朔月さん家のお母さん   作:ちみっコぐらし335号@ひよこママ尊い

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 マテリアル配布開始から結構時間経ったし、もうそろそろひよこママにハートを射抜かれたファンが素晴らしいひよこちゃんマッマを提供してくれてるやろ!
→ググる
→拙作「呼んだ?」
→何 で や ね ん



 まさかの続きだよ!

 あらすじとタグも少し付け足しておいたよ!

 今回はギャグ成分マシマシだよ!(当社比)

 その分落差が割と激しいよ! というか何故にシリアス成分が入ってきたの…………。(困惑)

 ま、すぐに退場するから問題ないよね()。



陽代子さんと美遊ちゃん

 帰宅した娘の様子がおかしい。

 陽代子(ひよこ)は整った顔立ちに目一杯(しわ)を寄せ、(いぶか)しんだ。

 

 ここは冬木の朔月(さかつき)家。

 旧家に相応しい自然に囲まれた立派な日本家屋である。

 

 実に四百年以上にも渡り続いてきた一族の当主、朔月陽代子には一人娘がいる。

 名を、朔月美遊(みゆ)

 陽代子によく似た、目に入れても痛くない愛娘だ。

 

 そんな娘が学校から帰ってきたので出迎えてみれば、どうにもおかしいのである。

 …………先日も何やら面白おかしな事態が勃発し、陽代子もその渦中にいたがここでは割愛する。

 

 普段であれば、美遊は玄関をくぐると「かあ様、ただいま」と花も恥じらうような笑顔でとてとてと駆け寄り、陽代子も返礼としてお帰りなさいのハグを行う。

 

 しかし、今日は違ったのだ。

 

 まず、「ただいま」がなかった。

 ガラガラと戸の開く音だけが虚しく響いてきたのである。

 

 次に、笑顔もなかった。

 利発的で愛くるしいその顔から喜怒哀楽が抜け落ちてしまったかのように、ボーッとした表情を浮かべていた。

 

 そして、陽代子に駆け寄ってくることもなかった。

 彷徨える幽鬼が如く、ふらりと奥の美遊自身の部屋に消えていってしまった。

 

 刹那、陽代子の身体に戦慄が走る。

 

 ――――――絶対におかしいッ!!

 

 陽代子はすぐさま美遊の部屋へと赴いた。

 その際、心中は荒れ狂っているにも関わらず、姿勢は決して乱さない。

 着物を身に纏う者としては当然のことだが、陽代子の場合、体勢に対し驚くべき速度で移動するのである。

 

 まるで日本人形の足の裏にタイヤが付いていて、ジェットエンジンか何かで加速しているようだ、とは美遊のクラスメイトの談。

 朔月家で少々羽目を外しすぎた結果、その光景をまざまざと見せつけられた一部の少女たちはそれを『お仕置きを齎すもの』として畏怖し、こう呼んだ。

 

 ――――――ジェットドール走法、と。

 

 陽代子は滑るようにして美遊の部屋の前にたどり着いた。

 だが、すぐに入口を開け放つようなことはしない。

 未だ幼くとも、娘も一人の人間だ。

 プライバシーの保護は考慮するべきだろう。

 それに不作法でもある。

 

 陽代子は一つ息を整えると、室内にいる美遊に声をかけた。

 

「美遊、どうかしたの?」

 

「…………かあ様」

 

 今にも消え入りそうな、か細い返事があった。

 

「入ってもいいかしら?」

 

「………………………………うん」

 

 了承は得た。

 急ぎ戸を開き入室する。

 美遊は部屋の隅でうずくまり、白いふわもこクッションを抱えていた。

 一度(おもて)を上げ、陽代子の方に視線をやったが、ふっとすぐに俯いてしまう。

 

 やはり、学校で何かがあったとしか考えられない。

 

 しかし、一体何が?

 親の贔屓目抜きで、美遊は大変良くできた子供である。

 見目麗しく、文武両道。

 友達付き合いも、最近は問題があるとは聞かない。

 

 まさか、嫉妬が原因によるイジメか――――!?

