魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚───   作:タキオンのモルモット

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ゆずソフトショップで和奏のネコ耳クッション買ってきたんですけど毎日眠る時抱いてねる程気に入りましたわ。和奏マジ可愛いわかにゃんマジ可愛い

だからヒロイン力を爆上げします(嘘)

正直蛇足感半端ない


一ノ瀬家は(ある意味)異常

1

小説家というものは存外大変な仕事だ。

 

まずネタを考えるために色々と勉強しなきゃいけない。

 

完全にオリジナルの場合でも何かしらリスペクトしたものはあるだろう。

 

そして、ホラー作家というのはネタには困らない。なんでもネタに出来るといえば出来るからだ。だからこそ、いろんな分野を勉強しなきゃいけないわけで────

 

「だから、多少汚くても見逃してね!!」

 

「全然『多少』の範囲じゃない!!」

 

一ノ瀬家のリビング。そこには大量の本が散乱していた。

 

医療関連の論文が積み上がっていたり、法律関連の本もあれば、ノラ〇とやマヴ〇ブ等のゲーム、ジ〇ジョ等のジャンプコミックスまである始末。

 

「こんなに本棚あるんだから仕舞えばいいのに────」

 

「ごめん、仮屋。これ本棚に入り切らなかったやつ。」

 

「嘘ォ!?」

 

一ノ瀬家のリビングには大量の本棚が並んでいた。それこそ、扉の前や庭へ通じる窓、キッチンへ行く通路以外の全ての壁際にでかい本棚がある。

 

トータルで500冊は入るであろう本棚に、まだ入らないというのか。

 

「いや、本棚に全部本が入ってるわけじゃないし、仮面ラ〇ダーだの円盤系やMELTY BLOODみたいなゲームの箱とかも入ってるし······」

 

「じゃあせめて他の部屋に置いたら?例えば······あの部屋とか」

 

仮屋はそう言ってリビングを出て真正面にある部屋の扉を開ける。

 

────またもや本棚でほぼほぼ構成されている部屋だった。

 

「一ノ瀬どんだけ本あるの!?」

 

「?さあ?数えた事ねえなぁ······あ、でもこち亀は全巻揃ってるよ?」

 

その時点で既に200は確定である。

 

「······まあいいや、とりあえずリビングどうにかしようよ······」

 

2

その10分後、仮屋和奏はリビングのせめてもの整理すら諦める事にしたのか椅子に座り、ぐったりしながら巽が夜食を作り終えるのを待っていた。

 

「おにぎり作るけど具は何がいい?鮭と牛筋とカツとおかかがあるけど。」

 

「牛筋とカツのおにぎりって何さ······鮭でお願い。」

 

如何せん、論文系統が多すぎたのだ。そのへんの本よりもはるかに重い物が多い。よって、諦めた様だ。

 

「ほれ、出来たぞー」

 

そう言って巽はテーブルの上におにぎりが二つ乗った皿を置く。

 

そして恐らく自分の分であろうチキンラーメンを作り始めた。

 

「······一ノ瀬おにぎり要らないの?」

 

「二つとも食っていいぞ。俺はそれじゃ足りないからチキンラーメンと余った飯食うから」

 

その言葉を聞くと「やっぱり男だから食う量も違うんだなぁ」と何となく思う。

 

(······冷静に考えたらこの状況ヤバくない?一人暮らしの男子の家に上がり込んで泊まるって······!!)

 

今更そんな結論に辿り着いたようだ。

 

よく良く考えればバイト先の同僚の女性の家に泊めてもらえば良かったのだ。

────因みに巽の家に泊まることを決めたその時、バイト先の人間、全ての視線が生暖かかったのをここに記しておく。

 

だがしかし、仮屋和奏は知っている。

 

(まあ、一ノ瀬の性格からして何も考えてないな······女子を泊めたっていう認識すらあるか怪しい······)

 

昔からそうだった。

 

良くも悪くも彼は男女を区別しない。

 

そのせいで昔は女子の友達が私しか居なかったのはまだ記憶に残っている。

 

しかし何だろう、女子扱いされないというのは────

 

 

「······なんかムカつくなぁ······」

 

「ん?何が?」

 

「いやぁ、昔の事を思い出してただけだよ······一ノ瀬は良くも悪くも男女区別してなかったなぁって······」

 

「······あー、懐かしいなぁ。」

 

「容赦なく女子の顔面ぶん殴る様な男子は今のところ一ノ瀬しか知らないよ······」

 

「女子だからって殴られないと思ったら大間違いだぜ?例えば俺は綾地が何か裏で人の道を外していて俺に被害が出るようなことをしているなら例え全校生徒の前であろうとぶん殴って止めるさ」

 

「その暁には学校中の嫌われ者になるだろうね」

 

「それどころか作家生命も危ういだろうね······でもさぁ」

 

────悪人が裁かれないなんて間違ってるだろ?

