Fate/Grand Order side blood 作:シアンコイン
二話同時投稿って大変ですね……。
因みにもうストックないのでちょっと待っててほしいゾ。
file01「狩るモノ、狩られる者」
(少し、やり過ぎただろうか………。)
ふと狩人ことバーサーカーはそう考えた、教会から離れマスター含め彼女らの目的を達成する為に移動を開始した面々。
仮にもサーヴァントとはいえ半分が人間であり実戦経験が無いマシュには、マスターらの護衛を彼女に任せバーサーカー自ら先導し足を進めている現状。
焼け崩れ最早人が住む事も不可能になった正に悪夢のような街並みを横目に彼は少しだけ視線を後ろに向けて歩いていた。
槍兵を倒したあの瞬間、彼には背後で小さな悲鳴が上がった事に気づいていた。大剣の血を振り払い、仕掛けを外し元の剣に戻すと再び彼は血を拭い自らにこびり付いた血を拭う。
床に落ちた短銃を拾い上げ、懐にしまい振り返った時に彼の目に飛び込んだのは放心するようにこちらを見つめるマシュ、よほど驚いたのかその場でペタリと座り込んだ所長。
そして僅かに震える身体を誤魔化すようにこちらに笑顔を向ける立花だった。
狩りは決して輝かしい、誇り高い事ではない。血を血で洗い、血生臭い戦いを続け時には夢に落ちやがて抗う為に目覚め止まる事の無い意志で狩を始める。
剣と剣で戦うようなお行儀のいい戦いなどした事はない、正々堂々何て言葉など誰も考えない。ただただ狩り、奪い、血を求め、何が相手でも一人で戦い続けてきた。
脳裏に過ぎるのは自分ではなかった頃の色褪せ穴が開いた記憶、そして言葉を交わした獣ではなかった人々達の言葉とその果て。
『夜に呑まれるんじゃないよ』
『ありがとう狩人さん』
『どうせお前もそうなのだろう……?』
『狩人など、お前らも血濡れだろうが!!』
『―――――死を受け入れたまえよ』
幾何もの間、己を殺し朝を迎える為、意思を継ぐため、悪夢を終わらせるために戦い続けた。数えきれないほど力尽きた事もある。
その姿を見るだけで身の毛もよだつ様な恐怖に駆られ、狂いそうになるほどに憔悴しきった記憶もある。
最早この身体は人間ではなく、獣でもない。ただの狩人である。その選択には微塵も後悔はない。
何度も繰り返した狩りの中で唯の一つも助けることが叶わなかったヤーナムの少女、今この場に居る『彼女』を今度こそ守りぬく。
殺すだけだった立場の自分には気の利いた皮肉だと内心では笑ってしまうがそれもまた一興。
今も目前で瓦礫の影から現れた髑髏を大剣の背で殴りつけ壁に叩き付ける。
奇襲を卑怯だとは言わない、相手を倒せばそれでいい。
「―――――貴様も、そうなのだろう?」
刹那、
が、相手は一歩上を行っていた。重金属で出来ていたはずの大剣の背には深々と捻じ曲がった剣のような物が突き刺さっている。
瞬間、間髪入れずに大剣である金属の鞘から中の剣を投げ捨てる様に前方に切り離した狩人が見たのは、青の閃光が走り自らを引きずり込まんと爆発する剣だった。
「バーサーカーさん!!」
爆発に巻き込まれ、声を上げたマシュ、その言葉に反応を示すように砂にまみれた身体を煙の中から現した彼は片手で近寄ってくる三人を制すと物陰へと避難した。
「バーサーカー、あれは……?」
「……ここから南西、ビルの最上階からの狙撃……血を流し過ぎたか。」
「そ、狙撃ですか!? では相手は……」
「弓兵のクラスね、一度ここは迂回して別のルートを……バーサーカー、貴方何を。」
「足りないモノを補っているだけだ…。」
徐に取り出した赤黒い液体の入った注射器を取り出した狂戦士は戸惑い無く太ももにその針を突き刺し液体を流し込んでいた。
傍から見れば血迷った行為にも等しいそれを戸惑いもなく平然と行うその姿に唖然とした三人だが、彼のクラスが狂戦士だと気づくとどこか納得したようだった。
「………行け。」
徐に狩人が脇道を指さし懐から歪な黒いナイフのような武器を取り出す。何を意味しているのか最初は分からなかった三人は言葉を詰まらせ次の瞬間には彼に詰め寄っていた。
