黒の剣士と紅の風来坊   作:野澤瀬名

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アスナ「…………(出番、まだ?)」

お待たせいたしました。アスナさんの出番です!


スプラッシュ・ブレイズ 4

 第1回ボス攻略会議の翌日、迷宮区最上階にてディアベル率いるワンパーティーがボス部屋を遂に発見した。彼らは勇敢にも扉を開け、ボスの顔も拝んできたらしい。

 その次の日の午後4時。第2回の会議が開催され、会議直前に配布された『アルゴの攻略本 第1層ボス攻略編』と唯一ベータテスターであることを公表している俺の知識を参考にボスの行動パターンの把握がなされた。

 ボスの名は《イルファング・ザ・コボルドロード》。片手骨斧とラウンドシールドを扱い、HPがラスト1ゲージになると、主武装を曲刀カテゴリーのタルワールへと変更するモーションをもつ。

 取り巻きは金属鎧に身を包み、ハルバードを扱う《ルイン・コボルド・センチネル》。戦闘開始時に3体、ゲージを削る事に3体ずつ再湧出(リポップ)し、最終的に計12体を相手にしなければならない。

 情報を聞き終えたディアベルは暫し黙考したあと、

 

「情報を聞く限り、それほどヤバそうな敵じゃない。これならみんなの平均レベルがあと2、3低くても犠牲者無しで倒せると思う。いや、ナイトとして犠牲無しで攻略すると誓おう!」

 

 いよっ、ナイト様!、と合いの手が入り、みんなが拍手に湧く。情報を提供し終え、後列に戻っていた俺も拍手を送る。

 やっぱりネトゲでもああいうアグレッシブな奴が大手ギルド牽引するんだろうなぁでもそういうギルドって規則とかあるだろうからやっぱ俺はソロプレイヤー続けるんだろうなぁ、とか考えていると、

 

「じゃあ、実際の攻略会議を始める前にみんなまずパーティーを組んでみてくれ! パーティーを作らないと役割分担できないからね」

 

 ディアベルの呼び掛けにあちこちでパーティー申請のウィンドウが開かれる。俺のところにも数人程集まり、お誘いを受けることとなった。

 

「レイさん、俺たちと組みませんか?」

「いいっすね! やりましょうよ!」

「あーと、俺は……」

 

 チラリとサーシャの様子を窺うと、案の定キョトンとしたままおいてけぼり状態と化していた。

 ────何故彼女をこんなに気にかけるのか?自分でもよく分からなかったが、このまま彼女だけお誘い無しというのもアレなのでお誘いを断ることに。

 

「すまない。元々俺ソロだし、パーティー連携とるのなら気心知れた仲間とやった方が良いよ。今回は気持ちだけ受け取っておくよ」

「そうですか……、ちょっと残念ですね」

「じゃあ、また今度。機会があれば誘ってくれ」

 

 片手で謝辞をきり、サーシャの元へと向かう。こちらに気付いたサーシャの顔がパッと明るくなる。

 

「よかったー、誰も友達いないからどうすればいいのかわからなかったの」

「いや、まあパーティー組みませんか、って聞けば良かったんだけどな。……でも」

 

 困ったことにこの場にいる人数は46人。周囲には既に6人パーティーが7グループ出来ており、つまり俺たちはおミソになったことに……。

 うわぁ、誰も居ねえ……、と頭を抱えた時、

 

「なあ、アンタ達もあぶれたのか?」

 

 後ろから声をかけてきたのは、グレーのレザーコートに身を包んだ黒髪の片手剣士(ソードマン)と同じく灰色のフーデッドマントの細剣使い(フェンサー)、胸の辺りの膨らみを見る限り恐らく女性プレイヤー、の二人組だった。

 あぶれたことを認めるのはなんか癪だったが、状況的にはそうにしか見えない。

 こくっ、と頷くと片手剣士の方が見かけの割には落ち着いた声で続ける。

 

「じゃあ俺たちと組もう。レイドは8パーティーまでだからこのままだと参加できない」

「ああ、了解した」

 

 サーシャと共に申請ウィンドウを出し、パーティーに加入する。視界の左上隅に3本のゲージが追加される。

 その内、新たに見る2本を俺は確認した。

 

(キリト、とアスナ……、か)

 

 

 

 ディアベルは組まれた7つのパーティーを検分し、最低限のメンバーを入れ替え、高火力高機動の攻撃(アタッカー)部隊を3パーティー、高耐久で敵の攻撃を防ぐ防御(タンク)部隊2パーティー、デバフ系のスキルがメインのポールアーム部隊を2パーティーを作って見せた。

