入って間もない新人をこき使って、心身ともに壊す。それが今の社会だって。
その上税金が上がる。
政治家たちが明確に分かる金の明細を持っているなら文句は言いません。
外国では税金が多い代わりに医療費がただだったりします。
しかし日本の場合は国民を守る法律が逆に苦しめているケースが多いです。
正直辛いです、毎日。定時で帰れるのは二か月に5~6程度。それ以外は毎日残業。
休日出勤当たり前。
もうこんな時代が嫌ですね。
「すごいな~。こうして見るとここが人工の島だなんて思えないや。」
メリッサと共にエキスポ会場に来た出久は、様々なパビリオンを見上げて歩きながらI・アイランドの広さを実感した。
(そういやあの時は部分的にだけど時代を入れ替えてたよな。)
出久はふと向こうの世界で起きた事件の一つを思い出した。
蘇った錬金術師によるあの日の出来事は時間を超えるということを成し遂げてしまったのだ。
「大都市にある施設は一通りそろっているわ。出来ないのは旅行くらいね。」
「ああ、狙われる危険性があるからですね。」
メリッサが出久の言葉に頷く。
「ここの情報はほんの一欠けらでも持っているだけで誘拐される危険性があるもの。」
「確かに。」
メリッサの言葉に出久は納得する。
敵でもテロリストでも最新技術の一欠片は欲しい。
そして情報はダイヤモンドよりも価値がある。たった一個のUSBでも国際的問題になることだってあるのだ。
「そう言えば出久君の”個性”ってなんだっけ?」
「メダルです。このドライバーとセットになってて、三枚組み合わせることによって変身できるんです。」
「変身?変わってるね。」
メリッサは首を傾げてそう言った。
普通個性と言えば自身の体から何らかの形で発現するものが多い。
口他のような異形方や爆豪のような発動型、心操のような能力型。個性は様々である。
ましてや出久はオーメダルによる変身を”個性”と言うことで通している。かなり無茶ではあるが仕方のないことだ。
「僕の場合、このメダルが力を持っているんだけど直接使おうとしたら人体に影響があるからこうして安全装置を使っているんだ。」
出久の説明にメリッサは納得する。
グリードは五感が無い。
声も満足に聞こえず、味もわからず、感覚もマヒ、目に映るのは灰色の光景、匂いもわからない。人間がグリードになるということはそう言うことなのである。
「そう言えば結構ヒーローが来ていますね。」
「昼でもサイン会やサポートアイテムの実演、色々あるからね。夜には関係者を集めたパーティーも・・・・・って、出久君も伊達さんも出席するんだよね。マイトおじさまの同伴者なんだから。」
その言葉を聞いて鴻上会長から送られたスーツを思い出す。
(毎度思うけどどうやって情報手に入れているんだろう・・・・・・・・・里中さん。)
少なくとも仕事以上のスキルと、働きに見合った報酬を貰っているであろう秘書を出久は思い出した。
「あっ、出久君!あそこのパビリオンなんかもおすすめだよ!」
メリッサが指さすパビリオンに入ると中には様々なサポートアイテムが展示されていた。
メリッサは出久に自慢するように展示されているサポートアイテムを紹介する。
そしてそれはすべてデイヴィッド博士の発明が元であることを出久に言うメリッサの顔はとてもうれしく、そして誇らしげであった。
「そう言えば出久君ってどんなヒーローになりたいの?やっぱりマイトおじさまのようなヒーロー?」
メリッサの問いに出久は答えた。
「僕は・・・・・・・この手が届く距離を伸ばして、助けを求める人たちの手を握られるようなヒーローになりたいです。全てを救うことはできないけれど、できれば助けたい。それが僕の目指すヒーローです。」
その言葉に重みがある事をメリッサは感じ取った。
たいていのヒーローはオールマイトのようなヒーローになりたいと公言するが、実際は自分が活躍するためにしか活動しない。
逆にオールマイトは自分が活躍するためではなく誰かのために動いている。しかしそれでも法に縛られてしまっている。
それが本当にヒーローと言えるのだろうか?
自分を犠牲にして他人を救い、かつ自分も生きて帰ろうとする。
そんなヒーローがいなくなってしまっているのが今の時代である。
「楽しそうやね、出久君。」
「お茶子ちゃん!なんでここに!」
突然現れた麗日に出久は驚く。
「楽しそうやね。」
麗日は変わらない笑顔で言ってはいるがどこか怖いものを感じた出久。
(なんで二回も言ったのかな?)
「本当に楽しそうですわね。」
「百ちゃん!」
なぜか一緒に八百万もいた。
「緑谷、聞いちゃった。」
耳郎がイヤホンジャックを指で回しながら言う。
(う~む、耳郎さんのイヤホンジャック、上手くアイテムを使えば第三者に話の内容を伝えられそうだ。)
驚きながらも冷静に分析をする出久は流石である。
「お友達?」
「え?ええ・・・・・来学期から一緒になる人たちで。でも確かに・・・・・・楽しいですね。」
その言葉に二人はピクリと反応する。
「小さい頃から体が弱くって、お母さんにも外で遊んじゃダメだって言われて、それで外に出る機会も少なくて、だからなのかな?こうしてオールマイトにI・アイランドに招待されてこうしてあったばかりの人と意気投合できるのが。」
出久が血を吐くところを目の当たりにしている麗日と八百万は出久を抱きしめる。
「あわわわわ!ふ、ふふふふふ二人とも!!あた!あた!当たってます!何やら未知のものが当たってます!」
ダイレクトに伝わってくる四つの感触に出久は顔を真っ赤にして慌てふためく。
「二人ともストップ!それじゃ緑谷が別の意味で死んじゃう!」
耳郎がその状況を見て止めに入る。
そんな中メリッサは思った。
(小さい頃から運動も禁止されていた?出久君て、何か病気に掛っているのかな?)
そんな疑問がメリッサの頭をよぎる中、I・アイランドではリーゼントの男が迷子になった子の母親を探すために肩車をして動いていた。