 

そうだ、一ノ瀬はあの日からこういう人間になったんだ

 

「······一ノ瀬、やっぱりまだ諦めてないの?」

 

「······当たり前だろうが······!!」

 

怒鳴らなかっただけ、まだ偉いと思う。

 

「────ごめん、嫌な事思い出させたね······」

 

「······いや、いいさ。俺もお前に嫌な思いさせたろうし······思い出すもクソもない、忘れたことなんて一日たりとも無いんだから。」

 

 

······その声には七年以上溜め込んだ怒りと憎しみの怨嗟が満ちていた。

 

その後の会話は無く、シャワーを浴びて、眠りについた。

 

 

 

3

 

誰かの怒鳴り声が聞こえる。

 

────巫山戯るな!!なんでアイツが無実なんだよ!!

 

これは、間違いなく、あいつの声だ。

 

さっきまで、おにぎり食べながら話していたあいつの声だ。

 

────責任能力不十分ってどういう事だ!!

 

七年前の絶対に忘れられない、自分の無力を痛感した記憶。

 

私は何も出来なかった。慰める事も、止めることも。出来なかった。

 

────アイツだけは絶対に────────

 

私はあいつに助けられたのに、私はあいつを助けられなかった。

 

 

 

4

 

「······嫌な夢を見たなぁ······」

 

一ノ瀬家の二階にある客室。

 

時計はまだ午前2時を指していた。

 

寝てからまだ2時間くらいしか経ってないのか、と思いながら起き上がる。

 

「水飲ませてもらおっと······」

 

そう言って1階に降りる。

 

電気を付けて、台所で水をコップに汲み、一気に飲み干す。

 

────もう1杯くらい欲しいな。

 

そう思い水をもう一回汲もうとしたその時────

 

 

バンッ!!

 

と何かを叩いたかのような音が聞こえた。

 

音の発生源は本棚だった。この部屋には今、私以外は誰も居ないはずなのに、本棚が開いている。

 

「······え、あれ?私が入ってきた時には閉まってたような······」

 

そう呟いた次の瞬間────

 

バンッ!!

 

再び音がした。さっきよりも私に近い所にあった本棚が突如思いっきり開いたのだ。

 

「な、なに······?」

 

バンッ!!

 

また、開く。

 

開き、開き開き開き開き開き開き開き開き開き開き────

 

バァンッ!!

 

全ての本棚がひとりでに開いた。

 

最早声は出なかった。ただただ怖かった。

 

────だけどこれだけじゃ終わらない。

 

ガタッ、と何かが動く音がする。

 

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

 

────本が、本棚の本がひとりでに動き始めた。

 

ガタガタガタガタガタガタガタガタタッ!!

 

そして大量の本が射出された。

 

「なんだうるさいな······またかよ畜生!!」

 

と、そこで一ノ瀬が音で起きたのか、部屋の中に入ってきた。

 

────その瞬間、全てが止まった。

 

 

 

 

 

「いやー、最近どうもポルターガイストが酷くてねぇ······」

 

「酷くてねぇ······じゃないよ!!なんで教えてくれなかったのさ!?」

 

「二日くらい来なかったからもう大丈夫かなぁと。」

 

一ノ瀬曰く、ここは所謂事故物件なのだそうだ。

 

ネタ半分で買ったところ、特に何も無かったのでそのまま住み続けたらしいのだが、何でも『浮遊霊などが集まりやすい家』らしい。だから偶に金縛り等が起こるのだとか。今回もその一例らしい。

 

「······よし、取り敢えずこれで出ないだろ。」

 

部屋の四隅に塩を置いた一ノ瀬は満足気に呟いた。

 

「さて······まだ時間は早いしお前もはやく寝ろよ······て、おい、どうした?」

 

仮屋はパジャマの裾を握り、こう呟いた。

 

「──── 一緒に寝て」

 

