幸いペットで早期に発見できたおかげで命に別状はなく手術も成功しました。
しかしダヴィンチ手術ってすごいですね、手術して10日で退院してきましたよ。
まだ親父は現場に直接出れないけど指示出ししてくれる人が一人でも多いと仕事の負担的にもすごく助かる
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《side:冒険者》
目の前で双頭竜が三頭竜になった
正確に言うならば巨大な鎧武者によって残っていた首が縦から真っ二つに切り裂かれたのだ
・・・誰も
・・・誰も動けない
神話、もしくはそれに準ずる闘いというのがあるのならこれがそうだ
今、自分たちが見たのはおそらくその一旦
双方が動くだけで嵐のような豪風
攻撃を放てばその影響で湖の水が間欠泉の様に舞い上がり自分たちを叩き付ける豪雨となる
地形、いや階層そのものが崩壊しかねない、文字通り格の違う闘争
その圧倒的な光景に敵も味方も動きを止めてしまっていた
何よりも驚くのはその光景を作り出していた片翼はLv.3の冒険者だと言うのだから驚きを禁じ得ない
戦闘が終わり先程までの轟音しかなかった喧噪から落ちるような静寂の中、誰かがポツリと呟いた
「・・・あれが『ジョーカー』・・・ハハ・・・化け物じゃねぇか」
その言葉に同意するかのように自分を含めた数人の冒険者が畏怖からか喉をならして唾を飲み込む
(あれが最大派閥の片割れ、ロキ・ファミリアに所属する期待の新人・・・・・・新人?・・・あれが?)
どこの世界にLv.3でLv.5相当以上の階層主を単独で撃破する新人冒険者がいるというのか、こんなこと、第一級冒険者であっても出来る奴はそうはいない、いたとしてもできるのは『猛者』くらいだろう
鎧武者が階層主を叩き切った体勢からこちらに向き直る
―――――――その肩に一人の男を乗せて
トレードマークになっている藍色のキャスケット帽
竜尾の様に長い白髪
そしてその目
階層主を倒したばかりだと言うのにその目には一切の油断は無く、
遠目からも感じる圧倒的強者のオーラには微塵の隙も感じられない
「ひぃ!?」
「こ、こっちを向いたぞ!?」
「・・・Gryuuu」
「Pigii・・・」
その姿に気圧されたのか闇派閥だけでなくモンスターまでもが気圧されている
(味方・・・なんだよな?)
現れた時にジョーカーは『助けに来た』と言っていたがその後のあまりの暴れっぷりに味方とわかっているこっちまでブルってしまう
―――――――二つ名に偽り無し
ランクアップの記録を塗り替えた世界記録保持者、そしてそれを祝福するかのように付けられた彼の二つ名
当時、熟練の冒険者達はその新人の冒険者に付けられた二つ名を大げさすぎると鼻で笑っていた
だが
ここにいる者達はそれがこれ以上ないほど彼に相応しい名であると目の前で見せられ、魅せられた。
あれぞまさにロキ・ファミリアの秘蔵っ子
戦況を引っ繰り返すワイルドカード!
まさしく『切札』!!
神々はその身に相応しすぎる名を知ってか知らずか与えたようだ
その場にいたほぼ全ての冒険者がこの一人の冒険者同じ思いを抱き、彼に対して尊敬と畏怖、そしてほんの少しの嫉妬を感じていた。
《side out:冒険者》
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―――――――階層主をぶった切った直後
(あぶああああぶ!?ビビッたぁぁあああ~~~~~~~~~!?)
実は心中ではビビりまくり、心臓バクバクな状態だった
目の前の脅威を一旦退けたことでようやく周りを見る余裕と自らが行ったハチャメチャさに
『やっちまったゼ キリッ』
というような心境が戻ってきた。
なにせ下層までの強行軍を敢行して、何とか間に合ったか、ふーやれやれ、と思った途端にまさかの階層主登場
無我夢中になって数十メドルもあるにも関わらずアーイキャンフラァァ~イとヒモ無しバンジー
というか端から見たらただの飛び降り自殺だぞこれ
下が水だから大丈夫?
