超ド直球なクロノ×はやての甘甘短編。
今の流行が分からないのでなんとも言えないのですが、果たして現代このカップリングは生きているのでしょうか・・・?

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クロノ×はやてで誕生日のおはなし。

 それは一ヶ月前。

 たまたま管理局の広い廊下ですれ違った高町なのはが、いかにも“ふと思いついたように”こんなことを言ってきた。

 

「そういえばクロノくん。来月、はやてちゃんの誕生日なんだよ」

「ああ……そういえば、もうそんな時期だったな」

「うん。だから、ね……ちゃんとお祝い、してあげないとね」

 

 これは、ただそれだけの他愛のない雑談である。

 そしてこれだけならば、彼も――言われたクロノ本人も、何も気には留めなかっただろう。

 その一週間後、任務でたまたま同じ星に赴くことになったヴォルケンリッターのシグナムは、会話の途切れた隙を見計らったかのように、あまりにもわざとらしい咳払いと共になんとも神妙な顔つきで言葉を切り出し始める。

 

「ご、ごほん。あー、その、なんといいましょう……じ、じつは、あああ主はやての誕生日が再来週なのですっ!!」

「……そうらしいな」

 

 彼女はらしくないことをしたと自分でも自覚していたのだろう、珍しく顔を赤らめ、そのまま俯いてそっぽを向いてしまった。それはそれで貴重なシーンだったので、クロノにとっても印象深かったのだが――

 さらに一週間の時が流れたある日の夜、クロノが久しぶりの地球での「実家」を堪能していると、同じく休日だったらしい私服姿の義妹が自室に訊ねてきて、開口一番、

 

「クロノ! はやての誕生日、もう来週だよ! なんでこんなところでゆっくり本なんて読んでるの!?」

 

 理不尽な怒りを一方的に向けられ、いよいよもってクロノは「気を遣われている」らしいことをこの時点で悟り始めていた。

 

 

 

 

 

 

「とはいえ……」

 

 その、翌日。地球では日曜日という名の祝日であり、今回の「気を遣われている」らしいもうひとりの相手、八神はやての通う中学校もお休みの、絶好の――何が、かはさておいて――雲ひとつない快晴の下。

 義妹から半ば家を追い出される形で外にでていたクロノ・ハラオウンという少年が、苦々しく青空を見上げ、ひとり静かにため息をつく。

 とりあえずは足を動かしながらも、愚痴のように流れる思考の波は識者である彼でも制御しきれない。適当に着込んだ部屋着のまま、やれやれと肩を竦めてみるが、このまま何もせずに家の敷居を跨ぐことはできないだろうことはなんとなく推測がついている。

 かといって、

 

「……どうしろというんだ」

 

 件の――妙な根回しが実に一ヶ月も前から自分の周囲に根付いていた、その来週が誕生日らしい少女と自分は、ハッキリ言えば別に恋人同士でもなんでもない。

 友人関係と呼ぶのが一番妥当だろう。それは、相手も同意してくれるはずだ。

 何の波長があうのか定かではないが、ちょっと気が合って、軽口を叩き合えるような、そんな身近な関係ではあるものの、断じて色恋沙汰に発展するような艶めかしい話など一つもない。むしろ男同士が誇らしげに語る武勇伝のような、そんないわくつきの話ばかりが彼女との間には転がっている。

 だというのに、周囲ではそう見えていないらしい。

 認識の違いだという話は再三に渡ってしているのだが、のれんに腕押し、どうやら自分と彼女の共通の知人達は、皆「二人をくっつける」という流れでいつのまにか嫌な結託を結んでいるようだ。

 彼女の忠実なる家臣であり家族でもあるヴォルケンリッターの連中でさえそれは例外ではないらしい。

 湖の騎士はやたらと「それで、はやてちゃんにはいつ告白するんですか?」とありもしない予定を聞いてくるし、鉄槌の騎士に至っては最近出会い頭に足を蹴られるのが日課になりつつある。理不尽な仕打ちだと言っても、彼女は聞く耳を持ってはくれない。

 騎士達の総大将はずっと中立なる立場で自分の味方だと思っていたら、この前の件を省みるについに自軍の派閥に飲まれたらしい。よって味方は盾の獣だけである。彼も愚痴を聞いてくれるだけだが。

