の学校に勤める教師がそんなこと言って」

 

思わずそう聞き返してしまう。

 

「お前たちをいくら研究したところで他の人間が乗れるようになるとは限らん。ならばそんなものはほどほどにして平穏な学生生活を送らせてやったほうがいいだろう?」

 

織斑の言っていることは理解できるが、引っかかることがある。

まるで本心が見えない。

そこで山田がにこやかに口を開く。

 

「そうですね。弟さんにも普通の子たちとは少し違いますが、楽しい学生生活を送ってほしいですしね!」

「弟?」

「ご存知ありませんか?織斑先生の弟さんは世界初のIS操縦者でIS学園への入学が決まっているんです。そうですよね、織斑先生」

 

山田の問いかけに対して織斑はバツの悪そうな顔をしながら短く応える。

どうにも何かを隠そうと振舞っているが、隠しきれない照れが感じ取れる。

その様子を見て引っかかっていたものの正体がわかった。

それがわかると笑いが込み上げてきた。

 

「何が可笑しい?両儀」

 

織斑がこちらを睨みつけ凄みを持たせた声で問いかけてくる。

だがその姿にオレは全く凄みを感じない。

 

「あまりにもアンタの考えが可愛くってな。つい笑っちまったんだ」

「可愛いとはどういうことだ?」

「おまえ、弟のこと大好きだろ?」

 

オレの指摘にそれまでの威圧的な表情は一変する。

 

「な、何を言い出す!今の会話からどうしてそんなものに行きつくんだ!」

「だってそうだろ?アンタのさっきの言葉にはどうにも引っかかるところがあった。でも弟の話を持ち出された途端、纏っている空気が変わった。それにさっきのおまえの説明はオレに無理はさせないようなものだったが、実際は弟に無理をさせないための説明だったんだろ?弟にさせないようなことを他の男にやらせるわけにはいかないし、その逆も然りだからな」

 

推理はどうやら正解らしい。

織斑は頬が紅潮し肩を震わせている。

 

「言われてみればその通りですね。織斑先生どうなんですか?」

「ああ、どうなんだ?織斑先生?」

 

山田も茶目っ気を出したのかからかうように織斑の肩をつつく。

すると肩の震えが止まり、勢いよく顔を上げる織斑。

そしてカッと目を見開くと声を張り上げた。

 

「その通りだ!弟が好きで何が悪い!?世界でたった一人の身内なんだ!溺愛しても仕方ないだろう!そんな弟が一人だけで年頃の女たちしかいない環境に放り込まれることになったんだぞ!?気が気でいられる筈がない!そんな状況を打破できるかもしれないもう一人の男が現れたんだ!なら全力で入学してもらうよう努力するに決まっているじゃないか!!」

 

思わぬ感情の発露に呆気にとられるオレたちをよそに、湯飲みに入ったお茶を一気に飲み干す織斑。

 

「これで満足か?どうせ見抜かれたんだ。開き直って話すと一夏をIS学園という女しかいない環境に放り込むのはいくら何でもあいつの教育によくない。そこに頭を悩ませていたところで現れたのがおまえだ、両儀。私は一夏の為ならなんでもするつもりだ。そしておまえの存在もあいつにとって必要なもののならば、私は何としてもおまえ入学させる。いや、入学してもらうよう全力を尽くす。何と言われようがあいつの将来の為に私はやり続ける」

 

異論はあるか?と言いたげな表情でオレを見る織斑。

その清々しいまでの身勝手さに呆れを通り越して感心を覚える。

 

「無論、一夏を中心に物事を考えてはいるがおまえを蔑ろにするわけではない。おまえの安全や自由も保証する。一夏を支える一人になって欲しいという考えは事実だが、それ以外にやってもらいたいこと

もある」

 

先ほどまでの開き直った姿は鳴りを潜め、真剣な眼差しをこちらに向ける。

 

「それは?」

「この世界の現状を打ち砕いてほしい。ISが創られ女性にしか扱えないとわかってから生まれ始めた女尊男卑の風潮。少し前まで眠っていたおまえにはまだあまりわからないだろうが、最近は見るに堪えないものになり始めている。それを正そうにも男の立場を回復させる決定的な要因がなかったのでどうしようもなかったが、ここにきておまえや一夏という存在が現れた」

「オレたちが現れたことで、女の絶対的な優位性が薄れ、オレたちが活躍することで今まで存在していた男を軽視する風潮を壊す。そんなところか?」

 

織斑はオレの問いに力強く頷いた。

 

「でもいいのかよ?女のアンタたちからすれば今の女性優位の世界のほうが何かと生きやすいだろうに。それにオレは世界の風潮なんてどうでもいいしな」

「見るに堪えないと言っただろう。同じ女としてあれほどに滑稽なものを見せられるのは腹立たしい。ただ女だからというだけで尊大な態度をとる奴らの伸びきった鼻をへし折ってやれねばならない。そのためにはおまえたちの力が必要なんだ」

 

どうか頼むと織斑は頭を下げた。

その姿には一切の偽りを感じない。

これもまたこの女が常日頃から溜め続けた感情の発露なのだろう。

 

「いいよ。アンタの心意気は大したもんだ。アンタのもとでなら、何か面白いものが見られるかもしれない。それにあそこまで笑わせてもらったのは久しぶりだからな」

 

ただ面白いと判断した。

理屈で説明されたところですべて関係ないと言い切ってしまえば済む話だ。

だが面白いと、感情が動いてしまえばそれはもう変えることができない。

ならば面白いと思ってしまった時点でこの女の勝ちは決まっていたのだ。

 

「ただ、こっちもある程度は好き勝手させてもらうぜ。起きたばかりで足元もおぼつかないんだ。それさえ約束してくれればある程度のことは従うよ」

「いいだろう」

 

こうしてオレのIS学園入学が決まった。

 




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