ベルの兄がチートで何が悪い!!   作:シグナルイエロー

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劇場版かぁ・・・肩すかし食らいそうで恐いなぁ・・・


11:登録×冒険

ロキ・ファミリアの拠点である『黄昏の館』はオラリオの北に建っている、そしてギルドの位置は北西、そのため最も早く行くには北のメインストリートと北西のメインストリートの間である第八区画を突っ切って行くのが近道になる。

 

「――――――ただし、遠征なんかで荷物が多い時は街の中心、バベルを経由してからギルドで換金を行うんだ」

 

「なーる、確かに大荷物を引いてこの狭い道を通るのは住民の迷惑だろうな」

 

雑談をしつつアスフィやヘルメス(アホ)から聞いたことの無い情報を頭の中で補完していく

 

大派閥だからこそのダンジョン豆知識を道中でフィンから聞くのはかなり楽しかった。

 

そんな風に色々と聞きつつ歩いていると北西のメインストリートに出た、しかもちょうど目の前がギルドだ

 

さすがはオラリオで長く生活しているだけはあるな、この街でまだ一ヶ月しか生活していない俺ではまだまだ道が未知でいっぱ・・・ゲフンゲフンいや、なんでもない

 

 

くだらないことを考えている間にも俺とフィンはどんどんギルドの中に入っていく

 

お上りさんよろしく、キョロキョロと辺りに目を配る

 

「カイト、こっちだ」

 

数ある受付の中でも目的の受付口でもあるのかそこに真っ直ぐに向かっていくフィンに大人しく付いていくと、赤髪のお姉さんが受付嬢の窓口に着いた

 

「やぁ、ローザ、ミッションの報告に来た、手続きを頼む」

 

「はいはいっと、相変わらず仕事が早くて助かるよ、そっちの子は?」

 

「うちの新人団員さ、この子の登録も一緒に頼むよ」

 

強気そうな受付嬢がこちらを見てくるので軽く頭を下げて挨拶とした

 

「・・・この前、団員を大勢補充したばかりのはずじゃなかったのかい」

 

「ロキの気まぐれって言えばわかってくれるかい?」

 

「はぁ、まーた神の気まぐれかい、苦労してるねあんたも」

 

「はは、君程じゃないさ」

 

「うっさい、ほらそっちの子はこの紙に必要事項を書いてちょうだい、その間にフィンは奥で部長に細かい報告をしてきな」

 

「はいはい、じゃあカイト、ちょっと行ってくるからその間に手続きをしといてくれ」

 

「了解だ、早く終わったらそこら辺で時間を潰しとく」

 

「そうしてくれ、じゃあローザ、カイトを少しの間頼むよ」

 

「わかったから、早く行きな」

 

シッシッと追い払うような仕草でローザと呼ばれた受付嬢がフィンを奥の部屋に送り込むが、そこには長年による見知った相手への気軽さを感じた

 

とりあえず、登録のための書類にざっと目を通してから自分の情報を書き込んでいく、フィンがいなくなった途端に会話が途切れて微妙な雰囲気なので空欄を埋めながらこちらを見ているローザさんに話しかけてみる

 

「フィ、・・・うちの団長とは付き合いが長いんですか?」

 

「・・・まぁね、私がここに就職してからすぐの付き合いになるからもう5年か6年の付き合いになるね」

 

「そりゃまた結構長い付き合いですねぇ」

 

「フフ、そうね、・・・こんなに長い付き合いはあいつらだけね、冒険者ってのはすぐにいなくなっちゃうけどずっといるのはあいつらくらいかな」

 

(そっか、受付嬢ってのは一番新人冒険者と顔を合わせる・・・必然的に死んでいった冒険者とも・・・)

 

少ししんみりしたが、その会話をきっかけにポンポンと言葉のキャッチボール、フィンやリヴェリアだけじゃなくガレスの昔の話も聞かせてくれた、以外な話として、ローザも人伝に聞いた話らしいが、あの3人はファミリア結成当初相当仲が悪く口喧嘩ばかりだったらしいとうことだ・・・信じられん、しかもフィンは今とは違いかなり生意気な性格だったとか・・・これは聞かなかったことにした方がいいな、いつもニコニコしている奴ほど切れたときの反動は怖いからな、あっそうだ、これ聞いといた方がいいか

 

