魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚─── 作:タキオンのモルモット
だいぶ昔の話。確か、小学校低学年くらいだったと思う。
私はアイツと同じクラスで、そこそこ親しかったのを覚えてる。
でも────あの日以来、アイツは変わってしまった。
────そして再会した今でも、元に戻ってない。
1
「バイト先で幽霊を見たぁ?」
「そうなんだよ!!」
コトリバコの一件から約一週間後。
あれから特にこれといった出来事はない。強いて言うなら今まで綾地の相談や占いがメインだったオカ研に俺宛に心霊写真や呪いのビデオとか呪われた人形だとかの鑑定を依頼してくるやつが増えたくらいだ。
何でそんなものを持ってるんだ、とツッコミたくなるが、まあ大した量じゃないし、本職の〆切は守れている程度には余裕がある。その程度だ。
だから別に相談を受けること自体はどうでもいい。寧ろネタに出来るならとことん使わせてもらうつもりだ。が、何でだろうか、凄く嫌な予感がする。具体的にはコトリバコで感じた嫌な予感の倍くらいは。
「頼むよ一ノ瀬!!他に頼れる人が居ないんだよぉ!!」
「つってもなぁ······バイト先にどう説明するんだよ?部外者が入るの迷惑じゃない?」
「ああ、それなら大丈夫、どうにかできるよ。」
「······は?」
放課後、仮屋和奏のバイト先、カフェ『ラビリンス』
「いやぁ、まさか『夢の館』の一ノ瀬巽君を生で見れるとは!!あ、サインくれるかい!?」
超歓迎ムードのオッサンが手厚くもてなしてくれた。
「店長が一ノ瀬のファンなんだよ······」
「これか、大丈夫ってのは······」
そう言って店内を見回す。
······至るところに俺の本の広告等が飾ってあった。
地味に恥ずかしい。
「因みにここのスタッフはほぼ全員一ノ瀬のファンだよ」
店長に洗脳されたのかな······?
「ていうかよく『夢の館』知ってますね?」
あれ、知り合いに頼まれて仕方なく書いたフリーホラーゲームなんだけど、俺の中じゃ黒歴史の中の黒歴史だ。
まあ、そこから今の職に行き着いたのだけれども。
「ああ、店長ガチゲーマーだから······偶に『ゲームの大会あるから休む』とか言って休むしね。」
「M.U.〇.E.NもBLAZ〇LUEもME〇TY BLOODもやったぜ」
「妙なところ攻めますね!?」
「〇鬼とか夜〇もやったよ、そんでコミケ行って同人ゲーム買い尽くしてやってたら君の作品に出会ってね!!」
いや、〇廻は違くね?にしても────
「よく俺だとわかりましたね?」
確かに俺あの時顔出したけど。後ろの方で整理してただけだしなぁ······。しかもあの時とペンネーム違うんだけど。
「文体とか似てたし、顔みたことあったからねぇっと、世間話はここまでにしようか。」
そう話を打ち切り、店長はこう言った。
「それもそうですね······でもいいんですか?心霊現象の為に部外者入れるなんて」
「大丈夫、話はもう通してあるから······あ、でも一つだけお願いがあるんだけど。」
「なんでしょう?」
「ここで起きた心霊現象ネタにする時にここの宣伝してくれないかなーって······」
「「それが狙いか!!」」
2
「まず、初めの心霊現象は三週間前の事だった。」
「ちょ、待て待て待て待て待ってください。」
のっけからおかしな話になった。
「仮屋、お前が幽霊見たのは?」
「昨日だよ······あ、言ってなかったっけ?この店三週間前くらいから幽霊が出るようになったんだ。」
「それも二ヶ所に、別々のね。」
店長の虬隆起(みずちりゅうき)が付け足す。
「二ヶ所に、別々の幽霊ねぇ······あ、すんません話の腰折っちゃって······続けてください」
話を促すと、店長は再び語り出した。
三週間前の事である。
このカフェ『ラビリンス』は昼の11時から開店で、この日、店長の虬隆起(みずちりゅうき)が一番最初に出勤する予定だったのだが。警察から『アンタの店から物凄い異臭がする』と連絡を受けたので、店へ。
どうやら、店の裏手に物凄い臭い液体が零されていたらしい。
犯人特定のため、防犯カメラの映像を見ることに。
そしたら────
「これが、その映像だ。」
P.M.01:00
そう表示されていた映像には、黒い、軟体動物の様に蠢くナニカが居た。
「なんだこの魔神柱ミニチュア版みたいなやつ······」
他に適切な表現が思いつかなかった。
もしもわからなかったらググってくれ。FGO、魔神柱で出ると思う。アレを小さくして液体にしたかのようなものがぶよぶよと蠢いている。
