修理が終わったその日に外付けハードディスクがボン!!
そしてとどめに大腸炎で入院!!
俺が何をしたというのだ…………
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《side:レフィーヤ・ウィリディス》
「ウィン・フィンブルヴェトル!!」
私の『
「「「おおおおおぉおおおーーーーーーーっ!!!」」」
私の呼び出した魔法
その威力に抑えられぬ驚きを感情と声に乗せて周りの者達が声を上げる
そう、ここはダンジョン――――――――――――――――
「じゃあ嬢ちゃん、次も頼むぜぇ!!」
「は~い…」ゼェゼェ
――――――――で は な い
場所はオラリオから最も近い港、『メレン港』
目の前には私の魔法によって瞬間冷凍された新鮮な魚介類の数々が広がっています
周囲には全身が日に焼け健康的な小麦色のムキムキマッチョな漁師の方々……マジで帰りたい
「こっちだ、嬢ちゃん!!」
「い、今行きま~す…」フラフラ~
なぜ私がこんな所でこんな雑用みたいなことをしているのか
今から時を遡る事 二日前――――――――――
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私が三つ目の魔法を発現させてから二ヶ月
地獄の特訓を乗り越え、とりあえずギリギリ及第点でリヴェリア様の魔法が使えるだけにはなりました
(ふぅ…少しは使用にも慣れてきましたね……ん?)
訓練で私が魔法を使用するのを見て師匠とリヴェリア様がなにやら密談をしていました
「もうそろ…メレ…に……ククククク」ヒソヒソ
「そうだな…だがい…魔ほ…しの取り分……フフフフ」ヒソヒソ
こ、怖い…っていうか絶対良からぬことを考えてますよこれっ!
「あ、あの~…お二人とも、何か…?」
意を決して二人に声を掛けました
「「いや、なんでもないぞ」」ニッコリ
絶対に嘘だーーーーーー!!
「嘘だ!絶対に嘘ですよ!!お二人とも何か新たに企んでましたー!!何ですか次はどんな訓練ですか!地獄のその先がまだあるって言うんですか!?」
「おいおい被害妄想がすぎるぞ?」
「既に被害にあってるから言ってるんですよ!」
シャーっと師匠に警戒する私
この一年間のことを考えれば当然の警戒心です
「落ち着けレフィーヤ」
「うぅ、ですが・・・」
師匠とギャアギャアと言い合っているのを見かねてリヴェリア様が仲裁に入ってきました、さすがにリヴェリア様には正面切って文句が言いづらいです
「やれやれ、このバカ弟子は何を勘違いしているのかねぇ、俺とリヴェリアは頑張ったお前に何かご褒美でもやるかどうか話してただけだっての」
「え・・・う…うむ、最近のレフィーヤへの頑張りに何か報いるものでも用意しようと話していてな」
「とりあえず、今日は俺が特性のデザートでも作ろうと思ってな…何か希望とかあるか?」
「え!?」
な、なんでしょうリヴェリア様はともかく師匠が優しいですキモチワルッ
「……罠?」
「失礼な、心優しい師匠の気遣いを何だと思ってんだ」
この日の夜
夕食後、本当に師匠お手製のデザートが振舞われました
「え!?ちょっ、カイト何それ新作デザート!?」
「私も食べたーい!」「私も!!」「自分も食べたい」
師匠の料理の腕はファミリア内なら周知の事実
師匠がデザートを出した瞬間に甘いものに目がない方々が次々に集まってきます…ですが
「わりぃが今日は馬鹿弟子へのご褒美なんでな、一人分しか作ってないんだ」
「「「「ガーーーーーーーン!!」」」」
師匠の無慈悲な一言に全員が絶望の表情に…あんまりそういう反応されると食べにくいのですが…
「それに、まだ未完成品の試作段階でなー、全員に振舞うときはもっと仕上げた完成品を出すから勘弁してくれ」
「えぇ~」「はぁ、仕方ないかぁ」「残念」
他の皆さんも新作の試食という名目と師匠の説明によりとりあえずは納得したのか残念そうに食堂を後にしていきます
「…何か申し訳ないですね」
「アホ、こんなことくらいで遠慮すんな、パクッといけパクッと、ちなみにこのお菓子の名は『水マル餅』だ」
「へぇ~、餅って確か少し前に師匠がお米で作ってた奴ですよね」
