芦戸の試合の後に行われた第六試合では上鳴が放電する前に拳籐の巨拳による張り手で一気に場外。続く第七試合の飯田と発目の試合は飯田がいいように利用されて飯田の勝利に終わった。出久は欲望に忠実な彼女の姿を見て“やっぱ鴻上会長と馬が合う”とあらためて思った。
そしていよいよ一回戦第八試合轟VS瀬呂。
「お待たせしました!!続きましては~、こいつらだ!!優秀!優秀なのに拭いきれない地味さは何なんだ!ヒーロー科、瀬呂範太!!
プレゼント・マイクが実況する中瀬呂は軽い柔軟運動をする。
(正直俺の個性じゃテープを凍らされたり焼かれたりする。細かい戦術なんか俺の頭じゃ考えられねぇ。勝てる気もしねぇが・・・・せめて一矢報いてやる!)
「START!」
「これでどうだ!」
瀬呂は素早く左のテープで轟の腕を封じ右のテープで足を拘束して一気に場外へ引きずり出そうとする。
「悪ィな。」
轟がそう言った途端であった。一瞬にして外からでもわかる大きな氷の塊が形成された。
「や・・・・・・・・やりすぎだろ・・・・」
轟はテープを凍らせて脆くし、自由になる一方瀬呂は氷の塊の中にとらえられていた。
「・・・・・・・瀬呂君・・・・動ける?」
念のためミッドナイトが訪ねる。
「動けるはずないでしょ・・・・痛てぇえ・・・・・」
「瀬呂君行動不能!」
瀬呂の頑張りもむなしくあっさりと終ってしまった試合に観客からはどんまいコールが送られる。
そんな中出久の目には轟の姿がどこか悲しいように見えた。
「さー!これで第一回戦の試合がすべて終了した!続く第二回戦の組み合わせは・・・・・・・・・・これだ!」
二回戦
第一試合
C組 緑谷出久 VS A組 切島鋭児郎
第二試合
A組 八百万百 VS A組 爆豪勝己
第三試合
A組 芦戸三奈 VS B組 拳籐一佳
第四試合
A組 飯田天哉 VS A組 轟焦凍
「そんじゃ小休憩挟んでステージの整備が終わったら早速開始だ。」
出久は一人控室で頭を抱えていた。
(あ~~~~~も~~~~~~~!何やってんのさ僕!見ておけなかっとはいえど麗日さんを抱きしめるだなんて!あんなのまるで・・・・・・こ、恋人みたいじゃないか!)
冷静になった出久は麗日にした行動を思い出すと恥ずかしくなっていた。
(恋人・・・・・・・・か。)
ふと出久は冷静になった。
(こうして雄英にはいってヒーローになろうと頑張ってる。けど・・・・・・恋はまだだったな。)
出久の体は病魔によって蝕まれていた。幸いにもこの病気は遺伝性ではない。
が、それでも出久はもしもの可能性があって不安であった。
そもそも自分が恋をして結婚、そして子供を授かるなんてことはできるとは思っていなかった。
仮に20歳で結婚して子供を授かったとしよう。その頃には新人として忙しい毎日だ。けど同時に病院には定期的に通院しなければならない。そうすれば治療費だけでも生活を苦しめてしまっている。そして生まれるまでの診断や出産時の費用、その後の養育費。
そしてまだ自我が芽生えて間もないころになれば病魔が本格的に蝕み病院で寝たきりの状態になるだろう。そうすれば妻と子を残して先に死んでしまう。
そんなことだけは絶対にしたくなかった。
ヒーローはヒーローである前に人間である。
これはあるヒーローもののスタンスである。
出久はヒーローである前に人間である。だからこそ大事な人を悲しませたくない、泣かせたくないと思っている。しかし自分が死ねば悲しむ人だっている。できればその傷を小さくとどめたいと出久は思っていたのだ。
「・・・・・・・・・・・ははは、おかしいよね。今になってこんなこと思うなんて。ホントおかしい。・・・・・・・・でもよかった。こんなバカげたことに気づけて。」
出久はそう言うと立ち上がり試合会場へと向かった。
(先の不安なんて考えるのはやめよう。今は・・・・・全力で目の前のことに集中だ!)