「因みに、臭いの原因である液体って何だったんです?」
「何だったかな······確か某動画サイトの有名人がやってた『絶対に嘔吐する液体』だった気がする」
その後、急遽休みにして何とか撤去したのだとか。
「······因みにその後つい三日前に同じバケモノがシュールストレミング落としていったよ······」
「ただの嫌がらせなんじゃないですかねそれ······」
なんだろう。明らかに人の仕業のような気がする。
「ところで、防犯カメラは何処にあるんですか?」
「店の裏手と······店の前と店内に幾つか······」
「ふむ······店の鍵は?ここのセキュリティが万全じゃないなら中にぶちまけるけどな俺は······」
「仮屋君以外は私よりも早く出勤したりとかあるから······全員持ってるよ?」
「セキュリティはしっかりしてるようで······ところで······この防犯カメラ、三日前のもののようですが?」
「······実は······節電の為に三週間前まで防犯カメラ切ってたんだよ······そしたら『絶対に嘔吐する液体』をばら蒔かれて······次こそ捕まえてやると思って節電やめたんだ······そしたらこいつが」
これ三週間前の映像じゃないんかい!!
まあ、異臭騒ぎの方は取り敢えず置いておこう。
「で?仮屋。お前の見た幽霊ってのは?」
「あ、うん······えっと······」
昨夜、バイトが終わり女子更衣室で着替えていた時だった。
────何か、見られている気がする。
何となく、そんな感じがした。
だが、おかしい。今女子更衣室どころか、女子従業員は私しかいない筈なのに。
────まさか、覗き?
の、割にはその視線は入口からではなく、自分の右隣。壁の方から感じる。
さっさと着替えて出てしまおう。そして帰ろう。
そう思って、ちゃっちゃと着替えて、ドアを開け、外に出て、施錠しようとした時に、見てしまったのだ。
奥にあるでかい鏡。その側に、髪の長い女が居た。
「············」
「っていうのが昨日見た幽霊の話」
なんてベタな······そして────
「ところで仮屋さん?」
「どうした?いきなり敬語になっちゃって」
「俺に、女子更衣室を調べろと?」
「あっ······」
「······帰ってもいい?」
「ちょっ、待って!!大丈夫!!今私以外に女性従業員居ないから!!大丈夫!!みんなとっくに仕事してるから!!」
「入っただけで変態扱いされるのでNG」
いや、俺変態になるつもりは無いから。
「男なのに女子更衣室入りたいと思わないの!?」
「何を言ってるのお前!?」
流石にそこまでしてネタを掴もうとは思わないしぶっちゃけ人に害を及ぼすタイプの幽霊じゃ無さそうだから本当に出番がなさそうな件。
だがしかし、最終的に
「なら私と仮屋君の監視の元行くのはどうだろう?」
との店長の提案を受け入れることとなった。
3
「ふうん······?特に変な気配は無いけど······?」
女子更衣室には特に何も無かった。
ロッカーが右側に置いてあり、長椅子が中心に置いてある、何の変哲もない更衣室だった。
「で、これが例の鏡か······」
更衣室の左端、壁際にあるその鏡は、特に何の変哲もなく俺のことを写している。
「······でも何でこんな所に鏡?普通真ん中とかに置かない?」
「あ、それは昔の名残だね。」
「昔の······名残?」
「ここが私のカフェになる前、鏡の迷路みたいなアトラクション系の店だったんだよ。で、そこのオーナーとは仲が良くてね、所々使えそうなところを残しておいてくれたらしいんだ。」
「へぇー······」
詳細を後で検索してみよう、ただの好奇心だが。
「······んー、仮屋ー?」
「何ー?」
「この鏡の辺りで幽霊を見たって言ってたよね?顔とか見てないかな?」
「あー······一応、見覚えがあったんだよ······」
「······幽霊の顔?」
「うん、実は────」
と、仮屋が語ろうとした瞬間
「言うな!!」
と、静止する声が聞こえた。
「あいつは······まだ!!死んでない!!」
いつの間にか、そこには男が立っていた。
年齢は20くらいだろうか。
金髪に、ピアス。見るからにチャラ男を体現したかのようなその男は、本気で怒鳴っていた。
店長がその男を宥めている間にこっそりと聞く。
「あの人は誰?」
「同じくバイトの潜木尚人(くぐるぎなおと)さん。芸大の三年生······で、その······私が昨日見た幽霊の恋人」
なんですと?