 

 近頃の小学生は恐ろしい、と陽代子が勝手に解釈し(おのの)いていると、美遊がクッションを放り投げ、こちらに駆け寄ってきた。

 陽代子の着物をぎゅっと握り締め、小刻みに震える美遊の手。

 

「ねぇ、かあ様…………」

 

 上目遣いの美遊の瞳は何よりも尊い宝石のようで――――――。

 

「どうして女の子同士は結婚できないの…………?」

 

 陽代子の思考はそこで一度フリーズした。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ギギギ、とまるで錆び付いたブリキ人形のような動作で、陽代子は再起動した。

 時間にすれば一分にも満たない。

 しかし陽代子にとっては、何もない雪原に放り出されたに等しい、実に空虚な時間であった。

 

 その間も、美遊は変わらず陽代子の顔を見上げていた。

 

 陽代子は思う。

 ああ、やはりうちの娘はかわいい…………ではなくて。

 

「えーっと…………美遊?」

 

「何、かあ様?」

 

「どうして…………そんな疑問が出てきたのかな…………?」

 

 まずは原因究明を行わなくては。

 何とはなしに、陽代子の脳裏に白い少女が浮かんだが、早計だ。

 そう、まだ結論付けるには早い。

 

「どうして、って? そんなのイリヤとずっと一緒にいたいからだけど――――」

 

 ああ、何ということでしょう。

 

 陽代子は思わず手で目頭を覆った。

 どうしてこうなった。

 

 …………いや、陽代子にも本当はわかっているのだ。

 美遊には少し、常識の足りていないところがある。

 そしてそれには、家の事情が深く関わっているのだ、とも。

 

 朔月家には代々行われてきた『しきたり』があった。

 数えで七つを越えるまで、女児は外に出すことなく、母親のみの手で育てなければならない、という決まり。

 端から見れば恐らく奇怪に思えるだろう。お家独自のルール。

 

 だが、陽代子は知っていた。

 それが何故必要なのかも含めて、全て。

 陽代子もそうして、陽代子の母の手によって育てられてきたのだから。

 

 これはきっと、朔月家の試練なのだ。

 今まで苦難らしい苦難のなかった陽代子に向けられた、初めてかもしれない苦境なのだ。

 彼女はそう考えることにした。

 

「あのね美遊、結婚というのは――――」

 

「結婚とは民法によって定められた行為、夫婦関係の締結。婚姻、入籍とも言う。他、法律上では」

 

「うん、そうね! その通りね!」

 

 被せるように同意する。

 そこまでわかっているのに何故あんな疑問が出てきてしまうのか。

 陽代子は膝から崩れ落ちた。

 

「男女でなければ子孫を残せないから、男女がずっと一緒にいられるような決まりを作るのはわかる。でも結婚しなくても生殖行動はできるし、報道もよくされている。なら結婚を男女のみに縛る意図がよくわからない」

 

「不倫はいけないことだから!」

 

 はしたなく大声を上げてしまったが、陽代子は悪くない。

 大体、不倫報道される政治家等が悪い。

 

 これは根が深い問題だ。

 陽代子は必死に解決策を模索する。

 

 朔月家独自の教育は間違っていない。

 もし幼い時から普通に外に出していたら、娘が息子になるか、女友達が男友達になっていたかもしれなかったのだ。

 そう、だから何も間違ってはいない。いなかったのだ。

 そう思わなければ、思考を放棄してしまいそうだった。

 

 きっと(美遊)は、女友達(イリヤちゃん)の方に運命(Fate)を感じてしまったのだ。

 それは多分、常識云々で縛れるような安い関係ではなかったのだ。

 

 せめて、せめてその子のお兄さん(士郎くん)だったならば。

 そう思わずにはいられなかったが、仕方ない。おそらく魅力が足りなかったのだろう。もしくは抱いた情の種類が違ったのか。

 

 何にせよ、考え方を変えさせるのは時間がかかる。常識も。

 

「――――――――いつか」

 

 美遊の声に、ハッと顔を上げる。

 

 崩れ落ちたままの陽代子と美遊の目線が合った。

 

「イリヤと、離れなくちゃいけなくなるかもしれない。でも、それは嫌なの。…………でも、でもっ! 特別な『繋がり』があればっ、きっと、そんなことにはならない、って…………」

 

 そのまま嗚咽(おえつ)を漏らす娘を陽代子は優しく抱き寄せた。

 

 美遊にとって、彼女(イリヤちゃん)は初めての友達――――――――というだけではない。

 

 初めて外に出た美遊が、初めて出会った少女。

 それは『外』の、『世界』の、そして『希望』の象徴。美遊の心の色彩の原点。

 ――――――それが彼女(イリヤちゃん)なのだ。

 

 何とかしてあげたい。

 ずっと一緒にいられるような、美遊が安心できるような『何か』。

 

「――――――あっ」

 

 不意に天啓が降りてきた。

 

 そうだ、着目点を変えよう。

 結果が同じであれば、何も結婚という手段に拘泥(こうでい)する必要はないはず――――!