「ここに書いた情報って後で変更は出来るんですか?」

 

「具体的には?」

 

「名前とか家族構成とか」

 

「無理じゃないよ、基本的に冒険者ってのは無数にいるからね、大雑把に言えば名前と所属ファミリアがわかっていれば問題ない、脛に傷を持った奴なんてめずらしくもないし」

 

「な~る・・・じゃあこれでいっかな」

 

名前を書き込む部分で家名だけを書かずに書類をローザさんに渡す

 

「・・・ふーん、じゃこれで受理するよ、おめでとうこれで正式にあんたはこの街の冒険者だ、後はフィンが戻ってくるまでそこ等辺で大人しくしてな・・・これから頑張りなよ」

 

最後に優しげな感じで叱咤されたので、へーい、と軽く返事をして広いロビーの中に数本立っている太い柱に背中を預けて目の前の人並みを視界に入れていく、バイトのときは忙しくて眺める暇なんてなかったけど、【凝】を使って見ると、見た目とまったく異なる冒険者の強さがわかって意外とおもしろい、ただやはりフィン達ほどのオーラを纏っている者はいなかった

 

それからボケッとしていると5分もしない内にフィンが奥から出てきた

 

「すまない、待たせちゃったかな?」

 

「いや、5分も待ってない」

 

「それじゃあ、これからダンジョンだ、準備は良いかい?」

 

「おっけー」

 

そんなわけでギルドを出る前に軽く装備の確認をしてから街の中央のバベルへ、そしてその下に広がるダンジョンへと向かった、バベルに入ると最初に巨大な螺旋階段そして東京ドームかよと勘違いする程の広いドーム状の空間に出た、そこから30人が手をつないで並んでも余裕がありそうなダンジョンへの本当の入り口が見えてきた

 

自分達以外に何人もの冒険者が出て行ったり今から入って行ったりしている

 

(おお~、なんかそれっぽい雰囲気あるなー)

 

地味に感動だ、向こうの世界では一生お目にかかれないような光景だからな

 

「カイト、今回僕は基本的に手を出すことはないから自分の判断で進んでみてくれ、幸い上層の浅い階層ならソロでもほとんど問題ないはずだ、まぁ、問題があったとしても僕がいるから最悪の事態は避けられると思って緊張しつつ適度にリラックスしてくれ」

 

「んな無茶な、何だよ緊張しつつリラックスって・・・」

 

「はは、まぁ、習うより慣れろってことだよ、じゃあ行って見よう!」

 

「・・・おー。」

 

 

そんなこんなでついに、というかようやくダンジョンに突入です。

 

 

 

 

 

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《side:フィン》

 

 

(困ったなぁ・・・)

 

現在、フィンは小走りで、といっても一般人からすれば短距離走における全速力に近い速度でカイトと共にダンジョンを走っていた

 

カイトと共にダンジョンに潜ったのはいいが目の前で起きていることに頭を悩ませる

 

「ほいほいっと、そりゃ!~♪」

 

曲がり角から急に現れたゴブリンをカイトはまるで見えていたかの様に回避し、即座に反撃、しかも巧みなフットワークでモンスターの死角から鋭利な篭手による抜き手で魔石を直接抉り出すという容赦のない、しかし無駄のない動きでしとめている

 

 

現在の位置は2階層、本来なら1階層が限界のはずの新人団員はまるで熟練のLv.1冒険者のような立ち振る舞いでダンジョンを突き進んでいた

 

(普通はもうちょっと気後れしたりするんだけどなぁ・・・)

 

それどころかフィンは聞いてしまった、見てしまった、初めてなら誰でも緊張するはずのダンジョンでカイトは鼻歌をしながらまるで楽しむかの様に闘う光景を。

 

 

『異常』『規格外』

 

フィンの頭によぎるのはそういった言葉だ

 

昨年、初めてアイズがダンジョンに潜った際にリヴェリアがアイズの戦闘を見たときの気分がようやくわかった気がした、ただ違うとするなら―――

 

(カイトにはアイズと違って戦闘に対する不慣れや油断がない、しかもさっきは無理だなんて言いながらきちんと気を張りつつ適度にリラックスできている、というところだろうね、でも―――)

 

 

だからこそ困った、とそう思う。

 

今のカイトを他の新人団員と共に訓練に参加させていいものか思案する

 