3
幽霊の心当たり。
その人は失踪したのだ。丁度、異臭を放つ液体をばら蒔く幽霊が最初に出る三日前から行方不明になっていたらしい。
「三上美香(みかみみか)。芸大二年でさっきの潜木先輩と一緒の芸大で学部も専攻も一緒らしいよ」
「その先輩が、お前が昨日見た幽霊にそっくりだと?」
「うん、私ハッキリ見たもん」
潜木さんを店長が無理矢理仕事に突き出し、店長も仕事に入り、今は応接室で仮屋から話を聞いていた。
オーナー曰く「仕事に影響が出ないようにローテーションで話を皆からしてもらう事にしたからよろしく」だそうで。
おかしいなぁ、俺は警察じゃない、探偵でもない、ただの小説家なんですけど。
「幽霊が出たなんて言ってもなかなか信じる人は居ないしね、一ノ瀬みたいな人が居るだけでも有難いんだと思う。後はこの出来事をネタにしてもらおうという魂胆が八割かな?」
「ファンなのは嬉しいけどねぇ、これでもネタにするものは厳選してるんだよ?」
何でもかんでもネタにしたら不謹慎だからな。と付けたし、珈琲(店長の奢り)を啜る。
「まあ、店長さんがいいと言って、他の人もいいと言ってくれるなら俺も断る理由はない。全力で捜査という名のネタ探しをさせてもらうぜ。」
なかなか続けているとネタ切れになる事が多々あるからなぁ。
「じゃあ、お前から幽霊の話は聞いたし······まずここの従業員のことを教えてもらおうか?店長と潜木さん、行方不明の三上さんにお前を除いてもあと何人か居るだろ?ここそれなりに広いし。」
元迷路系アトラクションハウスという事だけあり、このカフェはかなり人が多い。
少なくとも四人で回せる広さでは無さそうだ。
「うん、後厨房に二人、ホールに一人いるよ。厨房の人は······」
という具合に、教えてもらった。幸い、今日のシフトは仮屋が休みで他全員が入っているそうなので、全員から話を聞くことが出来る。
それでは、前回同様。取り調べモドキスタート
潜木尚人の場合────
「お前があの夢の館の制作メンバーの一人か······いや、一回会っては見たかったんだ」
「ん?俺がやったのはシナリオとか背景デザインくらいっすよ?」
「それだよ。背景デザインだよ。テキストからも伝わってくる怖さを引き立たせてた背景とかはお前が設定したんだろ?店長から勧められて大学構内でやってたら教授も乱入してきて一緒にやってたんだが······教授が褒めてたぜ?『素人のクオリティとは思えないくらい怖い』ってな。」
「それは······ありがとうございます。」
正直自分の中では『黒歴史二作目』なのだが、賞賛は素直に嬉しい。
「さて······で、聞きたいのは三上さんの事なんですが······」
「美香は死んでない······!!」
「いや、誰も死んだなんて言ってないじゃないですか。大体生霊って可能性もあるんですから」
まあ、希望的観測だけども。
「······お前、その言い分だと『自分幽霊見えます』って言ってるようなもんだが······マジで見えんの?」
「信じるかはあなた次第ですが、まあ見えますよ?」
これについては正直わからん、生まれた時からそんな感じだったし。
────実は見えるだけじゃないのだが。
「······まあいい。で、お前は何が聞きたいんだ?」
「三上さんが失踪する直前の行動とか知ってるかなぁ、と思いまして。」
「······その日はたまたま俺が休みだったから知らん。ただバイトのシフトだったのは覚えてるし、その日は美香とその他三人くらいが終わりまで働いてたらしいが、帰るところまでは見たそうだ。」
「そしてその夜から帰ってないと······」
「ああ、あいつは実家暮らしなんだが、美香の両親から電話がかかってきてな······」
その日彼は大学の男友達と飲み会をしていたらしい。
そしてその電話を受け取った時、初めて失踪したことを知ったそうだ。失踪してから二日目のことである。
そしてそのまま三週間経ち、昨日の幽霊騒ぎだ。しかもその幽霊は自分の恋人と酷似しているときた。
そりゃ冷静ではいられないだろう。
