【改定版】魏√after 久遠の月日の中で   作:ふぉん氏

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毎度サブタイトルには悩まされます……


一刀の受難

時は少し遡り、成都。

一刀が成都を離れた次の日の事。

 

執務室で政務に励んでいた桃香と朱里。

近づいてくる大きな足音に筆を止める。

 

 

「桃香様!」

 

 

勢いよく扉が開き、愛紗が慌てた様子で執務室へ入ってきた。

 

 

「愛紗ちゃん?そんなに慌ててどうしたの?」

 

 

「これをご覧になってください!!」

 

 

興奮冷めやらぬ様子で手を突き出す愛紗。

その手には、一刀が路銀を稼ぐために売ったボールペンが握られていた。

 

 

「これは……?」

 

 

「『ぼうるぺん』というものです。これが凄いのです!見てください、こうやって……」

 

 

「……わっ!すっごーい!文字が書けてるよ朱里ちゃん!」

 

 

すらすらと文字を書く愛紗に、桃香は両手を合わせ驚愕する。

一方、朱里は神妙な面持ちで口を開いた。

 

 

「……愛紗さん。そのぼうるぺんとやらは、何処で手に入れたんですか?」

 

 

「今日城に訪れた商人が、珍しい物と城へ謙譲したんだ。出所については明かさなかったが……」

 

 

愛紗の言葉に朱里は眉をひそめる。

 

 

「……愛紗さん。その商人を初めに、そのぼうるぺんについて情報を集めて頂けませんか。それと魏と呉に伝達の用意を」

 

 

「相分かった。直ぐにでも動こう。では桃香様、失礼します」

 

 

ボールペンを朱里に渡し、愛紗が部屋を後にする。

 

と、桃香はそわそわしながら朱里へ声をかける。

 

 

「朱里ちゃん……そのぼうるぺん、どうするの?」

 

 

「壊してしまっては大変なので、重要物として保管して置きます」

 

 

「えー、私使いたいなぁ……」

 

 

「あはは……ご容赦ください……」

 

 

口を窄める桃香を尻目に、朱里はボールペンを見つめ考える。

 

 

(こんなもの、真桜さんの発明品でも見た事がありません。一体どこから……)

 

 

朱里の記憶に、真桜以上の技術者は存在しない。

得体の知れない物の出現に、蜀の宰相は頭を悩ませる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ休憩にするか」

 

 

早朝に陳留を出立し太陽が頂点に差し掛かった頃、道中が山間部に差し掛かった所で華雄さんが馬を止めた。

華雄さんの視線の先を見ると、木々に囲まれながらも少し開けた場所がある。

確かに休憩には丁度良さそうだ。馬から降り、岩に腰を下ろし一息ついた。

 

 

「しかし驚いたぞ。郷が仕事を手伝いたいなどと言い出した時は」

 

 

そう。俺は今、華雄さんと共に盗賊団の討伐に向かっていた。

昨夜、華琳からの呼び出し断った後に華雄さんにお願いしたのだ。

再会が許されるまでの時間、彼女達のために何かしたいと思ったためだ。

急な申し出にも関わらず、華雄さんは了承してくれた。

 

 

「込み入った事情があってね……今は話せないけど、近いうちに必ず説明するよ」

 

 

「余計な詮索はせんよ。長い間一人旅だったからな。連れが居るというのも、やはり新鮮で悪くない……ん?」

 

 

会話の最中、華雄さんは俺の背後へ目を止めた。

釣られて後ろを向くと、切り立った崖にぽっかりと空いた大きな穴があった。

 

 

「洞窟?」

 

 

山間の洞窟。

盗賊等、姿を隠そうとする者達が根城にする事が多い場所である。

 

 

「ふむ、この辺りで悪い噂は聞いていないが、一応調べてみるか」

 

 

斧を持ち洞窟へ向かう華雄さん。

最小限の荷物を持ち、置いて行かれない様急いで後を追った。

 

 

 

 

 

洞窟の中は比較的明るく、松明の必要がなかった。

天井や壁から差し込む日の光が光源となっていたのだ。

 

人の気配を全く感じず、歩み進めて数刻程経った。

これ以上進んでしまうと、戻るのが大変だ。

 

 

「華雄さん。ここは問題なさそうだ。引き返そう」

 

 

「……そうだな。戻ろう」

 

 

少し前を歩く華雄さんが振り返り、こちらへ歩いてくる。

 

 

ポチッ

 

 

「……何の音?」

 

 

「何だこれは?」

 

 

華雄さんの足元が不自然に沈んでいる。

足を離すと、地面の一部分が正方形に隆起した。

 

これは……スイッチ?

