託された力   作:lulufen

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キリのいいとこまで書いたらまた9000字行きました(笑)


第22話 雄英体育祭のお知らせ~前日

 臨時休校明けの金曜

 

「皆ー!!朝のHRが始まる!席につけー!!」

 

「ついてるよ、ついてねーのおめーだけだ」

 

 飯田君の言葉に突っ込みを入れる瀬呂君

 

 相変わらず委員長してるなー飯田君

 

「お早う」

 

 !!?

 

「「「相澤先生復帰早えええ!!!」」」

 

 包帯だらけなのに出勤してくる先生に全員が驚いた

 

 誰か代わりの先生じゃないの!?

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

 

「「「クソ学校っぽいの来たあああ!!」」」

 

「待って待って!敵に侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか!?」

 

「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示す・・・って考えらしい」

 

 らしいって・・・

 

「警備は例年の五倍に強化するそうだ。何より雄英(ウチ)の体育祭は・・・最大のチャンス。敵ごときで中止していい催しじゃねぇ」

 

「いやそこは中止しようよ・・・・・・体育の祭りだよ?」

 

 峰田君の言いたいことは分かる。

 襲撃の後に祭りをやるのは「どうよ?」ってことだろうけど、ここ、雄英の体育祭なら決行した方が良い・・・ってかしてほしい

 

「ウチの体育祭は日本のビッグイベントの1つ!!かつてのオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した。今は知っての通り規模も人口も縮小し形骸化した。そして日本に於いて今『かつてのオリンピック』に代わるのが雄英体育祭だ!!」

 

 たしか【個性】の発現と共に『【個性】のないスポーツ』は人気がなくなり、代わりに『【個性】豊かな体育祭』が人気になったんだっけ

 

「当然、名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる」

 

資格修得(そつぎょう)後はプロ事務所にサイドキック( 相 棒 )入りが定石(セオリー)だもんな」

 

 上鳴君の言う通り、ヒーロー事務所でサイドキックとして働いて技術を得ていずれは独立ってのが定石だ

 ただ、稀に「この人に一生付いていく」っていってサイドキックのまま所属する場合もある。飯田君のお兄さんであるインゲニウムの事務所がいい例だ

 

「時間は有限、プロに見込まれればその場で将来が開けるわけだ。年に1回、計3回だけのチャンス、ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」

 

 ―― 昼休み ――

 

「なあ、緑谷?」

 

「なに?切島君」

 

「あーその、なんだ・・・」

 

 ???

 

 歯切れが悪そうに頭をかく切島君

 

「どうしたの?」

 

「えっと、その、あーもう!考えるのやめだ!緑谷!!」

 

「なに?」

 

「体育祭になったらライバル同士だ!!」

 

「うん」

 

 突然声を張り上げて「ライバルだ」と宣言する切島君に僕は頷いた

 

 なに?正々堂々戦おうって宣言?

 

「それなのにこんなこと頼むのは男らしくねえが頼む!!」

 

 なんか違うっぽいな

 

「【個性】についてアドバイスくれないか?」

 

「アドバイス?」

 

「そう、緑谷ってたしか[模倣]って【個性】で色んな【個性】使えんじゃん?」

 

「うん」

 

「そんなかに硬くなる【個性】もあったじゃん?」

 

「うん」

 

「で、俺の[硬化]についても何かアドバイス貰えねえかと思ってよ。頼む!」

 

 そう言って切島君は頭を下げた

 

「別にいいよ」

 

「本当か!サンキュー!!言ってみるもんだな!緑谷ならなんかすごいアドバイスくれそうだ!」

 

 僕が引き受けるとは思ってなかったのか下げていた頭を勢い良く上げて見つめてくる

 

「あんまりプレッシャー掛けないでよ・・・先に言っとくけど、アドバイスって言っても大雑把に言うと長所を伸ばすか短所を消すか、必殺技的なものを考えるかの三択だよ?」

 

「それでも構わねえよ!1人でウダウダ考えてても埒が明かねえ、なら恥を忍んで緑谷に聞こうと思ってよ!」

 

「その代わりに【個性】を模倣させてもらってもいい?僕が強くなるなら体を鍛えて【個性】を沢山使えるようになるのが一番だし・・・」

 

「おう!構わねえぜ!ってかとっくに模倣してんのかと思ってたぜ」

 

 交換条件として【個性】を覚える(模倣する)ことを伝えるとあっさり許可が下りた

 

