夜、病院から出久と伊達は抜け出そうとしていた。
「ま、こうなるのは分かってたな。」
二人の目の前には轟と切島、そして八百万の姿があった。
「ごめんね、百ちゃん。それを渡して帰ってもらえる。」
「それはできませんわ、出久さん。どうして、お二人だけで行こうとしているんですか!」
「そうだぜ!俺も一緒に行くぜ!」
「緑谷、お前の気持ちはありがたいが、俺たちもヒーローのはしくれだ。一緒に行かせてくれ。」
三人の意志は固かった。しかしその言葉に対し伊達は言った。
「それはダメだよ、皆。君たちはまだ資格を持っていない。人を救うためとはいえどマスコミとかはそこに付け入る。何より、激しい戦いに入ったら死ぬかもしれない。だから連れていけない。どれと飯田ちゃん、そこに隠れてないで出てきたらどうだい?」
伊達が病院の入り口の方に隠れている飯田に声を掛ける。
「気づいてたんですか?」
「うん。出る前からこの子たちが見てくれていたからね。」
出久の手の平にバッタカンドロイドが乗る。
「なるほど。伊達宣氏の言い分はわかります。けど緑谷君、なんで君まで動こうとしているんだ!」
飯田は出久に近づく。
「僕が道を踏み外しそうになった時、君は止めてくれたじゃないか!なのに僕の気持ちはどうでもいいって言うのか!」
「飯田君、僕はーーー」
そこから先を言おうとすると飯田は出久を殴った。
「僕だって悔しいさ!だが僕が君たちを心配するのはどうだっていいって言うのか!僕は学級院長だ!クラスメイトを心配するんだ!」
感情を爆発させる飯田に伊達は肩に手を置く。
「飯田ちゃん、言いたいことは分かるがよ、やりすぎだ!」
そう言って伊達は飯田を殴った。
「がっ!」
飯田は地面に倒れる。
「体罰とかっていうんじゃねーぞ。出久ちゃんは手を出してねーのに殴ったんだから御相子ってことにしてくれや。それにな、お前たちと出久ちゃんとじゃいろいろ違うんだよ。里中ちゃん、後頼むわ。」
「わかりました。」
その直後、切島達三人はその場に倒れる。
「っ!何をしたんですか!」
「眠ってもらっているだけです。」
そう言って闇から姿を現したのは鴻上会長に秘書の里中であった。
「飯田さん、あなたのまっすぐな心は誇るべき者なのかもしれませんが、ルールに従順すぎるのは問題があります。正義感が強すぎれば自然と敵を作ります。少しは自分の行動を顧みてください。世の中、正しいことが全て報われるわけではないので。」
里中はそう言うと麻酔銃を撃ち、飯田を眠らせる。
「緑谷・・・・・・・君・・・・・・・」
薄れゆく意識の中、飯田は起き上がろうとしている出久を見ていた。
そして飯田の意識はそこで途絶えた。
「大丈夫ですか、緑谷さん?」
「ありがとうございます、里中さん。」
出久は里中の手を取り立ち上がる。
「しかし、まぁなんとも面倒な人ですね、彼。伊達さんが一発入れなかったら私が入れてました。」
「里中ちゃんの一発は俺より鋭そうだから幸運かもな。んじゃあとの事よろしく頼むわ。」
「わかりました。会長からは出張の特別給料をもらっているので。それと緑谷さん、伊達さん。気を付けてください。」
そう言うと里中は伊達に八百万が作り出した追跡装置を投げ渡す。
「おう。」
「行ってきます。」
二人はそう言うと病院を後にした。
「・・・・・・・・・・・やっぱり一発入れましょうか。個人的に。」
里中はそう言うと飯田の股間に目掛けて鋭い蹴りを喰らわした。
しばらくして目が覚めた飯田が声にならない悲鳴を上げたかは定かではないが、幸いなことに潰れなかったとだけ言っておこう。