ベルの兄がチートで何が悪い!!   作:シグナルイエロー

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ハーレムヒロイン二人目登場(・ω・)

いつもの独り言☆
ギル祭は130箱くらいで終了、超高難易度?楽勝でした(ただしジャガーは除く(´д`))


20:昇格×降格 後編

《side:ロキ》

 

 

「――――――で? 結局、この三つ目のアビリティについての情報は全くなしってことか-・・・どうすっかねぇ」

 

場所はディアンケヒト・ファミリアの療養所、その中のカイトが監禁・・・もとい入院しとる病室

 

うちの前にはベットから上半身を起こした状態のカイトが頭を悩ませとる

 

 

 

カイトのステイタスの更新とファミリアの会議から二日

 

あれからフィン達とカイトについて話した後、ギルドで珍しい発展アビリティについて聞いてはみたがやはり【奇運】という名のアビリティどころか〈運〉という字が付くものすら見つからなかった。

あまりしつこく聞いても逆にこちらの情報を探られる可能性があるためそこまで深くは聞けなかったが、少なくともギルドではあまり聞かない・・・というより聞いたことのない新アビリティである可能性が高いということが判明した。

 

(それにしても【奇運】てなんやねん、これが【幸運】とか【不幸】とかならわかりやすいんやけどなぁ・・・)

 

「ロキ的にはこのアビリティ、当たりだと思うか?」

 

「んー・・・どやろなぁ、でも字から考えて間違いなくクセの・・・それも相当尖り方が強いアビリティやないかなぁ・・・〈奇〉と付くものにまともなもの期待せーへん方がええ、なにせ自分、天界じゃ異名で奇術師(トリックスター)って呼ばれててな? 自分で言うのもなんやけどろくでもなかったで?」

 

「なるほどぉ~、つまりこのアビリティはロキ並に駄目でクズでダメダメダメダメダメダメ――――」

「そこまで言っとらんわ!?」

 

この子はもうあれやな!?うちのことなめきっとるな!?

 

 

「カイト、うち主神な?偉い神様な?忘れとらんよね?」

 

親しき仲にも礼儀ありやで?

 

She(シー)テルよ?」

 

「・・・・・・」

 

嘘や無いとわかるけど・・・何やろかこの騙された感じは

 

「はぁ~・・・とりあえずや、このアビリティを選ばなくても【狩人】なんてレアアビリティも発現しとるんや、わけのわからんもん選ぶより、こっちを選ぶのも全然アリやで? むしろ普通ならそうするやろな」

 

実際、この【狩人】のアビリティは手っ取り早く強くなるのに最適なアビリティという理由だけで人気なのではない、このレアアビリティはLv.2にランクアップするときにしか発現しない限定アビリティでもあるからだ、故にいくら未知のアビリティといえどこれから先のことを考えると【狩人】を選択しないという判断は非常に難しい

 

堅実に【狩人】か、それとも大博打に出て効果のわからない【奇運】という謎のアビリティにするのか、こればかりはカイト自身が決めねばならないことだ

 

(幸い、考える時間はあるからなぁ・・・カイトには言うてないけどな、ニヒヒヒ)

 

悪戯心から珍しくカイトが悩む姿を楽しもうかと思っていると

 

「じゃあ【奇運】でいいや」

 

カイトがあっけらかんと言うてきた

 

「は?・・・いやいやいやいや! もちょっと考えた方がええやろ!? なに今日のお昼を決めるみたいなノリで決めとんねん!?」

 

うちの話聞いてたんかこの子は!?

