PM5:20。
合宿所の広場でマンダレイとピクシーボブ、そして相澤と伊達はA組一同を待っていた。
「やーーーーっと、到着にゃん。」
ピクシーボブが腰に手を当てそう言うと森の方からボロボロのA組が出て来た。
「なにが三時間程度ですか・・・・・・」
切島がそう口を開くとマンダレイが言った。
「ごめんね。それは私たちだったらって意味だったわ。」
そう言うと砂糖が「実力差自慢のためか・・・・・」と愚痴をこぼした。
「ねこねこねこ、でも正直もっとかかるかと思ってた。私の土魔獣が思ったよりも簡単に攻略されちゃった。特に君らは・・・・・ね。」
ピクシーボブが指さしたのは爆豪、轟、飯田の三人であった。
「とりわけすごかったのは君だけどね。」
そう言って出久の方を向くピクシーボブ。出久はみんなに濡れタオルを手渡していた。
(何よりすごかったのは戦いの中で小さな花にすら気を使って戦ってたこと。並大抵の経験じゃできない芸当よね。)
ピクシーボブも出久の戦闘力と状況把握能力に驚いていた。
仮面ライダーは小さな花の命をも守る心を持っている。どのライダーにせよ、その思いは変わらない。
「三年後が楽しみ!ツバつけておこーーーーー!」
ピクシーボブがそうしようとすると麗日、八百万、芦戸、葉隠が身を挺して出久を守る。
「出久君には手を出させるものか!」
「私たちが守りますわ!」
「汚させない!」
「絶対守るよ!」
その光景にマンダレイはニヨニヨする。
「ちょっとイレイザー、あそこ初々しい光景が広がっているんだけど。」
「知らん。」
「まあ出久ちゃんは誰にでも優しすぎるからねー。それで本人無自覚。」
「末恐ろしいわね。」
伊達の言葉にマンダレイがそう漏らすと出久がふと疑問に思っていたことを口にする。
「ところで聞いてもいいですか?」
「ん?なに?」
「そちらのお子さんは?」
出久が視線を向けるとそこには角付きの帽子をかぶった少年がいた。
「この子は私の従甥よ。洸太、あいさつしな。一週間一緒に過ごすんだから。」
マンダレイが手招きをすると洸太は近づいてくる。出久は自ら歩み寄り挨拶をする。
「はじめまして。雄英ヒーロー科の緑谷出久です。よろしくね。」
その瞬間、洸汰の右ストレートが出久の股間目掛けて放たれるが出久はそれを右手で受け止めた。
「っ!?」
「ノーモーションからにしては悪くないけど腕の振りが甘いし、気づかれやすい動きだ。もっと基本を大事にした方がいい。」
出久の手から離れると洸太は後ろを向き少し離れると言い放った。
「ヒーローを目指している奴らとつるむきはねぇ!」
そう言うと洸太は宿泊施設の方へと走って行った。
「洸汰!」
マンダレイが呼び止めるが洸汰は止まらなかった。
「すまないね、緑谷君。私の息子が。」
「ごめんなさいね。」
「っ!?」
出久は二人の声に聞き覚えがあった。
「あ、あなたたちは!」
そこには夫婦の姿があった。夫の方は片足が義足になっていた。
「ウォーターホース!」
「おいおい、今の私たちは引退した身だ。」
「もう昔の存在よ。」
「あ、すみません。」
三人が話している光景を見てマンダレイは思った。
(二人が知っているってことは彼がそうなのかしら?)
出水流水と出水操水、そしてマンダレイとピクシーボブが作ってくれた料理を一同おいしく食べていた。
(こうやって大人数で食べるってのも新鮮だなー。そういや、いつもは母さんとしか食べていなかったっけ。)
ふと過去を顧みた。
入院生活が多かったためか遠足などの行事には行けないことが多かった。そのためいつも一緒に食べているのが母とだけであった。
雄英に入ってからは同じクラスの面々や麗日たちと一緒に食べることが多くなったのが記憶に新しい。
そして食後の入浴時間。今日一日の疲れを癒す思考の時間である。
そんな中峰田は覗きを実行しようとしたが仕切りの上で警備をしていた洸太によってあっけなく打ち砕かれた。
しかし洸汰も純粋な男の子であるため女子の裸に鼻血を吹き倒れ、男子の方に落ちそうになるがそこを出久が受け止め事なきを得た。
ロビーで寝間着姿に着替えた出久がソファーに寝かされている洸汰の隣にいるマンダレイに声を掛ける。
「やっぱり洸汰君は、お父さんの怪我を見てヒーローを否定するようになったんですか?」
「ええ。世間一般じゃヒーローをよく思わない人も大勢いるわ。普通の子だったらヒーローに憧れたんでしょうけど・・・・・・・・緑谷君。」
「はい?」
「もしかしてだけど、二年前にウォーターホースの事件に関わった?」
「・・・・・・」
「沈黙は肯定とみるわ。年齢的にも個性の使用が認められないから言えないのも無理は無いわね。」
「・・・・・・・・・・ええ。」
出久は二年前のある事件を思い出した。
二年前のある日のことだ。
出久がこの世界に戻ってまだ間もなく、芦戸と出会う少し前の事。
長い間変わった街並みを知るために散歩をしていた出久は偶然にもウォーターホースが関わった事件に遭遇した。出久は敵に走って向かいウナギウィップで電気ショックを与え動けなくするとシャウタコンボに変身しウォーターホースに捕縛用の技を出すように要求した。
結果として事件は解決したが無茶をしたため血を吐いてしまい、病院送りになった。
その後警察からは厳重注意を受けた。本来であれば違法ではあるが危険な敵の逮捕に貢献、並びにウォーターホースが庇ってくれたおかげで何とかなったのだ。
「君のような子には理解―――――」
「できますよ。」
「・・・・・・・え?」
マンダレイは出久の言葉に驚いた。
「自分を犠牲にして、人を守っても家族を守れない。なんでそんなのに憧れるんだろうって・・・・・・・・・そう思っているんだと思います。」
「そう・・・・・・・・・・じゃあ君はどうして?」
その言葉に対し出久は答えた。
「憧れと後悔です。」
「後悔?」
「ええ。」
そう言うと出久は自分の手を見る。
何度振り払おうとしても消えない後悔。忘れられない惨劇。
それが出久を縛り、自ら苦しめていた。
そしてマンダレイには分からなかった。ヒーローに憧れるのは大抵オールマイトであろうと。しかし後悔は何なのか?
自分たちよりも歳が離れた少年が一体何を後悔したのか彼女にはわからなかった。
「失礼します。」と言って出久はその場を後にした。
すると物陰からピクシーボブが出て来た。
「アチキが見る限り、あの子は私たちよりも残酷な経験をしているみたいだったね。」
「ええ、そうね。」
「なにがあの子をそんな風にしたのかしら?」
二人が疑問に思う中、物陰で耳を立てていた伊達は溜息を吐いた。
「いい加減振り切れよ、出久ちゃん。」
伊達がその場を去ろうとすると相澤が立ちはだかった。
「さっきの緑谷の話、あんたは知っているのか?」
「まぁね。本人から聞いたから。」
「教えてくれないか?」
「・・・・・・・・・キツイぜ。」
「構わん。緑谷には助けられてばかりだ。あいつの痛みを知ろうとしないのは、合理的以前に、個人的に嫌なんでな。」
相澤がそう言うと肩をすくめる。
「仕方ねぇな。人気のないところで話そうや。」
二人は人気のないところへと向かった。