Fate/Grand Order side blood   作:シアンコイン

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今回で冬木は終わりです。
はい、展開は早く行かないと詰まっちゃいますからねぇ。

ややブラボネタが混ざっていますので、分かりににくかったらごめんなさい!!




File03「狂戦士」

 

 

 

時は遡る

 

外套の男をその身諸共、大砲により吹き飛ばした狩人は砂塵が舞うビルのエントランスで片膝をつき荒々しく息を吐いていた。

左肩に深々に刺さった赤い螺子のような剣を右手で強引に引き抜いた彼は、地に流れる夥しい鮮血を見つめ右手を再び動かす。

 

「…………ッ。」

 

そして徐に取り出すは先ほども使っていた赤黒い液体が入った注射器、無造作にそれを自らに突き刺した彼はみるみる塞がっていく傷を気にすることなく立ちあがった。

視線を辺りに当て相手がどうなったか確認しようとする狩人に特有の声音が届く。

 

「なぜ、消滅しない……狂戦士。」

 

砂煙が晴れ、そこから姿を現す弓兵、瓦礫を背に力なくそれに寄りかかる彼は既に足元から消えかかっていた。

 

「………特別な理由は無い、腹は裂かれ慣れているだけだ。」

 

「成る程、貴公がどんな修羅場をくぐったのか想像も着かないが……やはり…いや、無粋か……」

 

平然と放った、腹を裂かれ慣れているという言葉に狩人自身は眉一つ動かす事無く答え、それを聞いた弓兵は一時表情を凍らせると自嘲するように小さく笑い消滅していった。

 

「……」

 

血に濡れた手先を静かに胸元へ寄せ、小さく確かにそこに居た弓兵へとお辞儀した狩人は踵を返す。

瓦礫の下から拾い上げた黒い刃、『慈悲の刃』をもう一対取り出し再び一つに戻した彼は別の武器を取り出した。

 

同時に背負い上げたのは二つ折りにされ薄汚れた布切れで巻かれている柄らしき棒状の物、その手にしたのは剣と呼ぶには余りにも歪で統一性の無い形状をした刃の曲刀だった。

武器を確認する手前、ふと狩人は何の気も無しに上を見上げ納得するように一、二回頷くと再び歩みを始めた。

 

主人である立花とは彼が重んじる『血』とよく似たモノで繋がっていると判断した狩人は迷うことなく足を進めた。

その場に残されたのは赤い光に仄かに照らされた何もない大広間、祭壇は存在しないがその場は確かに鴉の狩人との記憶を思い出させていた。

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

マシュと黒騎士の戦闘が始まった時、会的する敵には目もくれず狩人は疾走していた、無限に感じるほどの時の中で彼が学んだことは無理な戦闘は避ける事、背後に気を付ける事、不意打ちを戸惑わない事、無視が時には有効であるという事だった。

 

「――――………ッ」

 

しかし、そんな狩人でも無視できないモノが存在した。

思わず立ち止まった彼の視界内にあるのは恐らく主人が居るであろう場所に繋がる一本道、そしてもう一つ映るのは意味ありげに開かれた獣道、その先に見える小さな横穴。

 

獣狩りの狩人であると同時に、元人間である彼にとって欲という物は必ずしも無縁ではない。

そんな時に彼ら狩人はこんな言葉を残す。

 

 

 

 

『全ては探究心のせいだ………』

 

 

 

 

いつの間にか居なくなっていた狩人が居た場所には、灰色の泡が立っていたとか………。

 

 

 

 

 

 

 

 

幸いにも横穴は立花の居る洞窟へと繋がっており、結果オーライとなったのだが何やら不穏な雰囲気と危機迫る状況だと判断した狩人は懐から青い液体の入った小瓶を取り出すと迷いなくソレを飲み干した。

まもなく狩人の意識が一瞬薄れるが瞬く間に取り戻すと、マシュに対して攻撃を仕掛けていた騎士の背後へと疾走し不意打ちを仕掛ける事に成功、というのが黒騎士に一撃を見舞うまでの一連の経緯である。

 

―――そして、現状

 

