もう少し早く書けたらと思いながらも、何とか書いておりますのでどうかご容赦くだされば幸いです。
感想をいただけて本当にうれしい限りです。
どうかこれからもよろしくお願いします。
それではどうかお楽しみいただければ幸いです。
織斑千冬、山田真耶との会合からしばらく、両儀式はIS学園にいた。
簡素な入学式を終え、新入生はそれぞれが所属するクラスへと足を運んだ。
そして現在、教壇には山田真耶が立ち自己紹介をしている。
若く穏やかな彼女の雰囲気は生徒たちの緊張をほぐし、親しみやすく同時にどこか頼りなさげな人物であると思わせた。
そして出席番号順に生徒の自己紹介が始まる。
生徒たちは壇上に立ち各々思い思いに自己紹介をしていく。
そして順番はある人物へとやってくる。
壇上に立つのは男。
その男はある一人を除くクラスメイト全員の興味と好奇心の宿った視線に耐えることができず体を強張らせている。
「えー......えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」
そう言ってまた口を閉ざす一夏。
助けを求めるような視線を黒髪の少女、篠ノ之箒へと向けるがそれに対する反応はなく孤立無援の状態が維持される。
その反応に何か決心をしたのか、一度深呼吸をして口を開いた。
「以上です」
そうはっきりと言い切った。
その言葉に唖然とする大勢と椅子から崩れ落ちる少数。
その反応を目にし、一夏はうろたえクラスメイトの反応をうかがうような声をあげる。
そんな一夏にスタスタと近寄り出席簿を振りかざす人物がいた。
織斑千冬の出席簿による打撃は小気味いい音とともに、一夏の頭部へ確かなダメージを与えた。
そこから織斑姉弟の漫才のようなやり取りが行われ、千冬の独裁者的な自己紹介も行われた。
その後も自己紹介は進み、最後の人物へと順番が回る。
「これで最後だな。両儀」
名を呼ばれ席を離れ壇上に立つ織。
たった二人しかいない男の片割れ、しかもとびきりの美形であるということで一層興味津々のクラスメイトをよそに、その様子はどこか気だるげだった。
「両儀織。趣味は蒐集。特技は運動。よろしく」
あまりにも当たり障りのなく手短なあいさつにこれまた唖然とするクラスメイトたち。
そんな彼らをよそに手をひらひらと振り、壇上を去ろうとする織。
だがそこに待ったをかけた千冬。
「織斑同様、貴様ももう少しまともなあいさつができないのか?」
「初対面の奴らばかりだぜ?これ以上語ることなんて何がある?」
シュッという短い音。
千冬の手に収まる出席簿がいつの間にか振るわれ、また織はその一撃を難なくかわしていた。
小さく舌打ちをすると体制を戻し織へと言葉をかける千冬。
「口の利き方には気を付けろ、両儀。今この場では私は教師で貴様は生徒だ。その関係に見合った言葉遣いを心掛けるように」
「わかりましたよ、織斑先生。これでいいか?」
「チッ。まあいい。もうSHRが終わるさっさと席に戻れ」
了解と短く返答し踵を返す織。
二人のやり取りを他の者はただ茫然と見ているだけだった。
一時間目は一名を除きつつがなく終了し休み時間へと突入した。
廊下には人だかりができ、その人だかりは皆一様に一夏、もしくは式へと視線を向けている。
そんな視線にどうすればよいかわからず、ただ居心地の悪さを感じる一夏。
だがそんな彼を救う人物が現れた。
箒は一夏に話しかけると廊下へと出ていった。
教室に残ったのは織一人。
否応なしにクラスメイト、人だかり双方の視線をその身に集めることとなった。
だがその視線を無視し続け、ただ気だるげに空を眺める織。
すると二時間目の開始を告げるチャイムが鳴り響き、突き刺さる視線は次第に消えていった。
小さく息を吐く織。
「暇な奴ら」
彼が呟いたとき、扉の前では織斑姉弟がまたもや漫才を繰り広げていた。
二時間目の途中、一夏が勉強についていけていないことが発覚した。
必読の参考書を古い電話帳と間違えて捨てたという話を堂々と語る一夏に、出席簿の一撃がお見舞いされたのはそれを見る全員が予想していたことだった。
山田が他にわからない生徒がいるか尋ねたとき、織は手を挙げなかった。
覚えようと思って参考書を読んだ彼はそれを一読するだけで覚え終えた。
閑話休題。