「────なるほど、では次に。異臭を放つ液体をぶちまけた奴に心当たりとかあります?」
「······実はな、店長と二人でしばらく張り込んでた時期があるんだが······その時だけは絶対現れなかった。」
「ふむ······なるほど、ありがとうございました。」
厨房スタッフ鯨義琴音(くじらぎことね)の場合────
「はじめまして、鯨義琴音です」
流れるような黒髪。そして眼鏡、美人。典型的な『クラスの優等生』みたいな風貌をした人だった。
「どうもはじめまして、一ノ瀬巽です。早速ですが質問させてもらいますね。貴方方厨房スタッフは店長さんと古い付き合いだとか。」
「はい。そこからずっと虬さんの店で働いてます。大体六年くらいですかね?私が丁度27位の時ですから······」
歳と見た目が全然あってないんですが······まだ大学卒業したくらいかと思ってた······。
「······あー、それじゃあ質問させてもらいます。店長さんに恨みを持ってる人とか心当たりあります?」
「······?多分かなりいますよ?」
予想外の答えが返ってきた。
あんなに人が良さそうなのに······
「虬さんは本当に貴方の小説の大ファンで······時折周りの人に勧めていたんですが······確か『クロの部屋』という小説を勧めた際に『面白かったけど怖すぎて夢に出てきて眠れねえんだよ!!』とか言われて後日虬さんの手帳が赤いジャムに染められたとかなんとか」
「あれは店長さんのせいか!!時たまに『夢に出てきて眠れなくなって不眠症になったぞ!!』みたいな抗議文届いたのは!!」
因みに、その意見が多くてその次の巻から若干表現をマイルドにするという修正をしていたりする。
つっても上下巻構成だったので本当に若干だが。
「他にもそんな事が多々あったみたいで······」
「······つまり、店にシュールストレミング等をぶちかますほど恨んでるやからが居なくてもおかしくはないと······」
「······あ、あれは人間の仕業なんですね?」
「少なくともシュールストレミングや絶対に嘔吐する液体をぶちまける様な幽霊は居ないでしょ······」
どんな悪霊だよそれは。
「······まあこの件に関してはもういいです······次の質問いきますね······さっき本人に聞くのはどうかと思ってしてなかったんですけど、潜木さんと三上さんの馴れ初めとか、最近何かすれ違いがあったとか······知ってますか?」
「?何故そんなことが······?」
「いやぁ······気になる事があるだけですよ」
さっき潜木さんには言ったが仮屋の見た霊がもし三上美香だった場合『生霊の可能性がある』。
そして生霊が現れる理由は多々あるのだが、行方不明の今。考えられるのは『助けを求めている』という可能性。何処かに監禁されていて、生命の危機に立たされて、『助けて欲しい』という想いや『ここから出たい』という想いが原動力となり幽体離脱する例だ。これに関しては氷室さんから前例があったと聞いたことがある。
で、気になったのは『もしそうなら何で仮屋の目の前に現れたのか?』という点だ。
ぶっちゃけ、仮屋なんかよりは異性の彼氏の方が頼れるだろうに。
まあ今のは本当に全部が過程なのだが。もし何かあったのなら────
「うーん、確かに居なくなる前に三上さんがちょっと変だったけど······そこまで深刻そうじゃなかったよ?馴れ初めは······多分あいつなら知ってるんじゃないかな?」
厨房スタッフ叶奏汰(かのうかなた)の場合
「ああ、あの二人の馴れ初めか······」
黒い短髪、顔はそこそこイケメン、高身長────ただ何か住んでる世界が違いそうな位に筋肉質の男。東京ドームの地下の闘技場で戦ってそうな見た目をしている。ムッキムキの武闘派のような人間だった。
因みに、潜木尚人の通っている芸大のOBらしい。
「ん?······ああ、この身体はなぁ、従兄弟に勝つために鍛えてるんだ······トラックに跳ねられても死なないやつでな······」
やっぱ住んでる世界が違う。絶対にグラップラーだろ!!
