魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚─── 作:タキオンのモルモット
FGOのボックスガチャ200とかいってる人たちやばくないですかね!?まだ俺1桁ですよ(周回に飽きたやつの末路)高難易度たのしーい!
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週明けの月曜日。保科柊史と綾地寧々は朝、一ノ瀬巽に部室に呼び出された。
「で、どうしたんです?」
「まさか、コトリバコの件か?だったらお前の言った通り学校で捜査する事ないんじゃないのか?」
「ご尤もな意見だが、まさかまさかの低確率が起きたらしい。」
話は金曜の夜に遡る────
『······以上だ。という訳で決して学生が犯人という可能性が無くなったわけでも無さそうなんだ。』
「······マジすか······」
金曜の夜、特に問題なく一命を取り留めた三田村母と三田村かなで、そして出張中だったが会社が手を回してくれたので戻ってきた三田村父(但し三田村父が戻ってきたのは土曜なので三田村父は土曜に)コトリバコに見覚えがあるかどうか聞いたらしい。のだが────
「そもそも荷物が届いたのも数える程で尚且つコトリバコに見覚えがないときたか······しかも親父さんの出張を誰にも教えてなかったし親父さんの同僚が家に招待された事実も、誰かから何かを受け取ったという事実も全部無いと!?」
『君の推理────とは言えないか、推測だが完全に合ってると思っていたからこっちもビックリだ······可能性は二つだ。誰か家族三人を恨んでる人間が侵入して置いた。もう一つは────こっち側の人間が無作為に置いたとか』
「嫌な予感しかしないじゃないですかヤダー······中学時代の再来とか勘弁ですよ俺」
『ま、そうでないことを祈るばかりだな······あれは本当に君がいなきゃ死人が出てた······』
「······じゃあ、俺が学校側を調べて────」
『こっち側は俺達に任せろ。調べておく。』
────回想終────
「つまり、送られてきたものでも、プレゼントでもらったものでもない、となると。一番可能性が高いのは侵入して直接置いたという可能性だ。三田村かなでに確認したところ友達を何回か呼んだことがあるらしいから······不自然なく置けても不思議じゃあない。」
「でも······金曜日に一ノ瀬君の言った通り、水子の一部なんてどうやって······?」
「入手方法はこの際問題にもならん、というより、そっちは氷室さんが調べてるから問題ない。お前らに協力して欲しいのはこっちだ」
そう言って巽は束ねた紙を投げ渡した。
「······これは?」
「三田村かなでが夏休みに家に招き入れた人間のリスト。んで一番上がコトリバコの写真。······お前らに頼みたいのはその三人の友達への聞き込みだ。」
「······あれ?お前は?」
「俺は俺で別の事調べる。言ったろ?人手が足りない、と。お前らなら相手の反応見て嘘かどうかくらいなら判断できそうだからな。」
一瞬、ビビった。
まさか俺の能力がバレているんじゃないか、と。
だが、まあただの買いかぶりらしい。
「という訳でよろしく頼んだぞ?対象はその3人、齋藤乃々華、神崎ハルノ、三ノ宮早苗だ。一応小室遼が連絡先を持っている程度には親しい人物らしいぞ?その過程で仲良くなったようだな。······結構あいつ見た目によらずモテるんだな······」
「あの、ひとつ聞いていいですか······?」
「······どうした?綾地」
「······何故、貴方はその頼みを受けたんですか?昨日言ってた言葉は······」
「いや、警察の捜査に協力するのは市民の義務だろ」
その言葉からは、薄いが、嘘の味がした。
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という訳でダイジェスト風。聞き込みの様子をご覧下さい。
齋藤乃々華(さいとうののか)の場合。
「え?箱ですか······?あ、この箱だったら私が来た時には既にありましたね。ええ、リビングに飾ってありました。確か······最新のスマホが発売された翌日くらいかな?これが何か······え?これが嫌がらせに使われていた?わ、私じゃないですよ!?────え?疑ってるわけじゃない?······うーん······でもかなでちゃんが恨まれるのは想像できないなー······あの子デブ専って事以外は本当に理想の女の子って感じで······なんて言うか、女性にも敵がいないタイプ?って感じですよ?」
神崎ハルノ(かんざきはるの)の場合。
