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《side:ラウル》
場所はロキ・ファミリアの
「ふぃ~、今日の探索もキツかったす~」
近頃はカイトとアイズさんの探索に連れ回されて毎日ヘトヘトになって帰ってくるのが日常になってしまったっすよ
シャワーを浴びて汗を流してから湯船に浸かると一日の疲れが抜け出て行く
「あぁ~・・・この感覚は何度味わってもたまんねぇっすねぇ~極楽極楽♫」
もし、一念発起せずに今も村にいたら、自分はこの湯船の存在すら知らずに一生をあのへんぴな村で過ごしていたんすかねぇ?
そんなどうでもいいことを考えながら天井を見上げる
微妙な時間帯なおかげか風呂場には自分一人だけ、――――――ピチョンと天井から雫の落ちる音が響くことすら心地良い
(・・・今日も何とか付いて行けたっすねぇ)
あの2人の戦闘はサポートするだけでも一苦労させられるっすよ
先日、団長達に自分以外にもサポートを増やして欲しいと言ったら
『あいつらはちょっとアレじゃからな・・・頑張れ』
『既に他の団員はあいつらの異常性に気付いてしまったからな・・・まぁ、その、なんだ・・・頑張れ』
『う~ん、彼らのデスマーチについていける人員は
ありがたい激励のお言葉だけをいただいたっす・・・いや言葉じゃなくて人をよこせと言ってるんすよ
(でも、確かに今のオラリオの状況じゃ、無理は言えねぇ・・・すか・・・ね・・・ZZZZZZ)
と考えても仕方がないことを延々と頭の中でグルグルと思考していると疲れから眠気が襲って寝入ってしまったっす
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「う・・・次は・・・」
「んーーー」
(あれ?・・・自分、寝ちゃってたっすか?)
誰かの話す声で飛んでいた意識が徐々に覚醒する
「お、ラウル起きたか? 風呂に入りながら寝るとのぼせるぞー?」
「風邪ひく・・・よ?」
「あれ? カイトにアイズさん?いつのまに・・・」
いつの間にか湯船の中で寝落ちしてしまったみたいっす
声を掛けられた方を見ると洗い場の方でカイトとアイズさんが・・・
「うーし!じゃあ髪の泡を洗い落とすから目をつむれ~」
「ん!」
「ほ~れジャバ~」
「ん~~~!」
全裸のカイトがスッポンポンのアイズさんの髪に付いた泡を桶に溜めたお湯で洗い流していた
まるで本当に仲の良い兄妹の様な光景をのぼせた頭でボーッと眺める
「・・・・・・あれ?」
その光景をのぼせた脳が認識するのに時間が掛かる
『ラウル
思考に掛かった時間は僅か0.1秒・・・一気に目が覚めたっす。
「な、なななななな!!」
絶句とはまさにこの事
「「ん?」」
「何やってんすかぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」
驚きの余り浴槽の隅っこまで全力で後退しつつも、叫ばずにはいられなかったっす
「ちょ!? ラウル風呂場で大声あげんなよ!? 響くだろうが!?」
「ん・・・うるさい」
「いやいやいやいやいやいや!!!?何で自分の方が非常識みたいに言われてるんすか!?」
自分の驚きは至極全うだというのに二人から非常識な人間を見る目で見られたっす
「アイズさんは女の子っすよ!? 何で男の入浴時間に、のほほ~んと一緒に風呂に入ってるんすか!?」
「いや、女の子って・・・お嬢はまだ8歳の幼子だぞ? 別に一緒に入ったところで問題なくね?」
「いや、それでも一応男女の」
「カイト、もっかいジャバーやって、泡が落ちてない」
「ん? おぉすまんすまん、ほれ念入りに後二回ジャバーするぞ~目をつむれー、ほ~れジャバ~」
「ん~~~!」
「え~~~~~・・・・・・」
あれぇ・・・自分は正しい事を言っているはずなのに逆にこっちが間違っているかのような対応をされてしまったす
そしてあれから数分
「バ〇ンバ バン バン バン ♫ 」
「ばば〇ば ばん ばん ばん」
「バ〇ンバ バン バン バン ♫ 」
「ばば〇ば ばん ばん ばん」
「はぁ~~」
「ビバノ〇ン ♫ 」
「「い〇湯だな~~♫ 」」
そして今は二人が湯に浸かって暢気に歌を歌ってるっす
ノリノリのカイトに対してアイズさんはなんか事務的な感じっすけど・・・つか無駄に良い声っすね二人とも
「・・・っていうかこれ大丈夫なんすか?」
「何がだ?」
「いや、だからアイズさんのことっすよ」
「・・・んー?」
アイズさんの方を見ないようにしつつ質問すると相変わらず 何言ってんだこいつ? みたいな反応が返ってくるっす
「うぇ・・・ま、まさかラウルお前ロリコン・・・いやペドフィリアかよ!?」
「違うっすよぉ!? 何でそうなるっすか!?」
「おいおいおい、お嬢、もうちょいラウルから離れろ、危ねぇぞ・・・」
「ん?・・・ロリってなに?」
「だから違うっす!誤解っすよ!?」
アイズさんの事に対して執拗に疑問を投げかける自分にまさかの変態疑惑、濡れ衣にも程があるっすよ!?
「はぁ~~・・・もういいっすよ、自分は先に上がらせてもらうっすね・・・」
・・・なんかもう色々諦めたっす
「おう、湯冷めしないように気をつけろよ~」
「よ~」
「わかったっすよ~・・・」
まぁ本人達は全然気にしてないみたいだしこれでもいいんすかね?
それとも自分が気にしすぎなのか
やはり、あの二人は色々な意味で規格外だなと再認識した日だったっす。
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それから数ヶ月後、突然予定していたカイト達との探索が中止になった日があったっす
その日に庭を見ると
(あぁ・・・やっぱり・・・)
リヴェリアさんにボコボコにされ簀巻き状態で木に吊るされたカイトと、隣で正座に加え頭に巨大なコブを作って貞操観念や常識について怒鳴られているアイズさんの姿があったっす。
「やっぱ、普通が一番ってことっすかね?」
鬼のようなリヴェリアさんに折檻を受けている二人を見てそう思ったっす。
《side out:ラウル》
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長編の息抜きに執筆した短い話なんでボリュームは期待しちゃだめよ?(´д`)
あとこんなのが二つくらい考えてある