「正直言うと切島君の【個性】は半分くらいは理解できてるんだ、似た【個性】は既に使ってるから。でも完全に理解するにはもっと時間かかるかな?」

 

 見ただけで覚えられる【個性】も今までいくつかあったけど、その数は両手で数えられるほどしかない。

[PF-ZERO(ポジティブフィードバック・ゼロ)]が元々自分の【個性】じゃないから使いこなせていないのが原因だと僕は考えている

 

「ならどうやって理解するんだ?悪いが流石に俺でも理解するまで付きっ切りて訳にも行かないぜ?」

 

「んー、手っ取り早いのは頭突き」

 

「頭突き!?おいおい冗談だろ?」

 

「いや、冗談じゃないよ?頭突き程勢いよくじゃなくても額が合わさればいいんだ」

 

「なんでそんなんで理解できんだよ!」

 

「こう、なんていうか・・・閃き的な何かがあるんだ、上手く説明できないけどそういうものだと思ってくれればいいよ」

 

 白毫を通して【個性】を覚えているのが本当なんだけど、設定上[模倣]は《過程を理解して結果を模す》ってことになってるからこの説明には違和感があったので《閃き》ってことにした

 

「まあ、【個性】の発動条件は人それぞれだしな」

 

「なあ」

 

「ん?障子君?どうしたの?何か用?」

 

 突然声を掛けられ振り向くと障子君がいた

 

「盗み聞きしたようで悪いが、俺もその話に加えてもらえないだろうか」

 

「話ってえとアドバイスのことか?」

 

「ああ」

 

「構わないよ?でも【個性】を僕が模倣することが条件だけどいいの?僕としてはありがたいけど・・・」

 

「問題ない。それに今のまま闇雲に特訓しても成果が得られるとは思えないからな、アドバイスがもらえるなら構わないさ」

 

「わかったよ。でも取りあえずはお昼にしない?でさ、本格的な話は放課後でいいかな?」

 

「お!そうだな、行くか!飯!腹減ったわー」

 

「ああ」

 

「あ、デク君、お話終わった?食堂行こ?」

 

「うん」

 

 切島君との話が終わったところで麗日さんに誘われて飯田君と3人で食堂へ向かった

 途中で飯田君が[ヒーローを志す動機]について麗日さんに質問すると予想外の言葉が出てきた

 

「お金!?お金欲しいからヒーローに!?」

 

「究極的に言えば」

 

 話を聞くと麗日さんの実家は建設会社を営んでいるが現在閑古鳥が鳴いている状態で生活も苦しいそうだ

 そして少しでも両親を楽させてあげられるようにヒーローとして活躍してお金を稼ぎたいんだそうだ

 

 麗日さんは僕の『ヒーローに憧れたから』や、飯田君の『兄のような立派な人になるため』の様に『憧れ』や『夢』『目標』で決めたのではなく、『現実』を加味した上で最も自分に適した職業としてヒーローを選んだ

 

 そういう選択をした人もいたんだ・・・

 

「おお!!緑谷少年が、いた!!」

 

 ビクッ!!

 

 突然現れたオールマイトに僕らはビクリと肩を震わせた

 

「ごはん・・・一緒に食べよ?」

 

 左手を胸元に置き、右手にはお弁当というまるで乙女がするようなポーズで食事に誘われた

 

「乙女や!!!」

 

 そんな姿に麗日さんは突っ込みと共に吹き出した

 

 僕もオールマイトに聞きたいことがあるしちょうどいいか

 

「是非」

 

 ―― 仮眠室 ――

 

「え!?活動時間が1時間30分を切った!?」

 

「ああ、最近無茶が続いてね、マッスルフォームはギリギリ2時間弱くらい維持できるって感じ」

 

「やっぱり無理しない方がいいんじゃ」

 

「はははは!助けを求める者が居て私に助ける力がある!助けなければヒーローじゃないさ!!」

 

「オールマイト・・・」

 

「そうだ、【個性】の変更について事後報告になってすまなかったな」

 

「は?【個性】の変更?」

 

「むむ??昨日は君が不在だったようだから君のお母さんに伝えてあるはずだが?」

 

「え?聞いてないですけど!?」

 

 お母さんどういうことだよ‼!