望んでこの場にいるわけではない、という一夏の心情をズバリ言い当てた千冬は言葉を続ける。
「望む望まざるにかかわらず、人は集団の中で生きなくてはならない。それすら放棄するなら、まず人であることを辞めることだな」
辛辣な言葉を言い放つ千冬。
その言葉に一夏だけでなく、他の生徒も皆一様に口を閉ざす。
だがただ一人、両儀式だけはクツクツと笑っていた。
「何が可笑しい、両儀」
「いや、面白いことを言うもんだと思ってな。おっと、思ったんですよ」
「どういうことだ?」
問い返す千冬の声には明らかな怒気が含まれている。
「普通に生きるためにはルールを守って、集団の中で生きていかなくちゃいけない。わかりきったことさ。じゃあルールを守ることができない、集団の中では生きられない普通じゃない人間はどうやって生きればいいんだろうな」
そう語る織の姿は、自問自答しているかのようだった。
それに対して内容が理解できない千冬。
「?意味が分からんが、そんな人間がいるとすればそいつは間違いなく淘汰され生きる場を失うだろう。授業を続けるぞ、山田先生お願いします」
クラスに漂う空気を千冬は一新させる。
結局一夏は放課後真耶との補修が行われることで話はまとまり授業へと戻っていった。
授業が終わり休み時間に入る。
一夏と織は先ほど同様ギャラリーの視線にさらされる。
だが先ほどと違うのは一夏が行動を起こしたことだ。
一夏は織の座る席へと近づき彼に声をかけた。
「さっきは挨拶できなかったから、今させてもらうぜ。俺は織斑一夏だ。二人しかいない男同士、仲良くしようぜ!織って呼んでいいか?俺のことも一夏でいいからさ!」
屈託のない笑顔で織へと話しかける一夏。
よろしく、という言葉とともに右手を差し出す。
差し出された右手を握り返しながら織は口を開く。
「ああ。よろしく」
「でもお前凄いな!千冬姉にあれだけ堂々と発言できる奴なんていないぞ!出席簿の一撃も避けちまうしさ!何か武道をやってたのか?」
「剣術と合気をたしなむ程度に」
「剣術か!俺も子どもの頃やってたんだぜ!」
たった一人しかいない同性にすがるかのように、それともただ明るいだけなのか、妙に興奮気味に話す一夏とは対照的にどこまでも淡々と返答する織。
そんな二人に近づき声をかける人物がまた一人。
「ちょっと、よろしくて?」
「へ?」
声のした方へ顔を向ける二人。
そこにはきれいな金髪の女子がいた。
「えっと、君だれ?」
「まあ!開口一番出てくる言葉がそんなものだなんて、品性を疑いますわ!しかもこのイギリスの代表候補生にして、入試主席のセシリア・オルコットを知らないですって!」
なんと嘆かわしい事か、という態度で肩をすくめるセシリア。
その様子を二人はただ見つめている。
「本来であればあなた方のような男がエリートであるこのわたくしに話しかけられることなど、一生かけてもないことなのです。その事実をわかっていれば、もう少し態度を変えるべきではなくって?」
一夏のうんざりするような態度にも気づかず、自身のことを鼻高々にセシリアは語る。
「君がすごいのはわかったけど、一ついいかな?」
なおも言葉を続けようとするセシリアを遮り、一夏はセシリアに問いを投げかける。
「代表候補生ってなんだ?」
その問いを聞き目を丸くするセシリア。
「あ、あなた、本気でおっしゃっていますの!?」
「おう。知らん」
堂々と答える一夏にセシリアは驚愕を隠せないでいる。
「まったく...これだからこのような極東の島国は。ここまで教養のレベルが低いなんて、テレビがないのかしら」
「それで、代表候補生って?」
「国家代表IS操縦者の、その候補生として選出されるエリートのことですわ。普通知らずとも単語から想像したらわかるものでしょうに、考えることすらできないのでしょうか」
「そう言われればそうだけど、さっきから随分とキツい物言いだな」
ムッとした様子で一夏はセシリアを咎める。
だがセシリアは一夏の糾弾に対して平然と言葉を返す。
「当然です。唯一男でISを操縦できると聞いていましたから、少しくらいの知性をお持ちかと思えば、その実恥じるべきほどの無知とは期待外れもいいとこですわ」
「勝手に期待を持って失望して、その八つ当たりみたいなものでキツく当たられても困るだが」
