出久と伊達は神奈川県横浜市神野区に向かっていた。
「出久ちゃん、仮に自分が敵のボスだとして最強の人形を手元に置いておくか?」
「それは難しいですね。作るところと本拠地は別にしておきます。それに敵にはワープの個性を持っている敵がいます。」
「そりゃそうだな。まず出久ちゃんだったらどうする?制圧するとして。」
「だったらまずは移動に使う手段を破壊して次にボスを制圧、次に一番高い戦力を有している敵を倒します。」
「それが定石だろうね。それじゃぁ出久ちゃんはそっちに向かうかい?」
「そっちはプロにお任せします。僕たちは敵の戦力を大きく削ぎます。脳無のいいところは命令が無ければ動かないということです。」
「けど出久ちゃん、わかっていると思うけど相手は元は人間だよ。」
「・・・・・・・・・・・・」
伊達の言葉に出久は黙ってしまう。
「・・・・・・・無理に背負おうとはしなくてもいい。それにどうするつもりだい?」
「施設自体を破壊します。そうすれば脳無の生産は止まります。」
「確かにそうだな。じゃあその作戦で行こう。」
出久たちは新幹線から降りると人目を避けて目的地に向かっていた。
一方その頃雄英の校長、ブラド、相澤は記者会見を行っていた。
「この度、我々の不備からヒーロー科生徒一年生27名に被害を及んでしまったこと、ヒーロー育成の場でありながら敵意への防衛を怠り、社会に不安を与えた事、謹んでお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。」
相澤が代表して発言する。
「NHAです。雄英高校は今年に入って四回、生徒が敵に接触していますが、今回、生徒に被害が出るまで各ご家庭にどのような説明をされたのか、また具体的にどのような対策を行ってきたのかお聞かせください。」
記者の問いに対して根津が答えた。
「周辺地域の警備強化、校内防犯システムの再検討、”強い姿勢“で生徒の安全を保障する・・・・・・と説明しております。」
「生徒の安全・・・・・・と仰りましたが、イレイザーヘッドさん。事件の最中に生徒に戦うように促したそうですね。意図をお聞かせください。」
「わたくし共が状況を把握出来なかったが為、最悪の事態を避けるべくそう判断しました。」
「最悪の事態とは?26名もの被害者と1名の拉致は最悪とは言えませんか?」
「・・・・・・・・・・・・私が想定した”最悪”の事態とは、生徒がなすすべもなく殺されることです。」
そう言われると記者は何も言えなくなる。
「被害の大半を占めたガス攻撃。敵の”個性“から催眠ガスの類だと判明しております。拳籐さん鉄哲さんの迅速な行動によって全員命に別状なく、また生徒のメンタルケアも行っていますが、深刻な心理的外傷は今のところ見受けられません。」
「不幸中の幸いだとしても?」
「未来を侵されることが“最悪”だと考えております。」
「攫われた爆豪君についても同じことが言えますか?」
その言葉で場の空気が動き始める。
「雄英体育祭での活躍、ヘドロ事件では強力な敵に単身抵抗を続けて、経歴こそタフなヒーロー性と感じさせますが、反面大会で見せた粗暴などの精神面の不安定さも散見されています。もしそこに目を付けた上での拉致だとしたら?言葉巧みに彼をかどわかして悪の道に染まったら?未来があると言い切れる根拠をお聞かせください。」
記者がそう質問を投げかけた途端、上からお茶が掛けられた。
「っ!誰だ!」
記茶が振り返るとそこには門矢士がいた。士はカメラを構えて写真を一枚撮る。
「お前は馬鹿か?」
士は移動しながら相澤たちの前に移動する。
「馬鹿とはなんだ!バカとは!大体私はまっとうな質問を・・・・・・」
「まっとうな質問?じゃあ聞くが世間では生徒一名が誘拐されたと報道されているのにどうやって知ったんだ?もしかして病院の看護婦からでも聞いたのか?いや聞けないはずだ。看護婦にも守秘義務がある。それに病院は警察が厳重に警備しているのにまさか病人のフリをして入って調べたのか?未成年で学生のプライバシーを侵害したってことだよな?
いや、仮に病院にいなくてどうやって突き止めた?病院にいる生徒を考慮しても絞り切れないはずだ。もしかしてお前は敵連合から流された情報でそう質問をしているのか?
それに、お前たちは忘れている。人間は、みんな弱い。
どんなに強靭な肉体を作り上げたとしても結局は人間だ。弱いところもある、未熟なところもある。お前たちはヒーローは完全無欠の存在だと思っているだろうがそうじゃない。
ヒーローはヒーローである前に人間だ。どんな人間にも生活や欲望、夢がある。なのにお前たちは助けてもらっている立場でありながらいざ問題が起きれば責め立てるばかりじゃないか?本当は困っている姿を見て楽しんじゃないのか?自分たちが優位に立っていることを快感と思っているんじゃないのか?報道するという立場であれば何をしてもいいという考えに行きつくんじゃないのか?どんなにお前たちに報道の自由があるとはいえど、そこまで責め立てる権利もない。ましてや未成年だ。顔を大々的に報道して、敵になるのではないかと言う発言自体間違っている。
どんな力も使い方によっては善にも悪にもなる。ダイナマイトだってそうだ。掘削だったら役立つが、戦争に使えば武器だ。」
士の発言に誰も反論できなかった。
「お前、もしかして敵連合からの情報を勝手に報道しているんだろ?じゃなかったら攫われたのが爆豪だと知らないはずだ。」
士の指摘で皆がその記者を見る。
「な、何を根拠に言っているのだ!証拠を見せろ!」
「証拠ならあります。」
里中が記者会見の場に現れる。
「あなたが敵連合の人物と接触して情報を貰っているフィルム写真がここにあります。」
里中が見せたのは密会している写真であった。
その瞬間記者は青ざめると急いで逃げようと走り出す。
「させません。」
里中は手に持っていたペンを投げ記者を気絶させる。