神野区の事件が一夜明け、世間に大きな波紋が生じた。
オールマイトの引退、オールマイトの正体、神野区半壊。
ワイドショーでもニュースでもその情報が出回っていた。
政府上層部はこれに対してどうするべきかを話していた。
しかし、ヒーローの質の低下は隠し通せるものではなかった。
誰もが気付いていた。
オールマイトはすべてを背負いすぎて戦った。
それにゆえに誰しもが思っていた。
―――オールマイトがいれば大丈夫だ、と。
ヒーローですらそう思ってしまっていた。
だからこそヒーロー社会に大きな影響を与えていたのだ。
「ほんで、オールマイト。今どんな気分だ?」
病院の一室で体中に包帯を巻いてベッドに座っているオールマイトはグラントリノと塚内、そして伊達がいた。
「・・・・・・・・・・・私は間違っていたのだろうか?」
不意にオールマイトの口からそんな言葉が漏れた。
「そんなことは――――」
「そうじゃな。」
塚内がフォローしようとするとグラントリノがそれを認めた。
「伊達、お前さんもそう思ってんじゃろ?」
「まぁな。オールマイト、お前さんはデイヴィッド博士の時もそうだが、一人で抱えすぎだ。確かにお前さんの“個性”に関しては知る人は少ない方がいい。だがな、本当に信じられる人ってのはそんなに少ないのか?」
「・・・・・・・・・」
オールマイトは伊達の言葉に黙ってしまう。
「・・・・・・・・・・なんか言えよ!」
伊達は声を荒げて立ち上がる。
医者であるにもかかわらず、病院内と言うことも本人は重々わかっているにもかかわらず声を荒げていた。
そしてオールマイトの胸ぐらをつかんだ。
「出久はな!お前のように大事な人を失って痛みも辛さも知ってんだよ!お前は自分が世界のすべてを救えるとでも思ってるのか!あ!ふざけんな!」
伊達は乱暴にオールマイトをベッドに叩き付ける。
「・・・・・・・・・俺は俺のいた世界で出久や後藤ちゃんたちに助けられて今こうして立っていられるんだよ。そんな出久ちゃんたちを支えたいって思うんだよ!でもな、お前はどうなんだよ!一人で抱えてすべてを解決しようとして、弱さを見せようともしねー。出久ちゃんだってな、たまに俺に弱み見せるんだよ。自分の病気が徐々に死に向かってるのわかってるから!今は紫のメダルとアンクのくれたメダルがあるから生きているけどな、あいつはいっつも泣いているんだよ。」
「緑谷少年が!」
「当たり前だ!死ぬってわかっているんだよ!なのにヒーローになりたいって思いも強いんだよ!」
そこまで言うと伊達は荒げた息を整えて話す。
「出久ちゃんはな、いっつも俺に死にたくないって言ってるんだ。死ぬのが怖い、失うのが怖いってな。でもそれを知ってるのは爆豪や心操って奴だけだ。出久ちゃん、新学期に担任の先生から話すって聞いているよ。それでも・・・・・・・・今でも俺は情けないんだよ。I・アイランドでも出久ちゃんの治療薬の研究はされてても症状を抑えることしかできないってことが分かっちまった時に、自分がちっぽけな人間だって改めて思ったよ。」
伊達は窓まで行くと拳を握る。
「情けねーよ。何にもできない自分がよ。」
外の天気とは違い、伊達の表情は暗かった。
一方その頃出久のいる病室では引子が側で座っていた。
「出久・・・・・・・」
寝ている出久は何もなかったかのように穏やかに寝ている。
けど昨日の戦いをテレビで引子は見た。
そして知った。
出久は本当に命を燃やして戦っているのだと。
すると扉を叩く音が聞こえ、返事をしながらその方を振り向く。
「どうぞ。」
「邪魔するぞ。」
入ってきたのはアンクであった。
「あなたは・・・・・・」
「・・・・・・・・アンクだ。」
アンクはバツが悪そうな顔でぶっきらぼうにそう答えた。
「あなたが・・・・・・・」
アンクは何も言わず出久に近づくとセルメダルを出久に与え治療する。
そして何も言わずに去ろうとするが引子が腕を掴みアンクを引き止る。
「なんだ?」
「あなたが出久が言っていたアンクね。少しだけお話し合させてもらえるかしら?」
「・・・・・・・・・・少しだぞ。あいつが目を覚ます前に帰らないといけないからな。」
「ええ、いいわよ。」
アンクは椅子に座り引子と向き合う。
「まずはあなたに感謝しないとね。」
「感謝?はっ!恨んでるの間違いじゃないのか?」
アンクがそう言うとインコは首を横に振って否定する。
「いいえ、違うわ。あの子にヒーローになる夢を持たせてくれた、そこには感謝しているの。それに今だってあの子を助けようとしてくれていたじゃない。」
「それは大きな勘違いだ。俺は自分のためにこいつを利用しているだけに過ぎない。」
「じゃあ、なんで向こうの世界で暴走しかけたこの子を殴ってくれたの?」
「っ!?」
アンクは目を見開いた。
徐々にグリードとしての力を覚醒させ、暴走してもおかしくない状態の出久に対しアンクは持てる力を使って出久を引き戻した。
それだけじゃない。
いろんな戦いの中でアンクは助けることをした。
その言葉にアンクはそっぽを向く。
「私はね、あなたが思っている以上にやさしいと思ってるわ。人間じゃないってのは出久から聞いているけど、そうは思えないわね。どちらかと言えば出久があなたの変えたのかしら?」
「・・・・・・・・・さあな。俺は自分の欲望のままに生きてる。それだけだ。」
「そうね。確かにあなたたちはグリード、欲望を意味するわ。名を体と行動で示しているわ。それでも私は思うの。あなたは優しい。出久のことを気に掛けてくれていた。理由はどうであれ、ね。」
引子は微笑みながらアンクを見る。
「・・・・・・・・・・こいつはいつも一人で解決しようとする傾向があるのは、周りも知ってるはずだ。もしこいつが心を許せるヤツがどこかにいたら、いいと思ってる。俺じゃない、誰かだ。」
アンクはそう言うと立ち上がり、扉に手を掛ける。
「邪魔したな。」
「構わないわ。いつか未来でこの子にまた会えた時に、思いっきり怒ってあげて。私は・・・・・・ちょっとできないから。」
「・・・・・・・・覚えてたらな。」
アンクはそう言うと病室を後にした。
「・・・・・・・・・出久、あなたは本当にすごいわね。でも・・・・・・・」
引子は出久のおでこにまで顔を近づけると額にキスをする。
「命を大事にしてね。母さんはそれが今の望みよ。」
引子はそう言うと病室を出た。
「じゃあまた明日も来るからね、出久。」
引子が廊下を歩いていると向こう側から麗日たちが来ていた。