「馬鹿な事言わないで頂戴、私達だけでどうしろというの!!」
「そうだよ狩人、相手は遠くに離れているんでしょう。だったらこのまま隠れてた方が…」
「……いずれ追いつく、遠く離れた俺を正確に狙う相手が迂回路を視野に入れていない可能性の方が低い。マシュ……マスターと所長を頼む。……また約束を破る、か……。」
三人の制止を聞かず、物陰から飛び出した狩人は短銃を懐にしまうとナイフの柄を指で弾き器用に刃を回転させ、黒く輝く刃を二対に変え両手に構え疾走を始める。
上空から降り注ぐ閃光を前に飛ぶことで避け、瓦礫で凌ぎ、その刃でいなすように弾き飛ばす。相手が居ると思われる建物まで距離を詰めていった。
高くそびえ上がる建造物の下まで辿り着いたその瞬間、俄かに照らされた自分の影が僅かに陰った事に気づいた彼はその場を飛びのき上を見上げた。
先程まで自らが居た場所には巨大なビルの瓦礫が叩きつけられ砂塵が辺りに舞う、そしてそれはその瓦礫の上に降り立った。
「無謀だな、あるいは自らを犠牲にした選択か。どちらにしろ愚かに変わりはないか。」
「……夜に呑まれたか?」
「…無謀ではなく、狂っていたのか、これは失礼狂戦士は『狂っていた』は失言だったな。」
「皮肉などに興味はない、俺から言えば貴様こそ自らを犠牲にしているだろう。」
「ほう、会話など期待していなかったが言葉を理解できるレベルの狂化か。」
「理解できないな、俺は『狂ってなどいない』」
「……ふん、やはり言葉は無駄か。」
「刃を交えた瞬間、結末は生きるか死ぬかだ。」
再び交差する互いの視線、その手に弓を構えた赤い外套を腰に巻いた白髪の男は視線を鋭く研ぎ澄ますと狩人が駆け出した瞬間にその場を後ろに飛びのき弓を放つ。
紙一重でそれを躱す狩人は相手に肉薄し踏込と同時に二対の刃を突き出した。
◇
「……こちらには敵性エネミーは居ないようです。」
「そう、上手く狂戦士が引き付けてくれているのね。」
盾を構え慎重に街角から大通りを覗き見たマシュは一息つくと後ろで控えていた二人に声をかける。
所長ことオルガマリーがその言葉に安堵し、溜息をもらしたが背後のマスターである立花は心配そうに後ろを振り返っていた。
「マスター……心配でしょうが今は狩人さんを信じましょう。」
「……でも…。」
立花を気遣う様に声をかけたマシュ、視線をそっちへ向けた彼女は後ろ髪を引かれる思いで言いよどんだ。
先程の奇襲に自分たちは反応さえできなかった、狂戦士だけが相手に気づき対処していたとはいえ軽傷とは呼べない程に傷を負っていた彼を一人残すのに抵抗があるのだ。
「…気持ちを切り替えなさい、あの狂戦士は私達の目の前で槍兵を倒しているのよ。そうそう簡単に負けはしないはずよ、サーヴァントの心配よりも今を気にしなさい!!」
そんな彼女は所長叱責するが、言葉の節々に立花を気遣っている所を見るに非情に成りきれない面もあるのだろう。
「――はい!!」
「―――――おーおー、元気だこって。こんな場所に小娘三人とはちと不用心じゃねぇか?」
気を取り直した彼女たちの元に頭上から男性の声が響く。すぐさま反応したマシュは二人の前に立ち戻り盾を構えるが何も起きる事はない。
数秒の後にマシュは視線を巡らせてようやく気づいた。ビルが崩れた壁面から自分たちの背後を眺める様に見つめニヤリと微笑む青いフードの男が居る事に。
「あっちであの野郎と殺り合ってるのはアンタらのサーヴァントかい? それにしても激しいな、あんな戦い方でよく消滅しねぇな。」
「…貴方は?」
「俺かい? 俺は
身を翻し何の事もなくその場から飛び降りた魔術師と名乗る男は垣間見えた、赤い瞳を覗かせ口元を釣り上げる。
警戒を怠る事もなく盾を構えたマシュ、その後ろに控えた二人は目の前の魔術師に疑念を覚えていた。
これはアレなのだろうか。
そのうち英霊のステータスを書いた方がいいのかな。