「あぁ、だが食感が似てるから餅って付けてるだけで材料は全く違うぞ」
「でしょうね」
なにせ以前見たことがある餅とは似ても似つかない
見た目は文字通り水のように透き通った半球体、そのため何かしらの具が入っているのが透き通って見える、食べるのが少し勿体なく思えるくらいには美しい
「ちなみに中身は何ですか?」
「それくらいは食べてからのお楽しみでいいだろ…あ、きちんと細かい感想も頼むな」
「わかってますよ」
師匠は何か作った際には必ず食べた者からおべっかなしの感想を求めます、そして次に同じものが出た際には必ずその感想を元にグレードアップした料理が再登場するので美味しいものを食べるためにも素直で率直な感想を伝えなければなりません。
ちなみに食レポで一番師匠の評価が良いのは団長とベートさんだったりします、付け加えるならベートさんはその見た目や言動の荒々しさからは想像できないくらい料理上手、このファミリアに入団した女子はまず自分より遥かに料理の腕が上の師匠、そしてとどめとばかりにベートさんの料理で女子としてのプライドを粉々にされます。かく言う私もその一人でした
「では、さっそく」
「おう、頂け」
竹で出来た楊枝でパクリ
(…………んん~~~美味しい~~~!!)
口に含んだ瞬間に肌に張り付くようなしっとりとした不思議な食感、噛みしめると中から出てくる甘味が透明な餅部分と見事なマッチング、中身の正体は餡子と呼ばれる甘味、よく師匠がお菓子作りで使用する具材です、あぁ今回のお菓子にも非常に合っていて美味!!
師匠の料理の腕を知ってはいても美味いと思わずにはいられません
何でしょうね、初めての食感と味に例えるべきものが見つからず原始的にただ『美味い』という陳腐な言葉でしか言い表せません、くっ、自身のボキャブラリーの無さに無知を禁じ得ません
「で、どうだ? 個人的にはもうちょい大きく作るか透明な餅部分を厚くしてもいいかなと思ってるんだが」
「んー、そうですねーそこら辺は個人で趣向が違ってくると思いますけど、私的にはむしろ一口で食べやすいようにもう少し小さくてもいいかなって思います、あ、でも餅部分の厚みは今ぐらいがちょうどいいです」
「なるほど、ふむふむ『エルフ 女性 十代の意見』っと」カキカキ
あ、出ました、師匠の『丸秘ノート』
師匠はこうした感想や意見をレシピを書いてるページに書いたり貼り付けたりして独自の料理本を作ってたりします、一度見せてもらおうとしたら「将来の商売道具だから絶対ダメだ」と見せてくれませんでした
ちなみに無理矢理見ようとした者は師匠のアイアンクローで物理的に殺されかけたそうです・・・まぁ私なんですけどね
出されたお菓子は二つ、残りの一つもパクりと頂く
(あ、こっちの中身はチョコなんですね、同じ色に見えて気づかなかった)
「そっちはどうだ?」
「んー・・・どっちも美味しいですけど・・・個人的には・・・う~ん・・・・・・餡子・・・の方?が好みかなー・・・いえでもチョコはチョコで美味しかったですし・・・」
「成る程、比較的にやはり水餅には餡子が合うか・・・となるとチョコやカスタード、ジャムといった具材別の餅生地を作るべきかもしれん・・・見た目も煌びやかになるしな」
「そ、そこまでするんですか・・・」
「馬鹿野郎、料理人の料理に妥協などない!」
いや、あんた冒険者でしょ
「さて、と・・・ほれ、その茶菓子に合う緑茶だ」
「あ、ありがとうございます」
緑茶の味と温度も計算されたように心地よい
本当に今日は至れり尽くせりです
こんなプチ贅沢ができるならこれからも頑張ろうと思えました
そう、そして――――――――――――
「ん~、確かにこのお茶、このお菓子に合いま―――――――ウッ!?」 バタリ
「クックックッ計画通り・・・さ~て準備準備っと……にしても良く効くなぁ
―――――――――――そんな幼気な小娘の気持ちを踏みにじるのが私の師匠なのですよ
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ご褒美のデザートを食べた次の日
(……ん…んん?揺れ…てる?)