 

「なら、改めて伝えるとしよう!アダム君から[PF-ZERO(ポジティブフィードバック・ゼロ)]を託されてから個性届に[覚える【個性】]として提出しただろう?」

 

「ええ」

 

「でだ、この間も言ったけど、その力はあまり多くの人に知られない方が良い。早いとこ変更した方が良いと思ったんで勝手ながら[模倣]に変更させてもらったよ」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

「ははは!私が隠した方が良いと言ったんだ、その責任くらいは取るさ」

 

 そう言ってオールマイトは笑った

 

「そうだ!聞きたいことがあるんですが」

 

「なんだい?」

 

「黒髪を後ろで結わえて「笑ってるやつが一番強い!」って言う女性に心当たりはありませんか?」

 

 ピク

 

 僕の質問に僅かながらオールマイトの肩が跳ねた

 

「・・・・・・どうして私に聞くんだい?」

 

「実は昨日、夢を見たんです」

 

「夢?」

 

「ええ、初めは本当にただの夢、良く分かんない人型と戦って負けて、急に商店街に変わったと思ったらアダムさんに失望された嫌な夢」

 

 現実ではもうありえないと分かっていても考えるだけで震え出すような悪夢

 

「また随分とネガティブな夢だな」

 

「ええ、泣きたくなるような嫌な夢です。で、その直後に真っ暗な空間で言われたんです。『何故、我らの力を使わない』『汝は我らの無念を晴らす気がないのか』って・・・すぐに誰だって問いかけたら2対8組の目に囲まれてて、6人の人影が『9代目はこの力を使うことを躊躇っている』『この力は相応しくない』『剥奪すべき』って」

 

「それは・・・」

 

「正直すっごく怖かった。オールマイトから託されて使った回数なんて2回、内1回は意識が朦朧としていた時で人影の言う相応しくないって言葉に言い返すことができなかった・・・でも、その直後に2人の人影が僕を庇ってくれたんです。1人はガリガリに痩せているのにどこか力強さを感じられる人、ちょうど今のオールマイトの様でした」

 

「・・・・・・」

 

「もう1人は黒髪を後ろで結わえた女性で、僕に『笑え』って、『笑ってるやつが一番強い!』って言ったんです。夢はそこで終わっちゃったんですが、その女性のことが妙に頭に残ってて、根拠もなくオールマイトならって思って聞いてみたんです」

 

「・・・・・・」

 

「僕のことを9代目って人影達が呼んでて、僕に関係あって何代目って[受け継がれし力(ワン・フォー・オール)]くらいしか思いつかなかったんで・・・・・・やっぱり知らないですよね?」

 

「・・・知ってるとも、ああ、良く知ってる・・・・・・」

 

「知ってるんですか?」

 

「ああ、その人は私の前の[受け継がれし力(ワン・フォー・オール)]の持ち主、君にとっては先々代に当たる人で、他の人はその前の先代たちだ。彼らは[受け継がれし力(ワン・フォー・オール)]に染みついた面影のようなもので私も若い頃に見たことがある。しかし、本当なら干渉してくることはない筈なんだがな・・・・・・夢という形で現れたために偶然干渉できたのだろう。でなければ彼女の言葉を君が知っているはずがない」

 

「先々代・・・」

 

 僕が9代目でオールマイトが8代目、その先代だから7代目か・・・

 

「・・・・・・あの、7代目の女性はどこにいるんですか?出来れば会ってみたいのですが・・・」

 

 言ってから後悔した

 

 眉間にしわを寄せ、歯を食いしばるその姿にオールマイトにとって『忘れたくとも忘れられない後悔の記憶』であることは直ぐに分かった

 

「彼女は・・・」

 

「いえ、すみません。やっぱいいです。ごめんなさい」

 

 絞り出すように話すオールマイトの話を遮るようにして打ち切った

 

 踏み込んではいけない話だった

 教えてと言えばオールマイトは答えてくれるだろう・・・その心に負った傷に塩を塗りながら

 

「すまないね」

 

「それよりも大丈夫なんですか?このまま日に日に活動限界が短くなっていくんじゃヒーロー続けてられないですよね?」

 

 わざとらしかろうが何だろうが、このままこの話題を続けることは出来なかったので無理やり話題を変えた

 オールマイトも出来れば触れてほしくない事柄だったのだろう、何処かほっとした様子で僕の振った話題に乗ってきた

 

「ぶっちゃけ私が平和の象徴として立っていられる時間って実はそんなに長くない」

 

「やっぱり・・・」

 

