メールペットな僕たち   作:水城大地

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お正月の話の二話目は、お年玉を用意するモモンガさんと、それを受け取るまでのパンドラの話。


メールペットとお正月 ~モモンガとパンドラズ・アクターの場合~

【 お年玉の準備をするモモンガさんの話 】

 

みんなとの取り決めにより、お菓子などを中心にメールペットたち全員分のお年玉を用意したモモンガは、最後に今までの用意せずに残してあったパンドラズ・アクターの分を用意する事にした。

みんなに渡す分は、いつもよりも良い高級なお菓子やメープルシロップなどと言った嗜好品だったりする。

もちろん、甘いものが苦手なメールペットの事も考えて、お酒などのミニボトルなどと言った同価値のものを用意してもあるのだが。

 

モモンガは、最後に残った自分のメールペットのパンドラズ・アクターには、お年玉としてスーツを用意しようと考えていた。

 

普段の軍服も、散々選んだだけあって十分良く似合っているが、たまにはデミウルゴスの様なスーツ姿も見たいと思い付いたからこそ、彼へのお年玉として選んだのだ。

それに、先程連絡をくれたペロロンチーノさんからのお年玉が、シャルティアのリボンと揃いのデザインのネクタイだと言う話だし、二日前に連絡をくれたウルベルトさんからは、揃いのネクタイピンを用意したのだと聞いていた事もあって、それに合わせてスーツを選んだと言う理由もあるのだが。

モモンガが三人の為に用意したのは、ペロロンチーノさんとウルベルトさん、そして自分の紋章を入れた三人揃いのデザインの万年筆なので、全部揃えると一人の紳士が出来上がる仕様になっていた。

それに、だ。

どうせなら、新年の晴れ着として格好いい装いを贈りたいと思うのも、親心なのである。

 

「…なんだかんだ言っても、パンドラはやっぱり可愛い一人息子だし。

出来るだけ、初めて迎える新年に相応しいだろう、格好良い姿にしてやりたいもんなぁ。」

 

そんな事を呟きながら、モモンガは自分が見て格好良いと思うスーツのカタログを開く。

普段、パンドラズ・アクターには軍服を着せているだけに、ある程度きっちりとしたデザインのオーダーデザインのスーツなら、着せても十分似合うだろう。

ただ、素の体格のパンドラズ・アクターだと、デミウルゴスやセバスと比べると微妙に細身の可能性もあるので、デザイン次第ではダブついてダサくなってしまうのが要注意だ。

 

どうしても、身体のラインが判り易いスーツを選ぶ以上、その辺りもきちんと頭に入れた上で似合うものを選ぶ必要がある。

 

用意したカタログを見比べつつ、サンプリングデータから抽出して用意したパンドラズ・アクターのマネキンに衣装を着せては、ああでもないこうでもないと口に出しながら幾つも見比べて、良い感じのデザインをチョイスしていく。

普段、着せているのが黄色の派手な色だから、新年を迎えるなら落ち着いた黒かダークグレー辺りを選ぶべきか、それとも一層華やかな白を選ぶべきか。

色々と見比べつつ、気付けばこういう時間もまた楽しくて仕方がないモモンガだった。

 

******

 

そして、迎えた新年。

新年のカウントダウンを、ギルメン全員でナザリック集まって迎えた事もあり、【メールペットたちへのお年玉は、一度寝てから】と言う事で意見が纏まっていたので、モモンガもそれに合わせて一休みした後にパンドラズ・アクターにお年玉を渡すつもりだ。

色々と考えた結果、モモンガがパンドラズ・アクターへのお年玉として選んだスーツは黒。

ペロロンチーノさんから、シャルティアの髪を結うリボンとお揃いのネクタイが用意されている事を考えるなら、多分赤系統になると踏まえた選択だ。

ウルベルトさんの用意するネクタイピンは、何となくシルバーデザインになる気がしたので、それも合わせた結果でもあった。

 

〘 ……喜んでくれると良いんだけどな、このお年玉を。 〙

 

そんな事を考えながら、モモンガはユグドラシルからログアウトして、一休みするべく寝室へと向かった。

もちろん、起きたらすぐにメールサーバーを立ち上げてパンドラズ・アクターにお年玉を渡せる様に、小型端末をベッドの側へ持って行くのも忘れない。

手にしている端末の中では、多分パンドラズ・アクターが待ち構えている様な気もするが、お年玉を渡すタイミングは起きた後と決まっているので、今ここで端末を立ち上げて挨拶をするよりも後にした方が、多分自分も忘れる事なくお年玉を渡せるだろう。

 

眠る前の最終チェックとして、メールサーバーを起動させる事なく用意したお年玉の内容と宛名を確認したモモンガは、漸く眠りについたのだった。

 

******

【 お年玉を受け取るまでのパンドラの話 】

 

