一回戦にも関わらず会場は盛り上がっていた。
「さっきの奴もすっごいタフだったな!」
「頑丈で地味かと思ったけどあの能力、警護の方に向いているな!」
「普通科の奴も洗脳だけじゃなくて体術も身に着けていたな!」
「戦闘経験の差は致し方ないがそれでも最後まであきらめず立ち上がっていた。」
「全く、アイツをバカにした奴らの気が知れないぜ。」
会場の多くのヒーローが二人を称えていた。
「試合どうだった?」
遅れて戻ってきた出久がクラスメイトに聞く。
「心操の負けだったよ。でも多くのプロがアイツの事、褒めちぎってたよ。」
「逆にアイツのこと貶したヒーローはイレイザーヘッドが思いっきり注意していたぜ。こりゃ全国的に人気が落ちたな。」
忘れているかもしれないがこの雄英体育祭は全国中継されている。そのため多くの視聴者やヒーローが見る。会場での発言は人気や支持率に大きく関わるものである。
「会場の熱気が更にヒートアップしてんな!んじゃ次の試合行くぜ!体からいろんなものを創造すんぞ!ヒーロー科、八百万百!
ヴァーサース!影が自分の意思を持って手足のように動くぞ!ヒーロー科!常闇踏陰!」
八百万と常闇が対峙する。
「八百万、お前も、そして他のA組の皆も同じ思いだろう。故に俺は負けるわけにはいかない!」
「常闇さん、それはわたくしも同じですわ。わたくしも負けるわけにはいきません!全力でお相手させていただきますわ!」
「一回戦第三試合!レディィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!START!」
八百万は棒と盾を創造すると常闇に向かい進む。
「行け!ダークシャドウ!」
「アイヨ!」
常闇の指示でダークシャドウは八百万に向かい特攻する。
「常闇さんの弱点は既に知っています!出久さんがチームを組んだ時点で傍聴していましたので!」
八百万は盾の陰に隠していた物を落とす。八百万は腕で目を隠す。すると落としたものが突然発光する。
「ギャンッ!」
八百万が落としたものは閃光弾であった。
ダークシャドウは閃光によって弱る。
(先ほど目を閉じたときに常闇さんの位置は把握していました。目を閉じてどのくらい前に進めばいいのかは頭に叩き込んでいますわ!)
八百万は目を閉じて常闇の近くまで走ると目を開ける。まだ閃光弾が光を発し、まだ視野がはっきりとしていなかったが、常闇の顔が見えていた。
「そこですわ!」
八百万は常闇の喉に目掛けて棒を突く。
「こはっ!?」
常闇はのど押さえ倒れる。
「目がショボショボするわね・・・・・・・ん?ちょっと失礼。」
ミッドナイトが常闇の下へ近づく。
「常闇君、戦える?」
ミッドナイトの言葉に常闇は首を横に振って応える。
「常闇君戦闘不能!八百万さんの勝利!」
ミッドナイトの宣言に会場は歓声で揺れた。
「スッゲー!作り出す”個性“の子、どんな状況にも必要なものを準備できるな!」
「不測の事態にも助かる有望なサイドキックだな。」
「あの影を使った奴もすごいな。騎馬戦の時も見ていたがあの個性って攻撃力も防御も備わってるし、即戦力になるな。」
会場のヒーローたちが称賛する。会場はセメントスが点検しそれが終われば第四試合が始まる。次の対戦相手は爆豪VS麗日。
個性の相性は最悪の対戦であり、見るに堪えない試合であると知っているものは誰も予想した。
選手控室で麗日は一人椅子に座るじっと手を握って俯いていた。
「麗日~、いま大丈夫・・・・・・て、全然麗日じゃない!眉間シワシワだよ!」
様子を見に来た芦戸が控室に入るとそこには眉間にシワを思いっきり寄せて緊張しているお茶子の姿があった。
「あー、ちょっと緊張してね。」
「相手爆豪だもんね。仕方ないよ。」
二人がそう話していると八百万が入ってきた。
「どうかしましたか芦戸さん?あら?麗日さん。確かもすぐ次の試合でしたわよね?」
「うん・・・・・・・・・でも相手爆豪くんなんだよね。」
「なるほど。それで・・・・・・・・・」
八百万は麗日の様子を見て納得する。
「・・・・・・でも、たとえ負けるとしても最後まで諦めず戦いましょう。」
「・・・・・・・そうだね。爆豪にはアタシも勝てるかどうかと聞かれれば自信ないけど・・・・・・・・でもせめて一矢報いたいって思う。」
「二人とも・・・・・・うん!ありがとう!それに・・・・・」
そこから先はあえて口にしなかった。
あの日、USJ襲撃事件の日に目撃した出久の覚悟。
自分の命を懸けてみんなを守ろうとしたあの雄姿を目に焼き付けていた。
あの戦いを見ていなくても担架に運ばれている出久の姿はみんな見ていた。
体中傷だらけになりおまけに喀血までしていた。そんな出久の姿を見て一同思った。
“出久を助けられるほど強くなりたい!”
A組一同、そして拳籐も思っていた。
同い年でありながらも誰よりも勇敢で強く、そして優しい。正に理想ともいえるヒーロー像である。
「そうだね。私たちもあの日から頑張って来たんだもん!出久君に少しでも追いつくためにね!」
麗日はそう言うと立ち上がり、試合会場へと向かおうとする。
「そうだ二人とも、これ葉隠さんにも拳籐さんにも言えることだけど・・・・・・」」
―――――出久君のことも、負けないから。
すれ違いざまに麗日がそう言うと二人は微笑み、そして言った。
「「もちろん!」」