 

何も考えてないのではなかろうかと、さすがに口を出してしまう

 

「ロキがさっき言ってたじゃん、()()()()って・・・俺の目標は普通じゃたどり着けないからこそのこの選択だ、俺の夢は時間制限も付いてんだぜ? アスフィはいつまでも待つって言ってくれてるけど俺はあいつを行き遅れにするつもりはねーんだよ」

 

こちらを見返すカイトの決意とその目があまりに真摯すぎて一瞬気圧される

 

「そ、そやな・・・・・・・いや、そやったな」

 

先日のアスフィちゃんとの告白からこの子がどれだけ途方もない夢に向かって走っているのかを思い出す

 

文字通りのお伽話の様な夢

 

ただの村人が冒険者になり、そしてそこから成り上がって一国の姫を娶るという、聞く者が聞けばどこの作り話だと馬鹿にされるような夢だ

 

「んじゃ、さっそくランクアップの更新よろしく~」

 

うちがこの子の目指すものの難しさに複雑な思いをしているというのに、カイトは軽そうに言って上着を脱ぐために着ている服のボタンに手をかける

 

(この子はホンマにもう、いきなり真面目モードかと思うたらこれやもんなぁ、調子が狂うわぁ・・・あ)

 

おちょくろうと思ってカイトにわざと言わなかった内容を思い出す

 

「あ!? ちょっ、まち、カイト!」

 

「ん?」

 

「あー・・・実はこの前の会議でフィン達とカイトのランクアップについても話したんやけど・・・後二ヶ月くらいランクアップ待たへん?」

 

「え・・・なんで」

 

カイトが疑問に思うのももっともやけど、これにはちゃんと理由がある

 器を昇華させれば人の子は格段に強くなれる、だがLv.1時のステイタス平均がAとCの冒険者が同時にランクアップした場合、ステイタス平均がAだった者の方が強い、うちら神々はこれを〈貯金〉言うとる、この貯金の差が大きければ大きいほど同じレベルの者でも差が出てくる、そのためランクアップをするのはステイタスが上昇しにくくなる時こそが最もベストなタイミングとなるわけやな

 ちなみに弱小の零細ファミリアなどはこういうことを知らずに即ランクアップをさせたせいで後になってから泣きを見ることが多かったりする

 

「――――――ってなわけでや、ちょうどカイトがぐっすり寝ている間に神会(デナトゥス)も済んだばかりやねん、ランクアップは次の神会に合わせて行った方がええ、て話になってな?」

 

「それは初耳だったな・・・うん、まぁ、それなら仕方が無いかぁ・・・」

 

たぶんランクアップを楽しみにしていたのか、カイトがあからさまに意気消沈していく

 

「そんな訳で明日から三日くらいは鈍った身体を鍛え直すために訓練、その後の二ヶ月間はほぼダンジョンでステイタスを上げるのに集中ってのがこれからの予定やな まぁ、カイトなら二ヶ月もステイタスの上昇に集中すればステイタス平均をBくらいまでは持って行けると思うで?」

 

 なにせカイトはまだLv.1、あまりのはちゃめちゃさに忘れそうになってまうけど一番ステイタスを上げるのが楽な初期レベルや、これまではダンジョンに関する勉強会にも他の団員との交流という目的で参加させてはいたがしばらくはお休みや、既にうちのファミリアでカイトを知らん者はおらんからこそステイタスを上昇させるためにダンジョンに集中させることができる、これも今まで入団してから無理して二足の草鞋履いてでもカイトが頑張ってきたからこそできることや

 

「それってつまり、今まで以上にお嬢と一緒にモンスターの群れに突っ込まされるってことだよなぁ・・・うわぁ」

 

数日後からの地獄を想像しみるみるうちにカイトがしぼんでいく・・・フィンも結構な無茶させとるって聞いとるからなぁ・・・まぁ頑張り-、と他人事のように考えていると

 

コンコン

 

と、控えめにドアをノックする音

 

どうぞー、とカイトが入室を許可すると、めっちゃかわええ娘が入ってくる

 

「げっ!アミッド!?」

 

「こんにちはカイトさん、お昼の時間になります・・・神ロキもいらしてたんですね」

 