 

「誕生日なのは分かってるし、プレゼントもいい加減買いに行くつもりではいたんだけどな……」

 

 子供のよくある理論とでもいおうか。

 自分がやる気になっているのに、他人から急かされると急にやる気をなくすというあの独特の感覚が今のクロノの胸中には渦巻いていた。子供か僕は、と独りごちても、その感覚は消えそうにない。

 どうしたものか。

 ……どうしたものか、なんて。我ながら気の利かない言い訳である。

 どうすればいいかなんて一つしかないのだ。この場を丸く治めるには、自分が折れる以外に他ない。

 そしてその手段を、方法を、クロノは完全に理解している。

 

「はあ……」

 

 足を止め、再度顔を上げる。今度は空ではなく、目の前の建物を見上げるためだ。

 もはや見慣れた、お馴染みの建物。立派な一戸住宅、その門の表札には、しっかり「八神」という文字が刻まれている。

 この家のチャイムを押した数も、一度や二度ではなく。

 そして不思議なことに、そのどのタイミングであっても、同じ気持ちでこのボタンを押したことは一度もないような気がする。

 緊張、呆れ、面倒くさい、気軽、焦燥……そして今回は。

 

「さしずめ、嘆息といったところかな」

 

 言葉をしっかりと実践に移し、観念したようにクロノはそのチャイムのベルを鳴らした。

 

 

 

 

 

 

「クロノくん? どーしたん、またえらく急やねー? アポもなしで来るなんて珍しい」

 

 出迎えてくれた少女は少しだけ面食らった顔でこちらの存在を確認すると、料理中だったのか私服にエプロン姿で、パタパタと門の元まで駆け寄ってきた。

 

「すまない、忙しかったか?」

「んー? 別にそーいうんやないけど。あ、あがってく?」

「あーいや……」

 

 後ろ頭をかきながら、さてどうしたものかとクロノは言葉を詰まらせる。

 何せ用事などない。

 妹が怒るからとりあえずはやてのところまで来てみました……と正直に告白したとき、自分の尊厳が下がるのは確定事項だろう。それは避けたい。

 

「んんん?」

 

 身長差的に、困ったクロノの顔を見上げる形になっているはやても、不思議そうに眉をひそめる。それはそうだ、チャイムを押したのに自宅の軒先で突っ立ってちっとも用件を言わない客なんてどう対処すればいいか分からないに違いない。

 ますますもってクロノの表情が曇る。普段如何なく発揮している脳がフル回転で必死に「理由」を探し、あるいは構築しようとするが、なかなか上手くいかずに難航中。その間も時間だけがすぎていき、このいたたまれない空気がゆっくりと、だが着実に濃厚になっていく。

 もはや一刻の猶予もない。

 クロノは答えを弾き出せぬまま、感情のままに口を開いた。

 

「こ、今度!」

「こんど?」

「た、誕生日らしいんだ――」

「ああ……」

「――僕の同僚が!」

 

 何かを理解したようにやんわりと微笑もうとしたはやての口が、中途半端な形で固定される。

 それは正しく、擬音をつけるなら「ぽかーん」とでもいうような感じだった。

 しかしもはや動き出したら止まるわけにもいかず、クロノは必死にまくしたてた。

 

「そ、それで、実は何を送ったらいいのか検討がつかなくて、君にプレゼントを見繕って――そう! 一緒に選んで欲しくて、それで来たんだっ」

 

 それはある種の天啓といってもよかった。

 これならはやてと出かけることでフェイトの溜飲も下げられ、ついでにはやてのプレゼントも苦心することなく得ることができる。フェイトが思い描いた「デート的なもの」とはまるで程遠いが、嘘をついたことにはならないはずだ。なんという策略。これを思いつくとは……やはり天才、と自分に称賛の念を禁じ得ない。

 

「はあ……」

 

 しかし相手はというと、あいた口が塞がらないままに、ちょこんと小首を傾げられた。

 純真なる瞳がクロノをじぃっと見つめる。少したじろいだが、ここで戸惑ったら負けだとクロノは必死に虚勢を張ることに命を賭した。

 

「……そりゃまあ……ええけど……」

 

 柳眉をひそめ、可愛らしい表情に懸念を浮かべ、はやてがぽつりと呟く。

 