「悪意を蓄えている奴の中にそれに気づき始めている者がいる。君に力を授けたのは私を継いでほしいからだ!体育祭・・・全国が注目するビッグイベント!今こうして話しているのは他でもない!!次世代のアダム・アークライトにしてオールマイト・・・最強と平和の象徴の卵・・・『君が来た!』ってことを世に知らしめてほしい!!」

 

「僕が来た・・・分かりました!全力でもって勝ち抜いて天辺取ります!」

 

 いずれにしろ勝ち抜いて上位に入るって目標を立ててたんだ、それが優勝に変わったところでやることは変わらない

 

「その意気だ、常にトップを狙う者とそうではない者、そのわずかな気持ちの差は社会に出てから大きく響くぞ」

 

「はい!」

 

「それじゃあ、長話もここまで!お弁当食べよっか!美味しく出来てるはずさ、結構自信あるんだ」

 

 受け取ったお弁当を開けると―――

 

 オールマイト女子力高えぇ・・・

 

 ――――――――――

 

「うおおお・・・何ごとだあ!!!?」

 

 放課後になり、早速切島君と障子君と【個性】のアドバイスについて話し合おうとしたら廊下が瞬く間に人で埋め尽くされ、皆が一様に僕らのことを見ている

 

 即座に「廊下に居るのは敵情視察に来た連中だ」と見抜いたかっちゃんが、平常運航でモブ扱いしたところで紫がかった青い髪の男子生徒が前に出てきた

 

「こんなのがヒーロー科?幻滅するなぁ・・・普通科とか他の学科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴結構いるんだ、知ってた?」

 

 行き成り問い掛けられた質問に問われたかっちゃんはもちろんのこと、僕らは彼が何を言いたいのか分からなかった

 

「体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだって、その逆もまた然りらしいよ?」

 

 逆・・・ヒーロー科からの除籍・・・

 

「敵情視察?少なくとも普通科(おれ)は調子乗ってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり」

 

 ・・・・・・上等だ!僕にだって負けられない理由があるんだ!

 

 その後廊下から人だかりがなくなり皆は次々と帰っていった。

 

 そんな中、僕と切島君、障子君は空き部屋に移動した

 

 ―― 空き部屋 ――

 

「やっぱ他のクラスも体育祭に掛けてんだな」

 

「だね、足元すくわれて、ヒーロー科除籍なんて冗談じゃないよ・・・まあ、今から悩んでもしょうがない!とりあえずは【個性】について話そうか、まずは障子君からでいい?」

 

「おう!」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

「じゃあさ、障子君のその腕?触手?ってなんでも複製できるの?」

 

「複製腕のことか?自分の体の一部なら出来る」

 

「な、ならさ!ならさ!その複製腕から複製腕って出せる?」

 

「む!複製腕をか・・・やってみよう・・・む、むむむ」

 

 ズルリと擬音がつきそうな勢いで複製腕が生えてきた。被膜のようなものも一緒に複製されるようで肌色のマントの様だった

 

「おお!!ど、どう?いい感じ?」

 

「ああ、いい感じだな」

 

 感触は悪くなさそうだ

 

「良かった・・・次が本命なんだけどさ、複製した方の複製腕に何か複製できる?」

 

「?できるが・・・」

 

「もう1度複製腕を複製できる?」

 

「更にか?・・・・・・無理だな、いくら意識しても複製できる気配がない」

 

 障子君は目をつぶって意識を集中するも複製腕に変化はなく「無理だ」と首を横に振った

 

「1度までが限界か・・・じゃあ、何か複製してもらえる?耳とか眼とか」

 

 そう問いかけると障子君は耳を複製した

 

「でさ、感覚とか普段より良くなってない?」

 

「普段より?・・・なってるな」

 

「複製した部分は本来より強化されるって聞いたからさ、複製腕を複製してからその先に複製すればもっと強くなると思って・・・じゃあ次に手を複製してもらえる?」

 

「ああ」

 

「・・・ちなみに前回の握力測定はいくつ?」

 

「腕と複製腕2本で540kgだ」

 

「【個性】無しだと?」

 

「46だな」

 

 540-46=494だから、それを2で割って247、更に46で割ると・・・5.36・・・9・・・複製した腕は本来の約5.4倍位強化されるのか・・・

 

 じゃあ5.4×5.4で29.16、そこに46かけて・・・・・・1341!?てことは2本使ったら2682kg!?