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ミユーっ! おはよー!」

 

 朝の予鈴が鳴る少し前。

 

 イリヤが教室に入ると、既にイリヤの親友たる美遊は登校しており、静かに自分の席に着いていた。

 その表情はいつもと同じか、少し嬉しそうに見える。

 

 イリヤは安堵の息を吐いた。

 昨日は心ここに在らずといった様子で帰っていったので不安だったのだが、どうやら杞憂だったらしい。

 

 ――――――将来の夢の話、したくなかったのかな? 

 イリヤなりに原因を考えてみたものの、答えは出ない。

 

 しかし、下手に本人に質問して藪蛇(やぶへび)になるようなことは避けたいし、解決したみたいだから大丈夫だよね、とイリヤは早々に思考を切り上げ、自分の席に座った。

 イリヤの座席はちょうど美遊の座席の真正面にある。二人の距離は、近い。

 

「イリヤ」

 

「ん? なーに、ミユ?」

 

「こっちに来て」

 

「えっ、うん? 前に?」

 

 予鈴も間近に迫る中、すくっと立ち上がった美遊に手を引かれ、やってきたのは教卓の側。

 美遊の手元には何やら大きな布地の袋。

 

 美遊は袋の中に手を突っ込み、何やらゴソゴソしている。

 何かな、と見つめていると取り出されたのは食器のような物だった。

 

「これ持ってて」

 

「あ、うん」

 

 イリヤは受け取った物をしげしげと眺めた。

 見慣れない、赤くてツヤツヤした器。お茶碗に似ているが、それにしては軽いし、底がやけに浅い。むしろ平皿の方が近いだろうか。

 

 それにしても用途がわからない。

 

 その後、美遊は水筒ともう一つ赤い器を取り出した。器の方はイリヤとお揃いだ。

 

 教卓の上には今し方美遊が置いた水筒が鎮座している。

 

 有無を言わさぬ迫力を感じ取り、ここまで思わず従ってきたが、これから何をするのだろうか。

 

 イリヤが問いかけようとしたその時、学校全体にチャイムが鳴り響く。

 同時に扉が勢いよく開かれる音。

 

「グッモーニンエビバディー! 今日も元気にホームルーム始めるよーっ!」

 

 ハイテンションでやってきたのはこのクラスの担任教師、藤村大河。一部の子供たちからは「タイガー」と呼ばれ、親しまれている女性である。

 

 大河はニコニコと教室を見渡し、そして教卓の周辺で不自然に停止した。

 

「ん、ん~? イリヤちゃんと美遊ちゃん? そこでなーにしてるのかなぁ?」

 

 大河の視線の先にはイリヤと美遊、正確には二人が持っている『器』があった。

 先ほどまでクラスメイトたちはただぼんやりと二人の行動を見ていただけだったが、大河は違う。

 

 その器を持つ意味。水筒の中身は、まさか。

 

 突拍子のない想像を、いやいやと振り払う。

 まさか、まさかただの小学生(カタギ)がそんなこと知ってるわけ――――――。

 

「? イリヤと(さかずき)を交わそうとしてただけだけど?」

 

「どっひゃらうっぎゃぁぁあ!?」

 

「せっ、せんせーッ!?」

 

 大河は奇声を上げて盛大に転けた。

 

 見ていて心配になるほどの見事な転けっぷりであったが、そんなイリヤの叫び声を後目に、大河は即座に復活した。

 

「な、何でそんなことをっ!?」

 

「イリヤと姉妹(きょうだい)になるため」

 

 そんなの決まってるでしょ、何言ってるのこの人、と美遊の表情は言外に語っていた。

 

 盃を交わす。であるならば、その水筒の中身は確実に、酒。

 

「未成年者の飲酒は法律で禁止されてるの!」

 

「これは甘酒、それもアルコール成分が入っていないものを持ってきた」

 

 それなのに何でダメなの? と小首を傾げる美遊。

 

「ええい! ステイ、ステイぃぃーッ! いいから! それは! 小学生がやるもんじゃないわーッ!!」

 

 穂群原学園初等部(ほむしょー)の一教室で、虎の咆哮が(こだま)する。

 

 

 

 今日も今日とて、冬木市は平和だった。

 

 




 副題:さかつきみゆとさかずきをかわす。


 初期コンセプト:母と娘の絆、ほのぼの、甘える美遊と子煩悩ひよこちゃん

 そ の 結 果 が こ の オ チ で あ る 。

 マジでどうしてこうなってしまったのかもうさっぱりわかりません()。キャラが勝手に動いたとしか言いようがない。途中からタッツン見守ってる気持ちになってた。


【以下、解説的なサムシング】

>実に四百年以上にも渡り続いてきた一族の当主
 前話にもチラッと書かれていたが、朔月家は天正の時代から続く歴史ある旧家。まひろちゃん曰わく、「ノッブが焼けたか焼けないかくらいの頃から」。そう、わしじゃ!
 そして女系の旧家である(公式)とのことなので、ひよこママが当主をやっていてもおかしくないやろ! との謎理論が発動した。