少し激しい震動で目覚めました
「よぉ、おはようさんレフィーヤ」
「…………おはようございます」
目覚めた直後に師匠の顔面ドアップ
通常なら少しは気恥ずかしさで顔を紅くするところですが
移動による流れる景色、身動きできない身体 師匠によって担がれている身体
(ナニコレー………)
今の私の心情を表すとするのなら 怒り2・呆れ3・達観3・諦め2
こんな感じ。
「…師匠、いくつか質問があるのですが」
「んー? 別にまだ時間があるからいいぞー」
何でもないというような態度が逆に私の神経を逆撫でします
「これ、どこに向かってるんですか?」
「メレン港だ」
「メレン港?…オラリオ近くのですか?」
「おう、正確にはそこのニョルズ・ファミリアに用があってな」
「はぁ、なるほど…」
とりあえず現状を一つ把握、私と師匠はメレン港に向かっている、目的はどこぞのファミリアに会うこと、と。
「次の質問なのですが」
「おう」
「何で私は師匠に担がれてるんですか?」
「あまりにも気持ちよく寝てたから起こすのも忍びないと思ってなー」
「ほほ~う…私の記憶に寄れば師匠に渡された飲み物を飲んでからの記憶がないのですが」
「気のせいだろ~HAHAHA!」
「~~っ!何がHAHAHAですかっ!この鬼畜!!ついに盛りましたね!?人としてやっちゃいけないライン超えたなこのアホ師匠!?っていうか一応上級冒険者である私の状態異常耐性が効かない薬ってどんだけやばい薬を盛ったんですか!?」
「いやぁ、新薬を試してみたいな~って」
「弟子で人体実験しないで下さい!」
「アミッドが」
「アミッドさぁぁぁぁぁあああん!?」
脳裏にフフフフフと微笑ましく笑いながら手を振る知り合いの姿が思い浮かぶ
――――――――――――そして現在
私はメレン港の市場付近の倉庫でただひたすらに魚介類に冷凍魔法を撃つだけの冷蔵魔道具になっています
ちなみに師匠はメレン港に到着するなりニョルズ・ファミリアの方々といくつか交渉をした後、私に過酷な命令だけして先日から大量の漁船団を率いて遠洋漁業に行ってます・・・何やってんですかねあのアホ師匠は
(そして私も何やってんですかね・・・)
そう思いつつヤケ酒の様にポーションを一気飲み
(うぅ…マインドポーションの飲みすぎでお腹がチャプチャプですぅ~…)
ちなみに既に4本のマインドポーションを消費済み
小食の私には液体とはいえ結構キツいです
(…そういえばポーションを吐いたら回復した分の
・・・・・・・・・・・・。
ギンギラギンと容赦なく照り付ける太陽
そして師匠によって言いつけられた過酷な労働環境
この二つが私の頭を極限までアホにしていました。
そんな極限状態のとき―――――――
「おいおい、お前らこの娘を少しは労れ!」
とある方が声を掛けて下さいました
「す、すんません、魔法がすごくって・・・つい」
「つい、じゃないっての、ったく・・・『
フラフラの私を見かねて声を掛けてくれくれる方
「ニョ、ニョルズ様」
「おう、今日はもう十分だ!あいつらに代わって礼を言わせてくれ!」
メレン港に根を張る漁業専門ファミリア
ニョルズ・ファミリア主神、ニョルズ様、本人でした。
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「ほれ、取れたての魚だ」
そう言ってニョルズ様が手自ら七輪で焼いてくれた焼き魚を串に指して渡してくれます
「あ、ありがとうございます」
疲れ果てていた私はすぐに目の前で香ばしい香りを撒き散らしている焼き魚に被りつきます
(あぁ、美味しいですぅ~)
半日ぶりの固形物、口当たりの甘いポーションばかりガブガブ飲んでいたこの身に魚の塩分が染み渡る
「しっかし、あいつらが無理させてすまんな」
「い、いえ」
