出久に頼まれた蛙吹は全員をA組をロビーに集めた。
「それで緑谷君、どうして僕たちを集めたんだ?」
飯田が代表して質問をする。
「うん、実はみんなに秘密にしていたことがあるから今話すべきだと思ってね。」
「話すべきこと?」
皆が疑問に思う中、出久は告げた。
「僕はね、無個性なんだ。」
その言葉に衝撃を受ける一同。
「ちょ、ちょっと待てよ緑谷・・・・・・・お前が無個性ってことないだろ!」
上鳴が声を荒げて言うと出久は首を横に振る。
「本当に無個性なんだよ。僕は生まれてこの方、ずっとね。」
出久は机の上にドライバーとメダルケースを置く。
「このドライバーとメダルのおかげなんだ。」
「どういうことだよ?」
峰田が問う。
「この二つはココとは違う、別世界のものなんだ。」
「おいおい緑谷待てって。急に異世界って言われてもそんなものあるわけないだろ!」
上鳴の言葉に周りは頷くが爆豪が口を開いた。
「アホかお前らは!そもそも、俺たちが使っている“個性”ってのは昔の人からすれば異世界の能力みてーなもんだろうが。それにアホ面、お前が雄英に入ってない可能性もあっただろうが!」
「おい爆豪!いくら俺がバカだからってそれは無いだろ!」
「事実を言ったまでだ!いろんな可能性があるのがこの世界だ。デクの場合別の世界に行って戻って来た。そんだけの話だろうが。」
その時であった。
《その通りだ!爆豪勝己君!》
突然モニターがつくと同時に鴻上会長が映し出され、声を上げる。
《初めまして雄英高校一年A組諸君!君達との出会いに、Happy Birthday!》
「は、はっぴーばーすでい?」
砂藤がひらがなで復唱する。
「鴻上会長、いつもながら驚くんですけど。」
《まぁ君は慣れているから問題はないね。君が自分から打ち明ける機会を私は待っていた!そして今!君は自分から打ち明けた!ならば私も協力しよう!》
全部説明するつもりだった出久からしたら助かる事であった。
《君たちは出久君がなぜヒーロー名を仮面ライダーと名乗っているか、わかっているかね?》
「それってあの時話した理由じゃないのか?」
切島がヒーロー名を決める時に話した理由を持ち出したが鴻上会長はNo!と言った。
《仮面ライダー。これは一言では語りきれないほど重く、責任ある言葉だ。
どんな正義も悪がいてこそ成り立ち、存在する。
初代仮面ライダーは当時、世界征服をもくろむ悪の組織から生まれた怪人だ。》
「なんでだよ・・・・・ヒーローは・・・・・」
「峰田ちゃん、ヒーローが存在しない世界なのよ。ましてやいきなり警察に悪の組織って言われても誰も信じはしないわ。」
《その通りだ!各地であらゆる事件は起きるが誰もそれに辿り着けることはなかった。
そんな組織に立ち向かったのは当時たった一人!それが初代仮面ライダーにしてショッカーが生んだ最高傑作!仮面ライダー1号!そこから歴史は始まった!》
「待ってください!」
百が手を上げて発言をする。
「今歴史は始まったと言いましたが、そこで終わったわけではないのですか?」
《その通りだ!時には宇宙、時には地底、時には異世界からの侵略が我々の世界ではあった。しかし!その度に立ち上がった戦士たちがいた!それが仮面ライダーだ!
そして出久君は私たちの世代で生まれた平成12番目のライダーだ!》
「12番目?」
お茶子が首を傾げる。
《君たちも一度会っているはずだ。アクア、フォーゼ、そしてWに。》
「あ、あの時の!」
三奈がI・アイランドでのことを思い出す。
《あの時にもこちらの方で潰そうとはしているのだが、なかなかつぶせない組織が関係していたんだ。》
「ある組織?」
葉隠が問うと鴻上会長は答えた。
《その名は財団X。いわば死の商人だ。あらゆる武器や兵器を売って世界に混沌を招いている。今も仮面ライダーやインターポールが協力しているが、トカゲのしっぽ切りの状態だ。》
異世界とはいえど自分たちと同じ、いやそれ以上の状況になっているとは思わなかった。
そこから出久の力の根源について語り始めた。
800年前、ある王が世界征服を目論んでいた。それもただの世界征服ではなく新たな世界の神として世界に君臨するという欲望の大きい王であった。
王は錬金術師で動物の力を取り込んだメダルを作った。
王はベルトとメダルを使って逆らう者をすべて倒し、世界を掌握する一歩手前まで行っていた。
しかしコアメダルから生まれた怪物グリードがいずれ自分たちも殺されると思い反旗を翻した。しかし中に一人裏切り者がいた。
それが出久を助けたグリード、アンクであった。
アンクは王を利用しようとしたが、王はアンクを裏切り、コアメダルをすべて取り込み自分のモノにしようとした。
しかし王一人の器の中に抑え込むことが出来ず、暴走した。
コアメダルの有り余るエネルギーは周りを巻き込んだ。
王は石化して棺となってその場にいたすべてのグリードとメダルを封印し、そして国は一夜にして滅んだ。
それから約800年の月日が流れた。
異世界の穴に巻き込まれた出久は記憶を失い世界を旅していた。
ある事情で日本に来た出久は日雇いの警備の仕事をして偶然にもその場に居合わせた。
そこから出久の運命は流転した。
蘇ったグリードから生まれたヤミー。
800年の人間の進化に驚きながらも順応していくグリード。
自分の欲望のためにグリードと手を組むドクター真木。
戦いは激しさと複雑性を増していった。
そしてある日出久の体に取り込まれた紫のメダル。
そこから始まる暴走。
そして知らされなかった出久の過去の後悔。
徐々に人間でなくなっていく日々。
そしてアンクの離脱。
様々な事情が絡み合った。
語るには到底難しかった。
そしてドクターが一体のグリードを暴走させ、世界に終焉をもたらそうとした。
出久たちはそれを全力で阻止すために戦った。
しかしドクターは人間とグリードを超越した力を手にし、出久の渾身の一撃をモロともせずに立っていた。
成す術ないかと思われた時、アンクが最後のコアメダルを渡した。
しかしそれはアンクの人格を構成するコアメダル。
ヒビが入っていた。下手に使えば割れる物であった。
出久はアンクがやりたいことと理解し、それを使い変身をした。
そして渾身の技を繰り出し、ドクターを倒した。
だが同時にそれは分かれを意味していた。
ドクターの崩壊によりコアメダルが次々と穴の中へと吸い込まれていった。
そのメダルの中には出久が使っていたアンクの人格以外のコアも吸い込まれた。
そして空から落ちるところを後藤に救われ、今に至る。
「・・・・・・・・・・」
その話を聞いて一同何も言えなくなった。
出久の経験してきたことは一年とは言えど色濃く、濃密で激しい物だった。
またヒーローの在り方に対して今起きている運動にも納得できてしまっていた。
助けるはずの者が助けようとしない、自己犠牲の精神で戦おうともしない。
正義の定義に正しいとかはないのだが、ふとこの世界のヒーローの在り方について疑問に思ってしまうのであった。