完璧幼馴染と冴えない俺と。   作:白藜

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第15話

宿について、教師から部屋の鍵をもらう。四人一組の和式部屋には、人数分の布団とちゃぶ台、そしてその上にお茶セット一式がおいてあった。

くるり、と部屋を見渡して、隅っこのほうにリュックサックと着替えの入ったバッグを置いて、けれど、なにもやることがないのに気づく。時間を浪費するのも癪だし、かといって睡眠不足なわけでもない。むしろバスの中でバッチリ睡眠をとった身としては、今のままでは今日の夜、眠れる気がしないのだ。

ゆっくりと立ち上がって、部屋からでる。重たい荷物が無くなったこともあってか、体は驚くほどに軽かった。

取り敢えず、部屋の鍵を返しにいって、そこでどこか暇を潰せる場所はないかと聞いてみる。

 

 

「ん?暇が潰したい?…そうだな、自然公園にいっても良いぞ。あそこは良いぞ。水が綺麗だ。涼しいし、空気も旨い。施設もそれなりに充実しているはずだ。あー、でも運動する場所はなかったな…」

 

うーん、と唸りながら、おおよそ女性らしくない仕草で、我らのクラスの副担、兼ねて今回の鍵などの管理人の平澤 纏(ひらさわ まとい)。首をかしげて悩ましげにうんうん、と考え込む姿だけを見れば、周りからは生徒の悩みを聞いてあげる優しい教師に映るだろうが、この副担が唸り始めたときは大体が考えがまとまっていないときである。もしくは、空腹で考え事をしたくないとき。

 

今回もそんな様子だったので、めんどくさそうな事になる前に…とその場を立ち去ろうと、後ろを向く。そそくさと立ち去ろうとした、丁度その時。

 

 

「平澤先生ー!鍵借りてきたよー!」

 

曲がり角の所から、聞き覚えのある声が聞こえてくる。

いつ聞いたのかは思い出せないが、たしか…

 

「およ!?蒼空くんじゃん!ちぃーっす!」

 

くるっ、と角を曲がって、俺を確認した瞬間に挨拶をしてくる。おおよそ女子らしくない、男同士の挨拶のような感じである。

 

「おう、田村。相変わらず元気だな、子供か?」

 

「うっさい!子供だもん!」

 

少し意地悪な言い方で言うと、つん、とそっぽを向いて開き直る田村。

 

「おお、怖い怖い。ってか、平澤先生はいいのかよ、ずっと放置だぞ、あの人のこと。」

 

話についていけていないであろう平澤先生と、恐らく忘れているであろう田村。

 

「いや、構わないさ。そこまで気にしてはいないからな。うん。田村、お疲れ様。わざわざすまなかったな。」

 

田村から鍵を受け取り、踵を帰そうとする先生。しかし、なにかを思い出したかのようにくるりと此方を向くと、

「そう言えば、暇を潰したい、と言っていたな、青葉?」

 

「え、ああ、はい。」

唐突な言葉に、無意識に返事をする。

 

「なら丁度良い。この裏手に大きめの体育館がある。掃除さえ済ませてくれるのなら、自由に使わせてやるが?」

 

にやり、と不適に微笑みながら、魅力的な提案をしてくる。

 

「いつまで使えます?」

 

「夕方のオリエンテーションはどちらにせよその体育館を使うからな。オリエンテーションまで自由につかいたまえ。」

 

「マジっすか…やります、やらせてください。」

 

「あ、アタシもやるー!いいよね、センセ!」

 

自由に使える、という魅力的な条件を出された時点で、俺の中から断るという選択肢は消え失せた。田村もそれに同意していて、平澤先生はうんうん、と頷いている。

 

「よし、ならば君たちは行きたまえ。オリエンテーションの服装は派手でないジャージ、だからな。持っていくなり着ていくなりしておきたまえ。」

 

てきぱきと指示を出して踵を返し、管理室のスタッフと会話をする先生。最後に言った、「やった、私の仕事が減る」

 

と言うことは一応聞かなかったことにしておこう。そんなことを考えながら、一度田村と別れ、ジャージを取ったあとに再び合流する。

 

「よし、じゃあ行こうよ!」

 

元気そうに笑う彼女と共に、徒歩十分ほどの道を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、掃除おしまいっ、と!」

 

体育館のモップ掛けが終わり、うっすらと額に浮かび始めた汗を拭いながら、田村は嬉しそうに微笑んだ。彼女は更衣室へ向かい、半袖半ズボンのジャージに早くも着替え始めている。かくいう俺もそそくさと運動着に着替えていて、とうに準備万端なのだ。

 

バスケのボールとゴールを用意し、彼女が到達するのを待つ。

 

「やはー!着替えてきたよー!」

 

嬉々とした表情を浮かべながら小走りで向かってきた田村に、ボールを投げる。

 

「あわっ、急に投げないでよ、危ないじゃん!」

 

「捕れる位のしか投げないって。」

 

「そうかもだけどさぁ…まぁいいや!取り敢えず…」

 

「「やろう!」」

 

そういって、俺と田村はコートへ繰り出した。

数時間後、ヘロヘロになった俺たちがいたのは言うまでもない。




今回は箸休め程度にどうぞ。
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