この娘はオラリオ最高の治療師「アミッド・テアサナーレ」Lv.2のディアンケヒト・ファミリアの構成員・・・なんやけど、先日フィン達との会議で最後に話した〈面白い話〉いうんがこの子に関してだったりする、というのも―――――――――

 

 

「はい♡カイトさん、あ~ん♡」

 

「いや、自分で食べれるし・・・」

 

「何を言ってるんですか?カイトさんは病人ですよ?食べさせてあげるのは普通じゃないですか、はいあ~ん♡」

 

「明日には退院なんだけど・・・んぐ!?」

 

問答無用とでも言うようにしゃべるために開いた口に料理を突っ込むアミッド、ただそのせいで食べた物が喉に詰まったのかカイトが咳き込む

 

「げっふぉ!?いきなり食べ物を突っ込む奴がいるかぁ!?」

 

「ご、ごめんなさいやはりまだ固形物は早かったみたいですね・・・では失礼して・・・」

 

何を思ったのか、何故かアミッドがカイトの料理を口に含み咀嚼しはじめる

 

「お、おい・・・お前 何を・・・」

 

「ふぁい、口移しで食べさせてあげまふ」

 

「ロキィ!ヘルプミィィィィィイイ!!・・・っ!? ぬぐぁあああおおおおお!?」

 

Lv.2のアミッドがLv.1であるカイトの顔面をホールドして今まさに親鳥が子にエサを与えるように微笑ましい・・・とは明らかにかけ離れた光景が展開される

 

 

見て分かるように・・・いやこれ見て分かる奴おるかなぁ?・・・まぁとりあえず、何があったのかよーわからんけど、この一週間で『戦場の聖女(ディア・セイント)』と名高い彼女はカイトにべた惚れになってもうたらしい

 

・・・ちなみにカイトはこの娘の激しいアタックをつい昨日まで異常な看護愛と勘違いしとったが、それも先日カイトに恋人がいるということを知ってアミッドが暴走、なんでも夜這いにきたらしいがカイトはこれを全力拒否し一悶着あったとかなかったとか

 

カイト曰くアミッドはどこぞの狂戦士の看護師くらいヤバイとか、てか誰やねん狂戦士で看護師て存在が矛盾しすぎやろそれ

 

 

(それにしても・・・こんなとこアスフィちゃんに見られたら修羅場待ったなしやなぁ・・・ん、ありゃ?なんや急に寒気が・・・)

 

 

「・・・・・・カ イ ト ?」

 

ロキがゆっくりと振り返ると手には花束、しかしバックには絶対零度の吹雪(ブリザード)を連想させる程の鬼気をまとったアスフィがいた

 

(あかぁ―――――――――――――ん!!??)

 

「あ、あんな?これは、違うで、カイトは―――――――あり?」

 

固まったワイそっちのけでツカツカとカイトに歩み寄るアスフィちゃんとアミッドの目が合う

 

「んのにぬままぬすか」

 

「しゃべるならせめて口の中のもん飲み込んでからしゃべれ!あと、い い か げ ん 離せえええ!!」

 

「んぐ・・・どちら様でしょうか?」

 

「ゼェ、ゼェ・・・た、助かった・・・」

 

つい先程までのカイトとの攻防を感じさせぬ顔でアミッドがカイトのベット越しにアスフィちゃんと対峙する

 

「初めまして、『戦場の聖女(ディア・セイント)カイト恋人のアスフィ・アル・アンドロメダと言います、どうやら体調のよろしくない彼氏のために余計な世話をさせてしまったようで、でも御安心下さい、ここからは私が代わりに面倒を看ますので」

 

アスフィちゃん、こわぁ・・・所々でカイトとの関係を強調したいのか声のトーンが一部強めで言われとる、しかも最後は逆読みしそうなとびきりの笑顔付きやった

 

ピキリ

 

あ アミッドのこめかみに青筋が・・・

 