「え、なんでさ······」

 

「あんな事があったのに一人で眠れるかっ!!」

 

「んな事言われてもなぁ······もう眠くないんだけど······」

 

「······確かに私も眠くないんだよなぁ······あれだけの恐怖体験したから眠れないよ······」

 

「······仕方が無い······」

 

そう呟いて一ノ瀬は仮屋を抱き上げた。

 

「ちょ!?な、な、何してんだ!?」

 

「何って、腰抜けてんだろ?歩けねえんじゃしょうがない」

 

「だっ、だけど!!まだはやいって!!付き合ってもないのに!!た、確かに一緒に寝ようなんて言った私にも非はあるかもしれないけど······!!」

 

顔を赤らめて抵抗する仮屋。

 

そんな仮屋の抵抗を無視し、そのまま一ノ瀬は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テレビの前の座布団に座らせた。

 

「────え?」

 

そのまま台所へ向かい二人分のコップとコーラ、そしてスナック菓子を持ってきて、テレビとP〇4の電源をつける。

 

「────寝れないなら、朝までゲームだな!!」

 

MA〇VEL VS CAP〇OMを付け、笑顔でそう宣う一ノ瀬の顔を見て

 

「何を想像してたんだ私は······!!」

 

暫く立ち直れなかった。

 

 

 

 

翌日、いつの間にか寝落ちして11時に起きた二人は昼飯を食べてから警察署に向かい、昨日の調書制作に協力、終わった時には6時になっていた。

 

「······調書って疲れるんだね······」

 

「巻き込まれる度毎回俺あんな事してるんだぜ?正直辛い」

 

そんな愚痴を言い合いつつ、帰路についた。

 

「じゃあ、また明日学校で」

 

「おう、また明日。」

 

こうして、仮屋和奏の心霊相談は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────と、こんな風に、綺麗に締まればよかったのだが。

 

「おい巽どういう事だ!?」

 

「何が!?何が!?何で怒ってんの海道!?」

 

「惚けるなああああああああああああ!!ちょっと大きめなスポーツバッグを持った和奏ちゃんが日曜日の昼、お前の家から出るのを目撃した奴がいるんだよ!!」

 

「「「「何ィイイイイイイイイイ!?」」」」

 

「ちょ、誰だよ見てたヤツ!?」

 

仮屋や俺も含め大混乱になる教室。さらに────

 

「おうおう、なんだゴシップか!?私にも聞かせろ!!」

 

担任まで止めずに攻めていくスタイルである。

 

「さあ、吐け!!二人は!!泊まりで何をしていたんだ!?」

 

「まて、泊まりとは限らないじゃないか!!」

 

「いいや、それは無いね!!大方和奏ちゃんのバイト先で起きた事件を解く前に和奏ちゃんが家を抜ける言い訳として『友達の家に泊まる』とでも言ったんだろう!!その友達がお前なら十分筋は通ってる!!」

 

「「何で知ってる!?」」

 

ほぼ事実を述べた海道。ひょっとしてコイツ探偵の素質でもあるんだろうか?

 

「宿題のプリント学校に忘れたから問題だけ教えてもらおうかと思って電話したら親御さんがそう言ってたからな!!最初は純粋に友達とお泊まり会かと思ってたが、目撃情報を聞いた瞬間解ったのさ。お泊まり会から直で巽の家に行くほど和奏ちゃんも常識知らずではない、つまり、友達とは巽だと······!!」

 

「何でこいつこういう時だけめちゃくちゃ冴えてるんだ!?」

 

「海道どっかに頭ぶつけた!?」

 

「保健室行くか!?」

 

「体調悪いなら帰った方がいいぞ!?」

 

「なんで俺が心配されてるの!?あれ!?────まあいい!!さあ巽、何をしていたんだ!?ナニをしていたんだ!?」

 

何をしていたと言われてもなぁ────と、仮屋と目を合わせて唸り────

 

「「······徹夜でマヴカプしてた?」」

 

真実を伝えた。

 

「「「「······え?」」」」

 

結果として何故か俺に『ヘタレ』の称号が付き、この騒動は終わりを告げた。

 

 

 




若干シリアス混じりで伏線をばらまいていくスタイル。

────ところで、皆さんに聞きたいんですけど、七緒さんヒロインって需要あります?

冷静に考えたらきょにゅーの喫茶店のお姉さんって需要しかなくない?

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