「は?箱?なにそれ知らないけど······見覚えもないなぁ······ケータイ買い換えたあとあたりに呼ばれたけどそんなのあったっけ······え?嫌がらせ······?私はそんな事しないから······いや、大体なんで箱置いただけで嫌がらせなの······?え?他に何か気になる事······?うーん······デブ専以外は至って普通の子だよ、彼女は。」
三ノ宮早苗(さんのみやさなえ)の場合。
「え?箱?見たことないなぁ······うん、無いね。ケータイを変えた後に招待してもらった時にはなかったと思う。······え?嫌がらせ?いやいや、そんな事は無かったよ?私もしてない。そんな事する前に身体が動くタイプだしね、私は。······え?何か心当たり······ないなぁ······あ、でも彼女の中学時代の友達は彼女を恨んでるみたいよ?······よく分からないけど。え?中学校?······確か第七中学だったはずだけど······」
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「全員、嘘をついているようには見えなかったな。」
と、いうか、能力でわかった、と言うべきなのだが。
昼休み、部室で昼を食べながら、報告をした。
「そうか······中学······第七······」
その報告を聞いた巽は鞄の中からパソコンを取り出し、おもむろに何かを調べ始める。
「あの······一ノ瀬君何を調べているのですか?」
「第七中学の話が気になってさぁ······お、あったぞ。」
そう言って彼はパソコンの画面に表示されている記事をこちら側に向けてきた。
『第七中学で自殺未遂。原因は痴情のもつれか?生徒の多い校門で見せつけるように』
「······これは?」
「第七中学で起きた事件と言ったらこれ位なんだよなぁ······」
「え?でもこれなんも関係なくね?『女が男を盗った』でその女が三田村さんだったら恨まれるのもわかるけど、記事見る限り逆パターンだよな?」
「そうですね、記事にはそう書いてあります。」
しかも未成年だから実名は公開されてない。
これが関係あるとは思えないのだが────
「······あー······そういう事?ひょっとして······」
「「え??」」
そう言って彼は夏休み中に発売された新型のスマホスマホを取り出し────
「もしもし、氷室さん?至急調べて欲しいことがあるんだけど─────────」
『ああ、わかった、すぐ調べてみる。』
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放課後。オカルト研究部の部室。
「犯人わかったわ、協力ありがとう。」
そう言って巽は部室のドアを開け放ち、開口一番そう言うと踵を返して出ていった。
「────ちょっと待て!?」
「────待ってください!?」
しかし、回り込まれてしまった!▼
「犯人がわかったってどういう事だ!?」
「説明くらいしてくださいよ!!」
と、まあ当然だろう。ここまで協力したのに説明、というか真相を教えてもらえないとはどういう事だ!!と突っかかってきた。
「いやー、これは知らない方がマシだと思うよ?」
そう言って巽は全力で逃げた。
撒かれた。
とある病院の個室。
三田村かなではボーッと外を見ていた。
あの事件から少し母娘揃って入院することになったが特に問題もなく、明日退院出来るらしい。母親とは別の部屋に担ぎ込まれているから、退屈以外の何物でもない。
ただボーッとしていると、ノックが聞こえた。
「どうぞ?」
そこに立っていたのは、一ノ瀬巽と氷室等だった。
「えっと······刑事さんと······一ノ瀬先輩でしたよね?助けてくださってありがとうございました」
「いやいや、偶々居合わせただけだから······あ、これ御見舞のフルーツね。折角だから食べようか」
「あ、ありがとうございます······」
そう言って巽は袋の中からカット済みの西瓜を三人分出した。
「────お前最初から食べるつもりだっただろう。」
「はて?何のことやら?」
「えっと、それで今日は一体?もう全部話したと思うんですが······」
と、話をしているのを病室の前で聞いている影が三つ。
保科柊史、綾地寧々、小室遼の三人である。
「······よく分かったな寧々、あいつがここにいるって······」
「さっき三田村さんには話さない、とは言っていなかったので······もしかしたらと」
「しっ、話が始まります······」
「いいかい?三田村さん、これに関して確固たる証拠というものは無い、状況証拠から考えただけの推測に過ぎない。まあ、笑い話程度に聞いてくれればいい。オーケー?」
「?は、はい」
「じゃあ早速────コトリバコを置いたのは君じゃないかな?」
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「「「「えっ······?」」」」
思わず病室の前にいる三人と、三田村かなでの声が重なった。
「なんで、わ、私がそんな事を────」