ノンノン、一定の速度で水に飛び込んだ場合水はコンクリートと同じ硬度になると、昔、大地っぽい名前の自衛隊員が言っていた
よしんば助かったとしても水の中には肉食の水棲型モンスターがわんさかで助かる確率は限りなくゼロ
そりゃ焦るっての
おかげでいきなり奥の手まで発動してしまった
ただあそこで無茶をしなければかなりの人的被害が出ていたのは間違いないのでギリギリ及第点だろうと自らを納得させる
それに奥の手といってもこの某死神バトルオサレ漫画の『No10』の能力
『
これにはさらに奥の手があるのでただの卍解までなら見せても問題はないだろうと自分を納得させる
(うむ、大丈夫大丈夫!セーフだセーフ!!)
―――――――――ちなみに、このような自分にとって不都合な事実などを、一見すると少し論理的であるようにも見えるが実際は不合理な説明によって覆い隠そうとする心の働きを合理化と言う・・・
―――――――――閑話休題
・・・先ほどから姿の見えないお嬢に関してだが、実は途中で分断された
別にダンジョンの罠とかではなく、あの一年前に襲ってきたイシュタル・ファミリアのガマ蛙女ことフリュネ・ジャミールとダンジョンの中でバッタリ遭遇、そこから無茶苦茶理由のイチャモンをつけられて襲われたのだが―――――――――
「ここは私に任せて先に行って!」
時間がない事もあってお嬢がガマ蛙とバトルことになった
でもお嬢、そのセリフは死亡フラグだからやめれ
「私もすぐに追いつく!」
さらにフラグを建てていく!?
いや、最近はフラグを建てまくれば逆に安全とか言われてたし大丈夫だろう・・・大丈夫かなぁ・・・
なんてことを考えている間にもカエル女がこちらにも攻撃を仕掛けてくる
「ゲゲゲゲゲゲ!行かせるわけねぇだろうがぁああああ!!」
「『
「くそがぁ!?」
相変わらずお嬢の風の付与魔法は俺から見てもかなりチートな威力と燃費の良さだ
情報通りならこのフリュネは既にLv.4にランクアップしたはずだというのにそれと互角にやり合えている
(これならばマジで大丈夫そうだな)
「カイト!早く!!」
「・・・うっし!じゃぁ任せたぞお嬢!キツくなったら全力で引けよ!!」
「ん!!」
お嬢がフリュネを吹き飛ばした合間に駆け抜ける
「待ちやがれぇええええクソがぁああああーーーーーーー!!!」
(待てと言われて待つ馬鹿がいるかアホウ)
そういって武器同士の激突する戦闘音を背にして『念』も全開のフルブーストで戦線を離脱した。
――――――――――なんてことがあったのが半日前
そこから中層の街で軽く補給と最低限の休息を取ってここまで駆けつけたわけだが、間に合いはしたがぶっちゃけコンディションは全快時の七割ってところだ、この状態で階層主相手にほぼ無傷で勝利はかなり運が良い
「・・・さーて、と・・・そいじゃいっちょ運が良い勢いに乗ってこのまま派手に雑魚掃除と行きますかねぇ?」
――――――――――などと調子に乗ったのがいけなかったのだろうか
「っっづぁ!?」
俺の腕から突然血が噴き出した
俺が直接攻撃を受けたのではない、攻撃を受けたのは『
この能力、というか刀は大きく分けて二段階の変化がある
まずは始解と呼ばれる第一段階『天譴』
こいつは俺と動きがリンクする巨大な腕と刀を一時的に出現させるという単純明快な能力だ
そして第二段階の卍解『
これは始解で出現する部分を全身状態にしたものだ、始解時に比べその力は数倍というとんでも能力なのだが、結びつきが強力になりすぎて顕現した明王が傷つくとそれとリンクしている自分もダメージを負ってしまうというデメリットも存在する
そしてその明王に傷を付けたのは――――――――
「ひひっ」
その口に怒りと狂気を孕ませつつ歪な笑みを浮かべるのは闇派閥筆頭
「ひはははははは!!なんだぁ!?こいつはぁ!?ただの木偶の坊じゃねぇか!?さっきの階層主との戦闘はマグレか何かだったか!?」
【殺帝】ヴァレッタ・グレーデ
人でありながら直接的な戦闘力なら先のアンフィス・バエナと同等とされるLv.5
それが次々と明王の身に傷を付けていく
「っつぅう!?あいつまさかヴァレッタかよ!?」
明王の弱点は簡単である、その巨大さに任せた力を活かすことができない自らよりも遙かに小さい相手だ
それが単騎であれば人がハエ相手に包丁を振り回すようなものだ
加えてその相手がLv.5となればハエではなく猛毒を所持している蜂といったところだろう
しかもその蜂は頭が回り常にこちらの動きを読んで回避と攻撃を仕掛けてくるときたら、もはや一方的なリンチだ
(よりにもよってこいつか!明王と相性悪すぎるっ!?)
