タワーの中にある広くがらんとした研究施設の中で一人の男が若い頃のオールマイトが写っている写真を保存した携帯の画面を眺めていた。
「博士、デイヴィット博士。」
助手のサムに呼ばれ我に返るデイヴィッド・シールド。
「こちらの片付けも終わりました。」
「そうか。ご苦労様、サム。」
いつものような笑顔でそう言うと隣の施設に入る。そこには机などは一応あったが研究資料は片付けられていた。
「たまにはお嬢さんとランチに行ってはどうですか?」
「今日も学校に行ってるよ。」
「I・エキスポ中は休校では?」
「自主的に研究しているんだよ。」
サムにそう答えるデイヴィッド。その時入り口からメリッサの声が聞こえて来た。
「だってパパの娘ですもの。」
「メリッサ。」
肩をすくめて笑いながら近づいてくるメリッサにサムは挨拶をする。
「こんにちは、メリッサさん。」
「こんにちは、サムさん。いつも研究に明け暮れるパパの面倒を見てくれてありがとう。」
「まいったまいった。それよりどうしてここに?」
デイヴィッドは不思議に思った。するとメリッサは悪戯らな笑みを浮かべる。
「私ね、パパの研究が一段落したお祝いにある人に招待状を送ったの。」
「ある人?」
メリッサが招待状を送った相手にデイヴィッドは誰か予想できなかった。
「パパの大好きな人。」
そう言ってメリッサは振り返り扉の陰に隠れている人物に入るように促す。
「私がぁぁぁ、再会の感動に震えながら来た!!」
突然現れポーズを決めるオールマイトに二人は驚きのあまり固まってしまった。
「トシ・・・・・オールマイト・・・・・・!?」
「ほ、本物!?」
「HAHAHA!わざわざ会いに来てやったぞデイヴ!」
唖然とするデイヴィッドを抱き上げるオールマイト。その後ろからメリッサがワクワクと顔を出す。
「どう、驚いた?」
「あ、ああ・・・・驚いたとも・・・・」
デイヴィッド笑みを浮かべ息を吐いた。
「お互い、メリッサに感謝だな。しかし何年ぶりだ?」
「やめてくれ、お互い考えたくないだろ。年齢のことは。」
「HAHAHA、同感だ!」
互いに笑い合うと静かな笑みを浮かべ見つめ合った。
「・・・・・会えて嬉しいよ、デイヴ。」
「私もだよ、オールマイト。」
互いに拳を合わせる。そしてオールマイトは入り口にいる出久と伊達の方を振り向いた。
「緑谷少年、伊達君。彼の名はー――――」
「知ってます!デイヴィッド・シールド博士ですよね!ノーベル個性を受賞した“個性”研究のトップランナー!オールマイトのアメリカ時代からのコスチュームの天才発明家!まさか会えるなんて!」
世界に知られている自分の経歴を話す出久に目を丸くするデイヴィッド。
「どうやら自己紹介の必要はないようだね。」
「す、すいません。こうして会えることなんてないと思ってたのでつい興奮してしまって。」
「かまわないよ。むしろそこまで私のことを知ってくれているなんてありがたいものだよ。」
そんな二人を微笑ましく見ていたオールマイトだが眉間にしわを寄せ、咳をする。
「コホ・・・コホ・・・」
「「「!!」」」
その咳に気づいたのは出久と伊達、そしてデイヴィッドであった。そんな状況を察し、一目散に行動に移ったのは伊達であった。
「さ、久々の親友同士の再開なんだ。邪魔しちゃ悪いから俺たちはせっかくのエキスポ周りに行こうぜ。メリッサちゃん、案内お願いできるかい?」
「はい、お任せください。さ、行きましょう。」
「はい。じゃあオールマイト、また後で。」
「ああ。伊達君、緑谷少年。楽しんできたまえ。」
一同を見送るとオールマイトはトゥルーフォームへと戻った。
「おい、大丈夫か、トシ?」
「助かったよ、デイヴ。マッスルフォームを維持する時間が減っていたからね・・・・・」
「メールで症状が知ってはいたがそこまで悪化しているとは・・・・」
エキスポ会場へ向かう途中で伊達は足を止めた。
「そうだった。ばーさんからある事頼まれてたんだ。」
「そうだったんですか?」
「あの、“バーサン”って誰ですか?」
「ああ、リカバリーガールだよ。」
伊達がそう説明するとメリッサは驚いた。
「リカバリーガール!あの治癒の”個性“を持っている!?」
「ああ。つってもばーさんも医師免許持っているがな。」
治癒の個性を持っている個性の人間は大抵医師免許を持っている。それはなぜか?
話はまだ医療が確立されていなかったころの時代まで遡ろう。
医療が確立されていなかったころの遺骨は皆変形していた。それはなぜか?今でこそ骨折したときは添え木をするようにと一般的に知られている。しかし当時は折れたとしてもそのままの状態にしておくことがあった。
ではそれをすればどうなるのか?骨は正常な状態であろうとなかろうと治癒能力を働かせる。骨再形成が行われると曲がった状態でもくっ付く。しかし肉体は変形する。
わかりやすく言えば折れた割りばしにボール状にした粘土を適当にぶっ刺したような状態である。今はそれの治療法が確立しているが当時は無い。
治す個性を持っていたとしてもちゃんとした知識と技術が無ければ助けるどころか苦しめてしまうのだ。
「ま、どんな武器も使いようによっては人を殺すことも助けることもするってわけよ。とことでメリッサちゃん、医療系の会場はどこ?」
伊達がパンフレットを手に尋ねるとメリッサは「ここです。」と目的の会場場所を指をさす。
「わかった。んじゃ俺は一人でここに行くからメリッサちゃん、出久ちゃんの事頼んだよ。あ、後これ。」
行こうとして何かを思い出した伊達はポケットから薬が入った包みを一つメリッサに手渡す。
「これは?」
「今ちょっと話せないから待ってくれる?もしも出久ちゃんに何かあったらこれ飲ませて。」
メリッサは深く追求せず、「わかりました。」と答えた。
「さーて、すみません。ここの責任者の方はいますか?」
医療関係の会場に着いた伊達は職員に話しかける。
「私ですが、失礼ですが貴方は?」
「俺はこの人の紹介でここに来ると言われた伊達です。」
伊達はそう言うとリカバリーガールから渡された招待状を見せる。
「拝見します・・・・・・・・・確かにあの人からのですね。こちらへ。」
伊達は職員用の部屋に案内される。
「で、今日はどのような用件で?あの人からはある事について知りたいとしか言われていません。」
「この病気はご存知ですか?」
伊達はメモ用紙にある病気を書く。
「これは・・・・・・・ええ、知っています。しかしなぜ?」
「・・・・・・・・・雄英高校にその症状を持っている生徒がいます。」
「まさか!」
その人は驚いた。
「特効薬や治療法の方はどうなのですか?」
「・・・・・定期的にサンプルが送られてきて研究をしてはいますが依然として・・・・・・・それに新薬開発も出来ておらず今の薬が一番有効です。」
「ですが彼は長期間に渡りそれを服用しています。もうそろそろ薬にも限界が・・・・・・」
伊達が言っているのは薬への耐性であった。薬は長期間服用すると体がそれに適応してしまうため同じくするは慣れが出てしまい薬としての効力を失うのだ。
「こちらとしても新薬の開発や治療法の確立を試みています。しかしどれも効果が無いのです。お察しください。」
その人は頭を下げる。そんな光景に伊達は頭を抱えた。
「あー、畜生。どうして現実は思うように動いてくれねーんだ。」