「第七中学の自殺未遂と同じだろ?」
「────ッ!!」
「当時君に聴取した人に聞いたよ。なんでも、当時付き合っていた恋人が信じられなくなったんだって?まあ、そりゃドッキリとは言え、不良に絡まれている君を見捨てて逃げる、なんて酷いことをしたよね、そいつは。」
「な、なんでそんな事まで知って────誰にも話してないのに────」
「で、周りからこう言われたんだって?『やっぱ所詮アイツはこの程度のやつだったんだ』だったかな?でも、君はその恋人が、彼が好きだった。『そんな人じゃない!!証明してやる!!』って躍起になったそうだね······?だから────」
────自分を絶命一歩手前まで追い込んだ。
「目の前で彼女が死にかければ助けてくれると思った────でも、その彼はそうしなかった。寧ろいきなり自分の目の前で死のうとした事に恐怖してしまった。」
「────や、やめて······」
「恨まれるわなそりゃ、これが原因でドッキリ=イジメというイメージができてそのお友達は推薦取り消されたそうだし······話を戻そう。そして君はその後その彼氏と別れ、学院に入って────再び恋をした。だけどまた、不安になった。」
「やめて、やめてよ······」
「だから────同じ状況にすればまた助けてもらえると思った。でも、中学時代の方法じゃダメだって流石に学んだんだろ?そんな時にコトリバコを手に入れた。そしてまた────」
「やめてっ!!」
肩で息をしながら、大声で叫んだ。
「その反応を見る限り、俺の予想であってたみたいだな、冷静に考えれば、父親の出張なんて家族が把握してない方がおかしい。────しかしまあ、頭が働くね?自ら被害者になることで容疑者から外れるとは······」
「アンタに、アンタに、何がわかるのよ!!」
三田村かなでは叫び続ける。
「私が一般的な人とは違う性癖をしてるのは自覚してる、それを不思議に思ったこともない。寧ろ周りは『あんなデブのどこがいいの?』って言うタイプの人間ばかりだったから······こんな事になるなんて思ってなかったのに······!!なんで私のモノにしたら周りはちょっかい出してくるのよ!!巫山戯るな!!彼は私のものだ!!高校になっても······なんで!!他人のものになった瞬間······!!」
「ああ······三人を夏休みに呼び出したのはそういう事か。」
盗られると思ったから、中学時代もそうやって失ったから。
尋問したのか。
あの三人を。
小室遼と、連絡先を交換するほど仲良くなった人間を。
でも彼女等は違ったのだろう。
「違うってわかってても、怖かった。だから────」
「だから三人の家にも送り付けたのか。コトリバコ。」
「······既に回収済みだ、どれも失敗作だったがね。」
そう、今日氷室さんに第七中学の過去の事件と────念のため三人の友達の家を調べてもらったのだ。
コトリバコ
尤も、モドキである為、放っておいてもせいぜい浮遊霊が釣られてやってくるぐらいの代物だったが。
「自分のお父さんの出張期間に体調が悪くなるように仕向けたものを同時に発動させて、誰を選ぶか、確かめるつもりだったのか?」
「そうよ、乃々華は一人暮らしだし早苗は単身赴任で父親が不在、ハルノは離婚して母方の方で暮らしてる。男性不在の家よ。」
仕掛けろ、と言わんばかりの偶然が重なった。
────だから、仕掛けた。
仕掛けたら誰かに助けを求めるしかない。でも外まで声が聞こえないどころか、呪いの中心に居るから、影響を受けて、そんなこと出来る体調ではなくなる。
────危なくなったら、ケータイに頼るしかない。
「そして更に都合のいい事に三人は流行に乗り遅れたくないタイプだった。発売されたもんな、従来のスマホよりもさらに高性能な新型が。」
夏休みの後半の出来事で、彼女等は新しく買ったばかりだった。しかもそのケータイ、新型すぎて連絡先などを引き継げないのである。そのタイミングで彼女達を自分の家に上げて、取り敢えず自分と、元々連絡先を交換しているのを知っていた小室の電話番号も渡した。これで、小室に掛けるか三田村に掛けるかの二択になる。そして自分は出なければいい。こうすれば小室に電話するしかなくなる────そう考えたのか。
「ま、ぶっちゃけ意味の無いことだよねー、ただの友達にそんなの頼むかよ普通。冷静に119に連絡するだろ。」
ここまでやっておいて、なんだけど。普通はそんな事しない。当たり前だ。誰でも119押すだろ。
······話を戻そう。
「まあ、結果的には良かったんじゃない?小室君は助けてくれたんだしさ?」
結局、彼女は彼氏に心配して欲しかったのだ。
救って欲しかっただけなのだ。
────まあ、そんな事は非常にどうでもいいのだが。
「そんなことを聞きたいんじゃないんだよ······コトリバコ
気になるのはこの一点。水子を媒介にした呪いだから、こんなの一介の学生が創れる怪異じゃない。