 

 おおよその数値を出そうと計算すると、重機も真っ青な数値が算出された

 

「1本!まずは腕1本で測ってもらえる?」

 

 1本でやるように念を押してから事前に相澤先生に借りていた握力計測器を障子君に渡した

 最初から全開でやったら計器が壊れる。「壊さない」って条件で借りたのに壊すのは非常に拙い

 

「分かった」

 

 障子君は受け取った計測器を複製した手に持ち、計測を開始した

 

 ピピピッ!

 

 計測結果は1384kgと計算したよりも強かった

 

「1384!?やべえな!!」

 

 隣で僕らのやり取りを見ていた切島君も思わずと言った感じで驚いていた

 

「あっぶな・・・2本でやってたら確実に壊れるところだった・・・」

 

「緑谷?」

 

「う?あ!ごめん、なんでもない!それよりも障子君はどう?違和感ない?腕が丸々1本分も伸びるから間合いも変わるだろうし」

 

 計器が壊れなかったことに安堵していると障子君に声を掛けられたのでなんでもないと首を振ってから違和感について聞いてみた。

 実際にどうなるかは試してみないと分からないとはいえ違和感が酷いようならやめた方が良い

 

「調子は悪くない、間合いは確かに伸びたな・・・そこは要訓練だな」

 

「だね!」

 

 調子は悪くないようでよかった

 

「すまないな、無理を言って」

 

「いいよ!見返りはちゃんと貰うんだからお相子、いや僕の方が貰いすぎになるか?」

 

 1度のアドバイスで同じ【個性】持ちが現れることに成るんだから不公平じゃないだろうか

 

「まあ、いいんじゃねえの?同じヒーローを志す者同士だし、俺も障子も強くなる!緑谷も強くなる!体育祭で大活躍してヒーロー事務所に引っ張りだこ!ってな!」

 

 切島君は自分、障子君、僕の順位に指をさしながら笑って言った

 

「ははは、何だよそれ」

 

「へへ、俺は本気だけどな!で、いよいよ俺の番か?で、どうよ?なんかいい案浮かんだ?」

 

 障子君の【個性】についてアドバイスが終わると待ちきれないとばかりに切島君が切り出してきた

 

「確認だけど、切島君の[硬化]って硬く鋭くなるって感じでいいんだよね?」

 

「おう、刃物で斬りかかって来ても折っちまう位には硬くなるぜ」

 

「どれくらい硬くなってられる?」

 

「大体10分位かな?解除して一呼吸置けばまた硬くなれるけど、硬いまま動くの結構辛いんだわ」

 

「うーん、今よりも硬度を上げる方面で鍛えた方が良いね。一呼吸置けば再使用可能なら継続時間は問題なさそうだし。」

 

「今よりも硬くか・・・・」

 

「いっそのこと継続時間を犠牲にして超高硬度になるってのもアリかもよ?相手の攻撃に合わせて瞬間的に超高硬度になってカウンターを放つって感じで」

 

「お、必殺技か!いいね、採用!取りあえずアドバイス通り硬度を上げる特訓して、短時間でもいいからメッチャ硬くなれるようにするわ!」

 

「うん、ごめんね?いいアイディアじゃなくて」

 

「何言ってんだよ!俺だけだったら『取りあえず硬くなる特訓する』ってだけで終わってて必殺技とか考えもつかなかったぜ?」

 

「なら良かったよ、あとは本番まで特訓あるのみだね!!」

 

「おう!」

 

「ああ!」

 

 その後、二人の【個性】を覚えさせてもらってから解散した

 

 僕は真っ直ぐ帰路につかずに寄り道をした

 目的地は――

 

 ―― 鬼哭道場 ――

 

「こんにちは!」

 

「ん?なんじゃミド坊、また来たのか?」

 

 道場に行くとそこには硬爺の姿しかなかった

 

「はい、実は見てほしい技があって」

 

「ほう、誰のじゃ?誰の技を会得したんじゃ?」

 

「違いますよ、自分で考えた技です。二週間後に体育祭があって、そこで使う技を考えたんです。内容は色々な【個性】の多重使用、試作段階だけど一度見てもらおうと思って」

 

 開口一番「誰の技だ?」と問いかける硬爺にちょっとむっとしつつも訪れた理由を言った

 

「ほうほう、いいぞ!経蔵と岩哲はあっちの部屋で組手中なんでな、まずはワシが見てやろう。さあ見せてみろ!」

 