まさか、襲撃にこいつが参加していたとは予想していた中でも最悪のパターンだ
ただし、このままならという条件でならだが
「ぬぅっ・・・づうぅう!?」
「ひゃはははははオラオラオラアアアアどうしたアタシはこっちだギャハハハハハ!!」
身体中に決して浅くはない傷が次々と生まれていくが何とか根性で耐える
(タイミングが大事だ・・・耐えろ俺!)
「おらぁあああああァ!」
横腹から鮮血が舞う
(ぐっ!?・・・・まだだ!)
太股の後ろに突き刺すような痛みが突き抜ける
「っづうう!?」
(まだ、だめだ!)
そして背中からも血が飛び散る
(もう少し!!)
何とか耐えて身体中が血に染まるのではと思ったとき
攻撃の癖とタイミングをようやく掴んだことで好機が訪れた
(っ今だ!!)
「始解・『天譴』!」
肩口に下から上に走る傷が生まれた瞬間を狙って卍解状態を解除する、
そうするとどうなるのか?
「っなんだと!?」
答えは簡単だ、今まで明王を足場にしつつ斬りかかっていた所でその足場の消失、
しかも最も高い場所での足場の消失のため滞空時間は他の部位にいた時よりも長い
その結果、比較的長い時間、空中にヴァレッタだけが取り残されることになった
そしてギルドやフィンから聞いた情報が確かならヴァレッタには空中で素早く動けるようなスキルや魔法は持っていない
つまり
「断ち切れぇぇええええ『天譴』ーーーーーー!!」
「てめゲァ!?」
無防備な背中から
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《side:リュー・リオン》
故郷にある森でよく見かけた光景を思い出した
二股に分かれた見た目が特徴の珍しい気に生える葉っぱだ
根元に近い部分が二股に分かれているせいで木から散る際にクルクルと回転しながらゆっくり落ちる
そういった光景が特徴の見る者を飽きさせない木だ
散った葉は風が吹けば回りながらかなりの距離まで飛んでいくおもしろい木だった
ただし
今自分が見た光景ははそんな幼少の頃の可愛げのあるものでは決してない。
人の上半身が先ほど語った木の葉のようにクルクルと回って遠くまで吹き飛ばされる陰惨なものだ。
(・・・あっけない)
「長年、と言ってもいい怨敵であっても死ぬときはあっさり逝くもんじゃなぁ」
全員が息を止めるような光景の中、輝夜のあっけらかんとした声が響く
「リュー、ボケッとするな、今だ戦闘中であるぞ」
「む・・・わかっています」
その声に周りの闇派閥達に対して改めて警戒するがあまり意味がない
「ヴァレッタ様が死んだ!?」
「馬鹿な!?」
「すぐに指示を仰ぎに・・・」
「馬鹿者このまま奴らを皆殺しにするのが先だ!!」
「待て!?うかつに動くな!!」
なにせ既に向こうの最大戦力であったであろう、階層主とヴァレッタが消えたのだ
この戦いの趨勢はこちらに大きく傾いたのは誰の目にも明らか、その証拠に闇派閥の下級団員は見るからにうろたえ始めていた
「っ!?待てお前ら!なんかくるぞ!?」
そんな混乱の最中、私の隣に『彼』がどこからか跳躍してきたのか音もなく着地した
「よっと、・・・おまたせ」
「あ、ジョーカー、おひさ~!」
「おひさ~」
「「「ぎゃああああああああああああ!?」」」
闇派閥の団員が一斉に後ずさる中、アリーゼとジョーカーがのほほんとした会話を繰り広げていく
「アリーゼ、死者と怪我人はどんくらい出た?」
「あなたのおかげで幸い死者はゼロ、ただし怪我人は多数ってとこねー」
「仏さんが出てないなら僥倖だろ・・・ちなみにフィルヴィスは?」
「あら?あらあら?やっぱそういうこと?え、そういうこと~?」