「カイトさんに恋人が居るというのは知っていましたが、あなたでしたか『全能者(ペルセウス)』・・・患者の面倒を看るのは看護師の務めですのでお気になさらずに、それに既にカイトさんのあーんなとこやこーんなとこまで面倒を見ているのでお気になさらずに」

 

「アミッド誤解を生みかねない言い方はやめてくれ!?」

 

「意識のないカイトさんの下の世話をしたのは本当ですよ?・・・立派でした♡」

 

頬に手を当てててモジモジし始めるアミッド、それに対して絶句するアスフィちゃん

 

「私ですらまだ見ていないというのにっ・・・!!」

 

アスフィちゃん、突っ込み方がおかしいて、つかあんなもん見たいんか・・・思春期やなぁ

 

何故か勝ち誇った風のアミッドがアスフィちゃんを見ながらお返しの様に満面の笑みで言い返す

 

「まぁ、今は付き合ってていてもこれから何が起こるかわかりませんし・・・そういえば先日他の神々からNTRという言葉を教えて頂きましてね?・・・ふふふよろしくお願いしますねアスフィさん?」

 

そういって握手を求めるアミッド

 

「何がよろしくなのかわかりませんが、ええ、こちらこそ」

 

そう言ってアミッドの手を取る

 

ミシミシギシミシ

 

そして部屋に響くのは手を握ってから二人の手首の骨が軋む音

 

「「ふふふふふふふふふふふふふふふ」」

 

(カイトォ!?いいかげん止めてやれや!!・・・っていないーーーー!?)

 

一体いつのまに抜け出したのかベッドどころか部屋からもカイトの姿が消えていた

 

 

《side out:ロキ》

 

 

 

=============================

 

 

 

現在俺は全世界の男子がもっとも落ち着くであろう場所 個室トイレに立て籠もっていた、というのも俺をめぐってアスフィとアミッドが険悪な雰囲気になったからだ

 

(『絶』が得意でよかった~・・・)

 

不味い雰囲気を察知したので即『絶』を発動し全力で離脱、見事に気付かれることなく脱出に成功、このときほど己の才能に感謝した日はないかもしれない・・・部屋から出る際に俺の監視を命じられていたであろうディアンケヒト・ファミリアの団員が簀巻きにされていたのは何かの見間違いだと思いたい

 

(あいつ強行突破してきたのかよ・・・)

 

俺の何がアミッドをあそこまで狂行に走らせるのかわからないが応じるわけにはいかない、俺はピュアな男、アスフィ一筋だ。

 

なら、もっと強めに拒絶すればいいのではないか、と思う者もいるだろうがさすがに()()()()を無下に扱うことはできない

 

なにせ俺がここに運び込まれた際に輸血用の血を貧血寸前まで提供してくれたのがアミッドなのだ、なぜアミッドがそれほどに大量の血液を提供することになったのかというと、どうやら俺の血液型は相当珍しかったらしく適合する血液保持者がアミッドしかいなかったというのが理由だ

 

この事実はこれから、もしも俺が今回と同じような怪我で運び込まれたとき、アミッドが血液を提供してくれなければ死んでしまうことを意味する

 

つまり、あまり拒否しすぎてプラスの感情が反転してマイナスの感情になってしまった場合、アミッドが俺への輸血を拒否してくるかもしれないという思惑もあるために最低限の否定しかできないというわけだ

 

(っていうか、何で振られたのに翌日には再アタックしてくるんだ・・・メンタル強すぎ。 女って皆こんなに図太いのだろうか・・・・・・ん?)

 

 

気付けば何故か共同トイレの個室の中が少し薄暗くなっていた

 

(ランプの魔石が切れたのか?)

