林間学校の宿泊施設から少し離れた所でヒーロー科の生徒たちは己の個性強化に徹していた。
能力上の負荷がかかるものはそれ以上の負荷を自分に与えて持続時間の強化を行っていた。
そして肉体面に影響する“個性”を持つものはそれ以上の負荷をかけて訓練をしていた。
「いくよ!」
切島と尾白に対し出久はタカゴリワで二人に攻撃を仕掛けていた。
物理的攻撃とエネルギー上の攻撃。この二つが彼らに過負荷を掛けて伸ばしていた。
そんな光景に洸太は嫌気がさしていた。
夕方になると自炊する時間になった。
火をおこすのに個性を使おうとしたがそこはキャンプ経験のある出久がツタと枝を使って見事に火を起こした。
短くとも過酷な生活の中で培った経験と知識が役立ったのである。
そんな中洸汰は「下らない。」と言葉を発し自分だけの場所へと一人座っていた。
「失礼するよ。」
そんな洸汰へ声を掛けて来たのはカレーを持ってきた出久であった。
「なんでお前・・・・!」
「足跡たどってね。」
「なっ!・・・・・おれのひみつきちから出て行け!」
「ひみつきち・・・・・・・・・ね。」
周りには何もなく、人からも見つかりにくい場所だ。特に何かを持ってきているわけでもなく、そこには何もなかった。
「隣、ごめん。」
出久はそう言うと座る。
「洸汰君は、両親があんなケガしているのが嫌なの?」
「お前なんで・・・・・・マンダレイ!」
「違うよ。あの時、あの場にいたんだ。」
「え・・・・・・」
洸汰は出久の言葉に驚いた。
「あの時の僕は、力を使うことにためらった。けど、結局は使った。」
「・・・・・・・」
洸汰は出久の喋ることを黙って聞く。
「最初はね、助けたいって気持ちがあった。でもこの超人社会じゃ許可なく使えば逮捕される。自分の人生を壊してしまう。そんなことに気を取られて、すぐに助けなかった。」
「・・・・・・・・・・後悔しているのか?」
「・・・・・・・・してるね。でも、もしかもなんて世界は無い。あるのは現実。いつも残酷なんだ。」
出久は黄昏る。そんな出久に対し洸汰はなんて言っていいかわからなかった。
「多分だけど、君は分からないんじゃないかな?」
「・・・・・・・・・なんのことだ。」
「なんでそんなに力を振るってまで、死ぬかもしれないのにヒーローなんてしているのかってこと。」
「・・・・・・・・・ああ。」
言い当てられたことに驚きながらも洸汰は答えた。
「無理もないよ。自分の身を犠牲にするだなんてお人好しの馬鹿くらいだって思うんだろうから。でも・・・・・・」
「なんだよ?」
「誰しも最初は憧れているからなんだよ。憧れて、夢になって、苦労して、実現して、また苦労する。当たり前なんだけど、誰も教えてくれない。中には夢がかなわない時だってある。」
そう言って出久自分の手を見る。
「本当に辛い思いをするのだけは嫌なんだ。」
「お前にはあんのかよ、そういうのが?」
「・・・・・・あるよ。今でも鮮明に覚えてる。あの時の光景も、あの時の悲しみも、あの時のあの子の顔も。」
出久は爪が喰い込まんばかりに拳を作る。
「僕にとって、誰かを救うことは自己満足だ。ただ誰かの命を救ってあの日の後悔をしたくないっていう自己満足。でもそれが結果として人を救うことに繋がる。まぁ、全部その行動が正しいとは言えないのかもしれないんだけどね。」
そう言うと出久は自分の手の力を緩める。
「カレーここに置いておくよ。それとあんまり両親を心配させないで。たとえ君が両親を理解できなくても、君のことを二人は思っているんだ。」
出久はそう言うと持ってきたカレーを置いてその場を後にした。
翌日、個性を伸ばす訓練は続いたが、補修組は眠気と葛藤していた。
補修になったのは切島、芦戸、砂籐、瀬呂、上鳴であった。
実技試験の時に不合格だったためそうなった。ちなみにB組は物間一人と言う残念な結果であった。
(“個性”を伸ばす・・・・・・・・・確かにそれはいいかもしれない。けど、これじゃあだめだな。)
“個性”を伸ばすことに出久は気になるところがあった。
自分の”個性”が伸びただけでは意味がない。
確かにA組は他のクラスと違って濃い経験をしてきた。故に“個性”の伸ばすだけでは足りないと思った。これからの超人社会においてオールマイトの存在が消えるのは目に見えていた。
どんなスーパーヒーローでも老いと言う物には勝てない。いずれは限界が来る。
誰かがその代わりになることも不可能だ。
”個性”を伸ばせば戦える時間も長くなるがそれだけではだめだと出久は思った。
そして夜になり、締めの肝試しが行われることにあった。
しかし残念かな補修組は参加できないことにあってしまった。
しかし出久はそこで気づいた。
A組は出久を含めて20人しかいない。つまり補修に5人連れていかれたということは一人余ってしまうのだが・・・・・・
「安心しなって。出久ちゃんの場合は不安が多いから俺が付き添う。」
『お願いします!』
そう言ったのは麗日、拳籐、八百万、葉隠であった。
「ちょっ!みんな!」
「だって出久君いっつも血を吐くもん!」
「不安になんない方がおかしいって!」
「そうですわ!もっと自分を大事にしてください!」
「以下同文!」
彼女たちに言われて出久は言い返せなくなった。
そして肝試しが始まって12分が経った時、その異変は起こった。
「っ!伊達さん!」
「ああ、出久ちゃん!」
二人はベルトを装着する。
出久も伊達も戦場を経験したからわかる有毒ガスの独特の匂い。そして森の方から上がる黒煙。
ピクシーボブが謎の力によって引き寄せられる。
「なっ!」
「「変身!!」」
【タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!】
【キャタピラレッグ!ドリルアーム!】
オーズはバッタレッグを活かしてピクシーボブを回収し、キャタピラレッグで移動したバースは謎の襲撃犯にドリルアームのドリルを喰らわせる。
「っ!さすが雄英の先生かしら?対応が早いわね。」
「生憎俺は保険医だ。と言っても、戦うドクターだけどな!」
バースはキャタピラレッグを使い襲撃犯を蹴り飛ばす。
「出久ちゃんこれはマズいよ。」
「わかってます。」
みんなの目の前には敵がいた。