「で、あの二人の馴れ初め······正直あまり話してて気分のいい話じゃないんだが······まあいいか。実はな······潜木は二人目なんだよ。」
「······二人目?」
「アイツの前に付き合ってた奴がいたのさ······名前は国東徹(くにさきとおる)。」
何でも、国東徹、潜木尚人、三上美香は同じ大学の同じ学部で専攻も一緒だったらしい。
三人で切磋琢磨し、三人の合作はコンクールで優勝したとかなんとか。
そして、三上美香と国東徹は付き合い出した。
そんな二人を潜木は心から祝福し、彼等は結婚も決めていたのだが────
「三上の両親に挨拶する、と言った翌日、国東は殺されたのさ。」
「────殺された?」
「ああ、犯人はまだ捕まってない。」
そして、その後、三上はとてつもないショックを受けて引きこもった。
一時期後追い自殺しかけたこともあったそうだ。
だが、そんな彼女を支えたのが潜木だったという。
「そして三上復活からのゴールイン、という訳だ。」
「────なんていうか、失礼かもしれませんが······ベタですね?」
「うん、正直俺も何の三流恋愛小説だよ、と思った。」
「······その前は三角関係だったりしました?」
「いや······そこまでベタじゃ無かった筈だが······潜木も心から祝福してるように見えたし······」
「なるほど······わかりました。ありがとうございます。」
ホールスタッフ暁茜(あかつきあかね)の場合
「······で?私に聞きたいことってある?」
「······取り敢えず店長さんの昔からの知り合いらしいので色々と聞こうかとは思ってますけど······」
暁茜。銀髪身長約140後半、童顔、紛うことなきロリ。胸を除く。これで20超えてるんだから詐欺だ。
「んー?どうしたー?お姉さんのおっぱい見て興奮しちゃった?」
「いえ、別に······」
「遠慮しなくて良いんだよ?キミ私の好みのタイプだから······一回くらい、私と寝てみない?」
「ロリ巨乳が嫌いな訳ではないけど、あまりにもアンバランスすぎる、あと痴女は好みじゃない。チェンジで。」
「酷いっ!?」
もういい、先に進まん。
「んで、店長さん恨んでる人に心当たりあります?特にこの人が恨んでるとかあれば教えて欲しいんですが」
「そんな事言われてもなぁ······そもそも私は最近知り合ったばかりだし······」
「······え、そうなんですか?」
「うん、私22なんだけど、琴音さんの紹介で最近知り合ったばかりなの。」
因みに、琴音さんとは地元のフィットネスクラブで意気投合したのが出会いらしい。
「うーん······じゃあ何か気になったこととかないですか?最近の心霊現象とか、失踪する前の三上さんの様子とか」
「んー······私は特に······そもそも三上さんとあんまり仲良くなかったんだよね」
「そうなんですか?」
「常に私の胸を睨んではブツブツ言ってたよ?」
「オケ把握」
進捗無しかよ
4
「えっと······国東徹······殺人事件······」
全員の取り調べモドキを終えた後。
応接室で仮屋と二人で国東徹の殺人事件を調べていた。
「······あ、あったよ一ノ瀬。」
「どれどれ······ふうん、通り魔の仕業ねえ······」
死因はナイフで刺されたことによる失血死。現場には防犯カメラもなく、犯人の目撃情報もなし。場所は────
「これここの近くじゃない?」
仮屋の言った通り、現場はここから200メートルしか離れていない公園だった。
「ふむ······バイト先から帰る途中で刺されたと思われる······ねえ······」
「何かわかったかい?」
と、思考を巡らせていると店長が入ってきた。
「ん?この記事······ああ、国東君の?」
「え?知ってるんですか?」
「知ってるよ。何てったってここがミラーハウスの時にバイトしてたんだよ。潜木君も三上君もその時に出会ったのさ。」
「ミラーハウスでバイト······そんなに必要だったんですかね?迷路でしょ?」
