バァアアアアン!!
!?・・・銃声?・・・皆無事だろうな!?
突如として空に響き渡る銃声に不安が募り移動速度が上がる
[
かっちゃん居た!・・・常闇君と障子君がこっちに来てる?
[氷]で作ったバイザーで風から目を保護しつつ、[翼]と[ジェット]で飛空しながら気配を探ると、前方にかっちゃんと轟君、尾白君の気配を感じた
加えてやや右側に常闇君と障子君の気配を感じたのでその場で静止し、ちょうど障子君の気配が近くに来た辺りで声を掛けようと制止したところで──
「障──!?」
[金剛石]
──視界一杯に現れた真っ黒な何かに叩き落とされた
「・・・ってぇえ・・・なんだいきなり?」
落ちた勢いで地面を二度三度とバウンドして木に背中を打ち付けた
咄嗟に[金剛石]を発動させたが、叩きつけられた衝撃までは防げずに顔をしかめた
「
気付かなかった!気配を消していたのか!?
[
やっぱり居ない!
飛び起きるようにして体勢を整え、気配を探るが先ほど察知した皆の気配以外には何も感じなかった
「なら目視で捉えてぶっ叩く!」
クソ!あそこは常闇君の気配のあったすぐ近くじゃないか!
闇夜の中、月明りに照らされた大きく黒い怪物が何かを振り払うように周囲の木々を薙ぎ払っているのを見つけたが、同時に常闇君の気配を感知した場所とほぼ重なっていることに驚いた
[怪力]
[剛力]
[剛腕]
[鉄腕]
[
[
[
[
[金剛石]
[脚力強化]
[鬼]×3
「待ってくれ!」
「!?・・・障子君?」
今まさに飛掛らんと脚に力を入れた瞬間、横からストップがかかった
「避けろ!」
言われるがままにその場から飛び退くと、今までいた場所に巨大な黒い腕が木々をへし折りながら振り落とされた
「障子君離れて!一旦あの
「頼む待ってくれ!アイツは・・・っ!!」
再び飛掛ろうとしたところで障子君の[複製腕]で拘束されるように引き留められ、僕らの声に反応したのか、またしても振り下ろされた黒い巨腕を避け、距離を開けたところで事情を聴く事になった
「あまり大きな声は出さないでくれ、気付かれる」
「了解・・・で、アレは何?近くには君と常闇君の気配しかしなかったのに、さっきいきなり叩き落とされたんだけど?しかもアレとほぼ同じ位置に常闇君の気配を感じるし、攻撃を止めるってことはアレが何か知ってるの?」
黒い腕が引き戻されるのを横目に、声を潜めながら障子君に黒い怪物について聞いた
「それは常闇だ」
「は?」
常闇君?そんな馬鹿な・・・
見上げるほどに巨大で巨腕を振り回して木々を薙ぎ払う化け物に目を向ける
常闇君の
「常闇の【個性】である
「アアァァァァァアァァアア!!」
障子君が指さす処をよく見れば、顔がかろうじて見える位まで取り込まれた常闇君がいた
常闇君と同じ位置に
「俺から・・・離れろ!!!死ぬぞ!!」
「マンダレイからのテレパスで
気付いた時には無数に枝分かれしながら迫る刃が眼前まで迫っていて、[複製腕]の一部を犠牲に、常闇君を庇って草陰に飛び込み身を潜めたらしい
よく見れば左の[複製腕]の一部に欠損が見える
「それ治るの?」
「心配しなくともしばらくすれば自然に治る。言わずとも緑谷なら知ってると思っていたが・・・」
「あくまで模倣だから一から十まで知ってるわけじゃないよ」
「そうか」
正確には「使える」けど「使いこなせていない」なんだけどね
表面上の性能は
「それで何で常闇君は怪獣大戦争みたいな様相な訳?」
「・・・襲撃の際に千切れた[複製腕]の一部に
「ああなった訳か・・・」
「恐らく
そう言って障子君が足元にあった拳大の石を拾って遠くに放り、石が草むらを揺らした瞬間、黒い巨腕が草むらとその周囲を薙ぎ払った
「~~~!!!!!俺のことは・・・いい!ぐぉ!・・・ふぅふぅ!!他と合流しぃ・・・他を助け出せ!!静・・・まれっ
障子君の証言通り常闇君は
「緑谷、恐らくお前のことだから爆豪を助ける為に先を急いでいるだろうが、光に類する【個性】で常闇の
障子君はクラスの中で特に常闇君と仲が良く、苦しんでいる友人をただ見ているしかできない現状に歯がゆい思いをしていたようだ
そして、そんな時に現れた常闇君を救えるかもしれない僕の登場は一条の光だったのだろう
「任せて」
出来るのにやらないなんてアダムさんとの誓いに反する
「ありがとう、頼んだ」
さて、ただでさえ森林火災が発生しているのにこれ以上被害を拡散させる訳にはいかない
加えて煙や火炎は行動範囲を狭める原因になる。故に[炎][爆破][火吹き]等の引火の恐れのある【個性】は選択できない
・・・いや、かっちゃんは[爆破]の【個性】で閃光手榴弾みたいなの使っていたし行ける・・・かな?