「なんでわたしに? 別にフェイトちゃんでもええやん? 確か今日オフやったはずやし……」

「君がいいんだ、ほら、あの……そうそう、君に趣向がちょっと似てる娘で! だから君なら、彼女の好みと合致すると思ったんだ。こういうこと、本人にはなかなか聞きづらいだろう?」

「まあ確かに、クロノくんって女の子にそーいうこと上手く聞けそうにないもんね」

 

 ほっとけ。

 突っ込もうとしたが魂を費やして自粛した。

 しかしこの言葉にどんな説得力があったのか、彼女の瞳に次第に納得の色が浮かび始める。

 

「そっかー。まあ……うん、ええよ。ちょうど今日は暇やったし。付き合ってあげる」

「そ、そうか……助かるよ」

 

 ほっと安堵して答えるクロノに、はやてはにっこりと無邪気に微笑み返した。

 

 

 

 

 

 

 数十分後。

 用意があるからと家に通され、わりと待たされた結果、何故かさっきとは違う服に着替えたはやてを連れ添い、クロノは街の商店街へと繰り出した。

 隣を歩く、どこか小奇麗な格好をしたように見えるはやてが、ハンドバックの紐を肩にかけ直しながら訊ねてくる。

 

「商店街の物でええん? あんまり高い物とか置いてないけど」

「そんなの渡されても困るだけだろうし、普通でいいと思う」

「ふうん。クロノくん、その同僚さんとけっこう仲ええの?」

 

 ……どうだろうか。ここであまりその架空の人物を持ち上げても、第二の目的であるはやてのプレゼントに支障が出るような気がする。

 そう思い、クロノは当たり障りのない答えをすることにした。

 

「まあ、普通に仕事仲間だよ。それなりに世話にはなってるが、同じくらい世話を焼いたりもしてる。とはいっても、今回のプレゼントは義理みたいなものだから、そこまで飾り立てたくはないんだ」

「形式的にってこと? ならお返ししやすいやつがええよね」

 

 唇に指を乗せて考察する仕草をとる少女は、近くで見ると、いつもよりもずっと魅力的に見えた。ふっくらとした彼女の桜色の口元に、何故だか視線が釘付けになる。

 

「そういえばまだ聞いてなかったんやけど……クロノくん? どーしたん、ぼーっと見て。なんか顔についてる?」

「あ、ああいや、なんでもない。それで?」

 

 咳払いをして誤魔化すクロノにぱちくりとまばたきしながら、はやては言葉を続ける。

 

「だから、その人の趣向。なんやわたしに似てるって話やったけど、どの変がそうなん? そこに合わせてチョイスしたほうがええんやろ?」

「そうだな、そうしてくれるとありがたい」

 

 結果的にそれをそのままプレゼントするのだから、似てるどころか完全に同じほうが都合が良い。

 

「えーっと……」

 

 クロノは宙を見上げ、イメージを作り上げる。

 それは「八神はやて」の印象像、そのものだ。

 

「家庭的で、よく料理をしたりするらしいな」

「ふむふむ」

「お菓子作りにもハマってるらしくて、基本なんでも作れて、そのどれも美味い」

「ほうほう」

「手芸もやったりするらしくて、かなり手先は器用だ。小さなぬいぐるみとかもこの前作っていたな」

「また随分と絵に描いた『女の子』やねぇ。眼鏡かけた真面目さんっぽい」

 

 くすくす笑うはやてに、クロノは思わず苦笑しながらも続ける。

 

「そうでもない。かなり気さくで、周囲との仲も良好だ。元気は有り余ってるし、向こう見ずなところだってある。僕から見ても少々危なっかしい感じもしたりする」

「はー、なんやすごいねえ」

「でも、決して道は過たない……そんな強い意志を持っている。そういう娘だと思う。努力家で、傍にいる誰かを笑顔にしたくて無理をするような、そんなところが危なっかしいんだ」

「へぇ……ところでさあ、クロノくん」

「ん?」

 

 イメージを中断し、はやてのほうに向き直る。何故か彼女は困ったように頬をかきながら、少しだけ寂しそうに微笑んでいた。

 

「それって惚気話?」

「は? どこからそんな発想がでてくる」

 

