次の話が長くなりそうだからちょい短めだけど投稿!
ようやく一息つけるかと思った矢先の異常
黒板に爪を突き立てたかのような不快な高周波は下層全体を巻き込んで発せられていた。
その場の全ての生きとし生けるものがその音から感じるのは『悲鳴』『慟哭』そして最も強い感情
――――――――――――――――『憤怒』
どうしようもない自然から一定の個人に対してにのみ向けられる殺意は全ての生き物を恐怖で動けなくしてしまう。
これから起こるのはただの狩猟 殺戮 虐殺 蹂躙
対して希望は一つのみ
――――――――――――――これにハッピーエンドなどあり得ない 。
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それは下層でも中層に近い、しかし、誰もいない広大なルームの壁から染み出るように産まれた
「――――――――――――――」
産声はない
その代わりに発するのは全てに対する殺意のみ
「――――――――――――――!」
身体を動かす
まるで油を差していなかった鉄細工の引き絞る様な音が鳴り響く
それはまるで睡眠から目覚めたばかりの獣がする伸びにも見える光景だった
「――――――――――――――・・・・」
後に静寂になったかと思われた瞬間
「■ ■ ■ ■ ■ ■ ーーーーーーーーーーー!!!!」
砲口
爆発
強大な水柱を上げてその場から姿を消す。
向かうは上ではなく下
踏み荒らすかのような進軍が開始した
「やめろくるなぶぇぁ!?」
それの最初の獲物になったのは闇派閥の構成員、それもただの構成員ではない
地上でフィン達の作戦によって自らの主神が天界に送還されたためにステイタスが一般人と変わらなくなってしまった哀れな者達だ
彼らは逃げる同胞の中でもその脆弱さから脱出の際に取り残され、それから逃げることを優先した『
「助けてく開けぁアピュ!?」
「くそgゲア!?」
「おわりだおわrpぃ!?」
「ああアアアアアハハハハハハハハハハハプひ!?」
助けを求める者、抵抗する者、諦める者、狂う者
砕かれる者、裂かれる者、食われる者、弄ばれる者
皆一様に最終的に同じ結末を迎えていく
そして絶望はついに下層の最下層
『
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それに気付けたのは偶然ではない
ダンジョンの異常鳴動
そして先ほどから『
それにより真っ赤に染まる巨大湖
全員が感じさせられた
まるでキツい香水の原液を頭から被せられたかのような感覚だ
香りは当然『死臭』というなの激臭だ
ただそこにいるだけで不意に身体がブルリと震える
――――――――今にも迫り来る死の香り
「アリーゼ、こいつは・・・」
「ええ・・・かなりヤバい、すぐにここから脱出するわよ」
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アリーゼ達と短い協議の末、早急に下層から脱出することを決めても誰からも反対意見が出なかったのは不幸中の幸いだったのだろうか
「アストレア・ファミリアは前衛と中衛を頼む、俺はフィルヴィス達と殿を勤める」
「大丈夫なの?」
「ああ、幸い俺は索敵系のスキルがあるんでな半径150から200メドルくらいからの奇襲なら知覚できる、一緒に殿を勤めるなら俺の動きを知ってるフィルヴィスがいた方が他の奴らも守りやすい」
それを聞いて驚く者もいれば呆れる者もいる
「先ほどの攻撃手段に加えてそんなことまでできるのか・・・お主が『
「それでもさすがに一人じゃキツいでしょ、・・・リオン、カイトと一緒に殿をお願い、輝夜は殿寄りの中衛で二人をサポートしてあげて」
「・・・了解しました、『
『疾風』がペコリと頭を下げてきたので、こちらも軽く挨拶する
「おう、こっこそよろしく頼む」
(そういや『疾風』の声、初めて聞いた気がすんな・・・つーか本名はリオンって名前なのか・・・知らんかった)
「くくく、『
「うるさいですよ、輝夜」
ギロりとリオンが輝夜を睨むと、おぁこわ!と言って輝夜は中衛パーティに混じっていった
「・・・カイト」
輝夜とすれ違うように近くに待機していたフィルヴィスがこちらに向かってくる
「フィルヴィス、話は聞いていたな?」
「あぁ、私たちとお前、そして『疾風』とで殿を勤める」
「そういうことだ・・・すまんな、勝手に損な役回りを回しちまって」