 作戦もアタッカー2チームがボスへの攻撃、残り1チームが取り巻きの殲滅役を担う。タンク部隊はボスのヘイトを稼ぎつつ防御に徹し、ポールアーム隊はデバフ系のソードスキルでボス、取り巻きの行動を出来る限り阻害する方針が組まれた。シンプルな、それ故に破綻する可能性も低い堅実な作戦だ。

 最後にキリトがパーティーリーダーのH隊(余り物おミソパーティー)を見たディアベルは、いい加減見慣れた爽やか笑顔で

 

「君たちH隊には、取り巻きの潰し残しが出ないようE隊のサポートに回ってくれないかな?」

 

 これにフーデッドマントの細剣使いが険呑な空気を醸し出すが、キリトが制止するようにディアベルの要請に了承する。

 

「なによ、これじゃボスに1回も攻撃できないまま終わっちゃうじゃない」

「仕方ないよ、4人とも攻撃系の装備構成なんだから。ボス相手じゃスイッチしてのPOTローテが間に合わない」

「「スイッチ?ポットローテ?」」

「…………」

 

 キリトが絶句するのもよく分かった。何しろMMOにおける基本戦術すら把握していないメンバーが2人もいるのだ。普通のネトゲであれば地雷パーティー確定である。

 

「後でとりあえず彼女たちに教えよう……」

「あ、ああそうだな」

 

 

 

 ***

 

 

 

 明日は頑張るぞ!、おー!

 という感じで攻略会議は解散。各パーティーごとに酒場や料理屋で乾杯、激励会を開くようである。

 一方、おミソ兼地雷パーティーの俺たちは取り敢えず何処かで説明と明日の役割確認をしようという運びになった。…………のだが。

 

「じゃあ、何処かの酒場で……」

「嫌よ、誰かに見られたくない」

「じゃ、じゃあNPCハウスで……、でも鍵が掛からないし。となると誰かの宿の部屋なら……」

「もっと嫌よ」

 

 うわあ、キリト苦労人だなあ、と考えつつ。アスナさんそれは無茶ですぜ、と半ば他人事のように考えていると。助け舟は思わぬ方向から出された。

 

「じゃあ私の貸宿に来ない? アスナも女の子の部屋なら気軽にいれるだろうし!」

 

 それ俺たち男性陣(レイとキリト)のこと考えてないだろ!

 脳内シャウトする俺たち抜きに(顔色を見る限り恐らくキリトも同様)話を進めようとするサーシャ。

 何故か首を傾げたアスナだが、はあ、と溜息をつくと呆れたように言う。

 

「……別にあなたがそう言うならそれで良いわ。でもこの世界の宿ってぼったくりも良いところだわ。1泊50コルも払って四畳半ぐらいの一部屋だけよ」

「? 私の泊まってるところ、そんなに酷くないよ?」

 

 なぬ、となる俺たちとアスナ。俺たちとしてはニュービーのサーシャが、システム外スキルで良い宿をとっていたことに関して。アスナは良い宿がある事に驚いている様子である。

 ニコニコしながらサーシャは自分の部屋の詳細を話していく。

 

「私のところ、民家の離れでで1泊80コルだけど、ベッド大きいし、簡単なキッチンもついてるし、中庭が見えるし、主屋のお風呂も使えるの!」

「お風呂あるの!?」

 

 途端、アスナさんの目付きがフード越しにも分かる程に変わる。一瞬硬直した後、サーシャを引っ張って道の端っこへ移動。何やらごにょごにょ話し合うと、得心した様子でこちらに戻ってきた。

 

「……彼女の宿で話し合いましょう。2人とも良いわよね?」

「………………おけ」

「………………おう」

 

 出来れば女の子のお宿に御一緒などしたくなかったが、アスナさんのレイピアもかくやの貫通属性視線を見た瞬間、2人の紳士はこう思ったのだった。

 ────────否定すれば殺される、と。

 

 

 

 ***

 

 

 

 その晩色々あった後、何とか連携の話し合いが終わりサーシャ手製の晩ご飯で親睦を深めた後、解散の運びとなった。




朝起きたら寒ッ! 羽根布団にくるまりながら起床した野沢瀬名です。

アニブレ買収とかお風呂クライシスとか色々書きたかったのですが、一層攻略編を全7節で終わらせるために端折りました、すんません!
このままモヤモヤしたままほっとく気は無いので後日幕間の物語として書こうと思います。
……予定です!

考えてみれば原作のキリアスパーティーですが、人数わずか二人でしかも片方はニュービーとか、地雷以外の何者でもないんですよね。
実際僕がやっている対戦型のMMOTPSでもそういう小隊が味方にいるたびに『もっと下のランクで鍛えて出直してよ……』と思ったことは多々ありますし。
……まあ、アスナさんも新キャラサーシャもバーサーカーじみた性能の持ち主なので地雷と一括りにはできませんけどね。

次回、(ようやく)ボス戦開始です!
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