「ああ······ホラー系の要素もあったんだよ。袋小路に入って引き返すといつの間にか後ろにお化けの格好したスタッフがいたりとかね。」
そんな施設だったのか······。
「あ、一ノ瀬。こんなの出てきたよ。三人の合作が賞を取った時の打ち上げかなんかの写真ぽい」
「あ?そんなの見たって······ん?」
そこには七輪を囲みつつ焼肉を楽しんでいる三人の写真。だが、それよりも────
「······このケータイストラップどっかで見たことあるんだよなぁ······」
三人がお揃いで付けているケータイストラップ。
何かのキャラクターを模しているキーホルダーをどこかで見た覚えがある。
「あー、このストラップ確か一時期話題になったんだよねー。確か人形の身体を摘むと録音ができるんだよ。」
「······は?録音?」
録音······ねえ······。
「······ちょっと潜木さんに改めて聞きたいことがあるんですが······」
────────
「ストラップ?これか?」
休憩していた潜木さんに頼んでそのストラップを見せてもらう。
「これは、三人全員で買ったんですか?」
「おう、折角だから何か買おうって話にたまたまなった事があってな······徹が「これを買おう」って言って買ったんだ······懐かしいなぁ」
「国東さんが······そうですか······ありがとうございます。」
「······取り敢えずここには幽霊は居ないよ。それは断言できる。」
「え、じゃあ私が昨日見たのは!?」
「偶々三上さんに似た幽霊を見たんだろ?多分浮遊霊か何かじゃないかな?······まあ美香さんの件は警察に任せましょう。俺の知り合いの刑事さんにも頼んでおきますね。」
「ちょ、ちょっと待って!!じゃああの液体は!?シュールストレミングは!?」
「······この店への嫌がらせの可能性が高いです。」
「うーん······私何かしたかね?」
無自覚って怖いねー······。
「······いや、そもそも高校生にこんなの頼む方がおかしい気がするんですが」
「ド正論ですな叶さん······」
まあ、取り敢えず何も無いんだ。良かったとは言えないけど。
「これで一先ず······もしまた有り得なさそうな事があったら呼んでください。話は聞きます。」
「よし、じゃあ巽君!!おねーさんがご飯奢ってあげるよ!!そのあと······うへへへへへ」
「すいません、仮面ライダーの溜め録り消化しなきゃいけないんで帰ります。」
「つれないなぁ!?」
そんなどうでもいい会話をして帰路についた。
深夜のカフェ・ラビリンスに黒い何かが鍵を開けて入ってきた。
黒くてうねうねしてて、気持ち悪いナニカ。
それは真っ直ぐ、女子更衣室を目指し、侵入する。
更衣室には元々鍵がついてないのでどうにでもなる。
────早いとこコイツを回収しなくては────
そして黒いナニカは左奥の鏡の縁に手をかけ────
「犯人、みぃーつけたぁー」
突然、室内に明かりが灯る。
「!?」
そこには、夕方来ていた、あのホラー小説家のガキが来ていた。
「いやぁ、まさか今日来てくれるとは思ってなかったよ。正直数日くらい間を開けてもおかし······くはないか。とっととそれを捨てたいだろうしねぇ」
飄々とした口調で、話しかけるその後ろには自分以外のラビリンスの店員がいた。
「────」
────待ち伏せされていたのか。
気づいた時には遅かった。ガキは自分に近寄ってきて────
────俺の被っていた袋を取った。
さて、ここに現れた人は誰でしょう?当ててみてください、一応今まで出てきた情報で動機以外は······わかるように書けてればいいんだけどなぁ······。
ていうかホラー作品なのにいつの間に推理小説になったんや······まあいい!!解決編書いたらめぐる登場、そしてその後から怪異症候群やるんだから······!!
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それではまた次回······