 

突然、地鳴りと共に洞窟が揺れる。

 

 

「ッ!何が起こった!」

 

 

「華雄さん!前!」

 

 

前方から転がってくる巨大な岩。

身の丈の数倍はあり、地にバウンドする毎に洞窟全体が揺れていた。

 

 

「ふん、面白い」

 

 

斧を構える華雄さん。まさか……

 

 

「無茶だって!逃げないと……」

 

 

「やってみなければわからんだろう。それに、もう遅い」

 

 

巨大な岩は既に華雄さんの眼前に迫っていた。

急いで向かうが、間に合わない。

 

 

「おぉおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

横の一閃。

あまりにも速く、その孤影すら朧気にしか見えなかった。

大きな破砕音と共に、砕け散る岩。

 

しかし

 

 

「んなッ!」

 

 

華雄さんが破壊した岩の破片が、後ろに居た俺に降り注いできた。

急ぎ木刀を構える。

大きな破片は弾き、小さな破片は砕く。数が多く全ては処理しきれなかったが、擦り傷程度で難を逃れた。

 

 

「す、すまん!大丈夫か!」

 

 

「死ぬかと思った……」

 

 

慌てた様子で駆け寄る華雄さん。

返事のついでに文句の一つでも言おうと、歩み寄る。

 

 

「大丈夫。でも少しは考えて……」

 

 

ポチッ

 

 

……嫌な音が聞こえた。

言葉を止め、自分の足元を見ると、先程の華雄さんと同様不自然に地面が沈んでいた。

 

再び、地鳴りと共に洞窟が揺れる。

 

 

「……ごめん」

 

 

「ふ、これでお相子だな。逃げるぞ!」

 

 

二人で駆け出す。

道なりに全力で走る。

岩との距離はどんどん詰まっている。

と、前方に出口の光が見えてきた。

 

 

「飛び込め!」

 

 

華雄さんと共に外へ飛び出す。

地に滑ると思いきや、浮遊感が体を包む。

何故か。単純な話、地面が無かったのだ。

 

空に悲鳴を響かせながら、俺と華雄さんは落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

背に衝撃を受け、身体が沈み込む。

肺から空気が絞り出されるが、呼吸がままならず水中にいる事に気付いた。

必死に四肢をかき何とか水面に顔を出す。

 

 

「ぶはっ!……はぁっ……はぁっ……華雄さん!」

 

 

「だ、大丈夫だ」

 

 

同じく水面から顔を出す華雄さんを見つけ安堵する。

川の流れは緩やかで、沿岸まで泳ぎ一息つくことが出来た。

 

座り込み息を整えていると、辺りに漂う硫黄の匂いに気が付いた。

 

少し離れた所。水たまりというには大きいその場所からは、湯気が立ち込めている。

歩み寄ると匂いが一層強くなった。手を入れて温度を確かめるが少し熱いくらいだ。

 

 

「ほぉ……温泉か。服も荷物も濡れてしまったし、丁度いいな」

 

 

いつの間にか隣にいた華雄さんが、言葉と共に服を脱ぎ始める。

 

 

「ちょ、華雄さん!着替えるなら向こうで……」

 

 

「固いことを言うな。私の様な無骨者の裸など、興味無いだろう」

 

 

半裸になり脱いだ服を岩にかける華雄さん。

見え隠れする胸や秘部から視線を離せず、劣情を催すのを止められない。

 

 

「……何を見ている。郷も裸になるといい」

 

 

「……はぁ。わかったよ」

 

 

態度を改める気が無い華雄さんに、これ以上言っても仕方が無い。

怒張したものをばれない様に服を脱ぎ、華雄さんに遅れて温泉に浸かる。

 

 

「んーっ!気持ちが良いな」

 

 

「……うん、そうだね……」

 

 

両手を上げ伸びをする華雄さん。野ざらしになった胸が、華雄さんの動きと共にぷるんっと揺れている。

凝視する訳にはいかないが、男の性故に視線を向けるのを止められない。

 

温泉で寛ぐ華雄さんを尻目に、俺は一人悶々とする事しか出来なかった。

 

 

一刀の受難 了




今回の話は、袁家三人組の話で出てきた洞窟をベースにしています。
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