心操へ心を打ち明けた後、出久は食堂で食事を取ろうとしていた。
「出久さん、こっちですわー!」
麗日と芦戸、葉隠と耳郎と共に食事をとっている八百万が出久を見かけると呼びかける。周りの生徒たちはクスクスと笑うが出久は気にすることなく席に座る。
「ありがとう、百ちゃん。」
「いえ、お気になさらずに。それよりも皆さん出久さんにお聞きしたいことがあるそうなので知っていれば答えてくれませんか?」
「僕に?なに?」
最初に喋り出したのは麗日であった。
「梅雨ちゃんが職場体験の時にベルトで変身する自警団に出会ったんだって。でも名前が出久君のヒーロー名の仮面ライダーって名前だったから気になって。」
「(もしかして鴻上会長が言っていた・・・・・)その仮面ライダーの名前は?」
「アクアって言うらしいよ。」
「ウチのところは宇宙飛行士みたいなフォーゼだったよ。」
麗日に続いてしゃべったのは耳郎であった。
「わたくしのところには緑と黒のWと言う方でしたわ。正直、あれほどの実力を持っていながら何故・・・・・・」
八百万が考えていると出久は強引に押し通そうとした。
「もしかしたらステインみたいに正義の価値観が違うのかもしれないよ。」
「と、言いますと?」
「大抵のヒーローはお金がもらえるから活動してるって感じだよね。でも原動力が金がもらえることが前提ってのがステインが生まれた根本的原因だと僕は思うんだ。
見返りを求めず、誰かのために全力で自分を犠牲にできる。それがステインが理想と掲げたヒーロー像なんだと僕は思うんだ。」
ステインの行動は確かに過激ではあったが理解できないわけではなかった。
しかし、それを実現するために殺人を犯してしまったことは大きな間違いであった。
「・・・・・・・・・飯田さんには失礼かもしれませんが、そうなんでしょうね。」
「そうだね。」
八百万の言葉に芦戸が納得する。
「ところでさ、出久。アタシたちと一緒に強化合宿に行くの?」
「うん。先生がヒーロー科に編入するから参加した方がいいって話してたし。」
「そっか!じゃああたちたちと一緒に参加するんだね!」
芦戸の言葉に麗日、八百万、葉隠はうれしそうな顔をする。
「でもその前にヒーロー科って実技試験があるんじゃなかったっけ?」
その言葉を聞くと一同一瞬で不安な顔になる。
「多分だけど僕は今回先生たちと戦うんだ。」
「どうしてそう思うの?」
出久の考えに耳郎が問う。
「聞いた話だと今まではロボって話だったんだけどUSJでの事件やステインの事件を起爆剤ににして敵たちが活性化しているらしいんだ。そう考えるとより実戦的に各自の苦手分野をぶつけてくると思うんだ。」
「なるほど。」
その言葉に一同納得する。
「それじゃあ僕は食べ終えたから教室に戻るね。」
ごちそうさまを言って出久はその場を後にした。
放課後の廊下を出久が歩いているとオールマイトに呼び止められた。
「緑谷少年、ちょっといいかな?」
「オールマイト、どうかしたんですか?」
「ちょっと。」
オールマイトは視聴覚室に出久を招く。
「鴻上会長から話は聞いている。向こうの方からこっちに臨時助っ人のことも聞いてはいるが、もう一人来るという話は聞いている。」
「もう一人?」
「ああ。こちらの方ではあまり馴染みがないが戦場のような場所での応急処置となると必ずと言っていいほど道具が足りない。そんな状況でも治療できるように教えられる先生を呼んだのさ。」
「それが俺ってこと。」
出久はその声を聴いて後ろを振り返る。そこには物陰から姿を現した伊達明の姿があった。
「伊達さん!」
「よっ!久しぶり、出久ちゃん。また血を吐いたって聞いたけど無茶し過ぎじゃねーの?」
伊達は出久の体を触り出久の健康状態を確認する。
「今んところは大丈夫だな。だがあんま無茶するんじゃねーぞ。お前、無茶するたびに寿命を少しずつ削っているんだから。」
「気を付けます。」
出久の簡単な診察を終えた伊達はオールマイトの方を見る。
「んで、オールマイトさん。わざわざ俺を紹介するためにこんな防音対策取れた部屋に招いた訳じゃないんだろ?」
「・・・・・・・・・・察しが良くて助かるよ。座ってくれ。」
オールマイトに促され二人は対面する形で座る。
「君達には話しておかないといけないと思ってね。私の“個性”、ワン・フォー・オールは特別でね。この“個性”は
オール・フォー・ワン。他者から“個性”を奪い己がものとし・・・・それを他者へ譲渡することができる“個性”だ。」
「皆は自分のために・・・・・・・直訳するとそうだが・・・・・」
「オールマイト。もしかして・・・・・脳無を生み出した奴ではないんですか?」
「その通りだ。超常黎明期、まだ社会が変化に対応しきれなかった頃の話だ。かつて、突如として”人間”と言う規格が崩れ去った・・・・・・たったそれだけで法は意味を失い、文明は歩みを止め荒廃した。」
「当然時代は混沌とするわな。」
「その通りだよ、伊達君。しかしその時代にいち早く人々をまとめ上げた人物がいた。」
「まさか・・・・・」
出久はそれまでの話を聞いて察した。
「ワン・フォー・オール、それはオール・フォー・ワンから生まれた“個性”。皮肉なことに正義とは常に悪から生まれてくるものだ。」
その言葉を聞いて二人は納得できてしまった。
仮面ライダー1号、本郷武はショッカーによって生み出された改造人間。悪により生まれた正義の味方。それこそが仮面ライダーの誕生の秘密である。
「オールマイト、もしかしてその人は今も生きているんじゃないんですか?」
「・・・・・・察しがいいね、緑谷少年。奴は今は敵連合のブレーンとして再び動き出している。」
「つまりオールマイトのワン・フォー・オールは戦う宿命ってわけか。」
「・・・・・・・そうだ。酷な運命かもしれないが・・・・・」
「オールマイト。」
謝罪の言葉を述べようとしたオールマイトの言葉を出久が遮った。
「僕たち仮面ライダーはいつだってそうです。人類を滅ぼすことが出来る敵を、仲間と共に戦い、そして倒してきました。その悪は何度も蘇りもします。それでも僕たちは戦います。」
「そうだな。なんのために戦うかはその仮面ライダーにとって変わるが、みんなに共通しているのは人間の自由と、平和のために戦うってことだな。だから安心しろ。それに・・・・・・なにもその力に一人で立ち向かうわけじゃないでしょ。だから安心しな。」
その言葉にオールマイトは嬉しかった。決して一人ではないと、こんなにも頼りになる仲間が出久の周りに入るのだと。
「オールマイト、巨悪と立ち向かう時に貴方はいないかもしれません。けど、信じてください。僕たちを。」
その言葉を聞くだけでオールマイトは救われた。