明らかに他の新人団員との実力に差がありすぎる、はっきり言って入ったばかりのカイトの動きや実力を目の当たりにした他の団員がやる気や自信をなくしてしまう可能性がある

 

道中で話した限りではまだまだダンジョンに関する知識はそこら辺の一般人よりは詳しいものの、新人冒険者に毛が生えた程度だったため、座学は一緒でもかまわないだろう

 

二日、いや三日程度で訓練を切り上げさせてダンジョンに潜らせた方がいいかもしれないな・・・

 

他の新人は午前を訓練にしてその間にカイトは勉強、入れ違えるように午後は他の新人団員が勉強会、カイトはダンジョンに、いやでもそんなことをしたら他の団員との交流が――――――

 

 

「おーいフィーン」

 

思考の海に浸かっていたところにカイトから声がかかった

 

見ればカイトが3階層へと続く階段の前にいた

 

(しまったな、考え事に夢中になりすぎた)

 

フィンの実力からすれば上層の、しかも2階層など昼寝所か熟睡しながら突破出来る程度の階層ではあるが、新人であるカイトがこれ程早く進むとは計算外であった

 

(正直彼がどこまでいけるのかを見てみたいという気持ちもあるけど、初めてのダンジョンで3階層は早すぎる、ここは―――)

 

「フィン、今日はここまでで戻ってもいいか?」

 

自分が言う前にカイトから撤退を進言されたことに内心で少し焦るが、それをおくびにも出さすに返答する

 

「・・・まだ余裕があるように見えたけどいいのかい?」

 

「ああ、確かにまだ余裕はあるっちゃあるけど『まだ行ける』って思った時点でそれは危険サインだと思ってるんでな、それにこのあとお勉強会とやらもあるし勉強中に居眠りしてどやされるのは勘弁願いたい」

 

軽くおどけて見せるカイトは確かにまだ余裕があるように感じるが、それでも撤退を選択したカイトの判断に舌を巻く

 

(この年齢で、この実力にこの判断力か・・・末恐ろしい、いや・・・これからが頼もしいと思うべきだね)

 

「え・・・あれ、撤退だめなのか?」

 

無言の自分を勝手に勘違いしたカイトが慌て始める、先ほどまでの異常な姿とはかけ離れたその姿に苦笑を禁じえない

 

「ふふ・・・いやすまない、うん、かまわないよ、午後の勉強会で居眠りをされたら監督役だった僕までリヴェリアに怒られそうだしね」

 

「うわ~、もしかしなくてもリヴェリアって勉強とかに対してスパルタだったりする?」

 

「まぁ、そこそこかな・・・ちなみにアイズは二日で逃げ出した」

 

「・・・マジでか」

 

そこからは軽く談笑しつつ元来た道を逆走することに、もちろん帰り道でもしっかりとモンスターと遭遇するのでカイトがそれを一掃、その光景を見つつ改めてこの鬼才とでも呼ぶべき子を見いだした己が主神の昨夜の取り乱し方に納得する

 

(Lv.1のそれも初期の状態でこの実力・・・ロキ、君が興奮する理由がよくわかったよ、でもこれなら僕が遠征で最前線に専念できる日も近いかもしれないね・・・ふふ、今から楽しみになってきたよ)

 

今ではオラリオでも屈指の大派閥となったロキ・ファミリア、団員も実力者が多くダンジョンの遠征も人数が増えたことで昔に比べ遥かに大規模となった、だがその弊害として団長であるフィンやリヴェリア、ガレスといった幹部は団員たちへの指揮が主な役割となり、昔のように前線に立つことは少なくなってしまった。

 

Lv.6に到達してから数年、もうそろそろ自身のためにも、そして何より一族再興のためにさらなる名誉を求めて前線に戻りたいと思い始めていた、そしてそんなことをふと思い始めた矢先に逸材とも呼べる人材が文字通り転がり込んできた

 

(アイズの実力は問題なくこれからも上っていくだろう、だが全体を見通せる指示を出せるようになるかと言われると、今の状態を見るに難しい、でもカイトなら・・・)

 

現時点でこれほどの視野と判断力を持っているのなら、幹部、もしくは自分の後釜として育成するのはありだ

 

(この子は稀有な人材だ、逃さないように多少の事は多めに見るつもりで接していこう・・・そしてゆくゆくはすべて押し付けオッホンゲッフン・・・任せる。・・・ふふふロキ・ファミリアの未来は明るいなぁ)

 

心の中でケケケと笑う

 

カイトの知らない内に実は腹黒い勇者が真っ黒なそろばんを叩き始めていた

 

 

 

 

《side out:フィン》

 

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コボルト2匹を悠々と相手をしている最中に一瞬寒気を感じたが特に何もなく討伐が終わったので気にしないことにした、というかそんなことがあまり気にならない程に今の俺はテンションが高かった

 

(神の恩恵という奴は最高だな!!)

