魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚─── 作:タキオンのモルモット
和奏にディープキスされたい
紬ママの胸に埋もれたい
めぐるによしよしされたい
変女おもしれえ
4
「まだ抜け出せねえのか!?」
「ダメぽいですね。また同じ所だ。」
あれから三十分くらいだろうか?
未だに道路のループから抜け出せない。
「しかし一体なんの怪異だ?」
「わからん、戻れないし進めない、空間を歪める怪異なんて聞いたことないっすよ?」
「くねくねに引き寄せられた怪異が重なってたまたま起きた現象かもしれない。」
「あー······その可能性もあるのか······」
四人で打開策を話し合うが、何一つとして解決策が思いつかない。
「せめて原因が目の前に現れてくれればなぁ······」
巽は怪異を物理的に殺すことが出来る。だがそれは原因が目の前に来ないと殺せない、ということなのだ。
つまり、こういう持久戦はクソ苦手なのである。
ただでさえ手の方が先に出るような性格してるのに。
「······もういい、あれだ。抜け道探した方が早いかもしれん。」
「なるほど、しかしどうやって?」
「んー······俺だけならあの雑木林無理矢理越えられると思うよ。」
元の身体能力もおかしいレベルにある巽にとってそれは簡単な事だった。
「なるほど、ならばそれでいくか······もし雑木林を突破できたら真っ先に美琴くんを探してくれ。お前ならくねくねも殴れるだろう?」
「多分平気。じゃあ、10分経っても帰ってこなかったら、多分通れるようになってるから」
そして、俺は雑木林の中に突っ込んでいった。
「早くしないと夜の9時から相〇始まるしな!!それまでには帰りたい!!」
5
抜けるだけなら、簡単な事だった。
所詮は『くねくね』という強い怪異に引っ張られて来た低級怪異の集まり。流石に道周辺の時空を歪められても、道の上である上空の時空までは歪められないという可能性があるのなら。
一番高い木から飛び移ればいいのだ。
「よっこい······しょ!!」
上空約7mを彼の身体は舞った。
そのまま木の上をぴょんぴょん跳びながら進む。
パルクールという技術を見様見真似で再現しているのだが、まるで熟練者のように林の中を駆け巡る。
暫くして開けた土地に出た。
「────墓地?」
出た場所は墓地だった。
舗装もされていないのを見る限り、廃れているのだろうか。そして端の方に井戸がある。
「なんだあの井戸······」
中を覗いてみるが特に何も無い。枯れ井戸のようだ。
「······ふむ、特に何もなしか。やれやれ参ったな······元凶を叩いた方が早いか、空間を歪めている原因だけ取り敢えず叩くか······」
暫く考える、こちらとしては戦力不足、ここにいるのはそこそこ怪異に耐性のある一般人と俺。姫野美琴と合流する方が得策か?────うーん、考えても仕方ない。
「取り敢えず怪異に会ったら殴ればいいか!!」
そう結論付けて、巽は村の方へ走り出した。
そのすぐ後に、謎の中年のババアが墓地に侵入した。
6
「······地味に広いなこの村······だが見つけた······!!」
あれから約9分。村にある公園で空間の歪みを引き起こしている原因となっている怪異を見つけた。
まるでまっくろくろすけのような黒の球体。くねくねに引き寄せられた低級怪異の集合体。
「さて────取り敢えず······ぶん殴るっ!!」
握り拳をつくり、怪異を力任せにぶん殴る。
ゴツッと鈍い音が響き渡る。
が、手応えがない。
「あら?」
音は鳴り響いたのに何も殴れてないような感覚。
「球体には実態がない、となると······」
この公園にある遊具、滑り台、砂場、ブランコ、雲梯────トンネルのある半ドーム状のなにか。
このどれかが、怪異そのものだ。
「ふむ······全部壊すと多分氷室さんがグチグチ言うだろうし······」
そう考えている間に、割と簡単に敵は答えを出してくれた。
半ドーム状のトンネルから黒い棘のようなものが生えてきたのである。
「うっへえ······あれぶん殴るのか······痛そう······」
だがしかし、やらない訳にはいかない。
こちらに向かってくる棘を全て避け、遊具に近づく。
そして間合いに入ったところで遊具に蹴りをぶちかます。
ドゴッ!!