>先日も何やら面白おかしな事態が勃発し、陽代子もその渦中にいた
 前話の最後とあとがきにて若干語られていたアレ。ドッタンバッタン大騒ぎして、士郎がめっちゃラブコメってたらしい。そしてそんな様を少し離れた場所から微笑みながら見学するひよこちゃん。尊くない?
 ちなみにこの一連の騒動に関しては、おそらく今後も詳しく書かれることはないと思われる。

>かあ様、ただいま
 原作にて美遊が幼少期に用いていた母親の呼び方、それが「かあ様」である。成長過程において親の呼称が変わる例は枚挙に暇がないが、拙作においてはそのまま成長したものと仮定している。
 どちらの台詞も原作にあったものだが、両方が揃って使われたことはない。この台詞に今回の話でやりたかった内容の全てが込められている――――――のだが、結果は見ての通り、このザマである。
 こんな時どんな顔すればいいのかわからない……。笑えばいいと思うよ? クハハ!!

>まるで日本人形の足の裏にタイヤが付いていて、ジェットエンジンか何かで加速しているようだ
 by.図工以外オール2。
(完全に余談ではあるが、筆者が幼少期に見た最も古い悪夢の内容にどことなく似ている。しかし、執筆中は全く気づかなかった。とはいえ、ひよこママに迫ってもらえるなら悪夢ではなくなりそうなものだが。何故って? そりゃひよこちゃんが尊いからさ!)

>ジェットドール走法
 当然捏造。主に被害を受けた(というかトラウマを植え付けられた)のは龍子。
 ちなみにこのあたりの下りは今回の話には不要な物であったが…………まあもしかしたらクラスメイトとのお話が出てくるかもしれない。出てこない可能性の方が現状では高めではあるが。

>白いふわもこクッション
 例のパジャマといい、こういう絵面も似合うと思いません?

>上目遣いの美遊の瞳
 原作と同じ色としている、現時点では赤くない。ひよこママも美遊と似たカラーリング(という捏造)。

>ああ、やはりうちの娘はかわいい
 もしかして:親バカ。でもそんなひよこママも尊い。
 このあたりに初期コンセプトの残り香が感じ取れなくもない。

>家の事情
 おおよそ原作通りの物。気になった人は映画を見よう! 漫画を買おう!(ステマ)

>不倫報道をされる政治家等が悪い
 特定の個人を貶める意図はございません。
 まあ大体政治家が報道されるネタって金か不倫か失言だよねという話。

>もし幼い時から普通に外に出していたら
 こうして誰得TSは人知れず回避されていたのであった…………。こんな素晴らしいヒロインTSさせて誰が喜ぶんだというね(TS万歳)。

>運命(Fate)
 容疑者は『この流れでこの言葉を出したのは正直すまんかった』などと発言しており、警察では(以下略)。

>特別な『繋がり』があれば
 タグで一目瞭然だが、うぉんちゅきすみーで桜なTrickにはならない。あくまでも二人は健全な関係(迫真)。

>美遊の心の色彩の原点
 拙作においてもイリヤと美遊は色々あったらしい。…………が、それらを書いてもひよこママの出番は少なかろう。そんな、やんごとなき事情により省略。

>不意に天啓が降りてきた
 ジャンヌは怒っていい。
 えっ、天草? 知らない子ですね。

>将来の夢の話
 会話の詳細内容はないが、何やら美遊の中で飛躍があったであろうことは想像に難くない。

>見慣れない、赤くてツヤツヤした器
 朔月家にあったものをひよこマッマが美遊に持たせた。多分それなりのお値段がする。

>グッモーニンエビバディー!
 別の世界線では英語教師をやっているぐらいなので、割と発音がいい。ただし、本人のキャラクターと相まって、大概ネタにしかされない。頑張れタイガー、負けるなタイガー。

>盃を交わす
 結婚の代替案としてこれが出てくるあたり、ひよこママもかなりズレている。でも本人たちは割と大真面目。そんな母と子、かわいくない? 尊くない?
 何だかんだひよこちゃんも美遊と同じような境遇なので、こういった側面もあるはず。尊い。
 …………これ書き始めた頃は、こんなギャグめいたオチになるだなんて想像もしてなかったです、マジで。

>谺する
 木霊すると同じ。何やら亡國で覚醒してカタルシスっちゃいそうな字面である。ちなみに、もう一種類漢字がある。
 ワイルドに吠えるぜ!
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