Fate/Sunshine〜浦の星聖杯戦争録〜   作:フィッシュボール

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♯0 プロローグ〜ある魔術師の独白〜

 

 ―――聖杯戦争なのだから、何が起こっても不思議じゃない。

 

 よく言ったものだよね。

 例外を例外としないその在り方、それこそが『聖杯戦争』。

 ……ただ、それはあくまでも“前提”があってのことではないか? 元より『聖杯戦争』とは魔術師との間で起こるものだ。

 まぁ、たまに、一般人が巻き込まれることがあるけど、それはそれ。

 だけど、今回の“物語”は全く違う。

 この話に魔術師は出てこない、まぁ、魔術師もどきみたいなのはいるのかな?

 

 いやぁ〜、完全に見落としていたよ。

 いくら『千里眼』を持っていても全部をしっかり(・・・・)見てるわけじゃあないからね。

 ボクだって完全じゃない。

 だから、見落とした責任を取る、というのを口実にして今回はボクも参加するさ、面白そうだからね。

 本来ならあの幽閉塔からは出れないんだけど……まぁ、例外なんていくらでも作れるさ。

 

 さぁ、いよいよ始まるよ。

 

 ―――魔術師のいない『聖杯戦争』が。

 

 後は、あの口うるさい王様が召喚されないことを祈るだけかな……。

 

………

……

 

 〜浦の星女学院屋上にて〜

 

 この日は茹だるような暑さだったがそんな中、元気な声がこだまする。

 

 「―――ずら? 善子ちゃん、その本は??」

 「だから、善子言うなっ!! フッ、これは悪魔を召喚する儀式の方法が記された禁断の書……」

 「ふむふむ……で?」

 「私はこの儀式を実践しようとした、けれど、大きな問題があったの……」

 「問題?」

 「そう、この儀式は私、一人では行えない。人が必要なのよ……」

 

 1年生の津島 善子がヨハネモードになりながら一冊の古びた本を練習が終わったAquasのメンバーに見せつける。

 本、ということもあり真っ先に食いついたのは国木田 花丸であった。

 

 「具体的には何人必要なの?」

 

 3年生の松浦 果南が少し興味があるのか善子が提示した本をしげしげと眺める。

 

 「えっと、見た感じだと9枚のカードみたいな絵が書かれてるね」

 「そう、この儀式には9人の人間が必要……」

 「―――つまり、Aquasのメンバーと同じ数だね!!」

 

 Aquasのリーダーであり、2年生の高海 千歌が元気よく話に割り込む。

 良くも悪くも話を聞かない彼女は悪魔の召喚儀式だというのになぜか嬉しそうである。

 4人の様子を終始呆れた顔で見ていた3年生、黒澤 ダイヤが口を開く。

 

 「まったく、なにが悪魔の召喚ですの? 下らない。そんなことに私達を巻き込まないでくださる? 私は忙しいんですの!」

 「ダイヤさん……もしかして怖いんですかぁ?」

 「なっ! 何を!! そんなわけないですわ! 私はただ、そんな非科学的なお遊びに時間を使うくらいならもっと有意義な―――」

 「まぁまぁ、ダイヤ。落ち着きなよ、どうせ本当に悪魔なんて出てこないんだからさ、善子に付き合ってあげなよ」

 「だから、ヨハネよっ!!」

 

 ムキになって反論するダイヤを果南が苦笑混じりに諭す。

 誰もがそんなこと冗談と思ってる中、一人だけ涙目になりながら震えてる人物がいた。

 ダイヤの妹であり、1年生の黒澤 ルビィである。

 

 「で、でも……! 本当に悪魔さんが出てきちゃったらどうしよう……」

 「アハハッ! 大丈夫だよ。そんなこと―――」

 「もし、本当に出てきたらアナタを頭からガブリッ!!」

 「―――ぴぎゃあああああっ!!!」

 

 突然、何者かに頭を鷲掴みにされたルビィが耳をつんざくような声で絶叫する。

 ルビィの頭を鷲掴みにした人物が彼女の肩口から現れる。

 美しい金髪をした少女だ。

 

 「コラ、マリー! 怖がらせちゃダメでしょ!!」

 「ゴメンゴメン! 怖がるルビィを見てたらついやりたくなっちゃったの。でも、なかなかスリラーな感じじゃない!? 私もやってみたいわぁ!!」

 「鞠莉さん、私の妹を怯えさせないでくれます。大丈夫ですわよ、ルビィ。悪魔なんて迷信ですわ」

 「……お姉ちゃん。うん、そうだね」

 