むしろ神にそこまで謝られるとこっちの方が恐縮してしまいます
「うちは基本ダンジョンに潜らない[生産系ファミリア]だからなぁ、最高レベルでも第三級しかいない…お前さんみたいな強力な魔法を見れる機会ってのは貴重でさ、良い歳した奴らまで一緒になってはしゃいじまってる」
「そう…なんですか?」
「ああ、あの『
「…?…憧れ?」
「ん?お前さんのことだぞ、『
「……はえ?」
ニョルズ様に言われた言葉が頭の中をすり抜けて理解するのに数秒かかった
「団長達ならまだしも私が憧れだなんてそんなこと―――――――」
「いやいや、十二分にあるぞ、これだけの魔法が使えるんだ誇ってもいい、それは神である俺が保障する」
「あ、ありがとうございます」
あまり誉められるということがないため手放しの称賛に照れてしまいます
「カイトもお前さんも謙虚が過ぎるぞ? お前さん達のおかげで俺たちメレンの住人はすっげぇ感謝してるんだからよ」
「そうなんですか?」
「あぁ、お前さんの魔法で凍らせた魚介類の氷は融けにくい、おかげで遠方の街まで運ぶ際に使う冷凍魔道具を使用しなくて済む、これだけでかなり経費が浮くし、カイトが護衛として漁へ一緒に付いて行ってくれるだけで普段は行けない危険な遠洋まで魚を捕りにいけて漁獲量が一時的にではあるが全盛期以上だ・・・本当にお前さんたちには感謝してもしきれないんだ」
師匠、「ガッハッハッハ!」と船に乗って何しに行っているのかと思っていましたが船の護衛だったんですね
「師匠ってほんと色んなことに手を出してるんですねぇ…」
「おかげでこっちは助かってるんでな、カイトの多趣味多興味に感謝感謝だ、…っと噂をすれば何とやらだ、あいつらが帰ってきたみたいだな」
そう言って視線を向けた先を追うと確かに大量の船が着港し始め、港のほうが少し騒がしくなってきていました
そんな、どこかのどかな光景を眺めているとふいにニョルズ様が言ってきました
「…『
「はい?」
「今回カイトがお前さんを連れてきたのはおそらく引継ぎのためだ」
「引…継ぎ?…え、なんで」
「カイトの弟子なんだから聞いてるだろう、あいつはいずれロキ・ファミリアを離れる、その際にうちとのパイプ役がいなくならないようにお前さんを連れてきたんだと思う」
「そ、そんな…」
もし師匠がファミリアから抜けたら大幅な戦力ダウンとなるだけではない
ダンジョンで師匠VS三幹部を除いた全員というの地獄の大訓練の廃止
それだけでなく私の極限訓練もなくなり、今回のように薬の実験に使われたあげく拉致されることもなくなり、そしてさっきまでのように冷凍魔道具代わりに魔法を連発させられることもなくなる
……あれ、それって
あえてマイナスがあるとしたら師匠の料理が食べられなく、いや待てよ? 師匠がファミリアを出て行くのはお店を持つ準備が出来てから、ということは、だ
師匠の料理はそのお店で食べることが出来る……あれあれあれ?
師匠が出て行く際のデメリットがなくなくなーい?
「「………………………」」
しばらくの沈黙
ニョルズ様は何を思ってか少し悲しげな表情で潮風になびかれていますが、私は絶賛効用計算で脳内がフル回転していました
「…ニョルズ様」
「ん?」
「私、師匠の夢を全力でお手伝いします」
「そうか…カイトは良い弟子を持ったな」
ニョルズ様がとても憂いを含んだ笑みで言ってきます
あ、いえ、そんな良い話じゃないです、めっちゃ私情の入った理由で手伝うんです
おっふ、ニョルズ様の優しい笑みが良心に突き刺さります。
そんなとある日のとある午後で割りとどうでもいいやり取りがありましたとさ
《side out:レフィーヤ・ウィリディス》
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くぅ、書きたい話が多くてベルが出てこねぇ