「かまわんさ、どうせ誰かがやらねばならないことだ、それなら最も索敵能力の高いお前、そしてそれを熟知している私がサポートに回るのは最も無駄のない編成だ」
「助かる」
「それと・・・」
「ん?」
「・・・た、助けに来てくれて・・・あ、ありがとう」
「「「「!!??」」」」
そんな素直すぎる言葉を聞いたデュオニュソス・ファミリアの面々が固まる
(おいおいおいうちの団長顔が真っ赤だぞおい)(うわ団長かわいい)(え?まじで?あれ団長?)(うわぁ団長やべぇぇええ)(どsふいあそいdjf;あs;!?)(団長、頑張りましたね ホロリ)
「フィルヴィス」
「な、何だ・・・ん!?」
ポフンとかるく頭に手を乗せる
「お前さんと俺は所属するファミリは違えども大事な仲間で
「ピョ!?」
気にすんな、とでも言うかのように軽く笑っただけなのだが
何かがフィルヴィスにクリーンヒットしたらしく
ボボボンとフィルヴィスの顔からなんか出た
「ちょ、フィルヴィス!?大丈夫か!?まさかさっきの戦闘でどっか怪我を――――――――」
「ひゃわぁ!?大丈夫!大丈夫だからぁ!?」
そんな光景を見ながらアリーゼが呆れる
「うっわ、大変ねぇフィルヴィスちゃんも」
「・・・何のことですかアリーゼ? 美しい友情ではないですか」
「リオンあなたもカイトと同じ側か~・・・」
「?・・・それよりも急ぎましょう」
「そーね、空気もいいかんじになったし・・・急ぎましょうか」
そんな危機的状況で短いながらも少し和やかな会話が交わされた
彼ら彼女達はこのときの会話は忘れるだろう
彼らはこの後のことは永遠に忘れられないだろう
彼女はこのときのことを忘れたいだろう
――――――――下層の調査団は『最期の日常』を楽しんでいたのだから
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そこからはとんとん拍子で事が進んだ
メインに爆破された通路とは逆の通路なら生きているかもしれないと考え移動を開始
運の良いことにその考えがドンピシャ当たり、かなり遠回りではあるが上に行く道を見つけることができた
なんとか通れる通路を見つけて脱出している最中
「カイト、これを飲んでおけ」
「お、サンキュー」
フィルヴィスから手渡された試験官には
手持ちのポーションは先ほどの階層主とヴァレッタとの戦闘で全て使い切ってしまったのでかなり助かる
「
「常時張ってるからな、ちときつい感じだな」
「?・・・なんの話ですか」
気心の知れたフィルヴィスとの会話の内容がわからないのか
『疾風』ことリオンが質問をしてきた
「俺の索敵スキルは
「なるほど、つまり今はそのスキルを」
「あぁ、範囲を全開にして常時使用して――っフィルヴィス!」
「ぐ!?」
「な!?」
近くまで来ていたフィルヴィスとリオンをまとめて突き飛ばす
何かがヤバイという雰囲気は異常な高周波を聞いてから感じてはいた、だからこそ普段はやらないオーラの消費を無視した全開の『円』で警戒していた
だから気づけた
気づけた
なのに
気づけたのに間に合い切れなかった
フィルヴィスは守れた、リオンも無事だ
だが
「っっううううああああああーーーーーーーーー!?」
俺の左腕が宙に舞っていた。
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《 side:『疾風』リオン 》
アリーゼと『
道中では『
自分たちの村の外を下に見る故郷の雰囲気が嫌でオラリオまで来たのにも関わらず、顔を隠し、他人との接触を嫌ってしまう自分との違いに憧れを禁じ得ない
だから私は勇気を出して会話に入ってみた
――――――――――――――――――――――――だからなのだろうか
輝夜はよく言っていた
「馬鹿が珍しいことをすると雨や雪、ひどければ大嵐が起きる」と
私が珍しいことをしてしまったからなのだろうか
まず最初に
『
私のせいで『
私のせいで輝夜は利き腕を斬り落とされた
私のせいでギリギリだった戦線が崩壊した
私のせいで仲間が次々と殺されていった
私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで--------------
私が
アリーゼを
殺した
《 side out:『疾風』リオン 》
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次回はガッチガチのバトル
前後編に分けるかも?
('◇')ゞ