狂戦士の名に相応しい程に視野を狭めた狩人は誰の制止も聞かず、常人離れした脚力を持って右腕の得物を振りかぶり崖上の人影、カルデアの副所長であるレフ・ライノールへと牙を剥いた

 

獣を忌み嫌うが故により獣らしく、何かに取りつかれたように武器を振り下ろす。

英霊として、そして狩人として振るわれるその刃は人であるならば容易く標的を両断する程の威力を誇るだろう。

 

本来ならば標的と化した時点で相手に浮かぶのは困惑、あるいは恐怖の感情である筈がレフの表情は一切崩れることはなくむしろ笑みを深めていた。

それはまるで自身が死ぬ、負けることなどありえないといった余裕がある様に。

 

「―――ッ!?」

 

やがてその表情の理由が姿を現した。

 

狩人の得物、『鋸鉈』が彼に襲い掛かる刹那、突如として赤黒いナニカが狩人を振り払う

 

予見する事など適わない不意の一撃は狩人の腹部に強く叩きつけられ彼の身体は宙を舞った、立花はその光景に目を剥き、マシュは数秒の後に盾を構え彼女の前に立つ。

そして誰よりもレフの生存を喜んでいたオルガマリーはその場に座り込んでその光景を唖然と眺めていた。

 

姿を現したのは禍々しく赤く躍動する黒い触手、目を凝らせばその触手には無数の目が蠢いていた。

アレは魔術の範疇に納まるモノではない、より異質で、異形の存在、それを操って見せたのがレフであるのならば…。

 

「まったく、予想外の出来事で頭に来る…。狂戦士のサーヴァントだと? 厄介な者を召喚してくれたも「アァ”!!」何ッ、クッ!?」

 

眉を顰め怒り笑う様に顔を歪めたレフは平然とその触手に触れ言葉を紡ぐが、無数の閃光が彼に襲い掛かる。

立花が捉えたのは視界の端、宙を舞った狩人が祈る様に両腕を強く握りしめ天に掲げた瞬間、白く輝きその身体から無数の光の弾丸がレフ目がけ飛んでいく様子だった。

 

「ッ!! アァ!!」

 

着弾と共に爆発する閃光、それに思わず怯んだレフをしり目に背面から地面に落ちながらも即座に体勢を立て直し一目散にレフへ駆け出す。

対してその触手は迎撃の如く狩人に殺到し大きく振るわれた、がその攻撃をかいくぐる様に右に左へと紙一重で避けても尚狩人の足は止まる事無くレフへ接近する。

 

血眼、まるで何かに憑りつかれた様に怒り狂う狩人の様は彼が口にする『獣』と呼ぶに相応しく成り果てていた。

 

――――殺せ、殺せ、殺せ、殺せ

 

彼の脳裏に過ぎるのは呪いの二文字

 

――――汚らわしい獣を、殺せ

 

生前の彼ならば思い留まるか警戒し、一時、間を置いただろう現状に狩人は自我を無くし襲い掛かる。

 

――――消さねばならぬ、清潔にしなければいけない、終わらせろ、夜を終わらせろ!!

 

――――血、血、血、血、血!! 青ざめた血を!!

 

まるで複数の自分がいるのかと錯覚しそうなほどに支離滅裂な脳内は最早意味を持たずただの狩る者に成り果てた。

迫りくる触手を避け、その側面に鋸鉈を押し付け、疾走と共に切り裂きその身に鮮血を浴びる

 

むせる事無く、怯むことなく、滾る感情を全面に押し出すように我武者羅に切り付け、やがて男に辿り着いた。

 

「アアアアアアアアアアアアアア!!」

 

咆哮、自我を失い、ただただ襲い掛かり鋸鉈を構え振り下ろそうと力を込める

対するレフは受け止めるよりも逃れることを優先するように鋸鉈の範囲外へと飛び退いた。

 

「ハアアァァ!!!」

 

が、その判断は仇となる

左手の銃を手放した狩人、後ろへ振りかぶった鉈を上に掲げた瞬間に大剣の様に両手持ちに切り替え即座に柄についた大きなレバーを握り『変形』させた。

 

―――ガチャン!!