 

 

そう思い上を見上げると――――――

 

「カイトさん見ぃぃぃぃiiiIIIいいつけたぁああAAAAAaaaaaaaaaaa!!」

 

「ほぎゃぁぁぁあああああ!?」

 

アミッドがいた

 

入り口の上から這い上がり、男の聖域に嬉々として侵入しようとしてくるその姿は軽くホラーである。

 

俺氏、前世を含めて恐怖感からここまでの絶叫を上げたのは初めてであった。

 

「ってアミッド何やってんだぁこらぁ!?」

 

「何って、逃げたカイトさんの臭いを追いかけただけですけど?」

 

「獣か何かかお前は!?」

 

それが何か? とでも言いたげなアミッドと問答をしていると

 

「ここか、この泥棒猫!!って何やってんですか!? 下 り な さ い!!」

 

「痛だだだだ!? ちょ!?足を引っ張らないで下さい!!」

 

どうやら救援(アスフィ)がきたようだ、ずるずるとアミッドの姿が見えなくなり、ホッと息をつく

 

「『戦場の聖女(ディア・セイント)』を確保―――――!!」

 

アスフィの掛け声と共に複数の足音が近づいてくるのが聞こえてくる

 

「なぁ!?あなたたちまで何故私の方を捕らえるのですか!?捕らえるのはそっち!『全能者(ペルセウス)』の方ですよ!!裏切り!?裏切りですか!?」

 

個室のドアを少し開けて覗いてみたら、どうやらディアンケヒト・ファミリアの団員も駆け付けてアミッドの捕縛を手伝っているようだ

 

「いやアミッド、お前さんディアンケヒト様から彼の部屋への入室は禁止されていたのに破っただろう? しかも見張りをしてくれていた団員の意識を奪ってまで・・・さすがにやりすぎだ」

 

「・・・な、なんのことでしょう か」

 

同僚であろう男性からの質問に対して、ここからでも分かるくらいアミッドの目が泳ぎまくっているのが見えた

 

「アミッド、お前さんこんなことする奴じゃなかっただろう、一体どうしたんだ・・・」

 

「カイトさんへの愛が私を変えたのです!!」

 

(俺のせいみたいに聞こえるからその言い方は止めろ!!)

 

「はぁ・・・とりあえず彼が正式に退院するまで謹慎と神命が下った・・・連れて行け」

 

「え?うそ?うそですよね!?ちょ、運ばないで下さい!?カイトさん助けてええええっぇぇぇぇぇぇーーー・・・・・」

 

ビチビチとはねる巨大魚の様な必死の抵抗も空しくアミッドはどこかに運ばれていった

 

「脅威は去りましたか・・・カイト、もうそこから出てきても大丈夫ですよ」

 

アスフィがこの場が安全になったことを教えてくれるが忘れる事なかれ、ここは男子トイレ、女人禁制の男の聖域である

 

「お、おう・・・マジで助かったサンキューなアスフィ・・・つかここ男子トイレなんだが・・・」

 

「そ、そうでした・・・すみません外で待ってますね」

 

ここがどこか忘れていたのかアスフィがそさくさとトイレから出て行く、その後ようやく個室から出て手を洗いアスフィと無事に合流、部屋まで一緒に帰ることにした

「すまん、改めて助かった・・・マジで」

 

「もう少し強めに、彼女を拒否すればいいだけなのでは? そうすればこのようなこと・・・」

 

「まぁ、カイトにも色々事情があるんやで?」

 

ちなみにロキの奴は部屋で見舞品である果物を騒動そっちのけでムシャムシャと食べながら俺のベッドでだらけてやがった

 

 

「あんな女を許容する程の事情があるのですか?」

 

「一応あるんだよ、しかもこれがまた死活問題でな・・・」

 

場所は俺が入院している個室、アミッドのことに対して強く出られない理由を説明するとアスフィの眉間にみるみるうちにシワが出来ていく・・・これはこれでかわいい

 

「―――――と、まぁこういう理由でなぁ・・・機嫌を損ねすぎると今後のことが恐くてなぁ」

 

