「それではこれより、この旅行の恒例行事を始めます!皆さん、ジャージに着替えて来ましたか?」
時刻は午後5時。六クラスのうちの一組と二組…つまり、田村と俺の所属するクラスのメンバーが大集合する体育館内で、東根桃乃は元気に跳び跳ねていた。
「それでは、これから行う球技大会の説明をします!今回、私たちがするのは、こちら、バレーボール~!中学校の授業とかでやったよね?じゃあルールは大丈夫だね!よし、ならチームを決めよう~!」
「チームは基本8人1組!2つの班をくっ付ける形になります!でも、一緒のクラスじゃ代わり映えもしないと思うので、ちがうクラスの班とチームを組んでくださいね!」
言い切ると、それでは、リーダーのひとは五分後にまた集合を~!と言って説明を終える。別のクラスっていわれてもなぁ、と考えていると、上の方から声が駆けられた。
「やはー!どう?チーム、組まない?」
ニヤリと微笑む田村が、そこにいた。
「足、引っ張るなよ。」
「そっちこそ!」
差し出された手をグッと掴む。立ち上がった俺と田村は、二人同時に不敵な笑みを浮かべた。
「それじゃあ、ウォーミングアップしてねー!45分から試合をします!組み合わせは事前に確認を~!」
リーダーになった俺は言われた通りに説明を受け、自分達のチームに戻っていった。すると流石、と言うべきなのか、行動派の志織と田村の先導で、既にウォーミングアップは始まっていた。
「由良っ!」
「ほいっ!」
山なりに高いトスが上がって、相方の男子が小気味良い音をたててスパイクを決めていた。
「おぇーい」
「ないすー」
なんか気ぃ抜けてるなー…と思いながら俺もスパイク練の列に並ぶ。
「あっ…」
すぐ後ろに紅葉と雪哉がいて、思わず動揺をしてしまって、並んでいた女子生徒にぶつかってしまった。
「あ、ごめん。」
「いてて、いいよ、大丈夫。」
あはは、と笑うと、彼女は、あ、アタシの番だ。と上がったトスに走り込んでいった。あ、空振り。
「えっと……」
声をかけようか迷っている…というか、目があってしまってなんと言うか気まずい空気が流れる。数秒とっぷり沈黙が流れた後に、「蒼空、つぎー」と言われて、おう、と答えて助走の準備をする。
「ほいよっ!」
「よっ!」
スパンとスパイクを決めて、セッターをやっている田村とハイタッチ。ずっとセッターをしていてスパイクを打ってないと愚痴って来るので、変わってやる。
「つぎ、いいよ。」
「あい。どんなトスで?」
決して目を合わせようとしないで、足元を見て返事をする。
「インダイレクトデリバリー。マイナステンポで。」
「…あい。」
ふわ、と頭上に山なりのボールが投げ出される。それと同時に鋭くAクイックの場所に走り込んでくる紅葉。
――――この角度。このタイミング。この速度で―――
―――ドンピシャ!
流石腐っても幼馴染みと言うべきなのか、俺のトスは紅葉の成功打点へと向かっていって…
ドパン!
豪快な音をたてて突き刺さるようにスパイクがコートを貫く。
「…ナイストス。」
呟いた紅葉の頬が僅かに紅潮していたのは、俺の見間違いなのだろうか。それを確かめるすべが今の俺には無くて、未だに紅葉への恋慕を忘れられない自分に嫌気が差した。