口に手を当ててウフフフフとでも言うかのようにジョーカーに詰め寄るアリーゼ
(あぁ・・・アリーゼの悪い癖がこんなときに・・・)
人の恋路に口を出すのが大好きなアリーゼが極上のネタに食いつく
(というか、先ほどまでの緊張感はどこへ行ったのか・・・)
ついさっきまで自分たちは死闘を繰り広げていたはずなのに今のこののほほんとした空気は何なのだろうか
「何を勘違いしているのか知らんがあんたの考えているようなことはないと断言しておくぞ、普通に大事な仲間が心配で助けにきたってだけだ」
「え~~~?ほんとに~~~~?」
「ほんとに~~~」
(なんでしょうかこれ、なんでジョーカーはこんなにもアリーゼと打ち解けているのでしょうか・・・)
そんなキャッキャッウフフな空気が辺りに蔓延しそうになったとき---------
『同士達よ!!撤退せよ!!その後予定通りに例の物を起動させるのだ!!』
声が響く
「ちっ、
「え、なに?あいつまでいんの?こりゃマジで上の方はハチャメチャになってんな・・・」
(・・・上の方?)
「どういうことじゃ?」
闇派閥の構成員が撤退する中、残った大量のモンスターを掃討しながら会話は続く
「あー・・・今回の襲撃にかなりの規模の人数が割かれるって気づいたうちの団長がさ、フレイヤとガネーシャ、その他複数のファミリア共同で大規模な電撃掃討戦を展開中でな、たぶん今回の騒動で闇派閥の連中かなり痛手を被るぞ」
日常的な会話のように話しているがそれと同時に聞こえてくるのはモンスターによる断末魔の重奏
ジョーカーのスキルなのか魔法なのかはわからないが、先ほどの巨人の腕と剣が現れ瞬く間に大量のモンスターが両断されていく
「ふん・・・儂らは囮といったところか、気にくわんのう!」
輝夜を囲おうとしたモンスターが飛びかかってくるが居合いによって細切れになる
「まぁまぁそう言わない、一応こうやってジョーカーが救援に来てくれたんだから」
アリーゼの剣がそこからさらに襲いかかってきた敵を切りつけ
「ふっ!!」
入れ替わるように私が隙間なく攻撃の手を加える
「そう言ってくれるとこっちとしても精神的に助かる」
そう言ったときのジョーカーの顔は非常に複雑な表情だった
・
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そうやって残ったモンスターを掃討しきるのにはジョーカーという戦力を持ってしても数分を要した
「ようやく終わったかー」
「なに、お主のおかげでこれでもずいぶん早く終わった方じゃ」
(確かに・・・彼がいなければ危なかったかもしれない)
「あちゃ~、今から追ってもさすがに追いつけないか-・・・って!?」
既にかなり遠くまで退却している闇派閥の者たちを追撃できずに傍観していると突如の爆音が連続で辺りに鳴り響いた
(入り口が!?・・・いや、それだけじゃない、これはかなりの広範囲で爆発が起きている)
「うっわ~やることがみみっちなぁ・・・あいつら作戦失敗したからって最後の嫌がらせに入り口や通路を爆破していきやがった」
「あのまま追いかけてたら巻き込まれてたわね~」
「モンスターに足止めされたおかげで逆に助かるとは、いやはや素直に喜べんのう」
「それにしてこの爆発どんだけの火炎石仕込んでたんだよ、まだ連爆してん・・・ぞ?」
ジョーカーがそう言った後すぐにようやく爆発音が病んだ
「ようやく火炎石が尽きたみたい―――――――」
ね、とアリーシャが言おうとした瞬間
―――――――――――――――――――――ダンジョンが哭いた。
はやく最新刊が読みたいなぁ