斜向かいの魔王さん   作:高嶋ぽんず

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3話

 俺、津田正治。たぶん、どこにでもいる高校生。

 俺、津田正治。たぶん、どこにもいない地球人。俺を取り巻く環境は、世界中どこを探してもいないと思う。

 なぜか、自分は魔王だと名乗る不愉快生物を、かーちゃんの強権でもって許婚にされ――ひょっとして俺のかーちゃんを洗脳してんじゃねぇか?――その不愉快生物は、ただいま俺の部屋を物色中なわけだ。いや、そもそも許婚なんて受け入れてないわけだが。

 つーか、こいつほんとに生物か?

「ふむ、六畳の畳敷き。パソコンが乗った勉強机、ベッドが並んで本棚と。愛しのまいすぃーとが住まうにはずいぶん狭い部屋だの」

「……ほっとけ」

「拡張の必要があるようだの。具体的には倍の十二畳程度」

 などといいながら、俺のベッドにダイビンするのやめれ。

「まっていろよ、我が君。ものの一秒でこの部屋を十二畳の部屋」

 いいたいことを言い終わらないうちに、俺はためらいなくジャンピングエルボーをヤツの脊髄めがけて敢行する。

「☆~ヾ^」

 囁き声で悲鳴を上げる。

 老婆のようなロリ声といい、お前はほんとに器用なヤツだな。

「なにをするか我が君! 我のその……をそんな風にするなんて、積極的ではないか」

「いや、なにが積極的なのかわからんが、痛くないのか」

 俺は、怪奇物体が頬を染めて――どんな色に染めたかは聞くな――身悶えたので、あわてて離れて椅子に腰掛けた

「痛いのがいいではないか。最低の愛憎表現だ」

「愛憎って愛情の誤植じゃないのか?」

「ああ、そうであったな。愛情だ愛情」

「後、最低ではなく最高。どこのデーモン閣下だよ」

「どうにもまだ人間の言葉に不慣れでな。我が君の訓告処分」

「忠告」

「忠告には感謝する」

 言いながら俺の枕をなめるな。唾液で汚すな。

 殴ってやろうかと思ったが、また下手に喜び? そうなのでやめておいた。

 あと、俺のかーちゃんとは普通に話してたのに、どうしてそんなに間違えるんだ。

 ひょっとして照れてるのか?

「大体だな。部屋の空間を改変して広くするつもりだったのだぞ。別に部屋そのものを三次元的に広げるといったわけではない。ここを四次元的にたたんだ空間にして、結果として三次元を広くするつもりだったのだ。勘違いするでない」

「見た目六畳間なのに中に入ったら十二畳とか、気持ち悪いからマジやめろ。建築基準法とかややこしいことになるし。ってか、広いと動き回らなきゃならんからだめだ。狭いのがいいんだ」

 そう、狭くないとあちこち歩き回らなきゃならんし、冷暖房もコストがかかる。必要以上に広いのはよろしくないのだ。

 狭いぐらいがちょうどいい。

「しかし、このようなサイクラノーシュの猫の額より狭そうな部屋で同衾」「誰と誰が同衾するだって?」

 俺はとりあえず、同衾という不穏当な言葉がでたところでヤツの言葉をさえぎった。

「誰が、誰と同衾だって? 俺とお前か?」

「うむ。われと我が君」「お前家あるだろ。引っ越してきたんだろ。なんで同衾する必要があるんだよ! わけわかんねぇよ!」

「……」

「……」

「…………」

「…………」

「おお!」

 よだれでぐちゃぐちゃになった枕から顔をあげて、ぽん、と腹を叩いた。手を叩くんじゃないのかよ。

 あと、枕新しいの買って来い。

「忘れてたのかよ!」

「うむ」

「忘れんなよ!」

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