パンドラズ・アクターは、初めて迎える新年にどこかウキウキした気持ちになっていた。

年の暮れにあった、【クリスマス】と言うイベントもちょっとしたパーティ仕様になっていて楽しいものだったが、モモンガ様たち主の方々の大半がどこか微妙な反応だった気がしたので、どうしても【自分達だけがこんなに楽しんでも良いのか】と気が咎めたのだ。

それに比べて、今回迎える新年はモモンガ様も本当に色々と楽しそうに準備していて、とても心が躍る。

なので、パンドラズ・アクターなりにモモンガ様の手伝いをするべく、新年の準備として普段はあまり掃除しない場所の掃除をしたり、用意されていたアイテムを使って部屋の模様替えをしてみたりと、沢山する事があった。

 

モモンガ様も、そんなパンドラズ・アクターの為に次々と必要な品を用意してくれるので、本当に頑張ったのだ。

 

その甲斐があって、モモンガ様から「これなら新年を無事に迎えられるな」と言う、太鼓判をいただいている。

自分の手で、きちんと準備が出来ていると言う事もあり、新年を迎えるのがとても楽しみで仕方がない。

今、モモンガ様は、他の主の方々とナザリックでの「カウントダウン」をする為に出向いていらっしゃるので、自宅には不在だった。

パンドラズ・アクターがモモンガ様と新年の挨拶をするのは、ナザリックから戻られた後に一休みされてからの予定になっているので、まだ時間がたっぷりとある。

 

「……どうしたものでしょうね。

とてもワクワクした気持ちがして、どうも落ち着きません。

モモンガ様以外の主の方々も、今までずっと〖年末は多忙しだ〗とおっしゃって、とても慌ただしくしていらっしゃいましたし。

その分、大晦日の前日である昨日から、新年を迎えてから三日目までの五日間は、ずっと連休になるのが新年の風習なのだとか。

へ口へ口様は、〖情況によっては呼び出されるかも〗と、戦々恐々のご様子だとソリュシャンから聞いていますが……こればかりはそうならない様に、祈る事しか私には出来ませんからね。

それにしても……モモンガ様がおっしゃられた、〖新年の朝は、まず私からの挨拶があるから、待っている様に〗と言うお言葉には、何か意味が隠されている様に思われました。

一体、何があるのでしょうかね?」

 

まだまだ知識が足りないと、何が待っているのか判らないパンドラズ・アクターは首を傾げた。

そのまま、年が明けてモモンガが帰宅し一休みをする間も、ずっと何が待っているのかワクワクした気持ちがして、パンドラズ・アクターはどうにも気が落ち着かない。

どう考えても、何か良い事が待っている様な気がして仕方がなかったからだ。

自分の主であるモモンガを筆頭に、自分達メールペットの主であるギルメンたちが何か新年に因んだ事を画策していると言う事は、実は掌握済みだった。

 

ただ、その目的と内容に関してはまだ分かっていないのだが。

 

それでも、モモンガ様達が悪意を持って自分達に何かをすると言う事は、とても考えられない。

多分……これは、新年を迎えるにあたって必要な行事の一つなのだろう。

状況的に考えても、初めて新しい年を迎える自分達に対して、色々と丁寧に必要な事を教えて下さるのだから、それに関しては疑っていなかった。

 

〘 何より……この準備を始めた頃から、どこかモモンガ様も楽しそうですから、ね……〙

 

出来るだけ、こちらに何をしているのか内容を知られない様に気を使いながら、こっそりと何かを準備しているモモンガ様の様子は、見ていてとても楽しそうなのだ。

ウルベルト様やペロロンチーノ様など、特に親しいギルメンたちと頻繁に連絡を取り、色々と打ち合わせをしている事も知っていたので、パンドラズ・アクターにはその楽しみを邪魔する気にはとてもなれなかったのである。

既に年を越しているし、今はお休みになられているモモンガ様が起きられて新年の挨拶を済ませれば、多分その内容は教えて貰える筈だ。

そう考えつつ、パンドラズ・アクターは一旦自分もモモンガが起きるまでの短い間、暫しの眠りに付く事にした。

 

新年を迎えるめでたい時に、モモンガ様の前に寝不足の為にヨレヨレな格好悪い姿など、とても晒せないのだから。

 

そうして、何事もなく迎えた新年の挨拶なのだが。

挨拶が終わるなり、モモンガから【大切な息子へのお年玉】として新年の挨拶回り用のスーツ一式を手渡され。

更に、シャルティアとデミウルゴスの三人お揃いだと言う万年筆を渡された事で、あまりの嬉しさに思わず嬉し泣きしてしまうパンドラズ・アクターだった。

 




最初のお年玉は、やはりモモンガさんとパンドラで。
こんな風に、ギルメン側はお年玉の準備を楽しんでいると思います。
逆にもらう側のメールペットたちは、何かあると思いつつワクワク期待に揺れているのかと。

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