 妹の頭を撫でながらダイヤは鞠莉を咎める。

 鞠莉も流石に悪いと思ったのか、素直に謝罪した。

 なぜかノリノリな千歌が続ける。

 

 「まぁ、悪魔が出てきたら友達になればいいんじゃない? そうすればぁ……」

 「いやいやいやいや! ダメでしょ!? お友達になったら」

 「へぇ? なんで?」

 「なんでって……」

 

 千歌のあまりにも楽観的な言葉にツッコミを入れたのは2年生の桜内 梨子であった。

 が、千歌のマイペースにあっさり飲み込まれてしまう。

 そんな二人の様子をニコニコ笑いながら見ているのは同じく2年生でAquasで二番目に加入した渡辺 曜である。

 

 「面白そうだね。この夏の肝試しにピッタリ!」

 「曜ちゃんまで……」

 「じゃあ、この悪魔の儀式、皆でやってみよう!!」

 

 千歌の威勢のいい声でAquasによる悪魔の召喚儀式がとり行われることになった。

 

 「……で、どうやるの?」

 

 その天然なボケに八人が一斉にコケる。

 

………

……

 

 〜召喚の儀、高海 千歌〜

 

 その日の夜、千歌の部屋にて。

 善子がメッセージアプリを使い、本に書かれていた魔法陣と儀式に必要な物と手順を送信した。

 スマートフォンを片手にベッドに転がりながら千歌は儀式の準備を始める。

 

 「えっと……善子ちゃんによると夜にこの魔法陣を書いて……ってこの魔法陣思ったより大きいな。外の庭でやろ。で、後は触媒を用意するといい……。触媒は古いもの、歴史あるものが使われる。家にある歴史あるもの……おばあちゃんの代から使ってる『竹箒』かな! よし、で呪文は……うへぇ、長いなぁ。まぁ、スマホ見ながらやればいいか! うーん! なんかワクワクしてきたぁ!!」 

 

 ベッドから跳ね起きた千歌は玄関にの隅に置いてあった竹箒を掴みそのまま外に飛び出した。

 彼女の旅館の外庭は砂利が引いてあるのでその砂利に足で魔法陣を書いていく。

 

 「よいしょ、よいしょ…………ふぅ、できた! うんうん、我ながらいい出来だよ!!」

 

 完成した魔法陣を前に腰に手を当ててドヤ顔を披露する千歌。

 

 「えっと、後は『触媒』を置いて……。これでよし! じゃあ、後は呪文だね!」

 

 千歌は触媒である竹箒を置いて反対側に周り込むと右手を魔法陣に向かって差し出し、左手にあるスマホを見ながら呪文を唱えていく。

 

 「―――素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。うへぇ……難しい言葉がいっぱいだ、でもでもすっごくいい感じ!!」

 

 どこからともなく風が集まってくる。

 だが、そんなこと興奮している千歌はまるで気づかない。

 更に呪文は続いていく。

 

 「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する―――」

 

 その瞬間、彼女の右手に赤い紋章が浮かび上がる。

 が、夜の闇飲まれてその存在に彼女は気づかない。

 

 「―――――Anfang(セット)

 

 「――――告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 千歌はゆっくり目を閉じた。

 いよいよ呪文の大詰めなのだ、なんとなく雰囲気で目を閉じねばと考えた次第だった。

 それは良くも悪くも功を奏し、集合する光に彼女は気づかない。

 

 「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 瞬間、凄まじい衝撃が千歌を襲い、彼女は尻もちをついてしまう。

 砂利が舞い散り、落ちていく、舞い上がる砂埃の中に何者か影が浮かび上がる。

 

 「―――いったぁ……。って、なになに!? どうなったの!?」

 

 混乱する千歌に影はゆっくりと問いかける。

 

 「問おう。君が私のマスターか?」

 

 




 さて、ここからしばらくはそれぞれのメンバーが英霊を召喚する話になります。
 では、早速ですが、高海 千歌が『竹箒』を触媒に召喚したのは一体誰でしょう? 
 ちなみにオリジナル英霊は一体として出てきません。すでに出てきている英霊ばかりです。
 では、次回をお楽しみに!!
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