その後も延々と会話を繰り広げる一夏とセシリア。
そんなやかましいやり取りを目の前で見せつけられる織の心中は決していいものではなかった。
いい加減聞き流すことにも限界が生じ始めたころ、三時間目の開始を告げるチャイムが鳴り響いた。
一夏に対してなんとも情けない言葉を残しセシリアが去っていく。
一夏もやれやれといった風に自分の席へと戻る。
休み時間中絶えまなく喧騒にさらされた織は大きく息を吐き、また空を見上げた。
授業に入る前に、千冬はクラス代表の話を持ち出した。
クラスを代表するものとして、様々な面倒ごとをこなさなければならないと千冬は語る。
その候補に一夏の名が挙がる。
女子たちは面白半分、物珍しさ半分で一夏を代表に据えようとしている。
「ちょっと待ってくれよ!なんで俺の名前だけ挙がって、織の名前は誰も言わないんだよ!?」
一夏の言うようにクラスの女子たちは誰一人として式の名前を挙げようとはしない。
このままでは自分が代表になるという危機感から、一夏はその事実を指摘するが誰一人としてそれに応えるものはいない。
「畜生ッ!だったら俺は織を推薦するぞ!これで俺だけじゃないから簡単には決まらないぞ!」
何とかこの状況を打破できたと安堵する一夏とは対照的に、面倒ごとに巻き込まれた織は小さく舌打ちをする。
その舌打ちを聞いた周囲の女子はビクッと肩を揺らし、恐る恐る織の様子をうかがった。
だが織は相変わらず空を見上げているためその表情はうかがえない。
女子たちがなぜ一夏の名だけを挙げ、決して織の名を挙げなかったのか。
その理由は二人の醸し出す雰囲気を短いながらも掴んでいたからであった。
明るく親しみやすい印象を与える一夏に対し、近寄りがたく危うさを感じさせる織。
この二人ではどちらを囃し立て、どちらに触れないでおくべきかを判断するのは容易だった。
だからこそ一夏が織の名を出したとき、大多数の女子が余計なことをと考えた。
しかしそんな空気はいざ知らず、何とかなったと胸をなでおろす一夏と肩をわなわなと震わせる女子が一名。
「待ってください!納得がいきませんわ!」
セシリアである。
「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
勢いよく立ち上がり、口早にまくしたてるセシリア。
その後も延々と男を卑下し自身の優秀さを声高々に語り続けるセシリア。
それに対し我慢の限界とばかりに言い返す一夏。
いつしか口論は決闘という流れになっていった。
「ハンデはどのくらいつける?」
「あら、早速お願いかしら?」
「いや、俺がどのくらいハンデつけたらいいのかなーと」
一夏の発言に対し、女子たちはいっせいに笑い出した。
それも当然、彼女たちには今や男は女の下に位置するという明確な認識が出来上がっていたためだ。
「...じゃあハンデはいい」
その後も嘲笑を交えた声が一夏に掛けられ、ハンデの提案も逆に受けるが、それらすべてを一夏は意地で突っぱねた。
「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑とオルコット、それからそこで他人事のように聞き流している馬鹿者、お前だ両儀。三人ともそれぞれ準備をしておくように」
まとめに入った千冬の言葉に織は待ったをかける。
「どうしてオレまでそいつらに付き合わなくちゃいけない。オレが駆り出されるのはクラス代表を決めることだけだ。馬鹿二人が勝手に言い争って始めようとしてるいざこざなんかに巻き込まれるのは御免だね」
「馬鹿とは何ですか!?」
自身への侮辱に身を乗り出すセシリアを無視し、千冬の答えを待つ織。
「確かにこの決闘はそこの馬鹿二人のしょうもない口喧嘩が発端だ。だがクラス代表の枠一人に対して候補者は三人。どのみち何かしらの方法で一人を選ばなくてはいけない。ならばISに関することはISで決めた方がいい。それにこの決闘はこちらとしてもお前たちのデータが取れることもあり好都合だ。そういう訳でお前も必ず参加すること。これは決定だ。以上、授業を始めるぞ」
それ以上の発言を打ち切り千冬は授業を開始した。
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それではまた次回。