 心外だといわんばかりにクロノは唇を尖らせた。せっかく真面目に語っていたというのに、どういう流れでそんな結論に至ったのだろう。

 

「いやだって、その娘のこと話してるクロノくん……なんというか、すっごい誇らしげで、どう考えてもその娘に惚れてるーって感じやったよ」

「はあっ!?」

 

 思わず素っ頓狂な声を荒げてしまった。

 周囲の視線が突き刺さるのを感じ、クロノはやや赤らめた頬を蒸気させながらも小声で反論する。

 

「な、なんてこと言うんだ! そんなはずないだろ!」

「いやもードンピシャそうとしか思えんって、あんな表情見せられたら……そっかー、クロノくんもついに色を知るようになったか~。お年頃やねぇ」

「バ、バカか! というか年下の君にそんなことを言われたくない! ま、真面目に考えてくれ」

「ほいほいっと。クロノくんの恋愛成就のためにも、このはやてちゃんが一肌も二肌も脱いであげますよ~」

 

 にへへ、とだらしない顔で笑うはやての肩を小突き、仕切りなおす形で咳払いを一つ。

 

「と、とにかく、そんな余計なことは考えなくていい。あくまで友人に渡す範囲でのプレゼントでいいんだ」

「ま、クロノくんがそー言うんやったら。でもなんか抽象的な感想ばっかりやなぁ。……んと、その娘の背丈はどんくらい?」

「えーっと……」

 

 隣に立つはやてを見下ろし、その頭らへんで水平に掌を向ける。

 

「このくらい、かな」

「あー、背までわたしと同じくらいなんや。好きな食べ物とか趣味とかは知ってる?」

 

 好きな食べ物……一瞬腕を組んで思い返し、そういえば甘いものには目がないと言っていたことを思い出す。

 

「甘いもの全般は大丈夫みたいだな。趣味……といえるかどうかは分からないが、最近よく家族と遊園地に行ってるみたいなことを言っていた」

「……んん?」

 

 今まで素直に話を聞いていたはやてが、ふと不思議がるようにまばたきを返した。

 

「どうした?」

「あー、いや、えっと……家族と一緒に住んでるんや、その娘」

「ああ。妹……が一人と、姉が二人……かな。あとペットも飼ってる」

「妹が一人と姉が二人……」

 

 むむむ、と何やら唸る少女。

 何かいけないことでも言ってしまっただろうか、と一人焦るクロノをよそに、再度はやての瞳がこちらに向く。

 

「……ねえ、その娘。デバイスとかはどうなん? 興味ある感じ?」

「おお、凄いなはやて。最近はデバイス製作も取り組んでるらしくてな、僕もたまに相談に乗ったりしているんだ」

「あーっと……」

 

 その変化は、一瞬で、そして劇的だった。

 みるみるうちにはやての顔が桜色に染まったかと思うと、あっという間に信号機のように赤色に切り替わる。見ているクロノが恥ずかしくなるような、そんな熱を帯びた瞳がぼんやりと病を患ったようにこちらを見つめていた。

 

「ど、どうした!? な、なんか悪いこと言ったか!?」

「ご、ごめ、まった! ちょおまった! みんといてみんといて!」

 

 わたわたとクロノから顔を背けると、周囲の好奇の視線にも恐れることなく、はやてはその場にしゃがみこんでしまう。両手で頬を隠しながら、なにやらブツブツと言っているが、クロノからは聞き取れない。

 

「お、おい、はやて?」

 

 まるで理解不能な彼女の行動に、クロノは困惑するばかりだ。隣を通り過ぎていくおばさんの視線が不自然に痛い。一体僕が何をしたというんだ。というかどうしたらいいんだ僕は。はやてをさすればいいのか? この場から一緒に逃げればいいのか? 何が最善で何が最適だ?