 

刹那、けたたましく鳴る金属音と共に丸鋸のようだった刃のロックが外れ文字通り鉈へと形を変える

瞬く間に攻撃範囲が伸びたその凶器はレフの身体へと届き得たのだ。

 

ガリ、ゴリ、と両腕にかかる骨の感触を感じながら飛び散る鮮血をその身に浴び、鉈から伝う血を垣間見ると視線を上げ狩人はその顔を歪めた

何処かで、何かが狩人の耳に届くがその視線は逸れる事無く視界の先で尚、肩から胸にかけて大きく食い込んだ鋸鉈を意に介する事なく不気味に笑うレフの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤァァァァ!! レフ、レフ!!」

 

狩人の刃がレフに届き、その身を切り裂いた刹那、甲高い所長の悲鳴が唖然としていた立香、マシュに届き二人は我を取り戻す。

 

『立香ちゃん、どうなっているんだい!? レフ教授に何があったんだ!?』

 

「それが……狩人が、レフ教授を、切り、切り裂いて……」

 

『狂戦士がレフ教授を!? 教授は今「ハハ、ハハハハ!!」』

 

「……なん、で…」

 

その場の誰が漏らした言葉だったか、あり得ないモノを目の当たりにしたように驚愕と困惑、そして僅かな恐怖が含まれたその言葉を皮切りに皆が視線を集める先で一人の男が黒いナニカを撒き散らし始めた。

 

『フフフフフフフフ…………ハハハハハハハ!! よもやこの私に傷を負わせるとは!! 理性無くしても英霊という訳か……しかし、この程度で思い上がッ!?』

 

渦巻く黒い力の余波の中、中心にて声高らかに叫ぶ男レフは達観するように余裕を滲ませ言葉を紡ぐがそれは不意に途切れさせられる。

驚愕に顔を歪ませ身体に走った衝撃の根源に視線を向ければ右腹部から飛び出している、黒い突起。それが何か理解し同時に何が起きたのか察した男の身体はより一層、力を放出し始めた。

 

「………獣がッ」

 

吐き捨てる様にレフの背後から姿を現した狩人は忌々しげにその手にしていた、『教会の杭』を手放し次の武器を取り出す。

『鋸鉈』に『教会の杭』、二つの武器をその身体にくらいながら死の気配を見せない男に狩人は次の選択肢を探し出す。

 

―――――いいや、選択等必要ない、殺せ

 

再び姿を見せる意思の影、その言葉にその通りだと疑う事なく再び武器を取り出した狩人は躊躇なくその剣を大槌へと変形させる。

 

『調子にのるなぁ!! 虫ケラがぁぁぁぁぁあ!!!!!!』

 

雄叫びと同時に発せられた怒気は憎悪に変わり、無数の触手が狩人目がけ姿を現し殺到する。

最早躱す事は叶わない程に速度を上げたソレが狩人の身体に突き刺さろうとする瞬間、その場で立ち尽くしていた立香、そしてマシュは垣間見る。

 

「アァああァァァァァァああああああ!!!!!!!」

 

身が竦むほどの雄叫びを上げ、今か今かと迫る触手を巨大にして武骨な石の大槌で叩き潰し、払い除け、その身に突き刺さる触手を意に介する事なく片腕の腕力だけで引きちぎるその様を。

徐々に血みどろに、えずく程に凄惨な光景が広がりだした。その姿は正に狂戦士と呼ぶに相応しく理性を無くした化け物と何ら変わりない。

 

顔の真横を掠り抜けた触手のせいで狩人の口元は露わになりそして二人は知る。

 

 

―――――狩人が笑っている事に

 

 

その身を焦がす程に壮絶な戦いを、どちらかの命を奪うまで終わる事の無い戦いの場を、化け物を狩り続けたが故に薄れていた死の恐怖との再会を彼は喜んでいたのだ。

 

だがそんなひと時も遂に終わりを告げる

 

『チッ………、想像以上に厄介だ!! 仕方ない、この場は引いてやろう。だがな、これで終わりではないカルデアの諸君、人類史は消失したのではない……焼却されたのだ、我が王の寵愛を無くしてな!! フフフフフ………ハハハハハハハハ!!』

 