 

昨日までの自分とは全く異なる程の身体能力には自分自身で驚きと興奮が隠しきれない、おっさんに殺されかけたのは最悪だったが、それに対する見返りはでかかった、身体能力が上がっただけではなく、あれ程制御が難しかったオーラの部位量制御を行う【流】が少し楽になっているということに加えてオーラを自身から円形状に展開しその中での全ての動きを知覚することが出来る【円】というチート級の技が使えるようになっていた、まぁ使えると言っても半径4mが限界だったけど・・・ノブナガさんちょりーっすwww!!

 

だがそれでも上層のモンスターを相手にするには十分すぎたようで俺TUEEEEEEEE!といった状態だ

 

そんな精神状態なので先程自分から撤退を進言させてもらった、命の取り合いでは調子に乗った者から死んでいくとどっかの偉い人も言っていた気がするし

 

その後は何事もなく無事にダンジョンから地上に帰還

 

ギルドで魔石を換金して3000ヴァリスを受け取り、初の冒険者としての稼ぎを喜びつつ本拠に戻った、ちなみにじゃが丸くんの屋台でのバイト代は日給平均600ヴァリスなので一気に所得が5倍になったことになる、やったぜ!

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

本拠に戻ったあとは食堂で昼飯を済ませてから軽く休憩を取った

 

そして今は他の団員と共にお勉強中である。

 

他の団員やラウルもウンウンと唸りながらやっているが、受験戦争体験者にとってこの程度は特に苦にならない

 

パッパッと要点や重要な所を押さえてから細かい所は関連付けで覚えていく

 

暗記系というのはいかに覚えるかではなく、いかに自分に思い出させるかが勉強のコツなのだ

 

 

「・・・リヴェリアこれで全部できたと思う」

 

「ふむ、では採点をするので少し待て」

 

本日の勉強会最後の締めである確認テスト、一番に解き終えたので先生役のリヴェリアに採点をしてもらう

 

「・・・どう?」

 

「・・・ふむ・・・むぅ・・・合格だ」

 

「いや、なんで面白くなさそうに言うんだよ」

 

「間違えすぎるのも腹が立つが、余裕綽々で一発合格されるのもテストを作った者としては面白くないものでな」

 

「副団長すげぇめんどくせぇ!」

 

そんな風に話しているとテストを解き終わった他の団員がチラホラとリヴェリアに採点を頼みに来た、採点の邪魔をしては悪いので机に戻って今日教えてもらったことを軽く復習しているとラウルが肩を落として採点から帰ってきた

 

「どうだった―――・・・てのは聞くまでもないみたいだな」

 

「うぅ、夕食の後に再試験って言われたっす」

 

どうやら不合格者は再試験らしい、おそらく合格するまで続くんだろうなぁ・・・

 

「はぁ、カイトは一発で合格だったすけど何かコツとかあるんすか?」

 

「んー・・・まぁコツかどうか分からんが覚えたことをどういう風にすれば思い出しやすいのか自分で色々試してみるのがいいと思うぞ?」

 

この後ラウルに効率の良い勉強方法を教えつつ勉強を見てやったらあれよあれよと他の団員にまで教えを請われてしまった

 

め、めんどくせぇ・・そう思っていたらリヴェリアに人手が足らんのでこれからも確認テストに合格した後は手伝えと言われてしまった

 

あれ~俺ってば入団したばかりのヒヨコちゃんなのに何で先輩方の勉強も見ることになってんだ・・・解せぬ、その後、結局夕食の後も勉強会に付き合わされた

 

この日、新人団員ですらこき使う現状に俺の中でロキファミリア、ブラックファミリア説が浮上したのは仕方がないと思うわけだよ、うん。

 

まぁ、他の団員との交流がてらに教えてやるとしますか!

 

 

 

 


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