「それじゃあ」

 

【個性】を多数発動させ――

 

「な!?」

 

 ――

 ―――――

 ――――――――

 ―――――――――――

 

「はあ、はあ、ど、どうですか?」

 

 昨日、『ある【個性】』を複数覚えたので同時発動できるか試したときに偶然見つけた組み合わせ

 複数発動すると他の【個性】と併用したより力強くなったので、いつものように他の【個性】も合わせて技として使おうと考えているもの

 ただし、まるで【個性】が意思を持つかのように反発するから抑え込むのに結構体力を使う

 

「・・・・・・」

 

「硬爺?」

 

 硬爺は目を限界まで見開き固まっていた。その姿はまるでありえないモノを見た様だった

 

「経蔵!岩哲!ちょっと来い!」

 

 硬爺はハッと我に返ると急ぎ経爺と岩爺を呼んだ

 

「なんじゃあ、いいとこなのに・・・ん?ミド坊か?どうした?」

 

「やけに息を切らしとるな、硬之丞、お前なんかしたんか?」

 

 呼ばれた二人はぶつくさと文句を言いつつも組手をやめてやってきた

 

「こ奴・・・裏奥義を使いよった」

 

「は?」

 

「嘘じゃないだろうな?」

 

「本当じゃ、不完全ながら悪鬼が覗いておる。このままじゃ取られるぞ」

 

 硬爺の一言に2人の不満顔が真剣な表情に変わった

 

「・・・・・・克鬼と斑鳩に連絡したか?」

 

「まだじゃ」

 

「わしが呼び出してくる」

 

 そういって岩爺は連絡を取る為に母屋へ向かった

 

「あ、あの、何か拙いことでもありました?」

 

 ただ試作段階の自己流奥義を見せただけなんだけど・・・

 

「ミド坊」

 

「なんでしょう」

 

「本番まで二週間じゃったよな?」

 

「ええ」

 

「ならこれからお前にある技を授ける。前提条件故にワシらに習得できなかった奥義、今ミド坊が見せた技はこの奥義の一端に触れておる。しかも寄りにもよって危険な領域にだ。このままじゃ何時か取り殺される。そうならないために死ぬ気で覚えろ。それまでその技の使用は禁じる」

 

 硬爺のその顔は本気だった

 

 それから学校、道場、家を順番に巡る様な生活を続けた

 

 

 

 ―― 体育祭前日、鬼哭道場 ――

 

 道場には僕の他に経爺、硬爺、岩爺、克兄の4人がいた

 

「ミド坊」

 

「はい」

 

「奥義習得に伴って一先ず危険な状態からは脱した。あとは徐々に慣らしていけばよい」

 

「危なくなったら落ち着いて特訓のことを思い出せば大丈夫なはずだよ」

 

「はい」

 

「あとな、これからお前は黒鬼を名乗れ」

 

「くろおに?」

 

「鬼哭流伝統の鬼名(おにな)じゃな」

 

 あ、黒鬼か

 

「名乗る奴を表す一文字と鬼を合わせたのが鬼名じゃ」

 

「それなら緑鬼とかになるんじゃないんですか?髪の毛緑だし、名前も緑谷だし」

 

「お前、普段戦う時炭乃の【個性】で真っ黒じゃないか、だから黒鬼じゃ!「こくき」でもいいぞ?」

 

 確かに黒くなるけど・・・黒と緑以外だと・・・デク鬼?そばかす鬼・・・・・・黒鬼でいいです・・・

 自分で考えて自滅した。確かに一目でわかる特徴なら黒鬼か・・・自己流奥義も真っ黒だし

 

「これで目出度く鬼哭流の一員じゃな」

 

「ありがとうございます。お蔭で技も完成しました!」

 

 時間制限はあるけど最初より格段に使いやすくなったし負担も減った。制限時間を過ぎるとやばいけど

 

「そうじゃ、明日は体育祭なんじゃろ?見に行くかんな!ヘマやらかすなよ?」

 

「鬼哭流として恥ずかしくなるような結果は出すなよ?」

 

「優勝以外はワシらと実践稽古じゃかんな!」

 

「ちょっとは素直に頑張れの一言くらい言えないのかよ貴方達は・・・」

 

「あははははは!」

 

 そうしてあっという間に時間は過ぎ去り体育祭当日を迎えた

 

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