 ぐるぐると固定されない言語だけがクロノの脳裏を通り過ぎていく。

 

「うひゃあ……むう……ああ……不意打ちや……あんな顔……たしのために……あああんもうっ!」

 

 クロノが半ば心中狂乱しているのをよそに、はやてはいきなり立ち上がった。それでもまだ顔は赤かったが、少なくとも原因不明の思春期は通り過ぎたようだ。彼女の目にはしっかりと理性が宿っている。

 

「お、落ち着いたか? はやて」

「おかげさまで……ね。大体見えてきたよ」

「え?」

 

 馬鹿みたいに口をあけるクロノに、目尻に涙を浮かべた少女が、泣き笑いのような表現しがたいくしゃくしゃの笑顔で、それはもう――心の底から嬉しそうに、にっこりと彼の手をとる。

 そして言うのだ。どこか悪戯を思わせる、彼女らしい人懐っこい笑みで。

 

「クロノくんの欲しい、プレゼント」

 

 

 

 

 

 

 一週間後。

 八神家では友人達を数多く呼んだ盛大なパーティが開かれ、皆でお祝いし、騒ぎ、そして――それさえも過ぎ去った、静寂の時間。

 

「……はやて」

「んー? どうしたの、クロノくん」

 

 庭で一人月を見上げていた少女に、少年はゆっくりと近づいた。

 後ろ手には、あの日彼女が選んだ――というか何故か最終的に二択になり、クロノがそのうちの一つを選び取る形になったが――プレゼントを持ち、そっと彼女の後ろに立つ。

 

「実は、君に一つ謝りたいことがあるんだ」

「なに、仕事で忙しいからプレゼントがケーキになったこと?」

「それはもう謝っただろう」

 

 不貞腐れたように顔をしかめるクロノに、はやては振り返った姿勢のまま、ごめんごめん、と静かに微笑む。

 その姿は、頭上の月に照らされ、どこか神秘的な雰囲気を醸し出しているようにさえクロノには思えた。

 そう、彼女はどこか、いつもと違って見えたのは確かだ。

 何かを期待しているようなのに、それがなんなのか、ハッキリと自分の中で答えを得ているような――そんな堂々とした姿で、はやてはこちらに向き直った。後ろ手に手を組み、こちらの次の言動を待っている。

 

(流石に少し緊張するな……)

 

 とはいえ、ここで渡さなければ何のためにあんな芝居を打ったのかわからなくなる。なによりプレゼントがケーキということで受けた猛烈な批難とボコボコにされ損だ。

 自分の中で言葉が生まれるのを待ってから、クロノはあくまでも自然に、はやてとの距離を縮める。

 

「先日君に選んでもらった、プレゼントの話なんだが……」

「ああ、あれね。喜んでもらえた?」

 

 楽しそうに笑う少女に釈然としない思いを抱きながらも、また一歩、歩み寄る。

 

「……実は、間抜けなことに誕生日を間違えていたらしい。彼女の誕生日は実際には半年も前だった」

「そりゃまた随分と派手に間違えたねえ」

 

 おかしそうに口元をおさえて笑うはやてに、憮然とした顔でクロノは続ける。

 

「だから、今更渡すのもあまりにも惨めだったから、彼女に渡すのは諦めたんだ。でも、そうなると、僕の元に、僕が持っていてもしょうがない物が残ってしまう――」

 

 最後の一歩。

 もはや少女の顔は、見下ろすすぐ傍の位置にある。なんだかやたらと楽しそうに笑うあどけないはやての瞳が、クロノを見つめ、そしてクロノは、彼女に映るたゆたう月を見た。

 綺麗だ、と。

 素直にそう思った。

 

「だから」

「……だから?」

「代わりに君に貰って欲しいんだ。丁度、偶然にも――君が選んだプレゼントだったからな」

 

 月が揺れる。

 嬉しそうに――そう思うのは、少年の勝手な感傷だろうか。

 それでも、この月をしばらくは眺めていたいなと、そう思うくらいには、目の前の月はとても魅力的で、そしてなにより、どこか愛おしかった。

 

 

 

 

END




これは実は昔書いた小説です。
執筆作業から距離を置いて数年。何の因果か再び書こうと思い立ちました。

昔はこういうカップリングが流行ってたんですが、今の環境にまるで疎いので、おそらく場違い感しかないSSとなってしまっていることでしょう。


ただなのはは自分の原点の一つなので、ふんどしを締めなおす意味でも今、これを投稿したかったのです。お許しください。


今後も二次創作を書いたらこちらに投稿させていただく予定ですが、
昔書いた小説は随時残ってるものをブログに上げているので
そちらも興味のある方はよろしければご覧ください。

長文失礼いたしました。



ブログ
http://mugmugcombo.jp/

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