[爆破]
発光させることを意識しながらパチンと指を鳴らすと一瞬だけ眩い光が出た
「うん、行ける」
「ガアァアァァアアァアア!!」
「っと危ない!」
木々を薙ぎ払いながら出鱈目に振るわれる巨腕を躱す
「障子君、これから閃光手榴弾みたいな発光で
「了解した」
常闇君の元まで走り接近する
「オ゙オ゙ォォオオ゙オ゙ォォォ!!!」
当然足音に反応して攻撃してくるが、いくら速度が速かろうが振り下ろしか薙ぎ払いの二択と分かっていれば避けるのは容易かった
「行くよ‼」
[爆破]
横薙ぎの一撃を跳んで躱し、空中で大きく振り被った両手を打ち合わせた
「ギャァァァァアアアアア!!」
パンッ!!
先ほどのフィンガースナップとは比べ様のないほどの強い光が打ち合わせた両手から発せられ視界を白く染める。
「ぴゃぁぁぁ!!」
見上げるほどに巨大だった
「常闇!」
「ぐっ・・・障子、緑谷・・・悪かった。俺の心が未熟だったせいで迷惑をかけたな・・・」
「常闇・・・」
「俺を庇った障子の複製の腕が飛ばされ、怒りで頭が真っ白になった。闇の深さに加え俺の怒りに影響され奴の凶暴性に拍車をかけてしまった・・・結果収容もできぬほどに増長し、障子を傷つけてしまった・・・」
「気にするな。何かあった時助け合うのが仲間であり友である・・・だろう?」
「ふっ・・・そうだな」
もう暴走する心配はなさそうだと【個性】の発動をやめる
「緑谷、手間をかけた」
「ううん・・・それじゃあ僕はこれからかっちゃんの元に行くつもりだけど、二人はどうする?確実に
「?・・・なぜだ?緊急事態なら大人の元に合流した方が良いだろう?まるで一緒に来た方が安全と言わんばかりの二択だが」
まあ、普通そう思うよね・・・
「・・・
「人間を複製?それが合流することが安全ではない理由なのか?」
「ここに来る前にマンダレイと虎の元に居たんだけど、二人が対峙していた
「それは・・・」
前門の虎後門の狼状態
選べるのはどちらがマシかというレベル
「どっちを選んでも危険なことは変わりない・・・こんなことを言ったあとであれだけど、今のもあくまで仮説だから実際はもう複製体なんて残っていなくて安全に合流できる可能性だってある。選ぶのは君たちだ」
障子君と常闇君は数秒ほど顔を合わせると、どちらからともなくうなずき合った
「なら俺たちは共に行く。
「俺も助けられた恩がある」
「いいんだね?」
「ああ」
「判った」
予期せぬ事態が起きたが、障子君と常闇君の二人と合流し共に僕らはかっちゃんの元へ急いで向かった