「むぐぅ、カイトの命には代えられませんが・・・理解はしても納得したくないですね・・・あの変態の血がカイトに入っているのかと思うと、なんでしょうね・・・言葉に出来ない腹立たし感情が、こう・・・沸々と湧いてきます」

 

「だからって俺の血を抜こうとしないでくれよ?・・・ま、どっちにしろ明日には退院だし、今後あいつと関わり合いになることも激減するだろ、さらば退屈な入院生活!さらばアミッドってな!!」

 

「そうだといいのですが・・・」

 

―――――余談ではあるが、数日後からギルド経由でディアンケヒト・ファミリからロキ・ファミリアのとある団員へ名指しの指名依頼(依頼の品は直接ディアンケヒト・ファミリアの本拠に届けるのが絶対条件)が連日舞い込むことになることを俺はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 その後はアスフィとお互いのファミリアの話や久しぶりにベルやじいちゃんのあまり変わっていないらしい近況を教えてもらった

 

「・・・そっか、ベルもじいいちゃんも変わらず元気か」

 

「ええ、お爺さまもこちらは気にせず頑張れと言ってましたし、ベルの方に至っては心配する必要も無いくらい元気な様子でした」

 

「また今度、村の近くまで行くときは教えてくれ、手紙と一緒に仕送りとなにか日持ちするお菓子でも贈りたい」

 

「ふふ、任せてください・・・あ、もう時間ですね、カイトと話しているとあっという間に時間が過ぎ去ってしまうのが難点です」

 

「まったくだ、楽しい時間ってのはどしてこんなに過ぎ去るのが早いかな」

 

「我慢した分だけ楽しい時間は濃密に感じる物ですよ・・・またお互い頑張って時間を作ったらどこかで食事でもするとしましょう」

 

「喜んで・・・ん」

 

最後に一時の別れを惜しむ軽いキスをする

 

「ん・・・・・・では、また」

 

「ああ、またな」

 

精一杯伸ばして繋いでいた手が離れる

 

お互い名残惜しいがそれぞれやることがあるため仕方が無い、まぁ今の俺は休むのが仕事で働いているアスフィには少し申し訳ないが・・・あれ?俺ってばヒモみたいじゃね?

 

そんな俺の葛藤に気付くことなくアスフィが退室

 

しばらくしてから入れ代わるようにしてロキが入ってきた、ただしニヤニヤと形容しがたい表情で。

 

「ロキ、盗み聞きとは趣味が悪いぞ」

 

「ちょっとくらいええや~ん、いやぁしっかしアッツアツやな~、最後の方は聞いてるこっちが恥ずかしゅうなったわ」

 

ちなみにロキは先程から気を利かせて席を外してくれたのだが、どうやら外で聞き耳を立てていたようだ・・・というか悪戯が大好きなこいつはおそらく最初からそのつもりで席を立ったのだろう、くそ、予想して『円』を張っておくべきだったか・・・己の迂闊さを悔やむ

 

「それで? まだ明日以降の予定で何か言ってないことでもあるのか」

 

「んにゃ、一応それは全部伝えたで、戻ってきたのはアスフィちゃんにも聞かせられない身内の話があるからや」

 

「・・・【ジャンプの海賊印(ジャンプパイレーツ)】の〈使用した〉ことになる条件についてか?」

 

「そーや、なんやうちが聞いてくるの予想できとったんかい」

 

ロキの質問は予想はしていたがやはり俺のスキルに関してだった、俺としてもこれは気になることなので一応ではあるが俺の予想を話しておきたかった

 

「まだ、『3』と『6』しか出てないが大まかな予想はできてる、『3』の方はたぶん出したものを誰かの体内に・・・とにかく何でもいいから体内に取り込むこと・・・だと思う。」

 

「あぁ、ガレスの言ってたくっそやばい卵焼きやったっけ?・・・うーん今でも信じられへんなぁLv.6のガレスの耐久や耐状態異常をぶち抜いてくるような卵焼きて・・・いや絶対それ食べ物ちゃうやろ」

