魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚───   作:タキオンのモルモット

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リハビリ兼ねて番外編⋯⋯


CHAPTER:0 綾地寧々の憂鬱
綾地寧々の憂鬱 その一


 

 

0

 

私が柊史君の存在を入学式で確認して、次にやった事は環境作りだった。

 

これ以上未来を大きく変えないように、前世と同じ環境を目指し、努力すること。それが私のやらなくてはいけないことだった。

 

入学当初のオカルト研究部は黒魔術を主に三年生が遊びのように偶に来る程度の部活だった。新入部員は私以外居ない、存在自体が幽霊のような部活だった筈だ────なのに。

 

 

「凄いな今年新入部員が二人も来たぞ!!あ、二人とも自己紹介ヨロシク!!」

 

「一年B組綾地寧々です、よ、よろしくお願いします⋯⋯」

 

「一年A組一ノ瀬巽です。仕事で多々来れない日があるかもしれませんがよろしくお願いします。」

 

────どうしてこうなった!!?

 

 

1

一ノ瀬巽。中学二年でデビューを果たした、稀代の天才ホラー小説家。

 

確かに前世にも居たが、彼はどの部活にも属さず普通の高校生として生活していた筈だ。────実は前世の学院でまことしやかに「一ノ瀬巽はあの人気小説家だ」という噂が流れていたのだが。それは関係ないので置いておこう。

 

なのに何だ、何だこれは。

 

前世界では新入部員は私一人だけだった筈なのに⋯⋯

 

私が思考の海に浸っていると先輩方が自己紹介を始めた。

 

「私は三年C組の九鬼焔(くきほむら)。ここの部長だよ!!」

 

「僕は三年D組の山崎奏(やまざきかなで)。一応副部長だ」

 

「⋯⋯三年D組、園原黎(そのはられい)。よろしく。」

 

「ふむ、快活元気ポニテ娘に金髪セミロングのボクっ娘、無口なクーデレって中々キャラ濃いですね。」

 

「あはは、面白いこと言うね!!」

 

どうやら一ノ瀬巽はもう馴染んだようで、先輩方と談笑している。特に山崎先輩はサインをねだっているようだ。

 

だがそんな事を考えている暇などなく、私の頭はただ混乱するばかりであった。

 

 

 

2

それから二ヶ月すぎて六月になった。

その間は特に何事も無かった。元々柊史君と自分が出会ったのは二年の時。何かして歴史を変えてしまうのはいけない、と考えると遠目から柊史君を見ることと、前世でやっていた相談くらいしかやる事が無かった。

 

因みに相談はこの部活では今のところやっていない。前世でも三年引退後に始めた事だしそれは問題ない。

 

なので、部活は受験勉強をやりつつ、お喋りくらいしかやることが無いのだが────

 

「⋯⋯⋯⋯山崎先輩、どうしました?顔色悪いですよ?」

 

「え?あ、ああ⋯⋯大丈夫だ⋯⋯」

 

「⋯⋯の割には数学得意な山崎先輩にしてはとんでもないケアレスミスしてますよ、ここの式代入するのはこっちの方では?」

 

「────あ。」

 

「え、ちょっと待って一ノ瀬君なんで三年生の問題わかるの」

 

「少し休みましょうや、なんなら珈琲入れましょうか?」

 

「⋯⋯ああ、頼む⋯⋯」

 

「ねえ、ちょっと、無視?無視なの?」

 

九鬼先輩の言葉を無視して珈琲を入れるのを横目に私は山崎先輩に「何かあったなら相談くらいなら乗りますよ」と持ちかける。というのもこれは前世にもあった流れなのだ。確か彼女は妹との関係が上手くいかなくて悩んでいたはずだ。

とはいえ少しのすれ違い程度。すぐに片付いた問題だった。比較的簡単に前世で心の欠片を回収させてもらった。

今世で心の欠片は回収出来ないし、必要ないのだが、これ以上前世と違うことをすれば何が起きるか判ったものではない。だから私は前世と同じ言葉をかけた。

 

 

 

「⋯⋯実は、妹が一週間前から家にひきこもってしまったんだ⋯⋯」

 

「────え?」

 

だが、口から出てきた悩みは前世とは比べ物にならないくらい重い内容だった。

 

「────ほう、なぜ引きこもってしまったので?」

 

「それが解らなくてな⋯⋯酷く怯えている事くらいしか⋯⋯」

 

「⋯⋯へぇ⋯⋯」

 

その言葉を聞いた瞬間、一ノ瀬巽の顔は面白いものを見つけたような顔になったが、そんな事はもうどうでもよかった。

 

────どうして、ここまで変わってるの?

 

両親の離婚を先延ばしにしてしまった事がこんな所にまで、影響が出ているのだろうか?

 

まるで、前世と同じ道を歩めると思うなよ、と世界に言われたかのような衝撃を受ける。

 

そんな綾地寧々を横目に、一ノ瀬巽は質問を重ねる。

 

「山崎先輩の妹さんはどちらの学校で?」

 

「私立菊川学院だ、そこの二年生なんだが⋯⋯」

 

「私立菊川学院⋯⋯部活は?」

 

「?バレー部だが⋯⋯それがどうかしたのか?」

 

「⋯⋯成程、部活間じゃないとすると⋯⋯あー、先輩。ちょっと調べてくるんでこれ明日に持ち越しで良いですかね?」

 

「へ?あ、ああ⋯⋯」

 

そう言って一ノ瀬巽は部室を駆け足で後にした。

 

「私立菊川学院⋯⋯二週間前に自殺者出てなかった⋯⋯?それが友達だった⋯⋯とか。」

 

「確かに自殺者は出て大いに問題になった⋯⋯だが、それは妹となんの接点も無かったはずだ」

 

「う、うーん⋯⋯原因不明すぎる⋯⋯」

 

そのまま三人が考察し始めたが、私の頭の中に周りの言葉は入ってこなかった。

 

結局、翌日が休みだから、皆で説得しに行ってみようという話になり、この日はその場で解散した。

 

 




~オリキャラ紹介~

九鬼焔
快活元気ポニテ娘。お前本当にオカルト研究会か?ってくらいリア充オーラを出している。仲間思い

山崎奏
金髪セミロングのボクっ娘。実は主人公の好みドストライクはこの辺。まぁ主人公にそんな感情があればの話だけど。

園原黎
無口なクーデレ。黒髪ロング。三年組の中で一番頭がいい。しかし猫を見ると猫語が出るタイプ。


一ノ瀬君への質問コーナー▽

Q.仮面ライダージオウについて一言

A.「ライダーって書いてあるのに気づくのに一時間かかった⋯⋯平成も終わりかぁ⋯⋯」

Q.ちっぱいと巨乳どっちが好き?

A.「正直どっちでもいい」

Q.どんな人と結婚したい?

A.「簡単にコントロールできる人かな、要するにちょろい人」


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