逃げ帰る様に声高らかにそう叫ぶレフはその手に光り輝く何かを手に、姿を消した。

 

その場に残されたのは放心する所長、そして二人の少女と、全身に血を浴び得物を取り逃がした事に腹を立て雄叫びを上げる狩人の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

人理継続保障機関フィニス・カルデア

人類の未来を語る資料館とされ、その内部には魔術そして科学を要し世界を観測し人類の決定的絶滅を防ぐために特務機関が存在する。

 

立香含めマシュ、オルガマリーはそこで起こった事故により冬木と呼ばれる地獄のような場所に飛ばされていたのだが。

その冬木を歪めていた原因を絶やした事によりカルデアでナビゲートをしていた研究員そして何よりロマニ・アーキマンの尽力のおかげでその場に転送された。

 

同時に立香とサーヴァントの契りを交わしていた狩人も転送され現在、ロマニ・アーキマンと言葉を交わしていた。

 

「――――貴方が何故、レフ教授を攻撃したかは最早問う事はしません。あの言葉を聞く限り彼は人類の敵という他に判断は出来ませんので。」

 

「………貴公にとって奴が友人であったのならば詫びよう。だが、俺は少しばかり鼻が利く奴からはハッキリと匂ったのだ。堕ちた獣の臭いを。」

 

「度々口にするその『獣』とは一体何を指しているのですか。私には獣と呼んだ存在の共通点が見つからなくて………。」

 

「…人ならざる者、そして人から堕ちた者、あるいは血に酔い外道と成り果てた存在だろう……。俺自身、身体が反応すると制御が効か無い時もあるからな。」

 

何時の間にか血濡れの装束から小奇麗な神父服に着替えていた狩人は感慨深そうに瞳を細め言葉を紡ぎ、対するロマニは彼の言葉に何か引っかかる事があったのか考える様に口元に手を置いた。

 

(制御が効かないという事は……狂戦士になった故についた『狂化』のせいか? ある限定的な特性でその『狂化』が発動するというならあの行動にも理解できるけど……。)

 

そんなロマニを前に狩人は腰かけていた椅子から立ち上がると、指先を動かしその掌に一匹の灰色の人型を呼び出した。

人のうめき声のような声を上げるその存在を徐にロマニの膝に乗せると狩人は佇まいを直し始める。

 

「えっと、急にどうしたんで……ってええええええ!? ちょっ!? 何これ、何なんですかこれぇェェェ!?」

 

狩人が立ち上がった事に数秒の後に気づいたロマニは顔を上げて彼に声をかけると同時に、膝にかかる重さに視線を向けて声を上げて驚き始める。

そんな光景にマスクの下でクツクツと笑いを漏らした狩人は口を開いた。

 

「何、心配する事は無い。その人型を俺達は使者と呼ぶ、中々に商売上手な奴等で何かと便利な小間使いのようなモノだ。何か用があればソイツに言ってくれ、問題なければすぐにむかう。」

 

「な、なるほど。使い魔のような存在ですか………にしても個性的な…。」

 

ロマニ膝の上で快適そうに寝転んだ使者を見て狩人は再び笑いを漏らす、早々に気に入られているようだなと。

因みにロマニに至ってはその顔を盛大に引き攣らせ使者をどうするべきか困っているようだった。

 

「貴公、ロマニ、と言ったな。俺が鼻が利くというのは覚えているだろう?」

 

「え、えぇ。それが何か?」

 

そして徐に狩人はロマニの前で顔を寄せてこう呟く。

 

「貴公からは、友人の匂い、そして――――」

 

ゆっくりと紡がれる狩人の言葉、そして紅く光る瞳に彼の視線は釘付けにされた。

 

 

 

 

 

 

 

「―――嘘吐きの匂いがする」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、一言だけ呟いた狩人は最後に、唯の戯言、気にする事は無いと言葉を残してその場を後にした。

 

 

 

 

 

 






おい、誰か忘れてねぇか?
そんな言葉が聞こえるような聞こえないような……。

大丈夫です、忘れてませんよー。
次回ちゃんと説明入りますから、いや、マジで。

変身前は攻撃チャンス、狩人ならアタリマエ


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