と鈍い音が鳴り響き遊具が崩れた。
怪異は遊具に擬態していたがその形を保てなくなり、崩れた。
それを確認した巽は氷室に連絡を入れる。
「もしもし?氷室さん?取り敢えずこっちに来れない原因だけは排除しておいた。姫野は未だ見つからず。」
『了解した、こっちもすぐ向かう、引き続き美琴くんを探してくれ』
「うぃーっす」
さて────
「この広大な村で人1人ピンポイントで探すのがどれだけ大変だと思ってるんだ······はぁ······」
この村、なかなかに広い。
ていうかあんまり田舎じゃないここ。コンビニがある。
「······めんどうだなぁ······」
そう思いつつ、走り出し、捜す。
「────ん?あれは······」
7
現在、姫野美琴は怪異から逃げている真っ最中だった。
全ての原因が謎のおばさんということを突き止めた。くねくねの正体はそのおばさんが殺して棄てた実の子供だった。
そして目の前でおばさんが怪異に殺された。
────逃げなくては、殺られる。逃げなければならない。
必死だった、必死だったからこそ起きた出来事。
「きゃっ!?」
ただ足元を見てなかった。台車に引っかかりこけてしまった。
その間にも怪異は迫ってくる。
立ち上がろうとする、が足に激痛が走る。
どうやら今コケた時に怪我をしたようだ。
(······っ······こんな所で────)
こんな所で私は死ぬのか。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ────!!
だが、くねくねは目の前まで迫ってきている。
そしてくねくねが完全に姫野美琴に────
ドオオォオン!!
プチっと音がした。
接触する前に、空から人が降ってきた。
「あぶねーあぶねー、危うく氷室さんに怒られるところだった······」
くねくねをぶっ潰した男はそう言うとケタケタと笑う。
「しっかし、運が良かったなーお前。丁度俺が公園から出た時にたまたま出会えるとは······あれ?俺の方が運いいんだなこれ。」
「あ、あの······ありがとうございます······貴方は······?」
「あれ?意外と有名だと思ってたんだけどなぁ······まあ、ダメな人もいるか、万人受けする作品とは言い難いし······」
何やらわけのわからないことを呟き始めた。
不審者────では無さそうなのだが······
「っ、美琴くん!!無事か!?」
「氷室さん!?か、加賀さんも!?────えーと······」
一人だけ知らない人がいる。誰だろう?
「ああ、初めまして、霧崎翔太だ。」
「あ、はい、姫野美琴です······」
何故か自己紹介が始まっていた。
「氷室さん、くねくねはプチっと潰しておいたからとっとと帰りましょうよ。〇棒見たいんですが。九時までに帰してくれるんでしょ?」
「······警察署のテレビを貸してやる······」
「え、家帰れねえの!?なんでさ!?」
何やら揉めているようだ。と、そうだ大事なことを忘れていた。
「あ、あの······」
「ああ、名乗り忘れてたっけ?」
そう言って彼はこちらを振り返り、こう言った。
「一ノ瀬巽、訳あって警察の仕事を無理矢理手伝わされている憐れなしがない小説家だ。」
8
「何で帰してくれないのさー······」
「この短期間······というかこの二日でここまで大きな怪異に立て続けにあっているんだ、次がないとも限らない。戦力は必要だ」
「一般市民を戦力に数えるなよ!?ていうか他の特務課の人達は!?」
「全員別件で出払っている」
「このタイミングで!?」
あの後。くねくねは無事消滅した。
被害はあの周辺の住民の集団失踪と最後くねくねを潰した時にできたクレーターだけとなった。
────だけと言うのはおかしい話だけれども。
「はぁ······まあいいや、飯くらい食ってきてもいいでしょ?太郎で食ってきます」
「おっ、何だ太郎行くなら俺も行くぞ!!」
っち、逃げようとしたのに加賀さんが乗ってきやがった。
ラーメン太郎。めちゃくちゃ量のあるラーメンが有名なラーメン店。
なのに────
「何してんだお前等!?」
「一ノ瀬!?」
「一ノ瀬君!?」
そこには大食いとは無縁な見た目をした少女とその彼氏が居た。
次回:呪文炸裂、そして猿夢
くねくねは犠牲になったのだ······
あ、私はひとみこ推進派です。