 

ロキよ、もしその台詞、卵焼きを生み出した原作の張本人に聞かれたらその卵焼きのフルコースが待ってるぞ

 

「まぁ、ある意味チートだよなこれ」

 

食わせて良し、投げて良し、ぶつけて良しの三拍子がそろっている、ある意味これが一番万能かもしれない

 

「で、今回こんななった原因の『6』・・・『八門遁甲の陣』やったっけ? これの条件の予想もできてるんか?」

 

「予想としては2つくらい思い浮かんだな、一つ目は単純に俺の練度不足で使いこなせなかったからって理由だ、これだったら今まで通り修行でもすればいいから気が楽なんだが・・・」

 

「なんや、もう一つの予想はやばいんか?」

 

「ああ、『八門遁甲の陣』ってのは身体にある一般的には常に閉じてる八つの門を順番にこじ開けてリミッターを徐々に開けてから最大解放するんだ、そんでもって最後の八門目の〈死門〉を開けるとさらに爆発的な力を一時的に得られるって術なんだけど・・・〈死門〉って名の通り、開けちゃうと死ぬんだよねこれが」

 

「んなぁっ!?」

 

「〈死門〉まで開けるのが条件だとやっべーよなこれ」

 

さすがに予想した二つ目の条件にロキの顔が真っ青になる

 

「ヤバイどころやないわぁ!?カイトおまっ!?なんちゅー技使てんねん!?」

 

「いや、前も言ったけど使わなきゃ死んでたぞ」

 

「それでもや!ええか!?以後この数字が出たら即キャンセルや!!」

 

「え~・・・もったいないからちょっと使ってからキャンセルした方が良くないか?」

 

「だーめーやーーーー!!カイトのことやからそのまま勢いとノリで最後の門まで開けかねんやろうが!!」

 

確かに、ガレスのおっさんとの模擬戦や今回の襲撃でも追い詰められると頭のネジがかなり緩くなってることが多い気がする

 

「ん-・・・仕方が無いか・・・わかった、今後この数字か出たらキャンセルするよ」

 

「ホンマか!? その場しのぎのウソやないやろな!?」

 

「誓う、誓う。『6』の数字を引いたら即キャンセルする・・・これでいいか?」

 

神々にウソは通じない、ロキには俺の言ったことが本当だとわかったはずだ

 

「うう、まぁ分かったならええねん、一応このことはフィン達にも伝えとくで」

 

「頼むわ」

 

俺が『6』の能力を使わないと誓ったことでロキも落ち着きを取り戻してくれたようだ

 

 

「あ、そやカイト、もう一個、伝えなあかんことがあったわ」

 

「まだ、あんのかよ」

 

ロキがポケットから何やら紙を取り出してこちらに渡してくる

 

ざわ   ざわ

       ざわ        ざわ

 

             ざわ        ざわ

   

紙にはたくさんの「0」が並んでいた、何故だろう心が ざわざわ する

 

「・・・ロキサマ・・・コレハ・・・ナンデショウカ」

 

「カイトの入院費に加えて怪我に使うた高級回復薬(ハイポーション)万能薬(エリクサー)だけやのうて万能薬入り点滴とか諸々の諸経費やな」

 

「・・・自費?」

 

「自費や、これでも結構な額をファミリアが負担しての額やで?」

 

ファミリアでも負担してもらってコレ?

 

「慈悲は?」

 

「ないなぁ」

 

「・・・・・・」

 

この後にロキは頑張り~と軽く言って帰って行った

 

当然ながらロキが帰ったあとも俺の気は決して休まることがなく、ぐ~にゃ~という音と共に世界がねじ曲がっていく感覚に朝まで襲われ続けた

 

 

 

 

オラリオに来て半年

 

借金返済生活スタートのようです。

 

 

 

 

 

 

 




さーて、三人目のハーレム要員は誰にしよっかなー♫

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