なら至極単純、完成品を貰えばいいのだ。
そして、彼女の口から出てきた言葉は想像を絶するものだった。
「······若い、男の人で······顔にオペラ座の怪人のマスクに警察官の制服を着ていました」
「名前とかそういうのは······?」
「······聞いてません······」
「そう────ですか······」
氷室はそう言って少し考え込むと、口を開いた。
「念のため、その時に身につけていたものをこちらで調べさせてください。指紋などが残っているかもしれないので」
「────そんじゃ、まあ、こんな馬鹿な真似は二度とするなよ?」
やってる事は殺人未遂なのだからな。
そう話を切り上げて立ち上がり、ドアに手をかける。
「────待ってください。」
が、呼び止められた。
「なんで、私が怪しいと。疑ったのですか?少なくとも警察の皆さんは完全に騙されていたのに······」
「────ああ、そのこと?強いて言うなら倒れていた方向と場所だな。」
「倒れていた、方向と······場所?」
くるり、と振り返り、彼はこう言った。
「君は心配してほしいだけだ。恋人にそばにいてほしいだけだ。構ってほしいだけなんだ。決して自殺志願者ではない。······体調が悪い時普段は自室で寝るだろう?なのに君はリビングにいた。そしてそのすぐ側の棚にはコトリバコがあった。」
────つまり
「お前は死にたくはないんだ。だからコトリバコを処分しようとしたんだな?苦痛に耐え抜いて、限界まで近づいたけど、そこで力尽きたんだろう。────さて、ここで問題だ。君はなんで体調不良の原因を知っていたかのような位置に倒れていたんだろうね?まるでコトリバコ本体を取りに行ったかのような位置に倒れていたんだろうって·····ちょっとだけ疑問に思っちゃった、それだけ。実際俺も最初は誰か別の人間の仕業だと思っていたしね。」
そう言うと、彼は今度こそ病室から立ち去った。
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────後日談────
「さて、バカップルども、何か弁明は?」
「「ないです本当に申し訳ありませんでした」」
朝から教室でカップルに土下座させている鬼がいた。ていうか俺だった。
「いやさ?別に聞く覚悟があったならどうでもいいんだ。現にあいつらには実害無いみたいだし?まあ盗み聞きは許そう。だが────」
そう言って彼は自分の机の上を見る。
そこには、心霊写真や曰く付きのアイテムなどが鎮座していた。
「心霊相談は俺におまかせとか言ったせいで大変なことになってるじゃねえか!!」
あの病室問答(?)の次の日、どこから漏れたのかオカルト研究部に依頼が来たのだ。心霊系の。
そしてあろう事かそこのバカップルは俺に全てを押し付けたのだった。
だが、その相談者は当然というか、綾地寧々を頼って来た人間だったので納得するはずが無かったのだが。
だから、綾地寧々と保科柊史は話やがったのだ。
この前のコトリバコの全容を、掻い摘んで。そしたら────
「俺は確かに!!好きでホラー小説書いてるよ!!でもなぁ、別に心霊関係の全ての事柄を『捜査』するのは好きじゃねえんだよ!?あとコレクターでも無いわ!!」
どう曲解されたのかはわからないが。『 俺が何故か心霊現象専門家でその手のグッズを集めている。』だの『ガチの心霊系の相談をオカルト研究部の一ノ瀬巽に持っていけば秒で解決してくれる』と噂が広まっていたのである。
そして今朝学校に来たら────これなんてイジメ?というレベルで曰く付きの写真(大体男女のツーショット)が机の上に重なっていたのである。何が悲しくてリア充の写真を見なきゃならんのだ。〇ねばいいのに。
「ま、まあ、その辺にしておきなよ······二人も反省してそうなんだしさ······」
「いや、ダメだ。仮屋。自分の立場になって考えてみろ?こんなの押し付けられて嬉しいか?」
「ごめん、綾地さん、保科、今回は擁護できないや」
「「なん・・・だと・・・」」
「少しは反省してくれませんかねぇ!?」
こうして、オカルト研究部に関して、こんな噂が広まった。曰く────『常識では測れないようなヤバイ事はオカルト研究部の一ノ瀬巽に相談してみよう』と。
因みに────
「大半は見間違いだけど何個かまじもんあるね······ココとここには近づかない方がいいと思う。」
一応全部調べて新聞部に調査結果を新聞にして貰って貼っつけておいた。
なんてこった、ヒロイン(候補)の和奏が予想以上に出番が少ないどころかまだ他のヒロイン(候補)は出てない始末!!果たして、ヒロインはいつになったら出るのだろうか!?ていうかいつになったらデート回とか書けるのか!?と言うよりこの作者がまともな恋愛描写とか書けるのか!?
次回!!『仮屋和奏とバイト先の怪!!』
更新日時は未定!!←